地頭が良い人が持つ6つの思考力

頭が良い人の思考力

ここでは細谷功さんの著書『地頭力を鍛える』をもとに、地頭が良い人が持つ6つの思考力について紹介していきます。

よく「あの人は頭が良い」「地頭が良い」と言ったりしますが、では「頭が良い」とはそもそもどういうことなのでしょう。

大きく分けて「頭が良い」には3つのタイプの人がいます。

①物知り: クイズ王的な知識が豊富
②機転が利く: 対人感性力
③地頭が良い: 思考能力が高い
クイズ番組などを見て「おーこの人頭がいいな」と言われるのが①のタイプですが、この能力はもはや検索エンジンなどの発達により希少性が薄くなっています。一方で人とのコミュニケーションが円滑だったり、会議などの場を取りまとめる能力が②のタイプです。これは今の時代にも必須なスキルで、人間関係の中でもまれていく能力だといえます。
そして今回取り上げたいのが「③地頭が良い」の頭の良さです。自分の頭で考えることの重要性は、インターネットの発達、さらにはAIなどのすさまじい技術の進化によって日に日に高まっています。
これまでは多くの知識を持った人が頭が良いと言われる代表でした。知識の暗記さえできれば、高学歴な大学に入り、大企業に入社することができ、それが人生の成功だと見なされていたのです。
しかし、Googleなどの検索技術がここまで発展すると、わからないことは検索すれば数秒で答えが出てしまいます。そこで今重要なのは、答えがないことを自分の頭で考える地頭力です。
考える力(本書でいう「地頭力」)を身につけた人はこの膨大な情報を駆使してこれまでとは比べ物にならないような力を発揮できる可能性がある
細谷功さんは考える力の重要性をこのように述べます。では具体的に今後「頭が良い」とされる考える力、つまり地頭力とはどのようなものなのかを6つの思考力に分けて見ていきましょう。この地頭力の本質は、「結論から」「全体から」「単純に」考える力であり、まずはその3つの思考力から紹介していきます。
▽これらの地頭力を構成する力を鍛える「フェルミ推定」についてはこちらで紹介します▽
関連記事

前回「地頭が良い人が持つ6つの思考力」として細谷功さんの『地頭力を鍛える』をもとに、考える力の本質についてのお話をしました。ここでは引き続き『地頭力を鍛える』から、地頭力を鍛える具体的な方法として「フェルミ推定」という思考ツールを紹介します[…]

フェルミ推定 入門

1. 結論から考える力: 仮説思考力

まず地頭力に必要なのは「結論から考える力」つまり仮説思考力です。この仮説思考力とは、

・いまある情報だけで最も可能性の高い結論を想定し
・常にそれを最終目的地として強く意識し
・情報の精度を上げながら検証を繰り返して仮説を修正しつつ最終結論に至る
上記のような思考パターンを指します。

簡単に言えば、「はじめ」ではなく「終わり」から考えることです。やみくもに行動する前にまずは自分の頭を使って、仮説を立ててみるということです。その仮説の精度は低くても問題ありません。途中でその仮説である結論は何度でも、修正して更新できるからです。

何か問題があったときに、解決するスピードが格段に上がります。そして完成度はどうあれ、確実に結論へとたどり着けるのがこの「結論から考える」メリットです

あすどくくん
例えば「英語力を身につけたい」という漠然とした課題があるとしましょう。

英語力を身につけたいと思ったら、すぐに単語帳を開いて暗記を始めるのではなく、まずは自分がどのレベルにいけば英語力が身についたといえるのかを考えます。それはTOEIC900点なのか、外国人の友達とうまくコミュニケーションをとれることなのかは人によって異なるでしょう。

そして先にその結論を立てておけば、そのゴールにたどり着くまでの仮説を立て、最短距離を走ることができます。自分にとってTOEIC900点が英語力習得のゴールだとするならば、テストの科目であるリスニングとリーディングスキルを身につけることに特化した学習ができます。その途中でリスニング向上のためには実は自分で発音できることが重要だからスピーキングも必要だということがわかれば、随時やり方を修正していけばよいのです。

なんの仮説も立てず、目の前のことをひたすらこなすだけではゴールにたどり着くには効率が悪すぎます。まずは手当たり次第できることをやる。情報をできる限り集める。そんなやり方をしていてはいつまでたっても前へ進めません。自分なりにゴールを見定め、その中で検証と修正を繰り返すことでよりスピーディに、より精度の高い結論へたどり着くことができるのです。

これは個人的なことでも会社レベルでのプロジェクトでも有効な思考力です。まずは「結論から考える」癖をつけましょう!

2. 全体から考える力: フレームワーク思考力

地頭力を構成する2つ目の要素が、「全体から考える力」フレームワーク思考力です。

フレームワークと聞くとビジネスの世界では課題解決における型(3Cや4Pなど)を想像する方も多いと思いますが、ここでいうフレームワーク思考力は、より広い意味です。厳密には以下の二つの力で構成される思考を指します。

・対象とする課題の全体像を高所から俯瞰する全体俯瞰力(ビッグピクチャーシンキング)
・とらえた全体像を最適の切り口で切断し、断面をさらに分解する分解力
全体俯瞰力を鍛えれば、問題を客観的に捉えることができ、人間誰しもが持つ「思考の癖」を取り払うことができるのです。例えば友人を自宅に招待する際に、道案内の説明をするとします。
「駅を出て右に曲がって、最初の信号を左折して、直進するとコンビニが見えるからその横が家だよ」と主観的な説明を聞かされたらどう思うでしょう。これでその人の家にたどり着くことはできるでしょうか?
ここで問題なのは全て自分の視点を中心に考えていることです。家の場所を知らない人が聞くと、「そもそも駅のどっち口に出ればいいんだろう…」「最初の信号は十字路だけどどっちを渡るんだろう…」「コンビニはセブンイレブンとファミリーマートが道を挟んで並んでいるけどどっちだろう…」と戸惑ってしまいます。
これを上から俯瞰したような視点で全体を見れば、誰が聞いてもわかる客観的な説明ができるはずです。

既存のフレームワークである3Cなどもまさに、まずは全体を見て、その全体を細かく切り分けて分析することで課題解決に導く思考法です。業界全体をCustomer(顧客/市場)、Company(自社)、Competitor(競合)に分解して網羅的に分析する手法はまさにフレームワーク思考力といえます。

そして分解する力にも2種類あります。それは分類(足し算的な分解)と因数分解(掛け算的な分解)です

分類でもっともわかりやすいフレームワークがMECEと呼ばれるものです。これはMutually Exclusive and Collectively Exhaustiveの頭文字をとったもので、一言でいえば「漏れなくダブりなく」です。

3Cや4PなどもMECEだといえます。顧客分析をする際の年代別や居住地域別などの分類もMECEです。このMECEの考え方は問題分析ではとても重要なので、ぜひ以下を参考にして詳しく見てみてください。

関連記事

今回は「論理」を学ぶに最適な『ロジカル・シンキング』という本を紹介するとともに、本書をより噛み砕いて「どうすれば論理的に考え、書き、話すことができるようになるのか」について解説していきたいと思います。 ロジカルコミュニケーショ[…]

ロジカル・シンキング

もう一つの分解である因数分解は、お店の売上を考えるとわかりやすいと思います。例えばあるハンバーガー屋さんが売上を上げたい場合、売上を因数分解すると、売上=商品の価格x顧客数になります。因数分解をすることによって、焦点を当てるべきは売上の中でも「価格」なのか「顧客数」なのか、より詳しく考えることができます。

サービスに付加価値を加えて単価を上げるのか、それともより多くのお客さんを呼び込むのかでは取るべき施策が異なります。

全体俯瞰力と分解力についてそれぞれの例で簡潔に紹介しましたが、まずが一歩引いて客観的に見る癖をつけ、どのような切り口で分解すれば精度が高いのかというのを第一に考えましょう

3. 単純に考える力: 抽象化思考力

3つ目の地頭力に必要な力が、単純に考える力「抽象化思考力」です。抽象化思考力については、以下のように説明できます。

対象の最大の特徴を抽出して「単純化」「モデル化」した後に一般解を導き出して、それを再び具体化して個別解を導く思考パターン
簡単な例で言うと、チワワを対象に、「チワワは犬であり動物である」という抽象化を行い、「ゴールデンレトリバーも犬だから動物である」というような(少し変な例ですいません…)思考パターンが「抽象化思考力」です。
この抽象化して単純に考えることと、それを具体化するという両方の力は、思考をする上で最も重要な能力です。詳しくは同じ著者である細谷功の『具体と抽象』という本がとてもオススメです!
関連記事

突然ですが、あなたは頭が良い人ってどんな人だと思いますか? 勉強ができる人でしょうか?計算が早い人でしょうか?論理的に頭を働かせることができる人でしょうか? 僕は、具体と抽象の違いをよく理解し、自由に行き来できる人だと思います。 そし[…]

『具体と抽象』細谷功

単純に考える「抽象化思考力」が身につくと、限られた知識からとても広い範囲でそれを応用することができるようになります。数学や物理などの自然化学の分野では、個別的な事象から法則を導き出し、それを世の中で応用していくというのが基本です。

抽象化思考力は物事を単純に捉えることで、思考スピードを加速させることもできますが、最大の特徴は斬新なアイデアを生み出すことにあります

例えば昔の移動手段である馬車。当時はより速く移動できる馬車が求められていました。そこで抽象化能力が低い人は、より良い馬や軽い素材を使って速く走れる場所を作ろうとするでしょう。しかし馬車を「移動手段」として抽象化し、「より速く移動する手段」が必要だと考えたからこそ、自動車という全く別のイノベーションは起きたのです。

また、話が抽象的すぎて伝わらないという人がいますが、相手に伝える際は具体的に話すことが重要です。ある話を聞いたり読んだりして、具体的なことをインプットする際は抽象化思考を発揮する必要があります。しかしそれを人に伝える際には、そのままの抽象的なレベルで伝えるのではなく、再度具体的なレベルに落として相手に伝えるという意識を持ちましょう。

抽象と具体のレベルを自由に行ったり来たりできることも、地頭力にとって大切な思考力だといえます

さて以上が地頭力を構成する超重要な3つの思考、「結論から」「全体から」「単純に」考える力です。さらにその地頭力には、ベースとなる3つの要素があります。これも意識するのとしないのとでは、頭の働かせ方や今後の考え方が大きく異なるでしょう。

3つそれぞれを簡単に説明していきます!

4. 論理思考力

地頭力のベースとなる能力の1つが論理思考力です。ロジカルシンキングという言葉が使われたりしますが、要は「物事を筋道立てて考える」力です。これは左脳的な思考力です。

論理と聞くと難しそうなイメージをもってしまいますが、誰もが理解できるように考えて伝える力にすぎません。これはレベルの差こそあれ、誰もが無意識的に考えていることです。

「もう暑いから夏だね」と言えば北半球に住む人間なら誰もが論理が通った内容だと言えます。しかし「こんなに寒いのは夏だししょうがないね」と行った場合、頭にクエスチョンマークがついてしまいます。

単純なことですが、考えたり話す内容が複雑になればなるほど、この論理思考力がおざなりになってしまいます。先ほども紹介しましたが論理的思考を学ぶにはこの本がとてもおすすめです。以下に要点もまとめてるので、ぜひ参考にしてみてください!

関連記事

今回は「論理」を学ぶに最適な『ロジカル・シンキング』という本を紹介するとともに、本書をより噛み砕いて「どうすれば論理的に考え、書き、話すことができるようになるのか」について解説していきたいと思います。 ロジカルコミュニケーショ[…]

ロジカル・シンキング

5. 直感力

地頭力を支える2つ目が直感力です。これは「ひらめき」を伴うような右脳的な思考であり、新たな概念を生み出すことに貢献する思考力です。論理思考力を守りの思考とするなら、この直感力は攻めの思考といえるでしょう。

ビジネスの世界ではより実用的だと見られる理系的、サイエンス的な素養が重視されてきました。しかし最近では山口周さんをはじめとするさまざまなリーダーたちが「アート的」な素養の重要性を強調しています。

サイエンス的な思考で辿りつく結論はみな同じです。それを商品やサービスなどで考えるとどれも似たり寄ったりなものになってしまいます。一方でアート的な思考で考えれば、創造的で差別化された商品やサービスが生まれる可能性があるのです。

この直感力の重要性や鍛え方について知るには、山口周さんの『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』がオススメです!

関連記事

論理と直感、あなたならどちらを重視しますか? 何か重要な意思決定をするときに論理的になろうとする人は多いはずです。 「こういうデータに裏付けられてるから」 「過去の事例ではうまくいったから」 「常識的に考えて」 そのよ[…]

世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?

6. 知的好奇心

最後になりますが、地頭力の3つの思考力とそのベースである論理思考力・直感力すべてのベースとなるのが知的好奇心です。全ての思考のきっかけは好奇心にあると言っても過言ではありません。

どれだけそのほかの思考力が高くても、そもそも「これはなんだろう、なぜだろう」という疑問がなければ考えるきっかけもなければ、思考を前に進めることもできません。

本書では知的好奇心を2種類に分けて紹介しています。

①Why型好奇心: 問題解決に関する好奇心
②What型好奇心: 知識に関する好奇心
地頭力に直結する好奇心は当然「①Why型好奇心」です。一問一答的な興味は、最初に紹介した「頭が良い」例の「クイズ王」的な知識がつくきっかけにすぎません。これは自分の頭を使うというよりは、暗記に近いものです(その場で答えを知って「ふーん」で終わるケースも多々あるでしょう)。
一方で「なぜこれはこうなっているんだ」というようなWhy型好奇心は、自分の頭を使って考える必要があります。これは思考を深めるきっかけであり、イノベーションへの第一歩です。
知的好奇心というのは誰かに強制されて身につけるものではありません。自分が「知らない」ということを自覚し、疑問を持つことで習慣化する思考です

以上が地頭が良い人が持つ6つの思考力(地頭力を構成する3つとそのベースとなる3つ)でした。考えるという漠然とした言葉も、このように具体的に中身を知ることができれば腹落ちしやすいですよね?

またこれらの地頭力を構成する結論から考える「仮説思考力」、全体から考える力「フレームワーク思考力」、単純に考える力「抽象化思考力」を鍛えるトレーニング法「フェルミ推定」の方法については以下で簡潔にまとめました。参考にしてみてください!
関連記事

前回「地頭が良い人が持つ6つの思考力」として細谷功さんの『地頭力を鍛える』をもとに、考える力の本質についてのお話をしました。ここでは引き続き『地頭力を鍛える』から、地頭力を鍛える具体的な方法として「フェルミ推定」という思考ツールを紹介します[…]

フェルミ推定 入門
この結論から考える「仮説思考力」、全体から考える力「フレームワーク思考力」、単純に考える力「抽象化思考力」という3つの思考を実践することができれば、ビジネスシーンでの生産性の向上はもちろん、日々の思考力そのものが洗練されていくはずです。
特に「仮説思考力」は個人的にも仕事の効率を飛躍的に高めてくれたと思っています
これらの思考について興味を持ったという方はぜひ本書を通読してみることをオススメします!本当にこの一冊で仕事のしかた、思考のしかたが変わると思います。とても1600円足らずで手に入る知識とは思えません。

それでは楽しい読書ライフを!