「もう少し速く本が読めたらなぁ…」
と思っている方の力になれると思い、伝えたいことがあります。
それは「今より少し速く」本が読めるコツです。これは速読術なんてたいそうなものではなく、速読本などでよく聞く「10倍速く読めるようになる」というタイプの速読でもありません。
今回紹介する速読法は、今まで変わらない内容理解度を保ち、少しスムーズに本を読みやすくする「やや速読」くらいのイメージです。
ぼくは年間150~200冊ほどの本を読みますが、その全ての本の感想が言えます。それは安定して速いスピードを保った上で、本を熟読しているからです。しかし、ぼくももともと本を読むのが速いほうではありませんし、ましてや「速読家」の方々と比べると今でも速さでは勝てないでしょう。
一方で、無理をせず、内容も味わった上で、少しだけ速くすることなら誰にでもできると思うのです。この「今より少し速く」読むために、ぼくがこれまで実践してきて効果的だった「やや速読」の方法を紹介していきたいと思います。
速読の目的
「少し速く」本を読むための具体的な方法を説明する前に、まずは一般的な速読とここで紹介する「やや速読」の目的について考えてみましょう。
一般的な速読の目的
一般的に言われる速読(○倍速く読める系)の多くは、普通の読書術と同じレベルの理解度を保つことを目的としません。「普段は3時間かかる本を、10分で読めるようになる」という速読で、3時間読んだときの理解度に追いつくことは不可能です。
このような速読の目的は大きく分けて二つです。
一つは「本の選別」です。その本を時間をかけて読むべきかの判断をするために、5~10分くらいで下読みして、二周目以降で熟読するに値する本かを判別する。これが一般的な速読の目的の一つです。
もう一つの速読の目的は、「重要箇所のピックアップ」です。本全体をくまなく読むのではなく、全体をさらっと把握しながらも、最重要ポイントや自分の関心のある箇所を見つけて重点的に読むものです。「大まかな全体の理解+一部の深い理解」というイメージです。
やや速読の目的
今回紹介する「やや速読」の目的は、これまであなたがしてきた読書のそれと変わりません。もともと読書に慣れていない方や、遅読家の方がこの「やや速読」を実践すれば、数倍の速さで読むことができるかもしれません。しかし「やや速読」が目指すのは、あくまで普通に読んだときと同じ理解度で、少しだけ速く読むことなのです。
具体的なスピードを示すなら、あくまで参考程度ですが、3時間かかる本を、2.5時間~2時間くらいで読むイメージです。
この「やや速読」は魔法のようなスピードアップではなく、しっかり内容を理解することができるのと、読書や速読の初心者でも実践できる難易度の低さに重きを置いているのが特徴です。
速読に適した本と適さない本
速読や「やや速読」をするにしても、どのような本にも最適な読書法というわけではありません。速読にも、向き不向きの本があります。
速読に向いている本
速読に向いている本は、例えばビジネス書や実用書などです。全てを読むことがなくても、前後関係があまりなく、章ごとに理解できるような本は速読に向いています。新聞や雑誌なども速読には向いています。
つまり情報収集が目的の読書は、速読と相性がとてもよいといえます。
速読に向かない本
一方で、速読に向いていない本は小説などの読み物系です。最初から最後まで流れにそって読まないと、ストーリーがつながらないし、楽しめないからです。語学などの学習書もほぼ全ての内容を知識として身につけることが前提なので、速読には不向きです。コツコツやるしかないのです。
「やや速読」では、小説でも少し速く読めるコツはいくつかあるので、とにかくたくさんの本を読みたいという方にも参考になると思います。
少しだけ速く本を読む速読術
速読のコツ① 声に出して読まない
本を読むときに、少しだけ声に出してしまってしませんか?国語の授業などで、本を音読することが習慣になっている人は結構多いです。大きな声でなくても、ボソボソとなんとなく声に出している自覚のある人は、それをやめましょう。
頭で文字を認識するだけの場合と、声に出して読むのとではスピードが全然変わってきます。声に出さず、スーッと目で追っていくだけの方が読書スピードは速まります。実感してみてほしいので、ぜひ時間を計ってみてください。
音読して味わう読書術もありますが、「やや速読」には不向きなので、気づいたら意識してやめましょう。
速読のコツ② 心の中でも黙読もしない
上述した「声に出して読まない」ということが実践できている人でも、実は心の中で黙読していることがあります。声には出ていないだけで、心の中で読み上げている状態では読む速度は落ちます。これでは音読している速度とあまり変わらないからです。
なかなかこの癖を直せず苦労することもあるかもしれませんが、コツとしては「目だけでスーッと流していく」ようなイメージです。「文字を頭で理解する」ともいえるでしょう。
まだ心の中で黙読してしまっているな、と思ったら何度でも「目で追え」と自分に言い聞かせてください。
速読のコツ③ 目次を活用する
本の全体的な内容が把握できていると、読書スピードも速くなります。その内容の把握方法として最適なのが、どの本にもある目次の活用です。「タイトルよりも具体的で、本文よりも抽象的」というちょうどいい濃度で書かれているのが目次は、その本の重要事項を理解する手助けをしてくれます。
目次はだいたい「1章. 〇〇について」という大見出しと、その章の中の「1-1. □□」「1-2. △△」というような小見出しで構成されています。大見出しを見ておくだけで、大まかな本の主題は把握できますが、小見出しまで目を通しておくことで、本の内容の予測を高い精度で行うことができます。
一回読んでしっかり理解できなくても、目次を三回ほど繰り返してみると、なんとなくわかってきます。
速読のコツ④ まえがき、あとがきを読む
目次と同様に、本文を読む前に見ておきたいのが「まえがき(はじめに)」と「あとがき(おわりに)」です。まえがきには本の内容の要約や著者の主張、姿勢などが端的に書かれています。あとがきには本の結論や著者が本当に言いたいことが書かれている場合がほとんどです。
これらを把握した上で読むと、いきなり本文を読むよりも、内容理解の深さも速さも格段に異なります。あとがきの後に「解説」などがついてることもあるので、その場合は合わせて読んでおきましょう。
小説などネタバレを避けたいというような本でない限り、この方法はどのジャンルの本でもオススメです。
速読のコツ⑤ 一回で長めの時間続けて読む
本を読む速さを重視する場合、時間の使い方も考えておきましょう。本を読むときの時間の使い方は二つあります。長い時間をかけて一気に読むか、スキマ時間を活用してこまめに読むか、です。
「やや速読」の読書に適しているのは前者の時間の使い方です。たしかにスキマ時間の活用は、忙しい人が読書をするのには欠かせません。一方で短い時間だと、「やっと乗ってきた」とうところで中断せざるを得ません。
一冊の本を1~2時間ほどのまとまった時間続けて読むと、流れに乗っている状態で読み進めることができます。一気に1時間続けて読むのと、10分読書を6回繰り返したときでは、読み進める量は前者の方が圧倒的に多いはずです。
ある程度まとまった長い時間を確保して、集中して読むことを意識してみましょう。
速読のコツ⑥ その本を読む目的を明確にする
本を速く読むコツとして、目的の明確化も欠かせない要素です。「なぜ自分はその本を読むのか」「そこから何を得たいのか」を考えると、読書効率が向上します。
「とにかく楽しみたい」という目的の場合は例外ですが、「仕事に役立つ〇〇を学びたい」「新しいスキルとして〇〇を身につけたい」という目的が決まっていると、それに関する重要事項にアンテナが反応しやすくなります。
その本を読む目的が明確であるほど、不要な箇所は飛ばして、必要な部分だけにフォーカスすることができます。時間短縮ができると同時に、いっそうの理解の深まりにもつながります。
最初のうちは、目次の中で特に興味がありそうな見出しをチェックするといいでしょう。とにかく読み始める前に「なぜこの本を読むんだっけ」という問いを自分に投げかける癖をつけてましょう。
結論
・「やや速読」は理解度を変えずに読むスピードを少しだけ速くする読書術
・速読に向いている本は「情報収集を目的とするもの」
・音読と黙読はしない
・本文に入る前の準備をする
・その本を読む目的を決める
ここまで話してきた「やや速読」のポイントをまとめると、以上の5点に集約できます。本当に誰でも真似できる読書術だと思うので、今読んでいる本からぜひ試してみてください。
自分で気づいた点に加え、他の読書家の知恵の中から試してみて効果があった速読術も参考にしました。特に佐藤優さんの『読書の技法』や宇都出雅巳さんの『どんな本でも大量に読める「速読」の本』などはとても参考になりました。
少しだけ本を読むスピードが速くなると、読める本も増えます。人生で出会うことがなかった本にも、出会える可能性が広がります。無理なく始められる速読法なので、初心者の方にもオススメしたいです。
それでは楽しい読書ライフを!