【超簡単解説】ロジカルシンキングの基本「MECE」と「So What/Why So」

ロジカル・シンキング

今回は「論理」を学ぶに最適な『ロジカル・シンキング』という本を紹介するとともに、本書をより噛み砕いて「どうすれば論理的に考え、書き、話すことができるようになるのか」について解説していきたいと思います。

ロジカルシンキングのポイント

ロジカルコミュニケーション、つまり論理的に書いたり話したりすることは、「これまでの経験から訓練を積めば誰でも身に付けられると確信する」と本書では述べられています。

『ロジカル・シンキング』の著者である照屋華子さんと岡田恵子さんは、外資系コンサルティング会社大手のマッキンゼー・アンド・カンパニーにて、社内のあらゆる文書等を対象に論理構成と日本語表現の観点からアドバイスを提供する「エディティング」という仕事に従事してきた方々です。

「ロジカルシンキング」「論理的思考」というテーマの書籍では、2001年出版以来30万部売れていることからもわかるようにもっとも信頼されている本の一つです。類似書籍にバーバラ・ミント著『考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則』がありますが、ぼくは個人的に『ロジカル・シンキング』の方が日本人には馴染みやすいかなという感想を持ちました。

ではいかに論理的に考え、書き、話すことができるかについて詳しく見ていきましょう。抽象的な概論ではなく、具体的なロジカルシンキングのためのフォーマットを紹介していきます。具体的に重要な要素は「MECE」「So What?/Why So?」です。この2つの武器を使いこなすことが、ロジカルシンキングの最重要ポイントです!

このフォーマットを理解し、それに従って考えてアウトプットをすれば、しっかり伝わり、説得力のある内容を書いたり話したりすることができます。

1. 論理とは?

論理とは

そもそも「論理思考」「論理的な文章」「ロジカルシンキング」などという場合の「論理」もしくは「ロジカル」とは何を意味するのでしょう。漠然とした言葉でイメージがつきにくいという方もいるはずです。

『ロジカル・シンキング』では論理についてこのような定義づけがされています。

論理とは、結論と根拠、もしくは結論とその方法という複数の要素が、結論を頂点に、縦方向にはSo What?/Why So?の関係で階層をなし、また横方向にはMECEに関係づけられたものである。

これだけを見てもなんのこっちゃわかりませんよね。でも大丈夫です!

ここからはこれが完全に理解できるように、一つひとつできる限りわかりやすく解説していきます!

2. MECEで重複・漏れを防ぐ

MECEとは

ロジカルシンキングに必要な要素の1つ目がこのMECEです。MECEを聞いたことがある方もいるかもしれませんが、Mutually Exclusive and Collectively Exhaustiveの頭文字をとったもので、日本語にすると「ある事柄を重なりなく、しかも漏れのない部分の集合体として捉えること」だと本書では説明しています。

MECEを一言で説明するなら「漏れなくダブりなく」です。

自分の結論を相手に説得するとき、その根拠や方法に重複・漏れ・ずれがあっては、相手の理解を得ることはできない。

ロジカルシンキングにおいて、MECEは「相手に自分の結論を自然に理解してもらうために、話に大きな重複や漏れがないようにチェックする技術であり、とても重要な思考プロセスです。

大事な主張をしているときに、その内容を聞いている側が「同じこと言ってるよね…」「大事なことを言ってないような…」と思ってしまったら不信感を抱かれてしまいます。

伝えたい内容を「漏れなくダブりなく」切り分けるためには、できる限りたくさんのMECEのポケットを持つことが大切です。このMECEには大きく分けて2つのタイプがあります。

MECEのタイプ①

MECEには完全に要素分解できるパターンがあります。例えば顧客の属性を分析する際に、どのように「漏れなくダブりなく」切り分けることができるか考えてみましょう。顧客の年齢や性別、居住地域などの切り口がまさに完全に要素分解できるMECEに挙げられます。顧客年齢を10代、20代、30代と切り分けていけば、同じ顧客が複数のグループに属することもありませんし、逆にどこにも属さないなんてこともありません。

このMECEのタイプ①は基本的なパターンと言えるでしょう。

MECEのタイプ②

ビジネスの世界では、タイプ①のように完全に要素分解できるシンプルな問題ばかりではありません。実際には誰にも「漏れなくダブりなく」ということを証明ないが、説得力のある切り分けができるというパターンも数多くあります。MECEの2つ目のタイプは「これを押さえておけば大きな重複・漏れはない、という約束事になっているMECEの切り口」です。

企業や業界の分析によく使われるのが3C/4Cという切り口で、顧客・市場(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)、チャネル(Channel)で構成されるMECEは有名です。

またマーケティングの4P(Product, Price, Place, Promotion)などもビジネスの世界では汎用的に使われています。その他にも、顧客の購買行動の流れである認知→理解→動機づけという切り分けもしばしば目にします。

これらのMECEはフォーマットが決まっているので、切り口を多く覚えておくだけ便利です。

3. So What?/Why So?で論理の飛躍を防ぐ

So What/Why Soとは

MECEに並ぶロジカルシンキングに欠かせない思考プロセスがSo What?/Why So?です。

「よって」「したがって」「このように」の前後で話に飛びがなく、伝えての言いたい結論と根拠、結論と方法のつながりを、相手にすんなりと理解してもらうことの重要性は言うまでもない。

本書では論理の飛びを防ぐための技術としてSo What?/Why So?が紹介されています。

So What?というのは、「結局どういうことか」の答えです。よく「よって」「したがって」などの文章の後に、前に述べたこととつながりのない内容を持ってくる人がいます。論理的につながっていないと「結局何が言いたかったんだろう」という疑問を持たれてしまいます。

Why So?というのは、So What?した結論に「なぜそういうことが言えるのか」を問いかけることです。自分が伝えたい結論に相手が納得できるだけの根拠がなければ、理解されることはありません。

このSo What?/Why So?は結論と根拠の関係を結ぶ重要なもので、まさにお互いが表裏一体の関係になっています。各根拠に対しSo What?で導き出される結論と、その結論をWhy So?で導き出される根拠で支えます。

MECEの場合は、切り口を覚えておけばいつでも使えるものですが、このSo What?/Why So?をうまく使うためには日頃から考える癖をつける必要があります。「要するに何が言えるのか」「なぜそう言えるのか」ということを常に考えることがロジカルシンキングのトレーニングになります。

またSo What?/Why So?にも2種類のタイプがあります。

So What?/Why So?のタイプ①

1つ目のタイプが「観察のSo What?/Why So?」です。これについては本書でこのように解説されています。

「観察」のSo What?は提示した事実を全体集合として、そこから言えることを要約する作業であり、Why So?は要約された観察結果を要素分解して検証する作業になる。

例えば本書『ロジカルシンキング』の特徴について、このような点が挙げられているとします。

・ロジカルシンキングに特化して体系的にまとめられたビジネス書
・取り扱うテーマが非常にニッチである
・ビジネス書類の作成やプレゼンテーションなどを必要とするビジネスパーソンが読者対象

これらの特徴をSo What?つまり「結局どういうことか?」と考えると、このような要約ができます。

『ロジカルシンキング』の内容はニッチなテーマに特化しており、ターゲットもビジネスパーソンに特化している。
そしてWhy So?つまり「なぜそう言えるか?」でしっかり各根拠に基づいた結論であるかを検証します。すると上の例でも、要約した結論が各特徴でも述べられていることがわかります。
このように「何が言いたいか」が明確になり、しっかりその主張に裏付けられる根拠があることを確認できるのが、「観察のSo What?/Why So?」です。

So What?/Why So?のタイプ②

So What?/Why So?の2つ目のタイプが「洞察のSo What?/Why So?」です。本書ではこのように解説されています。

洞察のSo What?/Why So?は、ある状況を示す複数のデータの中からそこに存在するであろう一定のルールや法則性を導き出したり、自社としてとるべきアクションや自社にとっての影響を考えるというように、ある情報から、それとは種類の違う情報を引き出す作業だ。

つまり「洞察のSo What?/Why So?」を簡単に言えば、複数の事象を抽象化し、他のことで応用できないかと考えることです

先ほども述べた例に関連させて、『ロジカルシンキング』が長く売れ続ける要因としてこのような特徴があるとします。

・ロジカルシンキングに特化して体系的にまとめられたビジネス書
・取り扱うテーマが非常にニッチである
・ビジネス書類の作成やプレゼンテーションなどを必要とするビジネスパーソンが読者対象
これを先ほどは「観察のSo What?/Why So?」で、このように結論を提示しました。
『ロジカルシンキング』の内容はニッチなテーマに特化しており、ターゲットもビジネスパーソンに特化している。
さらに架空の書籍を例に加えて、『就活生のためのロジカル面接』という本の特徴を「観察のSo What?/Why So?」で要約したとします。その場合このような結論が言えそうだとします。
『就活生のためのロジカル面接』の内容はニッチなテーマに特化しており、ターゲットは就活生に特化している。
ここでこの2冊『ロジカルシンキング』と『就活生のためのロジカル面接』の要約した結論に対して、「洞察のSo What?/Why So?」を問います。何かルールや法則性のようなものは見えるでしょうか。
特徴のある商品で特定の顧客セグメントをつかんでいる。

というような法則が抽象化できるでしょう。そしてこれを「なぜそう言えるのか?」という問いで検証して、しっかり根拠に支えられた結論であることを確認します。この2冊がヒット商品なら、「テーマを尖らせて明確にし、ターゲットも絞り込む」というようなことが売れるためのビジネス書作りのヒントとして応用できるかもしません。

「洞察のSo What?/Why So?」は大変有用なものですが、重要なのは、先ほどの例で紹介したプロセスからもわかるように、「観察のSo What?/Why So?」の上に成り立つものだということです。まずはSo What?/Why So?のタイプ①ができる訓練をしましょう。

4. 論理的な構造を作ろう

以上で紹介したMECEとSo What?/Why So?こそがロジカルシンキングにとっての最重要ポイントです。ここで先ほども紹介した論理の定義に戻りましょう。

論理とは、結論と根拠、もしくは結論とその方法という複数の要素が、結論を頂点に、縦方向にはSo What?/Why So?の関係で階層をなし、また横方向にはMECEに関係づけられたものである。

つまりイメージ化するとこんな感じになります。

ロジカルシンキングの論理構造
ロジカルシンキングの論理構造

このビジュアル構造は本書で紹介されているものであり、例になっている課題はぼくが考えてみました。稚拙な部分もあるかもしれませんが、できる限りシンプルな内容にしてみました。

このロジカルシンキングの論理構造を考えるポイントを3つに整理するとこうなります。

・要件1 結論が課題(テーマ)の「答え」になっている。
・要件2 縦方向に結論を頂点としてSo What?/Why So?の関係が成り立つ。
・要件3 横方向に同一階層内の複数の要素がMECEな関係にある。

ここまで詳しく述べてきたSo What?/Why So?とMECEについては要件2・3で述べられている通りです。さらに最も根本的な問題として、あなたがどのような課題に対して答えようとしているのかが重要です。

「言っていることはそれっぽいんだけど、話がそれてしまっている」「課題に対する答えになっていない」ということも多々あります。木を見て森を見ずという言葉もある通り、そもそもなんのための結論かということを改めて振り返ることも重要です。

最後に

以上が『ロジカル・シンキング』で紹介されている論理思考のフォーマットと流れになります。ビジネスシーンにおける書類作成やミーティングでの発言、プレゼンテーションから、日常的な話す・書く場面でもとても役に立ちます。

厳密なロジカルシンキングを実現するために本書で書かれていることは他にもあるので、もっと自分の論理に磨きをかけたいという方はぜひ一度全体を読み通すことをおすすめします。

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それでは楽しい読書ライフを!