ここでは細谷功さんの著書『地頭力を鍛える』をもとに、地頭が良い人が持つ6つの思考力について紹介していきます。
よく「あの人は頭が良い」「地頭が良い」と言ったりしますが、では「頭が良い」とはそもそもどういうことなのでしょう。
大きく分けて「頭が良い」には3つのタイプの人がいます。
②機転が利く: 対人感性力
③地頭が良い: 思考能力が高い
考える力(本書でいう「地頭力」)を身につけた人はこの膨大な情報を駆使してこれまでとは比べ物にならないような力を発揮できる可能性がある。
前回「地頭が良い人が持つ6つの思考力」として細谷功さんの『地頭力を鍛える』をもとに、考える力の本質についてのお話をしました。ここでは引き続き『地頭力を鍛える』から、地頭力を鍛える具体的な方法として「フェルミ推定」という思考ツールを紹介します[…]
1. 結論から考える力: 仮説思考力
まず地頭力に必要なのは「結論から考える力」つまり仮説思考力です。この仮説思考力とは、
・常にそれを最終目的地として強く意識し
・情報の精度を上げながら検証を繰り返して仮説を修正しつつ最終結論に至る
簡単に言えば、「はじめ」ではなく「終わり」から考えることです。やみくもに行動する前にまずは自分の頭を使って、仮説を立ててみるということです。その仮説の精度は低くても問題ありません。途中でその仮説である結論は何度でも、修正して更新できるからです。
何か問題があったときに、解決するスピードが格段に上がります。そして完成度はどうあれ、確実に結論へとたどり着けるのがこの「結論から考える」メリットです。
英語力を身につけたいと思ったら、すぐに単語帳を開いて暗記を始めるのではなく、まずは自分がどのレベルにいけば英語力が身についたといえるのかを考えます。それはTOEIC900点なのか、外国人の友達とうまくコミュニケーションをとれることなのかは人によって異なるでしょう。
そして先にその結論を立てておけば、そのゴールにたどり着くまでの仮説を立て、最短距離を走ることができます。自分にとってTOEIC900点が英語力習得のゴールだとするならば、テストの科目であるリスニングとリーディングスキルを身につけることに特化した学習ができます。その途中でリスニング向上のためには実は自分で発音できることが重要だからスピーキングも必要だということがわかれば、随時やり方を修正していけばよいのです。
なんの仮説も立てず、目の前のことをひたすらこなすだけではゴールにたどり着くには効率が悪すぎます。まずは手当たり次第できることをやる。情報をできる限り集める。そんなやり方をしていてはいつまでたっても前へ進めません。自分なりにゴールを見定め、その中で検証と修正を繰り返すことでよりスピーディに、より精度の高い結論へたどり着くことができるのです。
これは個人的なことでも会社レベルでのプロジェクトでも有効な思考力です。まずは「結論から考える」癖をつけましょう!
2. 全体から考える力: フレームワーク思考力
地頭力を構成する2つ目の要素が、「全体から考える力」フレームワーク思考力です。
フレームワークと聞くとビジネスの世界では課題解決における型(3Cや4Pなど)を想像する方も多いと思いますが、ここでいうフレームワーク思考力は、より広い意味です。厳密には以下の二つの力で構成される思考を指します。
・とらえた全体像を最適の切り口で切断し、断面をさらに分解する分解力
既存のフレームワークである3Cなどもまさに、まずは全体を見て、その全体を細かく切り分けて分析することで課題解決に導く思考法です。業界全体をCustomer(顧客/市場)、Company(自社)、Competitor(競合)に分解して網羅的に分析する手法はまさにフレームワーク思考力といえます。
そして分解する力にも2種類あります。それは分類(足し算的な分解)と因数分解(掛け算的な分解)です。
分類でもっともわかりやすいフレームワークがMECEと呼ばれるものです。これはMutually Exclusive and Collectively Exhaustiveの頭文字をとったもので、一言でいえば「漏れなくダブりなく」です。
3Cや4PなどもMECEだといえます。顧客分析をする際の年代別や居住地域別などの分類もMECEです。このMECEの考え方は問題分析ではとても重要なので、ぜひ以下を参考にして詳しく見てみてください。
今回は「論理」を学ぶに最適な『ロジカル・シンキング』という本を紹介するとともに、本書をより噛み砕いて「どうすれば論理的に考え、書き、話すことができるようになるのか」について解説していきたいと思います。 ロジカルコミュニケーショ[…]
もう一つの分解である因数分解は、お店の売上を考えるとわかりやすいと思います。例えばあるハンバーガー屋さんが売上を上げたい場合、売上を因数分解すると、売上=商品の価格x顧客数になります。因数分解をすることによって、焦点を当てるべきは売上の中でも「価格」なのか「顧客数」なのか、より詳しく考えることができます。
サービスに付加価値を加えて単価を上げるのか、それともより多くのお客さんを呼び込むのかでは取るべき施策が異なります。
全体俯瞰力と分解力についてそれぞれの例で簡潔に紹介しましたが、まずが一歩引いて客観的に見る癖をつけ、どのような切り口で分解すれば精度が高いのかというのを第一に考えましょう。
3. 単純に考える力: 抽象化思考力
3つ目の地頭力に必要な力が、単純に考える力「抽象化思考力」です。抽象化思考力については、以下のように説明できます。
突然ですが、あなたは頭が良い人ってどんな人だと思いますか? 勉強ができる人でしょうか?計算が早い人でしょうか?論理的に頭を働かせることができる人でしょうか? 僕は、具体と抽象の違いをよく理解し、自由に行き来できる人だと思います。 そし[…]
単純に考える「抽象化思考力」が身につくと、限られた知識からとても広い範囲でそれを応用することができるようになります。数学や物理などの自然化学の分野では、個別的な事象から法則を導き出し、それを世の中で応用していくというのが基本です。
抽象化思考力は物事を単純に捉えることで、思考スピードを加速させることもできますが、最大の特徴は斬新なアイデアを生み出すことにあります。
例えば昔の移動手段である馬車。当時はより速く移動できる馬車が求められていました。そこで抽象化能力が低い人は、より良い馬や軽い素材を使って速く走れる場所を作ろうとするでしょう。しかし馬車を「移動手段」として抽象化し、「より速く移動する手段」が必要だと考えたからこそ、自動車という全く別のイノベーションは起きたのです。
また、話が抽象的すぎて伝わらないという人がいますが、相手に伝える際は具体的に話すことが重要です。ある話を聞いたり読んだりして、具体的なことをインプットする際は抽象化思考を発揮する必要があります。しかしそれを人に伝える際には、そのままの抽象的なレベルで伝えるのではなく、再度具体的なレベルに落として相手に伝えるという意識を持ちましょう。
抽象と具体のレベルを自由に行ったり来たりできることも、地頭力にとって大切な思考力だといえます。
さて以上が地頭力を構成する超重要な3つの思考、「結論から」「全体から」「単純に」考える力です。さらにその地頭力には、ベースとなる3つの要素があります。これも意識するのとしないのとでは、頭の働かせ方や今後の考え方が大きく異なるでしょう。
3つそれぞれを簡単に説明していきます!
4. 論理思考力
地頭力のベースとなる能力の1つが論理思考力です。ロジカルシンキングという言葉が使われたりしますが、要は「物事を筋道立てて考える」力です。これは左脳的な思考力です。
論理と聞くと難しそうなイメージをもってしまいますが、誰もが理解できるように考えて伝える力にすぎません。これはレベルの差こそあれ、誰もが無意識的に考えていることです。
「もう暑いから夏だね」と言えば北半球に住む人間なら誰もが論理が通った内容だと言えます。しかし「こんなに寒いのは夏だししょうがないね」と行った場合、頭にクエスチョンマークがついてしまいます。
単純なことですが、考えたり話す内容が複雑になればなるほど、この論理思考力がおざなりになってしまいます。先ほども紹介しましたが論理的思考を学ぶにはこの本がとてもおすすめです。以下に要点もまとめてるので、ぜひ参考にしてみてください!
今回は「論理」を学ぶに最適な『ロジカル・シンキング』という本を紹介するとともに、本書をより噛み砕いて「どうすれば論理的に考え、書き、話すことができるようになるのか」について解説していきたいと思います。 ロジカルコミュニケーショ[…]
5. 直感力
地頭力を支える2つ目が直感力です。これは「ひらめき」を伴うような右脳的な思考であり、新たな概念を生み出すことに貢献する思考力です。論理思考力を守りの思考とするなら、この直感力は攻めの思考といえるでしょう。
ビジネスの世界ではより実用的だと見られる理系的、サイエンス的な素養が重視されてきました。しかし最近では山口周さんをはじめとするさまざまなリーダーたちが「アート的」な素養の重要性を強調しています。
サイエンス的な思考で辿りつく結論はみな同じです。それを商品やサービスなどで考えるとどれも似たり寄ったりなものになってしまいます。一方でアート的な思考で考えれば、創造的で差別化された商品やサービスが生まれる可能性があるのです。
この直感力の重要性や鍛え方について知るには、山口周さんの『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』がオススメです!
論理と直感、あなたならどちらを重視しますか? 何か重要な意思決定をするときに論理的になろうとする人は多いはずです。 「こういうデータに裏付けられてるから」 「過去の事例ではうまくいったから」 「常識的に考えて」 そのよ[…]
6. 知的好奇心
最後になりますが、地頭力の3つの思考力とそのベースである論理思考力・直感力すべてのベースとなるのが知的好奇心です。全ての思考のきっかけは好奇心にあると言っても過言ではありません。
どれだけそのほかの思考力が高くても、そもそも「これはなんだろう、なぜだろう」という疑問がなければ考えるきっかけもなければ、思考を前に進めることもできません。
本書では知的好奇心を2種類に分けて紹介しています。
②What型好奇心: 知識に関する好奇心
以上が地頭が良い人が持つ6つの思考力(地頭力を構成する3つとそのベースとなる3つ)でした。考えるという漠然とした言葉も、このように具体的に中身を知ることができれば腹落ちしやすいですよね?
前回「地頭が良い人が持つ6つの思考力」として細谷功さんの『地頭力を鍛える』をもとに、考える力の本質についてのお話をしました。ここでは引き続き『地頭力を鍛える』から、地頭力を鍛える具体的な方法として「フェルミ推定」という思考ツールを紹介します[…]
それでは楽しい読書ライフを!