20代、遅くとも30代前半までの過ごし方でその後の人生が決まる。これまでに成功をつかんだビジネスパーソンの多くはそう語るでしょう。
一般的にビジネスの世界では20代前後までを「若い」と認識します。そしてこの若いうちでなければ経験できないことは確実に存在します。仕事に対する姿勢や基礎知識、基礎的なスキルが圧倒的なスピードで身につくのも20代のうちでしょう。
「あのときやっておけばよかったな」という後悔をなくすためには、新卒や中堅のビジネスパーソンは20代の過ごし方を真剣に考えるべきです。
「3年でものごとが見えてくる、30歳で立つ、35歳で勝負は決まり」という言葉は、東レで輝かしい功績を残した佐々木常夫さんのものです。佐々木さんは東レという巨大企業で同期トップで取締役となり、東レ経営研究所社長に上り詰めたビジネスパーソンです。
自閉症の長男や、肝臓病やうつ病を抱えた妻持った家庭と仕事を両立させながらも、いち大企業のトップに登りつめた佐々木さんの仕事術はどのようなものなのでしょうか。佐々木さんが若者に向けたメッセージをまとめた『働く君に贈る25の言葉』という書籍をもとに、新卒や20代のビジネスパーソンが知っておくべき仕事術や人生設計の方法を紹介します。
本書は佐々木さんが当時社会人になったばかりの甥に向けて残したメッセージなので、とても親身なアドバイスばかりで、読者の心にも響くはずです(ぼくも身内のような気持ちで読んでいました)。
今からでも遅くありませんし、早すぎるということもありません。時間は戻ってきません。後悔しないために、今すべきことを考えましょう!
1. 20代のうちに人生観をもっておく
自分はどういう人間で、どういう信条を持っているか、あなたは語ることができますか?
しっかりした人生観をもつか、もたないかで、君の人生には大きな差が生まれます。もちろん、20代の君の人生観は未熟なものかもしれません。これから、その人生観を揺るがせるような出来事がたくさん起きるでしょう。しかし、そういう経験を重ねながら、何度も何度も練り直すことによって、君の人生観は本物になっていくのです。
まだ人生観を語るなんて早い、と思うかもしれませんが、そうしてずるずる30代、40代になってしまう人は多いはずです。そして重要な局面で「本当にこのままの人生でよいのだろうか」という迷いが生じてしまうのです。
そうはいってもいきなり「人生観をもて」と言われても難しいかもしれないので、佐々木さんはオススメの方法を2つ教えてくれています。
まず1つ目がこれまでの人生で出会ってきた人たちの棚卸しです。家族、友人、学校の先生、先輩などたくさんの人々と出会ってきたはずです。その人たちが自分にどのような影響を与えてくれたか、その人たちの言動で感動した思い出はあるかを振り返ってみましょう。実在する人物だけでなく、映画や本の登場人物でもよいでしょう。その人たちの人生観が自分の人生観にも反映されていることは大いにありえるからです。
自分の人生観をもつ上で助けとなる2つ目の方法が、人生設計を具体的にイメージすることです。何歳くらいで今の仕事をマスターしたいか。その次にどんな仕事に挑戦するのか。30歳、40歳、50歳にはどんな仕事をしていたいか。いつごろ結婚し、何人子どもをもつのか。家は買うのか、買わないのか。
考えるべきことは山のようにあります。もちろん、20代で考えた人生設計が、思ったとおりになることはありません。それでも、この作業には大きな意味があります。なぜなら、「自分は何を大事にして生きていきたいのか」「自分はこの人生で何がしたいのか」を自らに問いかけることにほかならないからです。
20代のうちに、これまで出会った人々の棚卸しと具体的な人生設計のイメージをしておきましょう。
2. 目の前の仕事に真剣になる
「目の前の仕事に真剣になる」これは当たり前のようで、実は20代の仕事術で最も重要なことです。
いくつも大きな仕事を手がけることができましたが、それは「目の前の仕事を一生懸命やる」ことの延長線上にあったのです。
初めはどの仕事が重要でどの仕事が重要でないかという判断は難しいものです。どんな小さな仕事でも真剣に取り組んでいれば、それは上司や同僚、お客さんの信頼につながり、もっと大きな仕事を任せてもらえるようになります。
どんな仕事にも面白いところと面白くないところがあります。特に面白みのない単純作業だろうと、いかに効率良くこなすかを意識すれば、仕事を工夫をすることを覚えます。
佐々木さんは「どの仕事に就いたかということよりも、仕事にどう向き合うかのほうが大事」と述べていますが、まさに20代こそ仕事に向き合う姿勢が重要です。そこで身についたものが30代、40代以降の姿勢を決めてしまうからです。
3. 優先順位を意識する
「目の前の仕事に真剣になる」でも、どんな仕事にも真剣に向き合い、小さな仕事でも効率化を目指すなどの工夫は大切です。しかし、これはどんな仕事にも全力で同じだけの労力をかけることとは違います。限られた時間の中でいかに仕事の優先順位を意識し、効率よく処理するのかを考えなくてはなりません。
重要度の低いものは完成度をそこまで気にせず、ポイントだけ押さえて早く終わらせることが重要です。その代わり、重要な仕事には全力をそそぐ必要があります。
大切なのは、「どの仕事が重要なのか」を正しく見極めることです。つまり、「事の軽重」を知ることが仕事のキモなのです。
時間の管理ではなく、仕事の優先順位を意識することこそが、真のタイムマネジメントなのだと言います。
肝臓病やうつ病を患っていた妻と自閉症の長男、さらには次男と長女を持ち、家事・育児・看病をこなすために毎日18時の定時退社をする必要があった佐々木さん。しかし同期トップで東レの取締役まで登りつめることができたのは、業務の効率化、優先順位の振り分けを含むタイムマネジメントがあったからこそでしょう。
4. 「部下力」を身につける
社会人になって、最も大きな問題の一つが人間関係でしょう。そして人間関係の中で上司との付き合い方は大切です。どのような人物が自分の上司になるのかを選ぶことはできないので、自分にプラスになることもあれば、相性が合わないという場合もあるでしょう。
いずれにしても、自分の上司に対する接し方は自分でコントロールすることができます。佐々木さんは「部下力」と称する上司の接し方を4点紹介しています。
①上司の注文を聴く
第一に、上司が自分に何を期待しているのかを把握することが重要です。チームの中での自分の役割でもいいですし、課されたタスクの目的を確認することでもいいでしょう。頻繁に上司にコミュニケーションを求めるのは、少し躊躇することかもしれませんが、上司は部下からの報告や相談を待っています。たいていの上司は、仕事の進捗状況などが気になるため、部下からのコミュニケーションがあってありすぎることはないと思うのではないでしょうか。
②上司の強みを知って、生かす
上司をうまく使うくらいの気持ちも大切です。自分の上司の取引先との人脈が豊富ならば、それを生かすべきです。チームの業績、ひいては上司自身の評価にもつながることならば出し惜しみはしないでしょう。上司が情報通ならば、その情報がどこから来ているのかを学ぶこともできるかもしれません。上司の特徴を見極めて、自分にプラスになるように生かしましょう。
③その人に合った方法でコミュニケーションをとる
報・連・相(報告・連絡・相談)はどんな上司に対しても必要なコミュニケーションです。しかしその方法は上司によって好みが異なる場合があるので、自分の上司に合ったコミュニケーション方法を把握する必要があります。
日々細かく情報共有を求める上司もいれば、一定期間ごとにまとめて情報が欲しいという上司もいるはずです。口頭でのコミュニケーションを好む上司もいれば、メールやLINEなどのツールを使った方が効率的だと考える上司もいるでしょう。部下であるあなたが上司に合わせる必要があるのです。
④上司を驚かせない
これは悪い意味で上司を驚かせてはいけないということです。何かに失敗した場合、問題が生じている場合はできる限り早く上司に報告しましょう。自分に非がある場合は、上司へ報告するのに躊躇ってしまう場面もあるでしょう。しかし、そのままにしておくと状況は悪くなってしまい、最終的に上司に知れた時には取り返しのつかないことになってしまいかねません。
上司はあなたが思っているよりも多くの問題解決の手段やノウハウを持っているものです。大きな問題になる前なら、簡単に解決してしまう場合も多いでしょう。とにかく「時すでに遅し」の状態で上司を驚かせることがないよう、問題やトラブルにつながりそうなら逐一上司に報告、相談をしましょう。
以上4点が20代で身につけ、実践すべき「部下力」です。上司に気に入られるために必要以上に気を遣ったり、自分の意に反して物事を我慢する必要はありません。あくまで仕事をスムーズに進める上で、かつ自分が成長するためにこの「部下力」を実践しましょう。
5. 一生の趣味を持つ
あなたは休日をどのように過ごしていますか?
佐々木さんは生涯を通じて追求できるような趣味をもつことを推奨しています。
私は、ぜひ、生涯を通じて追求できるような趣味をもつことを勧めます。そして、休日には、仕事から離れてその趣味に没頭する時間をもつことが大切です。人生が豊かになるだけではなく、仕事にも確実にプラスになります。
自分が好きな趣味に没頭することは、単純に気分転換になります。これは何十年も働いていく上で欠かせない要素です。
また趣味を深めていくと、「本物」と「偽物」の違いがわかってくると言います。佐々木さんの趣味は読書で、中でもアガサ・クリスティという推理小説の権威である作家の作品からこのように「本物」を見出したと言います。
彼女の作品は、トリックのアイデア、読者を引き込む構成、伏線の張り方、どれをとっても一流ですね。しかも、深い人間観察眼に貫かれている。まさに本物です。
もちろん読書の限ったことではなく、アートやスポーツなどでもそうでしょう。本物の「重量感」に触れることで、自分の仕事の目標設定も高くなるのです。自分の仕事を、少しでも「本物」に近づけようと努力を始めるきっかけになります。
他にも趣味を通じた出会いが思わぬ人脈につながるかもしれませんが、最近では趣味や好きなことそのもので稼いでいる人も少なくないですよね。「仕事に集中」という狭い視野ではなく、一生の趣味に没頭することからもたくさんのメリットを享受できることを覚えておきましょう。
以上が佐々木常夫さんの『働く君に贈る25の言葉』から学ぶべき、新卒を含む20代が身につけ、実践すべき仕事術です。どれも早めに意識して始めることで、将来の人生を大きく左右するものばかりです。
自分なりの仕事術は、基本がしっかりした上で30代、40代に最適化していくものです。まずは偉大な先人が重要だと思っている働き方や人生観を学び、実践してみることが大切です。
本書にはタイトル通り計25の教えがあり、今回紹介した20代のための仕事術はごく一部です。ここで紹介した5つの仕事術に共感した方は、ぜひ本書を一読してみてはいかがでしょうか。きっと将来のあなたの人生にプラスに働くはずです。
それでは楽しい読書ライフを!
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