『考える練習帳』細谷功
「考える」世界、「考えない」世界
あなたはどちらの世界に行きたいですか?
さて今回は、少しやばい本に出会ってしまったのでご紹介します。
最近は「自分の頭で考える」というテーマを軸に読書を進めていて、
その本の「特に使えるな」、「ためになるな」という部分を抽出してきました。
これまで読んだ全ての本について記事を書いているわけではありませんが、過去書いた本からはいずれも学ぶところは多分にありました。
しかし今回は「出会った」と思ってしまいました。それが、細谷功さんの『考える練習帳』です。
本書には「考える」ことのメリット、実際にどう考えればいいかということが40項目以上にも渡って記載されていますが、決して数年で廃れてしまう付け焼き刃的なテクニック本ではなく、本質的な「思考」についての本です。
まずはあなたが「考えている人」か「考えていない人」かの「思考回路チェックリスト」を試してみてください。
YesかNoでお答えください。
1 わからないことは何でもネットで入念に調べる
2 常に売れ筋や人気商品を購入する
3 「ミスが少ない」ことがプロの絶対条件である
4 目上の人の意見は素直に聞いてそのまま実行する
5 規律やマナーを重視する
6 準備が周到にできるまでは行動しない
7 「好きなようにしていい」といわれると不安に感じる
8 お金と数字に強い
9 常識を身につけていない人は困る
10 協調性があり、上司や先輩にかわいがられる
これはYesが多いほど「自分の頭で考える」のと逆の思考回路の傾向があるというものです。7つ以上Yesの場合は、本書は自己否定にもつながりかねません。
ちなみにぼくは7個Yesでした。
案の定、本書はぼくにとって衝撃的なものでした。
まずなにが衝撃的だったかというと、改めて「考えてない」側の人間である、「考える」ということは決して簡単ではない、と認識させられたということです。
「考える」ためのヒントをもらおうと何冊も本を読んできては、「なるほどな、勉強になるな」と腹に落とし込めた気になっていました。
しかし「腹落ちした気になっていた」だけであって、「自分の頭で考える」ということとは遠く離れたものでした。
本を読んで、噛み砕いて、それが地肉になるまで実際に「考える」ことに割く時間が圧倒的に足りなかったのです。
手段の目的化、つまり本を読むことが目的になりかけていたのです。
さあそれではいかに「自分の頭で考える」側の人になれるのか、しっかり噛み締めながら見ていきましょう。
「考える」第一歩、気づく
まずは「無知の知」から始まります。
「無知の知」とは哲学の父ソクラテスの有名な言葉です。
知らないということを知っている(認識している)ことを指しますが、これが考えるということの基本であり第一歩です。
「考えない」人というのは、知らないということにすら気づいていない(または知った気になっている)のです。つまり無知の無知です。
ではどう無知の無知から脱却し、無知を認識することができるのでしょうか。
疑う
まずは無知を知るために最も重要なことは「疑う」ことです。
あらゆることを疑う必要があります。既存の規則やルールにしたがっているということは思考停止を表します。「ルールで決まっているから」「常識だから」というのは「考えてない」人の口癖です。ルールや常識といったものはその時代、その場合には適切だったのかもしれませんが、時代が流れ、状況が変わっていくにつれてそのルールや常識はもはや不適切なものかもしれません。それを疑いもしないことは「無知の無知」でしかありません。
また自分自身のことも疑う必要があります。自分の意見は相手の意見を考えたものであるか、自分の経験のみに基づく部分的なものでないか。
自己矛盾は往々にして起こります。「言葉より実行だ」という「言葉」。「あの上司はいつも人のせいにするんだよ。あんな上司だから、うちの部署の成績は悪いんだ」という「人のせい」。
このような矛盾を起こさないためにも「疑う」必要があるのです。
俯瞰して部分ではなく全体を見る、自分を客観的に見ることで疑うことが重要です。
疑うという第一歩を踏み出した上でさらに「考える」意識を起動させ、習慣化させましょう。
見えないものをつなげる
ぼくは本書の肝はここだと思っています。
「見えないもの」をつなげることで考える力を鍛えるというものです。
「見えないもの」をつなぐものは関係性とも言えますが、代表として手段と目的、原因と結果、具体と抽象などが挙げられます。
「見えないもの」というのは例えば上の関係性で言うと、目的であり、原因、抽象です。
逆に手段や結果、具体というものはわかりやすく、見えやすいものです。一方、なぜそれをするのか(目的)、なぜそうなったのか(原因)というものは見えにくく、わかりにくいものです。
ここでは手段と目的、原因と結果について紹介します。(抽象と具体についても本書のメインディッシュクラスに面白いパートでしたが、ここでは割愛させてください。本書で読んでほしいです。ほんとに。)
それを考える上で重要かつ最強のツールがWhyという疑問詞です。
トヨタはトラブルの原因を5回のなぜの繰り返しによって解決するという有名な話があります。
なぜその問題が起きたのか、ではなぜその原因は生じたのか、、、というふうに繰り返すことで物事の本質により近づくことができます。
「なぜ」による上位目的の確認
上位目的の確認を日々することで「考える」クセをつけましょう。
例えば、上司に「あの机オフィスの外に出しておいて」と依頼されたとします。そのまま実行するなら言われた通り、机を部屋の外に出しておくだけです。一方なぜ机を外に出して置く必要があるのか、その依頼の上位目的を確認したら「明日の来客に備えるため」だったとします。そうしたら他にも外に出すべきものに気づけるかもしれませんし、逆にその部屋に用意すべきものを持ってくることができます。または、違う空いている部屋を使うべきかもしれません。もしくは、そもそも机があったほうが便利なケースもあるかもしれないので机はそのままにしておくべきかもしれません。
このように言われたままやることと、その上位目的を確認することとでは、最終的な結果には大きな差が生じることがわかったと思います。これはどんなに小さな指示でも日々上位目的を考えることは訓練になります。
「考える」ことの注意点
さらに今回「考える」ことは結構勇気がいることだなあと思いました。いいことばかりではないかもしれないということです。
相対的にみて、「考えない人」が圧倒的多数のこの世界では「考える人」はマイノリティになりえます。
「考える人」は空気を読まない人、煙たがられる人かもしれないからです。
みんなで解決しようとしている問題について、そもそもその問題自体は正しいのかを問う場面がくるでしょう。「考えない人」から見るとそれは「空気を読まない」行為に映ります。ここまでやってきたのに今さらそんなことを言うなよ、というわけです。しかしその上位目的を確認し、そもそも意味のない問題を解決しようとしているなら「考える」べきではないでしょうか。
また上位目的のためだとしても「なぜ?」というのはあまり良い受け取られ方をしません。上司の指示に対して「なぜそれをするのですか?」というと少し歯向かっているように聞こえてしまうかもしれないですし、「なぜ?」を繰り返すとなんだよこいつ的な目で見られるかもしれません。
あえてそんな煙たがられることはないので、遠回しに聞いた、聞き方を工夫することも必要かもしれません。その場その場でどのような対応をするか、ということも「考える」ということです。
また本書のなかには各章の最後に考えるための練習問題が用意されています。「考える世界」に正解がないように、この練習問題にも正解はもちろん、解答例すら掲載されていません。自分の頭で考え、ずっーともやもやすることもまた「考える」ためには必要なことです。
まとめ
- 知っている気になっているだけかもしれないということを認識する
- 自分も含めあらゆることを疑う
- 上位目的を考える
最後に
いいことばかりではないかもしれませんが、ぼくは間違いなく「考える」側の人間になりたいです。未来について「考える」こともせず、AIに仕事を代替されてしまう「多数」にはなりたくありません。
細谷さんも、自分の勉強や仕事に潤いを与え、日々の生活も楽しいものにならなくてはそもそも考える意味がありません。と言っています。
考えることで100%主体的な楽しい毎日を過ごして行きましょう。
それでは明日からも楽しくいきましょう!
▽他にも細谷功さんのおすすめの本をチェック!▽
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