【村上春樹好き必見】村上春樹に似た作家をご紹介

村上春樹好きにおすすめな作家

「村上春樹を読んでみて、すごく好きだったから似ている作家はいないかな?」と思っている方

「村上春樹作品を読破して、次に読む本を迷っている、、、」という方

そんな方に、村上春樹に似た感じの作家のおすすめを紹介します。作家として誰かに似ていると言われるのは本意ではないと思いますが、作品の雰囲気やテーマなどを見て、あくまで個人的に「村上春樹が好きなら、好きになりそう」と思った作家をピックアップしました。その作家ごとのおすすめの作品も合わせて紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

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街と、その不確かな壁『文學界』1980年9月号

村上春樹に似た作家① 古川日出男

二〇〇二年のスロウ・ボート
二〇〇二年のスロウ・ボート
まだ東京を脱出できない。僕は何度も何度も自問した。ほんとうにここには境界線があるのか? もちろん。嘘だと疑うんなら、君といっしょに試してみたっていいんだ。(『二〇〇二年のスロウ・ボート』より)

まず村上春樹作品が好きな方におすすめしたい作家が、古川日出男さんです。古川日出男さんは1994年に小説家としてデビューし、2005年に『ベルカ、吠えないのか?』が直木賞の候補作に、2006年には『LOVE』で三島由紀夫賞を受賞しています。文体やテーマなどの面で、村上春樹好きなら違和感なく読める作家です。

特に2006年に出版された中編小説『二〇〇二年のスロウ・ボート』(もともとは『中国行きのスロウ・ボートRMX』として2003年に出版)はそのタイトルからもわかる通り、村上さんの短編「中国行きのスロウ・ボート」がルーツとなっている作品です。この短編作品は古川さんにとって「僕という作家の魂のルーツもある」というほど特別な作品だといいます。

『二〇〇二年のスロウ・ボート』の全体の雰囲気もさることながら、細部についても村上作品の要素が垣間見えます。例えば「東京からの脱出」というテーマは『海辺のカフカ』を思い出しますし、「むろん、<死>をまるで生の対極にある存在として捉えるのは誤謬もいいところだけれど…」という文章は『ノルウェイの森』の有名な一節から来ているものだと推測できます。その他にも、村上作品を読んでいれば気になるポイントが、随所に散りばめられています。

単なるパロディではなく、古川日出男という間違いのない筆力を持った作家だからこそできる上質な「再構築」がなされた作品です。もちろん他の古川作品も魅力的ですが、村上ファンにはぜひこの『二〇〇二年のスロウ・ボート』から入ってみることをおすすめしたいです。

*『二〇〇二年のスロウ・ボート』は現在絶版状態ですが、中古などでは結構手に入りやすい作品です。もっと読まれるべき作品だと思うので、復刊してほしいですね。

村上春樹に似た作家② 大崎善生

別れの後の静かな午後
別れの後の静かな午後
一人で酒を飲むのが好きになったのはいつごろからだろう。考えてみればここ一ヵ月の間、僕はほとんどこの時間にこの席に座り、ひたすら生ビールを飲み続けていた。(『別れの後の静かな午後』「サッポロの光」より)

村上春樹さんに似た作品を有する一人が大崎善生さんです。大崎さんは2000年に発表したノンフィクション作品『聖の青春』でデビューし、その後2002年にデビュー小説作品『パイロットフィッシュ』で吉川英治文学新人賞を受賞しています。村上さんと同じく大崎さんも早稲田大学に通い、文学青年として学生時代を過ごしたそうです。また大崎さんにとって村上春樹という存在は特別だといいます。

大崎善生さんといえば『聖の青春』をはじめとした将棋が題材となったノンフィクションや、『パイロットフィッシュ』から続く恋愛三部作が有名ですが、今回村上春樹好きに特におすすめしたいのは2004年の短編集『別れの後の静かな午後』です。『別れの後の静かな午後』の表題作ももちろん良い作品ですが、第一篇目の「サッポロの光」から読んでいて村上作品に似た心地の良さがあるのです。

「サッポロの光」は作者の出身である北海道札幌市を舞台にした短編小説で、終始落ち着いたトーンで話が進みます。町が開発されて変わっていく感じや、編集に関する仕事をする主人公は、村上さんの初期三部作を連想させます。物語を語る主人公は40代とやや年長ですが、学生時代を振り返り、仲間同士で行き場のない思いを内に秘めつつ結局はどうしようもなく離ればなれになっていくというような痛みの描かれ方もまた、村上作品に通ずるところがあります。

*『別れの後の静かな午後』は現在絶版状態ですが、こちらも中古などではかなり出回っている作品です。またKindleでも電子書籍化しているので、定価で読むことができます。個人的には表紙のデザインが素晴らしいので、紙の本で買ってしまいましたが。

村上春樹に似た作家③ 片岡義男

スローなブギにしてくれ
スローなブギにしてくれ
カウンターのなかでバーテンが腕組みをし、煙草をくゆらせていた。客もバーテンも、七里ヶ浜にむかって張り出した五面の窓ごしに、夜の海や車の流れを、ながめていた。軽くはずむ音楽が静かに聞えていた。(『スローなブギにしてくれ』「ハートブレイクなんて、へっちゃら」より)

村上春樹さんは多くのアメリカ文学から影響を受け、自らも翻訳家としてアメリカの小説を紹介していますが、それ以前からアメリカ文学像を日本に輸入した作家が片岡義男さんです。祖父がハワイに移民し、日系二世の父を持つ片岡さんは、アメリカ文化に精通し、自身の作品の中にも随所にその要素が取り込まれています。作家の高橋源一郎さんは「片岡さんって人はもしかすると村上春樹になっていたかもしれない存在だった」と語っています。

特にシンプルかつ翻訳したような文章は、デビュー当初英語で書いてから日本語に翻訳していた村上さんの文章と通ずる点があります。またサリンジャーなどのアメリカ人作家に影響を受けた点でも似たところがあるといえます。作品単位でも片岡義男と村上春樹の類似点を挙げるとすれば、例えば片岡さんの短編「スローなブギにしてくれ」で白いムスタングに乗った運転手が子猫を投げ捨てるシーンは、『海辺のカフカ』のジョニー・ウォーカーの猫殺しを思い出させるでしょう。

『一日じゅう空を見ていた』という短編集もおすすめです。収録作品「タイトル・バック」での人物の行動の描写などは、英語的な細かさがあって、どこか村上春樹作品または村上訳のアメリカの小説に似ています。「彼と彼女の物語」という一貫したテーマも馴染みやすいでしょう。

現在では大半の片岡義男作品は絶版状態ですが、先ほど紹介した「スローなブギにしてくれ」を表題作とした短編集は今でも普通に手に入ります。また著者の意向により、全著作の電子化が進行しており、公式サイトで無料で読むことができます。

しかし中古などでも気にならないという方はぜひ紙の本を手に取って見てください。『一日じゅう空を見ていた』などの角川文庫には、作品の合間に写真が挿入されていて、それがとても良い味を出しているんです。

村上春樹に似た作家④ 伊坂幸太郎

アヒルと鴨のコインロッカー
アヒルと鴨のコインロッカー
腹を空かせて果物屋を襲う芸術家なら、まだ恰好がつくだろうが、僕はモデルガンを握って、書店を見張っていた夜のせいか、頭が混乱しているせいか、罪の意識はない。強いて言えば、親への後ろめたさはあった。(『アヒルと鴨のコインロッカー』)

伊坂幸太郎さんは、言わずと知れた日本の現代作家を代表する人物です。村上ファンの中にも伊坂幸太郎は好きという方も多いのではないでしょうか。僕も村上作品を読破して以降、初めてすんなり入り込めた作家が伊坂さんでした。どの作品をとっても安定感が村上春樹並みで、文体が村上春樹に似ているともしばしば評されます

伊坂さんは若い頃に村上春樹は読んでなかったものの、大江健三郎の初期の作品からは影響を受けていると語っています。大江健三郎からは村上さんも影響を受けているという点では、近しいところもあるのでしょう。また村上さんが訳したジョン・アーヴィングの『熊を放つ』は好きだったそうです。

ハズレはないとまで言える伊坂幸太郎作品ですが、中でも『砂漠』と『オーデュボンの祈り』、『アヒルと鴨のコインロッカー』が断然おすすめです。伊坂さんの妻が『アヒルと鴨のコインロッカー』は『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』と小説の構造が近いと言ったそうです。

似ているといえるのは文体だけではありません。『アヒルと鴨のコインロッカー』の本屋を襲撃するという設定は、村上さんの『パン屋再襲撃』が頭をよぎります。また話を引っ張っていく川崎という登場人物を見ていて、『ノルウェイの森』の永沢を連想した人もいるのではないでしょうか。

そのような類似点を考えないとしても、ストーリーの面白さだけでもじゅうぶん読むに値する作家なので、未読の方はぜひ一冊手に取ってみてください。

村上春樹に似た作家⑤ カーヴァー

Carver's dozen―レイモンド・カーヴァー傑作選
Carver’s dozen―レイモンド・カーヴァー傑作選
僕は失業していた。でもいつなんどき北の方から報せが舞い込んでくるかもしれなかった。僕はソファーに横になって雨の音を聞いていた。そしてときどき身を起こしては、郵便配達夫の姿が見えないかとカーテン越しに外を眺めた。「収集」より

村上さんに似た作家を探しているなら、村上春樹によって訳された小説が一番近いという考え方もできます。言語を置き換えているだけといっても、やはりどうしても訳者の文体が少なからず作品に反映されるのは自然なことでしょう。村上訳の海外作品は数多くありますが、中でもアメリカの現代短編小説家の代表となったレイモンド・カーヴァーを抜かすことはできません。

当初アメリカ本国でもそれほど評価が高いとはいえなかったレイモンド・カーヴァーですが、日本でも決して有名な作家ではありませんでした。1983年頃に村上さんが初めてカーヴァーの翻訳を発表し、それ以来カーヴァーの全作品の翻訳を村上さんが手がけるという特別な存在です。

語弊を恐れず言えば、カーヴァーは「不思議なことが起こらない村上春樹」と言えます。つまり村上作品に出てくる日常的なシーン、リアリスティックなシーンに焦点を当てた作品群がカーヴァーの特徴です。第一作目の短編集『頼むから静かにしてくれ』や傑作『大聖堂』などがよく知られた作品ですが、まず読むなら村上さんが個人的なベストとして12作を選んだ『Carver’s dozen―レイモンド・カーヴァー傑作選』がおすすめです。一篇ずつ村上さんによる作品の解説が収録されているのも、なんとも贅沢な一冊です。

村上春樹に似た作家:まとめ

ここまで村上春樹さんに似た作家を紹介してきました。村上作品が好きなら気持ちよく読めるはず、という作家を集めてみました。

他にも『君の名は。』などで知られるアニメ監督・新海誠さんは村上さんに影響を受けたと言っています。『君の名は。』や『秒速5センチメートル』などのヒット作の映像美は、新海さん自身によって書かれた小説版でも別の魅力を持って表現されています。

また村上さんが影響を受けてきたアメリカ文学に目を向けても面白いでしょう。特にフィッツ・ジェラルドを愛読していたり、リチャード・ブローティガンカート・ヴォネガットに影響を受けてきたことも有名です。

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