思い込みをやめて、世界を正しく見る方法【FACTFULNESS(ファクトフルネス)】

FACTFULNESS (ファクトフルネス)

世の中をどれだけ冷静かつ客観的に見ようとしても、自分の先入観や偏見というフィルターを通して、少なからず歪んだ世界が見えてしまうものです

また信憑性のないネット情報からさまざまな立場から報道されるニュースまで、ありとあらゆる情報が溢れ、世界を正しく見るということは簡単ではない時代にあります。

ぼく自身以前こんな経験をしたことがあります。仕事の取材で、福島県の第一原発の20km付近まで行くことになったときのお話です。そのときは東日本大震災から7~8年過ぎていたころで、正直に言うと、すでに被災地の現状についての関心はほとんど薄れていました。

しかし、いざ楢葉町や富岡町など立ち入り禁止区域付近まで自分が行くとなると、「放射能など命にかかわることはないか?」と心配になってしまいました。情報収集を始めても、知識のないぼくにとっては安全か危険を正しく判断することは難しいものでした。

原子力発電を稼働させ続けるか、廃止するかというのは政治的にも立場が二分することですし、どちらの意見の裏にも複雑な利権構造のようなものがある気がして、どちらを信じればいいのかわかりませんでした。

このように正しく物事を判断できなかったのは、客観的な知識が不足していたこともありましたが、今考えれば、いろいろな思い込みがぼくの判断力を鈍らせていたんだなと思います。

世界を見誤るのは、人間の持つ10の思い込み本能だと指摘するのが『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』です。見たことがある。聞いたことがあるという方も多いと思いますが、2019年1月に出版された本書は、ここ数年で最も読まれたビジネス書の一つと言えるでしょう。

そんな「ファクトフルネス」という習慣を身につけ、物事を正しく判断するには、これらの勘違い本能を認識する必要があります。

  1. 分断本能
  2. ネガティブ本能
  3. 直線本能
  4. 恐怖本能
  5. 過大視本能
  6. パターン化本能
  7. 宿命本能
  8. 単純化本能
  9. 犯人捜し本能
  10. 焦り本能

この中でも最もぼくたちの生活に身近で、より大きな影響を及ぼす本能3つに焦点を当てていきたいと思います。その本能に気づき、どのようなことに気をつけるべきかを紹介します。

ネガティブ本能

人は物事のポジティブな面よりもネガティブな面に注目しやすい、というのがネガティブ本能です。そのせいで、世界はどんどん悪くなっていると考えてしまいます。

貧富の差はどんどん広がり、テロの被害者が増え、自然災害は年々増えている、と。
しかし、ネガティブ本能こそ、10もある思い込み本能の中でも最も注意すべきものの一つです。

ネガティブ本能は主に3つの原因によって刺激されます。

一つは、「あやふやな過去の記憶」です。思い出は美化される、とよく言いますが、どんなに悲惨な昔の出来事よりも、今抱えるささいな悩みの方が重要に思えることがあります。極端に言うと、戦争をしていた時代よりも、職場での人間関係の悩みを持つ今をネガティブに捉えてしまいます。

二つ目は、「偏った報道」によるものです。ニュースというものは、悪い報道ばかりが流されます。一方で良いニュースというものはほとんど報道されません。「今日も何機の飛行機が無事着陸しました」なんてニュースはいちいち報道されません。逆に数多く運行される飛行機の中でも一機事故を起こすと、この世の終わりかのように大きく取り上げられます。

また、「状況がまだまだ悪い中で、良くなってきていると言いづらい」というものもあります。「悪い」状況下においては、「良くなっている」ことは多々あります。

身近な例で言うと、新型コロナウイルスなどがそうではないでしょうか。もし感染を抑える対策が上手く効果を出したとして、徐々に感染者数も減って、死亡率も下がったとします。しかし、「良くなっている」にもかかわらず、被害者のことや世の中のムードを考えると、「状況は確実に良くなっています」という言葉はなかなか出ないのではないでしょうか。

このような要因もあり、ネガティブ本能は日に日に強くなっています。しかし、世界を正しく見るためには、この本能をまずは認識することが重要です。

過去を美化せず、客観視してありのまま認識する努力をしましょう。今という時間はとても大切です。しかし必ずしも、過去よりも状況が悪いなんてことはありません。良いニュースは報道されないことに気づきましょう。「悪い」状況の裏では「良くなっている」事実もあるのではと疑いましょう

恐怖本能

人はみな恐怖に包まれると、判断力が鈍ってしまいます

ネガティブ本能の部分でも触れましたが、メディアは人間のこうしたドラマチックな本能を利用し、良いニュースというものを報道しません。悪いニュースのほうが興味を引き、ひいてはメディアの利益になるからです。

しかし、このような本能を利用するメディアを批判するのはお門違いです。なぜなら、「恐怖本能を利用してください」と言わんばかりに無自覚なのはぼくたちの方だからです。

衝撃的なニュースの一つに、飛行機事故が挙げられると思います。火を上げて飛行機が墜落していく映像を見せられれば、たちまち恐怖に包まれてしまうのが、人間の本能です。いまだに飛行機は怖いという認識は、このようなニュースに起因するものもあるでしょう。

しかし冷静に客観的に見るとどうでしょう。

2016年の飛行機が無事に着陸した数は、約4000万機だったと言います。一方で死亡事故は10機です。つまり、ぼくたちがメディアによって報道されるニュースは、0.000025%に過ぎません。

飛行機事故による死亡者数は、全死亡者数の0.001%です。また、自然災害(0.1%)、殺人(0.7%)、テロ(0.05%)、これらによる死亡者数の全体における割合です。

どれも1%に満たないことがわかると思います。これが多いのか少ないのか。それを判断するために厚生労働省が示す2018年の日本の死因順位を見て見ましょう。

死因順位の第1位は悪性新生物<腫瘍>(全死亡者に占める割合は 27.4%)、第2位は心疾患(高血圧性を除く)(同 15.3%)

平成 30 年(2018) 人口動態統計月報年計(概数)の概況

健康を損なうことがどれほどの影響を及ぼすか、改めて確認させられる数字です。

衝撃的なテロや自然災害に恐怖おののき、海外へ行くのはやめようという判断をする前に、まずは健康に気を使うべき理由は山ほどあるのではないでしょうか。

焦り本能

「いまやらないと、もう次はない」そんな思いが焦りを引き出します

この焦り本能によって、批判的に考える力が失われ、誤った判断につながってしまうことは往々にしてあるでしょう。

そのような焦り本能は、かつての人間の祖先には有効なものだったでしょう。ライオンから逃げて生き延びる必要があった時代にはです。

しかし、現代では、私生活でもビジネスの場でも、この焦り本能は冷静さを失わせるもの以外のなにものでもありません。

「本日限定!特大セール!」こんなことを言われると、「今すぐ買わなくては」と本能的に思ってしまうという経験は誰にでもあるのではないでしょうか。

ぼくは、不動産屋などで物件を探しているときに「この物件は人気なので、早く決めないと他の方に決まってしまうかもしれません」というセールストークが嫌いです。「まあ決まってしまうかもしれませんが、ゆっくりお考えください」のほうが後悔しない判断ができると思うからです。

もちろん、物事を迅速に判断する必要はあるときもあります。そのような判断ができないのは、また別の原因があるので、それについてはこちらで詳しく解説しています。

また、仕事の場でも、「このタスクは今日までに終わらせろ」という無理難題があれば、焦り本能が働いてしまいます。それさえさなければ、正確により早く終わらすことができたかもしれません。

この焦り本能を抑えるためには、とてもシンプルな心がけが大切です。

今すぐ決めなければならないことなんてめったにない、と知ることです。焦ってしまうときこそ、冷静に情報を見極めましょう。

最後に

豊富なデータとともに、このような本能を抑え、正しく世界を見るコツを教えてくれる『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』。ここでは、10の本能のうち、3つのみを取り上げましたが、ぜひとも全てに目を通してもらいたいと思います。必ず、自分の気づかなかった思い込みがあるはずです。

『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』を行動にうつす

本書『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』に学ぶべき、明日からはじめたい行動内容は、

ニュースなどを見るときに、ネガティブ本能を自覚する

です。

「あやふやな過去の記憶」「偏った報道」「状況がまだまだ悪い中で、良くなってきていると言いづらいこと」が理解できていれば、違ったものの見方ができるはずです。報道に踊らされることもないでしょう。

▽他にもオススメしたい本がたくさんあります!▽

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