【フェルミ推定 入門】思考力を鍛えるフェルミ推定のやり方

フェルミ推定 入門

前回「地頭が良い人が持つ6つの思考力」として細谷功さんの『地頭力を鍛える』をもとに、考える力の本質についてのお話をしました。ここでは引き続き『地頭力を鍛える』から、地頭力を鍛える具体的な方法として「フェルミ推定」という思考ツールを紹介します

フェルミ推定はコンサルティング会社などの入社試験などで出題されたりするもので、「日本全国に電柱は何本あるか」「世界中にサッカーボールはいくつあるか」など想像もつかないような数量について、短時間でざっくりした数字を求める手法です。

フェルミ推定は「原子力の父」として知らノーベル賞物理学者のエンリコ・フェルミがシカゴ大学の学生に出題した「シカゴにピアノ調律師は何人いるか」という問題がはじまりだとされています。

根本的な考える力である「地頭力」を鍛えるには、結論から考える「仮説思考力」全体から考える力「フレームワーク思考力」単純に考える力「抽象化思考力」を鍛える必要があります。そしてそれらの最適なトレーニング方法こそが、フェルミ推定なのです

それではこのフェルミ推定の具体的な手順と、どのように仮説思考力・フレームワーク思考力・抽象化思考力を鍛えることができるのかを解説していきましょう

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頭が良い人の思考力

フェルミ推定のお題設定

フェルミ推定は、一般的に知られていないような数字を問題にすることが重要です。正解を出すことではなく、その回答に至るまでの思考プロセスこそが重視されるからです。

今回は例として「日本全国に電柱は何本あるか」という問題を扱いたいと思います。その他にも『地頭力を鍛える』では以下のようなフェルミ推定の問題例が掲載されています。

・世界中で1日に食べられるピザは何枚か?
・琵琶湖の水は「何滴」あるか?
・日本全国にゴルフボールはいくつあるか?
・東京都内に駐車禁止の道路標識はいくつあるか?
・日本全国に郵便ポストは何本あるか?
・世界の1日の携帯通話時間の合計は延べ何時間か?

など

今回はこのような条件で、フェルミ推定のやり方を解説していきます。

お題: 「日本全国に電柱は何本あるか」
制限時間: 3分
注意事項: 電卓・PCの使用不可、一切の情報参照不可

フェルミ推定では素早く大まかな結論を求めることが目的なので、この制限時間は短すぎると感じるかもしれませんが、しっかりタイマーを3分に合わせてスタートしましょう。

フェルミ推定の手順① アプローチ設定

まずは「日本全国に電柱は何本あるか」という問いに対して、どのようなアプローチをするかを決めます。この段階では大胆とも思える仮説でも問題ありません。

・今回は本書で紹介されている、面積当たりの電柱本数を日本全土に展開する、というアプローチを採用して計算を進めていきます。

ここで注意すべきは、まず日本全国という全体から目をつけることです。電柱という身近なものなので、ついつい自宅付近の風景などを思い浮かべてしまいがちです。しかし広い視野をもって、最終的にこのような計算をすれば答えは出るのではないかという仮説を自分なりに考えましょう。

この「手順① アプローチ設定」では特に結論から考える「仮説思考力」が重要になります。少ない情報の中で結論を仮説として出すことが、地頭力のトレーニングになります。今回は「面積当たりの電柱本数を日本全土に展開する」という仮説を立てましたが、当然異なるアプローチ方法もあったわけです。異なるアプローチ方法でも、なぜそれを選んだのかが明確ならば途中で修正することも簡単です。

フェルミ推定の手順② モデル分解

・次にアプローチで設定した全体を、どのような分解していくかを明確にします。いかにうまい切り口で分類・分解するかが、限られた時間内で推測可能な計算にもっていくには重要です。

・まずは日本全土を分類します。電柱の数はその地域の世帯や電位使用量などで変化しそうなので、日本全体を市街地と郊外に分けます

・そして面積当たりの本数の仮説を立て、面積当たり本数x面積で答えが導き出せるだろうと予測します。

「手順① アプローチ設定」に加え「手順② モデル分解」では、全体から考える力「フレームワーク思考力」が必要になります。課題の全体像を俯瞰し、その全体像を最適な切り口で分解していきます。今回の例では、日本全土という全体から入って、それを市街地と郊外に分けたのが「足し算的」分類です。さらに面積当たり本数x面積で全体の本数を出せるというのが「掛け算的な」因数分解です。

フェルミ推定の手順③ 計算実行

・いよいよ具体的に計算に入っていきます。手順①・②ですでに大枠は完成しているので、あとは計算をするだけです。

・まずは面積当たりの本数を計算していいきます(もちろんここでも仮説の域を出ません)。市街地では「50m四方に1本」、郊外では「200m四方に1本」くらいかなと当たりをつけます。これは「モデル化」という抽象化思考力の一種で、正方形に電柱という点がいくつあるかというようなシンプルなビジュアルで考えます。

・つまり市街地では1km2(1000000 m2)÷2500m2=400本、郊外では1 km2(1000000m2)÷40000m2=25本となります。

・そして日本全国は市街地と郊外の比率が半分ずつではありません。仮に市街地2割、郊外8割と想定します(実際には日本の国土の4分の3が山間部みたいですが、そのような前提知識はゼロだとして計算しましょう)。

次に問題なのが、日本全土の面積です。日本の面積は約38万km2というのは小学校の社会科レベルの知識だそうですが、ぼくはその数字は覚えていなかったので、これもフェルミ推定で計算しましょう。

・ここでも日本列島を単純化し、長方形として考えましょう。東京から大阪までの距離がたいだい500kmだと知っていれば(新幹線で2.5時間くらいかかるので、時速200kmでの移動だと考えて)、その3倍くらいの1500kmが日本列島の長さになるなと想定できます。そしてその長方形のもう一辺は200kmほどだと仮定します(ここは長さが1500kmというところからのざっくりした仮説)。

・結果、日本全国の面積は1500kmx200kmで30万km2だと想定します。

・いよいよ最終的な計算式に入ります。
市街地の電柱の本数=30万km2(日本の面積)x0.2(市街地の割合)x400本(面積当たり電柱本数)
郊外の電柱の本数=30万km2(日本の面積)x0.8(郊外の割合)x25本(面積当たり電柱本数)

そしてこの2つを合算すると、2400万本+600万本=3000万本という結論が導き出せます。

特に「手順③ 計算実行」で鍛えられるのが単純に考える力「抽象化思考力」です。対象の最大の特徴を抽出して「単純化」「モデル化」し、一般解を導くのが抽象化思考力です。面積当たりの本数を考えるときに正方形の中に点がいくつあるかというモデル化や、日本列島を長方形として捉える単純化は、問題をスピーディに前に進めるキーポイントです。

フェルミ推定の手順④ 現実性検証

最後のフェルミ推定の手順は、現実性の検証です。訓練としてのフェルミ推定では、実際に現実世界の答えが明確になっていることも多いため、仮説検証が可能です。かなり短い時間で、前提知識もほとんどない中での計算なので、かなり現実と乖離した数字になることもありえます。最後は現実とどれくらい近い結論に達したかを検証してみましょう。

・今回の日本全国の電柱の本数は、NTTのデータによると、約3300万本だそうです。上記の計算では3000万本とかなり近い結論が出せましたが、著者の細谷功さんによると、回答の目安として真実よりも一桁以内の誤差なら許容範囲内だといいます。つまり今回だと数百万~数億本くらいまでの範囲なら、まずまずだということですね。

フェルミ推定で重要なこと

フェルミ推定により地頭力を鍛える場合は、答えを出すまでのプロセスが重要なことは言うまでもありません。もし答えを知っていて正解できたとしても、何のトレーニングにもなりません。

情報を調べたくなる気持ちもわかりますが、まずは自分の頭で考えるという癖をつけましょう。これほど検索エンジンが発達し、どんな情報にも簡単にアクセスできるようになった現代では「まずは情報収集」という姿勢が身についてしまっています。しかし情報が少ない中で答えを出そうとする姿勢こそ、正解がない問題に対する効率的で実用的な武器となります。

そして完璧主義を捨てることも重要なポイントです。正解なんてないけど考えてみる時間もそんなに多くない、という状況は仕事でもプライベートでもしばしばやってきます。まずは結論を出して、徐々に検証と修正を繰り返していくという方法を身につけましょう


このフェルミ推定で身につく「地頭力」についての詳細はこちらでまとめました。知っているのと知らないのとでは、頭の使い方の意識が大きく変わってくると思いました。ぜひ参考にしてみてください!

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頭が良い人の思考力

フェルミ推定のその他の計算例や、地頭力を鍛える詳しい解説については、ぜひ本書をお手にとってみてはいかがでしょうか。とても1600円足らずで手に入る知識とは思えません!

それでは楽しい読書ライフを!

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