テーマ別で複数の本を比較する方法【読書は格闘技】

『読書は格闘技』瀧本哲史

読書は格闘技

そう言ったのは、経営コンサルタントや京都大学客員准教授などを務めた瀧本哲史さんです。『武器としての決断思考』『僕は君たちに武器を配りたい』『ミライの授業』など、生きるための考える力は重要だということを教えてくれた著者が送る、読書術についての本が『読書は格闘技』です。

読書には実にさまざまな読み方があります。速読やする人もいればゆっくり時間をかけて読む人もいるでしょう。一つの本を繰り返し読む人もいれば、何冊も並行して読み進める人もいるでしょう。

ここでは、より深く内容を理解し、多角的な意見を取り入れるための読書術を紹介したいと思います。

では、この「読書は格闘技」とはどういうことなのでしょうか。瀧本さんが読書をこのように比喩するのには、二つの意味があります。

自分(読者) 対 本(著者)

書籍を読むとは、単に受動的に読むのではなく、著者の語っていることに対して、「本当にそうなのか」と疑い、反証する中で、自分の考えを作っていくという知的プロセスでもあるのだ。

著者が権威ある人で、その本がたくさん売れているようなものだと、書いてあることは常に正解のごとく、もっともらしく思えてしまいます。しかし、そのように自分の思考を停止させてしまうのは危険です。

世の中には最初から何らかの真実があるわけでない。

つまり、今日この時点までに様々な議論がなされている中で、とりあえず正しいそうなものを「真実」としているだけなのです。今日正しいとされていることも、明日には新しい「真実」に取って代わるかもしれません。

また、「読書は、他人にものを考えてもらうことである」と読書に批判的なドイツの哲学者・ショウペンハウエルを引用しています。たしかに、本(著者)の内容を鵜呑みにしてしまえば、このような批判はある意味正しと言えるでしょう。

だからこそ、自分が本(著者)と闘うような気持ちで、自分の考えを著者の考えにぶつけ、自分の考え方を進化させていくべきなのです。

本(著者) 対 本(著者)

また「読書は格闘技」という言葉にこめられたもう一つの意味が、「本と本を比較する」ということです。つまり、あるテーマについて、全く異なるアプローチの本を2冊読んで比べることが重要です。

瀧本さんは序盤で、読書というテーマで、ショウペンハウエルの『読書について』と自著『武器としての決断思考』を闘わせるように比較します。(ぼくも両方読みました!)

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『読書について』ショウペンハウエル
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武器としての決断思考

先ほども述べたようにドイツの哲学者・ショウペンハウエルは「読書は、他人にものを考えてもらうことである」「一日を多読に費やす勤勉な人間は、しだいに自分でものを考える力を失って行く」と読書を皮肉たっぷりに表現します。

しかし、瀧本さんは『武器としての決断思考』の中で

「さらっと読んで終わりにするのではなく、著者の言っていることを1ページ1ページ、咀嚼しながら読んでいってください」と述べています。読書は、自分(読者) 対 本(著者)の「格闘技」であることを主張した上で、ショウペンハウエルの主張を跳ね返します。

このようにあるテーマに関して、一冊の本しか読まないということは、一面的な意見に偏る危険性をはらんでいます。

本(著者) 対 本(著者)、もっと言うと、本(著者) 対 本(著者) 対 自分(読者)のバトルロイヤルこそが、理想的な読書だと瀧本さんは言います。主張を闘わせ、自分なりに主張を選び取り、考えを作り出していくのです。

またこのテーマ別読書は効率を上げるためでも有用で、前田裕二さんも推奨する読書術でもあります。

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本の比較方法

では実際にどのように複数の本を比較していけばよいのでしょう。

本書では0~12Roundという13ものテーマ、本が「格闘」されています。今回は、「心をつかむ」というテーマを例にとり、本の比較方法を紹介していきたいと思います。

人生の中で、ただ一つ殆どどのような時にでも役に立つ最強の武器があるとしたら、それは何だろうか。

そう問いかけられたら、なんと答えるでしょうか。

瀧本さんは、「他者を味方につける方法」だと答えます。そこで「心をつかむ」というテーマで、『人を動かす (D・カーネギー)』と『影響力の武器 (ロバート・B・チャルディーニ)』の2冊が取り上げられ、比較されています。

『人を動かす』は1936年にアメリカで出版されて以来、世界で2000万部、日本だけでも500万部を売り上げる大ベストセラーです。一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。

この本の特徴は、

  • ここで紹介されている原則は、驚くほど驚きがないほど普遍的である
  • どの事例も現代的ではなく、わかりにくい

ということで、それが『人を動かす』の魅力につながっているのだと言います。この「どの事例も現代的ではなく、わかりにくい」という点が、なぜ魅力的かというと、わかりにくいがゆえに読者は自分の立場に変換して自分の頭で考えさせられるからです。

内容が普遍的なことは、誰しもが使えるルールで便利だということです。しかし、事例が読者の立場に近く、そのまま適用できてしまうようだと、逆に読者は考えることをやめてしまいます。これこそが、ショウペンハウエルの言う「読書は、他人にものを考えてもらうこと」になってしまいます。

内容が普遍的かつ、事例がわかりにくいことが『人を動かす』を大ベストセラーたらしめる要因です。一方で、この本の弱点である「科学的実証性がない」という点を補うのが比較対象である『影響力の武器』です。

こちらも長く売れ続けている本で、『人を動かす』とは逆に、社会心理学に基づいた内容となっています。人間の不合理や無意識に焦点を当てているということもあり、ちょっと怖いくらいの実験やその実験を土台にした法則が書かれています。

人を動物実験のように見る、という考え方は怖いと感じてしまうかもしれませんが、現在では主流の考え方だそうで、そこから生まれた「行動経済学」という分野では、ノーベル賞も受賞しているほどです。

『影響力の武器』では、「ランチョン・テクニック」というものが紹介されています。

ランチの最中に提示された政治的な意見に対して、被験者は好意的な意見を持つようになる、ということが実験で判明しました。要は、一緒に食事をしたという体験から生じる好意と、その場で話された内容に対する好印象とを知らず知らずのうちに混同してしまうのです。

このように社会心理学の実験によって証明された法則が、今日のビジネス界、ひいては世の中に適用されています。

一般的な読者の方にとっても、説得する方法を学ぶということは、説得されない方法を学ぶということに他なりません。『影響力の武器』という本が、多くの人に認知されているにも関わらず、世の中にはこのような法則に気づかない人が多いのはなぜでしょう。

その要因の一つが、本は読んでそれっきりという人が多いという問題です。こちらについては次にお話します。

『人を動かす』と『影響力の武器 』。同じテーマで異なる主張をする本の、具体的な比較方法がわかっていただけたでしょうか。

振り返って行動につなげる

『影響力の武器』の部分で、多くの人がその本を読んでいるにもかかわらず、そこに書かれた法則がいまだに人々に気づかれずに適用されているということを述べました。

本というのは読んだだけでわかった気になってしまい、満足してしまいがちです。つまり、いくらたくさんの人がその本を読もうと、一読して終わりでは、世の中には何の変化もありません。

本を読み終えた後、しばらくして、その内容を完全に忘れてしまい、その後の思考や行動の変化が何もなければ、それは、冒険に出て、宝の山に入りながら手を虚しくして帰るに等しい。

本を読んで、明日からすぐに何かが変わるということは、あまりないでしょう。しかし、その本を自分なりに考えて咀嚼する。内容を振り返って、自分の生活の中で行動にうつせるかを考えてみる。それだけで、「宝が手に入る」かどうかが決まります。

『読書は格闘技』を行動にうつす

本書『読書は格闘技』に学ぶべき、明日からはじめたい行動内容は、

2冊の本を比較する

です。本の内容を常に疑いながら、自分の頭で考えながらよむという「自分(読者) 対 本(著者)」の重要性は、ぼくもいろいろなところで言っています。

なので今回の行動内容では、「本(著者) 対 本(著者)」の比較の実践をおすすめしたいと思います。同じテーマなのにこれだけ違うのか。なぜ違うんだろう。ここは一緒だな。などと考えながら読む読書は、別の世界を見せてくれます。

ぜひやってみてください!

最後に

自分の考えをしっかり本の内容にぶつけ合いながら読む。さらに本と本を比較して読む。これをするだけで、ある分野での理解の深さや広さが大きく変わるでしょう。

ぜひ本書を手にとって、計13テーマでの「格闘」を見てみてください。

あまり重版されていない書籍のようで、手に入りにくいかもしれません。見つけたらぜひ購入してみてください。電子書籍ならすぐに読めます!

ぼくもテーマ別読書と称して、あるテーマで複数の本を買い込んで一気に読むということをしています。このようにテーマ別でも本を紹介しているので、ぜひ気になるテーマがあれば参考にしてみてください。厳選した多様な主張がある本を掲載しています。

▽優先して読むべき瀧本哲史さんのオススメ書籍5選はこちらで紹介しています▽

【瀧本哲史 おすすめの本 ベスト5】瀧本哲史さんの本をまず何から読むべきか?

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