【Why型思考とアナロジー思考とは】メタ思考が必要な理由と習得方法

『メタ思考トレーニング』細谷功

もし仮に今後、AIが全て職業に取って代わり、人間が働く必要がない時代が来たときに、それでも必要であり続ける能力とはなんでしょうか。

コンピュータやプログラミングの知識でしょうか。コミュニケーション能力でしょうか。

いや、そのような知識やスキルすらもAIが代替してしまう可能性は大いにあります。
ここでは、もっと根本的な思考について目を向けてみます。

どんな時代も必要なくなることは考えにくいもの。それは、メタ思考です。

メタ思考とは、あるものを一つ上からの視点から客観的に見る考え方です。そんなメタ思考について詳しく語られている本が、細谷功さんの『メタ思考トレーニング 発想力が飛躍的にアップする34問』です。

本書をもとに、メタ思考とは何かということを、メタ思考の重要性と身につけ方を紹介していきます。

メタ思考が必要な理由

メタ思考が重要な理由は大きく分けて三つあります。

一つ目は、成長するための気づきを与えてくれるという点です。自分がいかに知らないか、いかに気づいていないかということ(いわゆる無知の無知)に気づける(無知の知)点です。

二つ目は、思い込みや思考の癖から抜け出すためです。思い込みを捨て、自分は間違っているかもしれないと疑うこと。視野の狭さからくる思考の癖に気づくこと。それがメタ思考の二つ目の意味です。

そして三つ目が、一つ目と二つ目で得た気づきを創造的な発想につなげるという点です。

このメタ思考の三つのメリットを最大限に享受するために、以下のような段階を踏んで、あるものを一つ上からの視点から客観的に見る考え方を身につけていきましょう。

無知の知

メタ思考を実践する上での最初のステップが無知の知です。これは哲学者として有名なソクラテスが唱えた概念ですが、この無知の知こそが最も難しいポイントだと言えます。

なぜなら、無知の知の前段階は無知の無知、つまり「気づいていないことに気づいていない」状態だからです。知識が豊富だと思っている人や、自分の価値観を曲げることのできないような人は要注意ですが、まずは「自分はまだ知らない(気づいていない)」ということを自覚することからはじまります。

「無知の知」を実践するために重要な点は、何か理解できないことや自分の価値観と合わないものに対して、「相手がおかしい」と思うのではなく、「何か自分の理解できない世界がある」と思ってみるということです。

相手を変えるのではなく、自分から変わるという『7つの習慣』のインサイド・アウトの概念にも似ていますが、いわば時代を超えた人類の真理ともいえることでしょう。

この「無知の知」を実践できたなら、あとはメタ思考の二大要素である、Why型思考とアナロジー思考を身につけるのみです。

Why型思考

Why型思考を簡単に説明すると、「なぜ?」という疑問詞を投げかけることで物事の本質に迫っていく考え方です。

よく問題を分析するときや文章を書く時に5W1Hを考えることが大切ということが言われますが、そのような疑問詞の中でもWhyだけは特別です。

これら(Why以外の疑問詞)は「与えられた問題をどのように解くか」のヒントを教えてくれますが、「そもそも問題は違うところにある」ことを教えてくれる可能性があるのはWhyという言葉だけなのです。

まずWhyを考えることで、物事を抽象的に、つまり一段上のレベルで考えることができます。逆にその他の疑問詞(WhereやWhen)などは物事を具体的にすることしかできません。

また、Whyだけ繰り返すことができるのです。なぜその問題は起きたか?ではその原因が生じるのはなぜか?ということを繰り返し深掘りしていくことができます。

Whyは二つの方向で「時間を超える」ことができます。過去においては、何か結果に対して「なぜ?」を問いかければ原因を特定することができます。これは一般的に浸透している考え方です。

同時にWhyは未来においても手段に対して目的を明確にすることができます。この未来におけるWhyこそがここで主張したいポイントで、Why型思考の最大の特徴は「上位目的を確認すること」にあります。

この上位目的の確認は、日常生活から仕事にいたるまであらゆる場面で役に立つ考え方です。

例えば、あなたがコピー機メーカーの営業という立場で、取引先に「新商品を紹介しに来てください」と言われたとします。

ここで言葉通りに取引先のニーズを満たそうとすれば、新商品の新機能やラインナップ、価格などをしっかりまとめて相手に提案するでしょう。そこには「相手が新商品を買ってくれるかも」と考えるのが自然です。

しかし、気合いを入れて新商品の紹介をしに行っても、結局取引先は「ふーん」という反応で終わってしまうこともあるかもしれません。ビジネスコンサルタントである著者の細谷さんはこのようなケースは珍しくないと言いますし、相手の言われた通りにしたのに、上手くいかないことって誰でも一度は経験したことあるのではないでしょうか。

ここでいわゆる仕事ができる人とできない人の差が生まれるのだと思います。

ではできる人はどうするかというと、Why型思考で上位目的を確認し、相手の本当のニーズを深掘りして考えます。

なぜ「新商品を紹介しに来てください」と言ったのか?と考えると、買う前提なのだろうかという推測ができます。ではなぜ買いたいのか?という問いにはいくつもの理由が考えられます。例えば、

  1. コピー機が古くなったから交換したい
  2. 今使っているメーカーが、トラブル時の対応を丁寧にしてくれないから、乗り換えたい
  3. 来年度の予算を確保するために、経費を使いたい

など「新商品を紹介しに来てください」という言葉の真意は複数考えられます。そしてどの理由かによって、こちらがすべき提案ももちろん変わってくるでしょう。上記それぞれの解決策を考えると、

  1. 単に低コストで満足に使ってもらえる機種を提案する
  2. 他社比較をした上で、自社メーカー品を提案する
  3. 支払い方法のオプションや維持費なども含めたトータルコストまで伝える。または、コピー機購入以外にも「お金を使う」という点で提案できるかもしれない

というような提案ができるかもしれません。相手の本当の目的は何かという上位目的の確認を、Why型思考で習慣にすることの重要性がわかって頂けたでしょうか。

目的さえ明確になれば手段は他にも考えられるかもしれないということです。あなたも必死に英語を勉強していたり、プログラミングを習得しようとしているかもしれません。しかし、それらは手段でしかないのです。「なぜそれをしているのか」という答えを出し、その目的を達成するためには、意外と他の方法のほうが適しているということもあるわけです。

アナロジー思考

メタ思考のもう一つ重要な思考方法、それがアナロジー思考です。

アナロジーとは、類推(類似のものから推論すること)です。要は、似ているものから借りてくるということです。

アナロジー思考とは、抽象化という手段でメタに上がり、遠くから借りてきて、斬新なアイデアを生み出すことです。

アナロジー思考の基本にあるのは抽象化の考え方です。

抽象化とは、複数の具体的な事象に高次の共通点を見つけて一般化することです。そこで見つけた共通点を基にして一見まったく異なるように見えるものをつなげることで新しい発想を生み出すことができるようになります。

ここで勘違いしてしまいやすいのですが、アナロジーはパクリとは違います。パクリというのは、目に見えるような抽象度の低い具体的なレベルでの真似です。

一方で、アナロジーは目に見えない類似性やもの同士の関係性や構造のレベルでの類似性を用いることに他なりません。

アナロジーの思考プロセスは抽象化と具体化の組み合わせで成り立ちます。実際にどのような考え方をするのか、具体的に見ていきましょう。具体と抽象という考え方は非常に重要です。細谷さんのこちらの本で理解を深めることができます!

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『具体と抽象』細谷功

例えば誰でも経験のある自転車の練習を、英語学習に活かせるかどうかを考えてみましょう。

まずは自転車の練習について、具体的な事象をリストアップします。

  • 父親に支えてもらっていた
  • 補助輪を一つずつ外していった

などが上がるとします。次にこの具体的な事柄を抽象化してみましょう。「補助輪を一つずつ外していった」ということについて抽象化をすると、

  • 左右のバランスを調整することが重要
  • はじめは付いているが、片方ずつ取っていくことができる

という本質が抽出できるかと思います。最後にこのように抽象化したものを、他の分野に再度具体化して応用していきます。

  • 左右のバランスというのは英語学習においては、スピーキングとリスニングが当てはまるな。
  • リスニングとスピーキングは両方に効果を及ぼし合うのでバランスが重要だ。
  • この二つのバランスの癖を考慮しながら、各々をトレーニングするためのアプリなどのツールを高い、段階的に外していこう(辞書などの使用を控えていってみよう)。

などというヒントを得られます。

このように、ある物事を抽象化して、他の分野に応用することこそ、アナロジー思考の本質です。

この考えは、前田裕二さんの『メモの魔力』で紹介されているメモ術にも似ていて、そちらも合わせて確認すると理解力が段違いに深まります。こちらに詳しくまとめてあるので、まだ『メモの魔力』を読んだことのない方は、ぜひ参考にしてください。

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この具体→抽象→具体というアナロジー思考のプロセスにおいて、重要なポイントがあります。それは、良いアナロジー思考は、具体と抽象のギャップが大きいということです。

先ほどの自転車の練習と英語学習の例で言えば、「父親」を「他の人」と言っていたり、「補助輪」を「サポート」と言っていた場合、元の言葉が少し抽象的なので、最終的に英語学習に応用するときに、つまらないアイデアしか出なくなってしまう恐れがあります。補助輪のバランスの例も、「サポート」と言っていた場合出なかったわけです。

このようにそれぞれのステップで、

  • 元の言葉の特徴を具体的に抽出する
  • 思い切って抽象化する
  • 再度、転用先ならではの言葉にまで具体化する

というようなことが重要になります。

最後に

本書には複数のものの共通点を見つけるなどのお題がいくつも掲載されています。アナロジー思考は訓練によって鍛えられるものです。

例えば、「ポイントカード」と「パスワード」の共通点はなんでしょうか。そこから生まれるアイデアはなんでしょうか。

「水」と「安全」は何が共通しているでしょう。

このような問題を通いて、実践的にアナロジー思考ひいてはメタ思考を身につけることができるのが、『メタ思考トレーニング 発想力が飛躍的にアップする34問』です。

細谷さんの著作は、今後を生き抜く上でいかに自分の頭を使うかということを学ばせてくれます。『考える練習帳』という本はぼくも度肝を抜かれた本です。こちらについても、参考にしてみてください!

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