スタンフォードで教える20代で起業家精神を養う方法

20代の起業家精神

今回はスタンフォード大学の集中講義を書籍化した、ティナ・シーリグ著『20歳のときに知っておきたかったこと』をもとに、20代で起業家精神を養う方法を紹介したいと思います

世界トップのスタートアップ企業が集まり、今や世界を席巻する企業を数多く生み出したシリコンバレーの中心に位置する名門こそがスタンフォード大学です。そのスタンフォード大学でのティナ・シーリグのプログラムは、全米の起業家育成コースのなかでもトップクラスの評価を得ているといいます。

起業家と聞くと少しハードル高く感じてしまう方もいるかもしれませんが、本書では発想の転換一つで大きく物事の見方を変えてくれるような思考法や実例が盛り込まれているので、日常の生活の中で起業家精神を養うことは大いに可能です。

本書で主張されている内容を一点に絞るなら「自分の可能性を限定するな」ということだと思います。例えば簡単な例題を問いてみましょう。

いま手元に5ドル(500円相当)あります。それを2時間でできるだけ増やすとしたらどうしますか?
少し時間をとって考えてみましょう。その答え次第であなたの思考が自由に開けたものなのか、それとも現実に閉じ込められているかがわかります。
そして現に世界にはその5ドルを何十倍にもする発想を持つ生徒がいます。2時間という制限がなければ、大きなスタートアップ事業を成功させる若者も出てくるでしょう。
予想できる道を外れたとき、常識を疑ったとき、そしてチャンスはいくらでもあり、世界は可能性に満ちていると考えることを自分に許可したときに、飛び切り面白いことがおきるのですから。
そう語る著者は、20歳さらには30、40でも知りたかったことであり、50歳の今もたえず思い出さなくてはならないことがあると言います。
特に20代は誰もが起業家精神を養えるときです。具体的にどのような方法で世の中をリードしていく起業家精神を養うことができるかを見ていきましょう!

1. 先入観を持たない

自由な発想をする起業家にとって欠かせない素養の一つが先入観を持たないということです。人間誰しもが思い込みやバイアスを持っていて、これは一定程度しかたのないことです。しかしそんな中でも先入観を排除し、違った視点で物事を見るトレーニングはできます。

著者は実際にスタンフォード大学の生徒にこのような課題を出したといいます。

①生活の中で困っていることを一つ挙げる
②身の回りにあるモノを何でもいいから一つ適当に選ぶ
③どうすればそれを使って困っていることを解決できるかを考える
このようなお題にあなたはどう対応するでしょうか。一見関係なさそうなモノ同士を関連づけるこの訓練には、まさに先入観に左右されない自由な発想が必要となります。
ある生徒の例を挙げ、上記のお題に答えを一致させていきます。
①アパートの引っ越しで大型家具を運ぶ方法が見つからない
②何週間か前のパーティで余った一箱のワインケース
③ネット上で「家具を運んでくれたら、お礼にワイン一箱を差し上げます」と投稿
この解決策で数時間もしないうちに、家具はすべて運び出されたといいます。家具を運び出す手段としてのワインケース。そのまま単純に用途を考えても、一見無理があります。
しかしそのワインケースを報酬として、誰かの力を借りるというのは先入観を持たない発想だといえます。
あすどくくん
また先入観やバイアスを取り除く方法として、「メタ思考」も推奨したいです。これは細谷功さんの『メタ思考トレーニング』から学んだもので、「あるものを一つ上からの視点から客観的に見る考え方」です。

2. 常識を破る

20代にとって起業家精神を養うのに重要なポイントが、常識を破るです。「1. 先入観を持たない」とも関連する部分ですが、常識に捉われない思考を育む必要があります。

常識はわたしたちの世界観のなかにしっかりと根づいていて、なかなか気づかないことが多いのです。ただ、粘り強くやれば、目の前の選択肢を新鮮な目で見られるようになります。

世の中で「常識」と言われているものは、誰かが決めたルールでしかありませんし、それは時代や状況によっても変わってくるものです。何か一つの凝り固まった「常識」を持つと、何事も「常識だから」という言葉で終わってしまいます。これは思考停止にほかなりません。

ここでも常識を破るのに最適な訓練方法があります。

常識とされておりことを洗い出し、それを全て覆す
です。当時衰退産業と言われていたサーカス団の常識のことごとく逆を行って、大成功をおさめたシルク・ドゥ・ソレイユがまさにいい例でしょう。
それまで伝統的なサーカス団と言えば、「動物による曲芸」「安いチケット」「けたたましい音楽」「ポップコーン」という常識がありました。その常識の逆を行く、「動物は登場しない」「高額なチケット」「洗練された音楽」「ポップコーンはなし」という発想の転換により、サーカス業界の常識を一変させてしまいました。
既存の「常識」をリストアップする→次にその逆を考える→残しておきたいものと変えたいものを選ぶ
これが常識を破り、新たなアイデアを生み出す一つのプロセスです。

3. 自分で可能性を広げる

わたしたちは、自分で自分の監獄を作っているのです。互いにルールを課し、決まった役割を押しつけています。限りない可能性に満ちているのに、そこに踏み出そうとはしません。

20代のうちに自分の可能性を限定せず、できるだけ広げておくというのも最重要ポイントの一つです。しかし自分の可能性を狭めるのはいつだって自分であり、その自分にはめる枠というのはずっと強制力の強いものだと著者はいいます。

限界を作らないための具体的な訓練としては、このような方法があります。

①設定した課題の解決策として、最高の案と最悪の案を考える
②最高の案はシュレッダーにかける(捨てる)
③最悪の案を練り直して最高の案にする
最悪の案を最高の案にするなんて無謀だと思う人は「自分の可能性は無限でどんな状況からでも成功を掴みとれる」という可能性なんて感じることはできないと思います。
著者が企業などで行った例として一つ面白いものを紹介します。
ある企業で「南極でビキニを売る」という最悪の案を考えました。それをどう変えたか。「ビキニを着るか、さもなくば死か」というキャッチフレーズで、ダイエットしたい人たちを南極旅行に連れて行くという企画に変貌させたのです。過酷な旅が終わる頃には、ビキニが着られる体型になっているというわけです。
これはとても学びの多い訓練だと思います。著者はこう振り返ります。
一見、バカげていたり、愚かしく思えたりするアイデアにも、少なくとも一粒の実現可能性があることを示しているからです。
面白いアイデアを生み出す方法として実用的なだけでなく、自分個人としてもじゅうぶん応用できる方法ではないかと思うのです。

4. 失敗リストを作成する

できるだけ多く失敗し、その経験から多くを学ぶことが20代にできる特権です。

著者は実際にスタンフォード大学でも生徒に、失敗リストを作成するよう義務づけていると言います。自分が遂げてきた成功を洗い出すことは一般的にやられていることかと思います。しかし失敗にも目を向けようというのです。

・私生活や仕事上、学校などで犯した主な失敗をまとめる
・その経験から学んだことも書く
この失敗を認識することと、そこから何を学んだかを考えることという2点が重要です。新しいことに挑戦するとき、自分の能力を伸ばそうとするとき、失敗は必ずといっていいほど付きものです。
本書によると、タイでは失敗したら名前を変えてまで人生をやり直すという文化があったり、スウェーデンでは会社が倒産すると経営者は債務から逃れられないという文化があるそうです。
一方で日本はどうでしょう。失敗は悪いもの、周りの目も気になるという人もいるかもしれませんが、実はそれは自分の思い込みにすぎません。一体何を失うというのでしょうか。20代でする失敗はまだまだ損失も小さくて済みます。

もし失敗したとしても、重要なのはそこからいかに早く立ち直り、そこからどのような行動を起こすのかです。大きな失敗から見事復活を遂げたことで有名なのが、Appleの創業者・スティーブ・ジョブズでしょう。

Apple最高の作品マッキントッシュを発表した一年後に創業者であるジョブズはクビになってしまいました。しかしクビになったことで、より自由によりクリエイティブになったといいます。そうしてピクサーという今や世界トップのアニメーション・スタジオとして知られる会社を興し、この時期に結婚もしました。最終的にはピクサーとともにジョブズはAppleに復帰することができました。

5. 情熱xスキルx市場

成功の秘訣は情熱であり、20代のような若さではその情熱も武器になります。しかし情熱だけでは足りないと著者は言います。

情熱は出発点に過ぎません。自分の能力と、それに対する周りの評価を知っておくことも必要です。とても好きだけれど、必ずしも得意ではないことを仕事にしようとすると、悩みが深くなります。

つまり成功するためには、これが好きだという「情熱」人より得意な「スキル」それを必要としてくれる「市場」をセットで考える必要があります。

そうは言ってもやはり自分の好きなことというのは、何かを始めるきっかけになりますし、問題に直面したときにも大きな原動力になります。

ここで重要なのは、「好き」と「得意」は区別して考えなければなりません。まずは自分の好きなことを見つけることがスタートと言えます。

「市場」に関しては、どんどんハードルが低くなってきているように思えます。一見ニーズがなさそうなニッチな分野でも、一定数のファンは必ずいます。そこで情熱や圧倒的なスキルや知識をもって続けていれば、「なんだかあれ面白そうだな」と人やお金が集まってくることも珍しくありません。グローバル化する社会では、市場は日本の1億ちょっとだけでなく、世界の70億以上もの人をターゲットにすることができます。

そのような時代では、なおさら自分の「好き」「情熱」に目を向ける重要性は高くなるはずです。

あすどくくん
「自分の好きなことは何か?」という問いに答えられない人は意外と多いはずです。ぼくもその気持ちはよくわかります。そのヒントが得られる本をまとめたので、もし見つからないという人は参考にしてもらえると嬉しいです。「好きなこと・やりたいことが見つかる本 【7選】

いかがでしたでしょうか。何かに挑戦したい、大きなことを成し遂げたい、社会のために貢献したいというようなことを考えている方にとっては必須となる起業家精神を養うきっかけとなれば嬉しいです!

まずは「先入観を持たない」「常識を破る」ための訓練から始めてみましょう。必ずあなたの視野を広げるのに役立つはずです。

本書『20歳のときに知っておきたかったこと』では豊富な実例とともに、起業家にとって大切なマインドセットの本質が学べます。この記事を読んでいいなと思った方は、ぜひお手にとってみてください。

それでは楽しい読書ライフを!

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