村上春樹を洋書で読むなら短編集がおすすめ

村上春樹の洋書短編集

村上春樹作品を英語で読みたいと思ってる方におすすめなのが、短編集です。

世界的に有名な作家である村上春樹は、長編だけでなく短編も傑作揃いです。全作品が英語訳されている長編とは違い、洋書で手に入る短編集は一部ですが、中にはニューヨーク発の作品もあるほど短編集は早くから海外でも注目されています。

ハルキストなら長編を読みたいと思う方も多いかもしれませんが、洋書初心者や英語学習者に最適なのは短いストーリーで完結する短編だといえます。

ここでは全村上春樹ファンと、洋書を英語学習に役立てたいと思っている方に向けて、英語で読める村上春樹の短編集を全5作品紹介します。各短編集の収録作品もリストアップしています。

英語で読める村上春樹の短編集① The Elephant Vanishes/象の消滅 短篇選集 1980-1991

まず村上春樹の短編を英語で読んでみようと思ったら、『The Elephant Vanishes』が断然おすすめです。表題作の「The Elephant Vanishes」はNHKラジオ『英語で読む村上春樹~世界のなかの日本文学』で取り上げられるなど、洋書初心者にも最適な作品です。

日本では2005年に出版された『象の消滅 短篇選集 1980-1991』ですが、もともとは1993年に『The Elephant Vanishes』としてアメリカで発行された短編集です。同じくアメリカ発の『めくらやなぎと眠る女』も本書とセットで語られること多く、どちらも村上春樹の短編の世界的人気の火つけ役となりました。

<収録作品>

-The Wind-up Bird and Tuesday’s Women
-The Second Bakery Attack
-The Kangaroo Communiqué
-On Seeing the 100% Perfect Girl One Beautiful April Morning
-Sleep
-The Fall of the Roman Empire, the 1881 Indian Uprising, Hitler’s Invasion of Poland, and the Realm of Raging Winds
-Lederhosen
-Barn Burning
-The Little Green Monster
-Family Affair
-A Window’
-TV People
-A Slow Boat to China
-The Dancing Dwarf
-The Last Lawn of the Afternoon
-The Silence
-The Elephant Vanishes

・ページ数:336
・収録作品数:17
・洋書出版年:1993

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英語で読める村上春樹の短編集② After the Quake/神の子どもたちはみな踊る

『神の子どもたちはみな踊る』は2000年に日本で出版され、2002年に英語訳が発売されました。それ以来、海外で最も評価されている短編集の一つです。1995年1月に発生した阪神・淡路大震災に関わる物語群が収録されており、英語のタイトルも『After the Quake』(地震のあとで)となっています。

<収録作品>

-UFO in Kushiro
-Landscape with Flatiron
-All God’s Children Can Dance
-Thailand
-Super-Frog Saves Tokyo
-Honey Pie

・ページ数:144
・収録作品数:6
・洋書出版年:2002

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英語で読める村上春樹の短編集③ Blind Willow, Sleeping Woman/めくらやなぎと眠る女

『Blind Willow, Sleeping Woman』もアメリカで最初に出版され、3年後の2009年に日本で逆輸入的に発売された短編集です。そのため同じようにアメリカ発の短編集『The Elephant Vanishes』とセットで語られること多い作品です。こちらもぜひオリジナルの洋書として英語で読むことをおすすめしたい村上作品です。

収録されている短編は24作品もあるので、英語多読にも最適な分量だといえます。

<収録作品>

-Blind Willow, Sleeping Woman
-Birthday Girl
-New York Mining Disaster
-Airplane: Or, How He Talked to Himself as If Reciting Poetry
-The Mirror
-A Folklore for My Generation: A Prehistory of Late-Stage Capitalism
-Hunting Knife
-A Perfect Day for Kangaroos
-Dabchick
-Man-Eating Cats
-A ‘Poor Aunt’ Story
-Nausea 1979
-The Seventh Man
-The Year of Spaghetti
-Tony Takitani
-The Rise and Fall of Sharpie Cakes
-The Ice Man
-Crabs
-Firefly
-Chance Traveller
-Hanalei Bay
-Where I’m Likely to Find It
-The Kidney-Shaped Stone That Moves Every Day
-A Shinagawa Monkey

・ページ数:448
・収録作品数:24
・洋書出版年:2006

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英語で読める村上春樹の短編集④ Men Without Women/女のいない男たち

『Men Without Women』はもともと日本で2014年に出版された短編集で、2017年に英語訳の洋書が発売されています。2021年に映画化されて話題となった「ドライブ・マイ・カー」が第一編として収録されている作品です。まだ洋書として英語化されていない短編集も多く残されていますが、この『Men Without Women』から、漏れずに英語訳が出版されるという流れができつつありそうですね(次作の『First Person Singular』も洋書が刊行されたので)。

<収録作品>

-Drive My Car
-Yesterday
-An Independent Organ
-Scheherazade
-Kino
-Samsa in Love
-Men Without Women

・ページ数:240
・収録作品数:7
・洋書出版年:2017

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英語で読める村上春樹の短編集⑤ First Person Singular/一人称単数

2020年に出版された新しい村上春樹短編作品の『一人称単数』は、2021年すぐに英語訳されて『First Person Singular』として海外でも出版されました。日本で発売された短編集がこのスピードで英語訳されるというのは、これまでになかったことです。これを機に、村上春樹の短編集全てが洋書として刊行されることを願います。

<収録作品>

-Cream
-On a Stone Pillow
-Charlie Parker Plays Bossa Nova
-With the Beatles
-Confessions of a Shinagawa Monkey
-Carnaval
-The Yakult Swallows Poetry Collection
-First Person Singular

・ページ数:240
・収録作品数:8
・洋書出版年:2021

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まとめ:洋書入門、英語学習に最適な短編集は『The Elephant Vanishes』

まず一冊、村上春樹を英語で読みたい。そう思っている方にはやはり『The Elephant Vanishes』(象の消滅 短篇選集 1980-1991)がおすすめです。アメリカをはじめ世界的にも人気な作品ですし、英語教材として使用されている作品も収録されているからです。17編が収録されているので分量も申し分ありません。

単純に英語で村上春樹を味わいたいというだけの方は、自分が好きな短編集、気に入ったカバーデザインの洋書などを選ぶと良いでしょう。

まだ村上春樹の短編集は長編小説と同じく10を超える作品が出版されていますが、洋書化されている短編集は全てではありません。今後全作品が洋書として手に入ることを、いちファンとして願うばかりです。

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それでは楽しい読書ライフを!

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