ビジネス書グランプリ歴代受賞作品を読んでみた(2016-2021)

歴代ビジネス書グランプリ

2016年から開催される「ビジネス書グランプリ」の総合グランプリ受賞作品を全て読んでみました。読者の声が広く反映される「ビジネス書グランプリ」は、選書のよい基準になり、おすすめのビジネス書を知りたい方にも有益なので、ここで一覧として2016年から2021年までの歴代総合グランプリ受賞ビジネス書をまとめて紹介します。

初の開催は2016年ですが、あらゆる物事の変化が激しいこの時代において、今なお読む価値があるかどうかというレビューも付け加えていきます。

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ビジネス書ランキング・アワード

ビジネス書グランプリとは

ビジネス書グランプリ
ビジネス書グランプリ公式HP

ビジネス書グランプリ(正式名称は「読者が選ぶビジネス書グランプリ」)は、2016年に初開催されたビジネス書コンテストです。ビジネススクールのグロービス経営大学院と本の要約サイトを運営する株式会社フライヤーの主催により、2016年以降毎年開催されています。

各出版社が1社5冊までエントリ-した本に加え、グロービス経営大学院やflier(フライヤー)、協力各社が選書した書籍が選考対象となります。数ある本のジャンルの中でも、ビジネス書は特に「読者自身が『価値がある』『実用的』『有益』などと明確に判断することが可能」という考えのもと、選考方法は読者による投票に限ります。

ビジネス書グランプリ2021では、「イノベーション」「マネジメント」「政治・経済」「自己啓発」「リベラルアーツ」「ビジネス実務」の6部門での審査が行われました。

ビジネス書グランプリ公式HP:https://business-book.jp/

ビジネス書グランプリ歴代受賞作品一覧 (2016-2021)

ビジネス書グランプリ2021:『シン・ニホン』(安宅和人)

2位『本当の自由を手に入れる お金の大学』(両@リベ大学長)
3位『LIFESPAN(ライフスパン) 老いなき世界』(デビッド・A・シンクレア/マシュー・D・ラプラント)

ビジネス書グランプリ2021で、見事総合グランプリに輝いた作品が『シン・ニホン』です。この2020年に出版された書籍でも特に話題を読んだビジネス書は、ヤフー株式会社CSOを務める安宅和人さんが、専門分野であるデータやテクノロジーなどの最新の考察を体系的にまとめた一冊。

世界では「データxAI時代」の第1フェーズはすでに終わろうとしている今、出遅れた感が否めない日本はどのような位置に立っていて、今後のフェーズでどのように活躍できるかを分析的に論じています。また、そのような活躍を実現するために変えていかなければならない点について、国レベルと個人レベルの両視点から示されています。

つまり日本国内外の現状と今後の動向を学ぶとともに、そこで自分が貢献するためのヒントが詰め込まれているのです。これからの時代を生き抜くのは簡単ではありません。だからこそ日本の未来と自分の役割を必死になって考え、個人としてできることから行動を起こそう、と喚起されるビジネス書です。

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『シン・ニホン』安宅和人

ビジネス書グランプリ2020:『FACTFULNESS』(ハンス・ロスリング/オーラ・ロスリング/アンナ・ロスリング・ロンランド)

2位『売上を、減らそう。たどりついたのは業績至上主義からの解放』(中村朱美)
3位『メモの魔力 The Magic of Memos』(前田裕二)

ビジネス書グランプリ2020年総合グランプリの『FACTFULNESS』は、出版された2019年以降最も注目を浴びてきたビジネス書です。「データを基に世界を正しく見る習慣」を身につける重要性を主張した一冊。

信憑性のないネット情報からさまざまな立場から報道されるニュースまで、ありとあらゆる情報が溢れ、世界を正しく見るということがより難しくなっている現代です。つまり「自分が知っている世界」と「事実」はかけ離れている可能性すらあるのです。

本書では人口や貧困、教育などをテーマにした豊富なデータとともに、「ネガティブ本能」「恐怖本能」「焦り本能」など、世界を見誤ってしまう原因となる人間の持つ10の思い込み本能が指摘されています。

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FACTFULNESS (ファクトフルネス)

ビジネス書グランプリ2019:the four GAFA 四騎士が創り変えた世界 (スコット・ギャロウェイ)

2位『1分で話せ』(伊藤羊一)
3位『学びを結果に変えるアウトプット大全』(樺沢紫苑)

ビジネス書グランプリ2019の総合グランプリを受賞したのが『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』です。テクノロジー業界の四強、グーグル・アップル・フェイスブック・アマゾンを、それぞれの頭文字をとって「GAFA」と呼び、それらがわたしたちの生活を幸せなものにする四騎士となるのか、それともヨハネの黙示録の「(地上の人間を殺す権威を与えられた)四騎士」となるのかを問うたビジネス書。

多くの雇用を生み出し、株式市場を盛り上げてきた一方で、膨大な個人情報を収集し、プライベートに侵入していることを危惧するのは、著者のニューヨーク大学教授スコット・ギャロウェイです。 今や巨大企業となったGAFAが成功をつかみ、世界を変えて経緯、それらに共通してみられる要因を振り返り、今後「第五の騎士」になり得る企業について言及しています。そして「平凡な人間にとっては最悪な時代」と述べられているように、そのような個人がGAFA以後の世界を生き抜くために必要な武器を提示してくれています。

すでにわたしたちにとって無くては生活ができないほどに密接な関係にある「四騎士」ですが、知らぬ間にのみこまれないように、いちGAFAユーザーにとっても、これからのデジタル時代を生きるビジネスパーソンにとっても必読の一冊。

ビジネス書グランプリ2018:革命のファンファーレ (西野亮廣)

2位『スタンフォード式 最高の睡眠』(西野精治)
3位『SHOE DOG (シュードッグ) 』(フィル・ナイト)

ビジネス書グランプリ2018において総合グランプリに輝いたのが、芸人西野亮廣がビジネスパーソンとしての才能を世に知らしめた一冊『革命のファンファーレ』です。「好きなことを仕事化するしか道が残されていない」時代を生き残るための、ビジネスに欠かせない「お金と広告」をテーマにしています。

絵本というニッチな領域に飛び込んだり、作品の全部分を無料公開したり、クラウドファンディングを使って読者も作り手に変えてしまったりと、従来のビジネスの常識を覆す内容が記されています。合理的な著者が、常識を疑い新しい可能性を実際に試し、その経験談を惜しげもなく語るのが本書最大の魅力です。

2017年に出版された本ですが、今でこそ多くの人がその重要性を強調する「信用」や「ユーザーに届けるまでの商品設計」などを、すでにこのとき明文化していたことには驚きを隠せません。

ビジネス書グランプリ2017:LIFE SHIFT (リンダ・グラットン/アンドリュー・スコット)

2位『〈インターネット〉の次に来るもの』(ケヴィン・ケリー)
3位『サピエンス全史』(ユヴァル・ノア・ハラリ)

ビジネス書グランプリ2017年の総合グランプリ受賞作は、ロンドン・ビジネススクール教授のリンダ・グラットンとアンドリュー・スコットによって「寿命100年時代」という新しい生き方が提示された『LIFE SHIFT』です。「2007年生まれの子どもの半数が、日本では107歳まで生きうる」というように、人生100年時代において知っておくべき新しい知識がまとめられています。

「教育を受け、仕事をし、引退して老後を過ごす」という3つのステージで人生を歩むことが常識だったこれまでとは異なり、寿命100年時代には、教育という概念をもっと広く捉え、仕事も複数のキャリアを持ち、生涯を通して人生の選択肢を広げていくという、より多様な生き方「マルチステージ」が大切なポイントになります。

また寿命100年時代には「無形資産」をどれほど持っているかという主張も魅力です。スキルや知識、良好な人間関係や心身の健康、さらには社会の変化に柔軟に対応していく意志と能力などを意識して身につけるべきだということです。

まだ見ぬ長寿時代における人生のヒントを与えてくれる「水先案内人」的一冊。マンガ版も見事にエッセンスが抽出されている良書。

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寿命100年時代に知っておくべき「マルチステージ」と「無形資産」

ビジネス書グランプリ2016:イーロン・マスク 未来を創る男 (アシュリー・バンス)

2位『21世紀の資本』(トマ・ピケティ)
3位『HARD THINGS』(ベン・ホロウィッツ)

最初のビジネス書グランプリが開かれた2016年、総合グランプリに選ばれたのは、世界的に最も注目を集める経営者・イーロン・マスク初の公式伝記『イーロン・マスク 未来を創る男』です。。「ペイパル」「テスラ」「スペースX」「ソーラーシティ」という第一線の企業を作り上げ、金融・自動車・宇宙・エネルギーという巨大な既存分野に破壊的な影響を与えてきたイーロン。

しかしそんな輝かしい成功の裏には、当然のように無数の問題があり、さらに深刻なトラブルが追い打ちをかけるような状況が続いていたことが語られます。そして平然とリスクを取り続けるイーロンが今後も大きな問題に直面することは、何も知らない人が聞いたら笑ってしまうような超未来的な計画を立てていることを聞けば想像に難くないでしょう。

高速通信を可能にする「宇宙インターネット構想」・超高速移動を可能にする「ハイパーループ構想」・「人類火星移住計画」。少年時代よりSFの世界に没頭していたような熱量を、現実的に進める原動力はどこから来るのか。南アフリカで生まれ、アメリカに渡って起業を繰り返し、現在でも歩みを止めないイーロン・マスクという男の全てが描かれた一冊。

今後も世界的な話題となり続ける経営者について今からでも知っておきたいところです。

最後に

ビジネス書グランプリは2016年創設で若い賞でありながら、読者の投票によって選び抜かれた受賞作品は読むべき価値のある書籍ばかりです。世の中に影響を与えるほどの新しい概念が提示され、今後も長く読み続けられるであろう作品も多くあります。

またグランプリ受賞作品だけでなく、上記でも2位と3位の作品を明記しましたが、それらも読むに値する本ばかりです。ぜひ精度の高い選書の参考にしたいものですね。

それでは楽しい読書ライフを!

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