村上春樹に学ぶ「8つの継続のコツ」と題しまして、幾多もの長編小説を世に送り出してきた偉大な小説家から、「ものごとを続けるために重要なこと」を学んでいきたいと思います。
毎日規則正しいリズムで執筆活動を行うことで有名な村上さんですが、小説を書くことについてこんな風に言っています。
一般的に考えられているよりも遥かに大量のエネルギーを、長期にわたって必要とする。
つまり、才能さえあればスムーズに小説を書くことができると思いきや、村上さんご自身は自分の創作活動の根源は、才能というよりは、集中力と持続力にこそあると考えているのです。
才能の不足分を努力や工夫でカバーするという考えは、あの村上春樹が言うからこそ説得力があり、気持ちを奮い立たせられます。
また、作家として物を書くだけでなく、フルマラソンやトライアスロンなどを趣味として習慣的に走ることでも知られています。
やはり「なにかを継続する」達人でもあるのです。
そんな村上春樹さんが走ること、小説を書くことについて語った『走るときについて語るときに僕の語ること』という本では、どのように小説を書き、走ることを習慣にしてきたかということがこと細かに述べられています。
なにか大きな成果を残したり、新しいスキルを身につけたりするのに継続する力は必須です。
誰にでも参考になると思う村上春樹流「継続のコツ」をまとめてみたので、ぜひ参考にしてみてください。
1. 規則的な生活リズムを心がける
村上さんの生活リズムは規則正しく一定で、基本的には以下のような流れだといいます。
朝の5時前に起床して、早朝の3~4時間執筆活動を行い、そのあとの時間で運動をしたり雑用をこなしたり、あまり集中を必要としない仕事を片付けていく。日が暮れたらのんびりして、もう仕事はしない。そして音楽を聴いたり本を読んだりしてリラックスしたら、10時前には就寝する。
このような生活は、ときに飲み会などの人付き合いも犠牲にすることもありますが、自分の中に優先度を確立しておくことが重要です。
自分に問いかけてみましょう。
その付き合いは、自分のやりたいことを犠牲にしてでもいくべきですか?
2. 朝に優先度の高いことに集中する
村上春樹にとっての最優先事項とは、もちろん小説を書くことです。
毎朝5時前に起きて、3~4時間ほど集中して仕事をしているといいます。
机に向かって、自分の書いているものだけに意識を傾倒する。ほかには何も考えない。ほかには何も見ない。
まだ頭が真っさらな起床後が最も集中力が高く、誰にも邪魔されない早朝だからこそ、最も優先すべきことに集中すべきなのです。
3. リズムを大切にする
継続することにとって重要なことの一つが、「リズムを断ち切らないこと」です。
村上さんは、走るときも書くときも、「身体が今感じている気持ちの良さをそのまま明日に持ち越すように心がける」といいます。
もっと続けられそうなところで、思い切って筆を置く。そうすれば翌日の作業のとりかかりが楽になる。
作業を始めて、ノリに乗ってきたら、そのままの勢いでその作業を進めようとしがちです。
ですが、ここで重要なのが、その作業はその日限りのものではなく、明日も明後日も続けて必要があるということなのです。
いかに精神的なムラをなくして、毎日一定のリズムを保つかが大切です。
ちなみにかのアーネスト・ヘミングウェイも似たようなことを言っているみたいですし、現代でいえばあの超長期連載された「こち亀」の作者・秋本治さんも「集中力が切れるのは、ひとつの仕事が終わったとき」と言っています。
4. 週に1日は「休み」をもうける
毎日のように走り続けている村上さんでも、「今日は疲れていて走りたくない」というときもあるそうです。忙しかったり、雨が降ったりもするかもしれません。
だからあらかじめ週に一日くらいは、「お休み」の日を設定しておくわけだ。
たしかにこの「休み」がないと、もし一日なにかをサボってしまうと、「もう続けなくてもいいかな」という気持ちが芽生えてしまうという経験は誰でもあるのではないでしょうか。
5. やることを数値化する
毎日のやるべきことを数値化する、というのが村上さんから学べる継続のためのコツの一つだと気づきました。
例えばある時期の村上さんを例に、週に60キロ走ることを目標にし、週に六日間は一日10キロ走るということを習慣化していたそうです。
本を読んだり勉強したりするときに、漠然と「読書を頑張ろう」「勉強しよう」ではなく、
一日50ページ読む、などと具体的にできたかできなかったか判断する数値にしてみるとよいでしょう。
600ページの本を一週間で読むなら、一日に100ページは読む、というように大きな目標も一日あたりに置き換えてみましょう。
6. 好きなことを選ぶ
これは大前提ともいえることですが、何かを続ける上で、その何かが自分の好きなものなら理想的です。
好きなことは自然に続けられるし、好きではないことは続けられないようにできている。
村上さんが何十年も走り続けたり書き続けたりできているのは、「性に合っていたから」だと言います。少なくとも「それほど苦痛ではなかった」という表現をしていますが、嫌いなことはまず続きません。
例えば、なにか新しいスキルを身につけるときに、「このスキルは今後も食っていけそうだから」と言う理由で選ぶと、それを好きじゃなかった場合はすごく苦労します。一方で、「これが好きなだから/やりたくてしょうがないから」という理由ではじめたことは、続けるための大きな原動力になるでしょう。
この好きなことややりたいことを見つけること自体簡単ではないという人も多いでしょう。ぼくも一時期はまったく自分について理解できず悩んでいたことがありました。
そんなときにおすすめなのが、原点に帰って「自己分析」です。ぜひ以下のような方法で試してみてください。きっと「好きなこと」「やりたいこと」が見つかるはずです。
7. やる気がないときの対処法①
「今日はやる気が出ないな…」ということは誰にだってあると思います。
そんなときは、自分自身で鼓舞するしかありません。ではどのように自分を鼓舞するか。
それは、「これをしなかった自分」を想像するのです。
例えば村上さんは、こんな問いかけをしているそうです。
おまえはいちおう小説家として生活しており、好きな時間に自宅で一人で仕事ができるから、満員電車に揺られて朝夕の通勤をする必要もないし、退屈な会議に出る必要もない。それは幸運なことだと思わないか?(思う)。それに比べたら、近所を一時間走るくらい、なんでもないことじゃないか。
8. やる気がないときの対処法②
作家活動は文章を書くことですから、当然調子の悪いとき、何も書くことができないという状況はあるはずです。
村上さんも多数翻訳するほど思い入れのあるミステリー作家レイモンド・チャンドラーはこう語ります。
「たとえ何も書くことができなかったとしても、私は一日に何時間かは必ず机の前に座って、一人で意識を集中することにしている」
ここで重要なポイントは二点あると思っていて、一点目がとにかくいつもと同じリズムを保つということ。習慣化には必須のこのルーティンのような形ですが、やるやらないにしても、いつもの形をとるということです。
もう一点が、ぼけっとするわけではなく、意識を集中することはサボらないということです。近年マインドフルネスという言葉も聞きますが、とにかく意識を集中することで、集中力が高まったり、メンタル的に良い影響を与えたりするのです。
最後に
本書で語られる印象的な言葉を紹介したいと思います。
Pain is inevitable, Suffering is optional.
「痛みは避けがたいが、苦しみはオプショナル(こちら次第)」
どんなことも継続するにはそれなりの「痛み」や「きつさ」を伴うものです。簡単ではありません。
しかし、そんなとき諦めるかどうかは自分次第です。
「ああ、きつい、もう駄目だ」の「きつい」は避けようのない事実ですが、「もう駄目」かどうかは自分の裁量次第だと村上さんも言います。
今回は、「ものごとを継続させる」ということに焦点を当てましたが、この『走るときについて語るときに僕の語ること』には村上春樹さんの金言が数多く散りばめられています。
小説家という特殊な職業であるにも関わらず、ぼくたちの日常にも応用ができる有益な学びがたくさん書かれている本です。
ただ単にエッセイ的楽しめるだけでなく、役に立つ本です!気になった方はぜひお手にとってみてください!
それでは楽しい読書ライフを!
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