今回は山口周さんの優先して読むべき本を4冊に厳選して紹介していきます。山口さんをご存知の方は、おそらくこの中の1冊は読んだことがあるかもしれません。
山口周さんは大手広告代理店や外資系コンサルなどを渡り歩いた異色のキャリアを持つ方です。現代の本質を見抜く洞察力や未来への先見性には驚くばかりで、書籍やツイッターなどで語る言葉は長年のビジネス経験に裏付けられたもの説得力を持っているという印象を受けます。
いま時代がどのように変わってきていて、求められる価値のある人材はどのような思考・能力を身につけるべきで、何を学べばよいのかということをわかりやすく教えてくれます。
ツイッターなどで山口さんをベンチマークしておくことはもちろん(山口周さんツイッター@shu_yamaguchiはこちら)、以下で紹介する本は学生からビジネスパーソンまで今後の時代の主役になる方には必読書といえます。
山口周さんとは?
慶應義塾大学文学部哲学科・慶應義塾大学院文学研究科美学美術史学専攻修士課程を修了し、その後大手広告代理店の電通、外資系コンサルのボストン・コンサルティング・グループなどで活躍してきた山口周さんは典型的な分類のできない異色のキャリアを持つ方だといえます。
著作家としても数多くの書籍を出版しており、ビジネスにアートやサイエンスなどの要素を組み合わせたテーマでの本が特徴的です。トップクラスのビジネスパーソンとして身につけた合理性と、学生時代から学んできたアート的素養を兼ね備える唯一無二の人材で、現代について語る切り口は非常にユニークです。
山口周さんのオススメの本 4選
1. ビジネスの未来
『ビジネスの未来 エコノミーにヒューマニティを取り戻す』は山口周さんが一年がかりで書き下ろし、2020年の末に出版された一冊です。これからのビジネスのあり方、個人としての仕事の見つけ方、生き方を根本から考え直させられるほど強いインパクトをもった内容です。
日本をはじめとする先進国では「低成長」「停滞」などと表現されますが、それは「経済とテクノロジーの力によって物質的困窮を社会からなくす」というゴールに到達しただけで、むしろポジティブに捉えるべきことだと言います。そこで次に目指す社会の形として、「経済性」ではなく、「人間性に根ざして動く社会」が掲げられています。
経済活動も個人の消費・労働も、「未来のためにいまを手段化する」というインストルメンタルなものから、「いま、この瞬間の愉悦と充実を追及して生きる」コンサマトリーなものへと転換すべきなのです。わかりやすい例を挙げると「お金のために辛い仕事をする」のではなく「その仕事自体が楽しいからする」という生き方です。
コンサマトリーな生き方を実現するための方法が、個人でも実践できるレベルで解説されています。これからの人生に意味を見出すためには必須の考え方なので、一読しておいて損はないビジネス書です。
すでに「経済性→人間性」というゲームチェンジが起きているこの世界で、これから大切になる「コンサマトリーな生き方」について解説していきます。 これまでの社会は経済を成長させることに主眼を置いてきましたが、ビジネスはすでに使命を終[…]
2. ニュータイプの時代
2019年に出版された『ニュータイプの時代 新時代を生き抜く24の思考・行動様式』は、この激変の時代の流れを把握し、自分はどう適応していくべきかを学べる一冊です。山口さんは本書の中で、従来型の思考を持つオールドタイプと新時代のニュータイプという2種類の人材を定義して比較します。
簡単に特徴を挙げると従来型の思考を持つオールドタイプは、正解を探し、数字管理を重視し、同じ組織に一生身を置き、経験でものを語るというような人を指します。少し前までの時代はこのような人材は重宝されていたでしょう。しかし今求められる人材はまったく異なるといいます。それが「ニュータイプ」です。
今後必要な能力・姿勢は、正解ではなく問題そのものを発見し、数字だけではなく意味を重視し、複数のコミュニティーを横断し、新しい知識や経験を身につけていくことなどが挙げられています。
特に印象深いのが、この「意味」です。「機能よりも意味」というのはニュータイプの考えを端的に示したものです。例えば、コンビニを想像してみましょう。コンビニは便利なものでなんでもひと通り揃っていますが、あくまでひと通りです。ハサミが欲しいと思ったら、おそらく選択肢は一つくらいのものでしょう。スペースの限られた棚に置かれているのは、もっとも使いやすくリーズナブルな値段のものです。いわば機能が重視されているので、それよりも使いにくかったり高価なハサミは選ばれません。コンビニでは機能性がもっとも高い一つしか生き残れません。
一方で、同じ商品が数多くの種類並んでいるものがレジ周りにはあるのがわかるでしょうか?そうです。タバコです。タバコがあれだけの種類置かれているのは、お客さんが各銘柄によってそこに見出すブランド的な価値、つまり「意味」を見出しているからです。機能性での競争が起こらないのは、「マルボロ」が「セブンスター」の代わりにはなれないし逆もまた然りだからです。
これは個人にも当てはまることです。オールドタイプ的な「機能性」を追求していくと、その能力やスキル、経験はコモディティ化し、競争に陥ってしまいます。しかし、誰にも代替されない「意味」が見出されれば、オンリーワンな人材として活躍していくことができます。
そんなニュータイプ側の人材になるために知っておくべきことが24の思考・行動様式として解説されています。「正しい方向に成長したい」というビジネスパーソンには必見です!
『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」』や『知的戦闘力を高める 独学の技法』の著者としても知られる山口周さんですが、今後価値の高まる生き方についてまとめた『ニュータイプの時代 新時代を生き抜く[…]
3. 世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?
『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』は山口さんのもっとも読まれる代表作の一つです。現代の複雑で不確実な世界では、従来型の「サイエンス的な」分析力や論理力だけでは適切な意思決定はできなくなってきていると主張します。では何が重要かというと、直感や美意識のような「アート的な」思考です。
今世界中のトップクラスの企業の経営者がMBAなどだけでなく、アート的な素養を身につけようとしている背景にはこのような時代の変化があるのだというのです。
このような従来型の思考と新しいタイプの思考の比較は『ニュータイプの時代』で詳しく書かれていますが、その先駆けとなったのが本書です。『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』の読みやすさは、専門的な知識をより一般的な読者にわかりやすく解説するという特徴を持つ新書ならではです。
では直感や美意識をどのように鍛えればよいのか、という具体的な方法が書かれているのがビジネスパーソンにとってもっとも価値を見いだせる本書のポイントだと感じます。その方法は絵画や哲学、文学などを通して学んでいくものです。「教養」た「リベラルアーツ」などの言葉が取り上げられて久しいですが、そのようなものを学ぶ本質的な意味は直感や美意識にこそあるのです。とはいっても本書で紹介されている直感や美意識の鍛え方は、特段難しいものではなく、誰にでも実践できるものになっています。
学生や若手ビジネスパーソンなどが一刻も早く直感や美意識などを鍛えることはもちろん、中堅からベテランでも今後を生き残るために学ぶことは何歳からでも遅すぎるということはありません。ぜひこれを機会に自分の知らない分野に触れ合い、自分の中にブレない価値観、「美意識」を身につけましょう。
論理と直感、あなたならどちらを重視しますか? 何か重要な意思決定をするときに論理的になろうとする人は多いはずです。 「こういうデータに裏付けられてるから」 「過去の事例ではうまくいったから」 「常識的に考えて」 そのよ[…]
4. 独学の技法
テクノロジーが発達し、世の中が驚くべき速さで変化していくこの時代。がんばって身につけたスキルや知識は、1年後には不要になってしまうかもしれません。もっと言うと、自分の「得意」が明日には価値がなくなってしまう可能性すらあります。
つまり今後は社会人になってからでも、自分であらゆることを学び続けていかなくてはならない時代に突入しています。『知的戦闘力を高める 独学の技法』では、独学の重要性と山口周さんが培ってきた効果的なな独学法が紹介されています。特に読書によるインプットと、学んだ知識をいかに活かすかということに焦点が当てられています。
①戦略、②インプット、③抽象化・構造化、④ストックという流れで体系的に独学方法が解説されています。限られた時間の中でいかに自分の目的に合った内容を学べるかというのは戦略が鍵になります。より深く・速くインプットするためにもコツがいりますし、抽象化・構造化というフレームワークでしっかり自分の頭で考えることも重要です。そしていかに知識を使える状態でストックしておくかということも意識して独学をしなければなりません。
このような一連の学習の流れがわかりやすく紹介されているのが『知的戦闘力を高める 独学の技法』です。また本書終盤では、リベラルアーツの11ジャンルにおける、山口さんのおすすめ書籍が多数紹介されています。各分野で入門書から専門書までピックアップされているので、あなたの興味や専門性ごとにレベルに合った本が見つかるはずです。学習案内としても読書案内としても最適な一冊です。
本物の知識を身につけ、オリジナルな人材になるために助けとなってくれる本です。これから何かを学ぼう、自分をアップデートし続けようと思っている方はぜひお手にとってみてください。
テクノロジーが発達し、世の中がこれまでにないくらい速さで変化していくこの時代。あなたががんばって身につけたスキルや知識は、1年後には不要になってしまうかもしれません。 もっと言うと、自分の「得意」が明日には価値がなくなってしまう可能性[…]
以上『ビジネスの未来 エコノミーにヒューマニティを取り戻す』、『ニュータイプの時代 新時代を生き抜く24の思考・行動様式』、『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』、『知的戦闘力を高める 独学の技法』の4冊が、山口周さんの特に優先して読むべき本たちでした。山口さんの本は、これからの時代を生きるビジネスパーソンの指針になってくれるような書籍ばかりです。
ぜひ1冊、読んでみると世界の見方が変わるかもしれません。とてもオススメです!
それでは楽しい読書ライフを!
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