直感と美意識の鍛え方 【世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?】

世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?

論理と直感、あなたならどちらを重視しますか?

何か重要な意思決定をするときに論理的になろうとする人は多いはずです。

「こういうデータに裏付けられてるから」
「過去の事例ではうまくいったから」
「常識的に考えて」

そのように考えると、出した答えはたしかに「正解っぽい」ものにはなります。
仕事における意思決定の局面ではこのような論理的な考えを求められることも多いでしょうし、プライベートにおいても周りを説得するためにそれらしい言い訳を考えるのではないでしょうか。

しかし今、もう一方の「直感」を重視すべきだという主張について考える必要があると思うのです。

論理よりも直感の時代

これまでのような「分析」「論理」「理性」に軸足をおいた経営、いわば「サイエンス重視の意思決定」では、今日のように複雑で不安定な世界においてビジネスを舵取りをすることはできない

これは山口周さん著『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」』からの引用です。

つまり、今の時代は、サイエンス的論理思考だけでなく、アート的な直感思考が重要になってきているということです。
本書では主にビジネスの経営における意思決定について語られていますが、これはこれからの時代を生き抜くために一個人として非常に大切な考え方です。

どうして今、このような直感を重視すべきなのでしょう。
もっとも大きな背景は、論理的な思考の限界が見えてきたからなのです。論理的思考の欠点は二つあります。

一つ目は、論理的に考えた末に出る答えはみんな同じになってしまうということです。この「正解」を見つける力は課題解決力というような言葉で、過去には重宝された能力でした。

しかし、今モノが溢れ、あらゆる不便が解決された世の中では、もうその誰もが出している「正解」に価値はありません。「早く移動する手段が欲しい」ために人は自動車を作り出しました。

その正解はとても価値のあるものでしたが、今自動車を論理的に合理的に生産しようと低コストでスペックが高い車を作っても、それはどのメーカーもやっていることなので、価値は相対的に低くなってしまいます。ましてやAIなどが本格的に実装されれば、この論理性で人間が勝つことは難しいでしょう。

もう一点の論理的思考の欠点は、今の世の中は不安定で予測不可能すぎるので、論理的な思考は通用しなくなってきているということです。テクノロジーの発展や、システムの変化が著しいこの時代、論理的に未来を予測することはほぼ不可能です。ある程度正しい結果が待っていたとしても、それはすぐに変化してしまいます。

直感的な思考が重要になってきた背景は、他にもありますが、主なものは上記の通りです。

「フワッ」と浮かんだアイデアが優れたものであるかどうかを判断するためには、結局のところ、それが「美しいかどうか」という判断、つまり美意識が重要になる

自分の外にある要素を組み立てて論理を形成していくのではなく、自分の内にある「直感」「美意識」「真・善・美」に答えを求める。これがいかなる局面でも重要になってくるのです。

直感や美意識を鍛える方法

では、その直感や美意識はどのように鍛えればよいのでしょうか。本書『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』で紹介されているトレーニング方法を三つ紹介します。

1. 絵画を見る

米国エール大学のとある研究で、アートを見ることによって洞察力が向上することが証明されたといいます。

この絵画を見るという方法で、観察眼つまり「見る力」を養います。この「見る力」というのは、ちょっとした気づきから大きな洞察を得るという力でもありますが、ステレオタイプなモノの見方やパターン認識から解放してくれるというのが大きな特徴でもあります。

ぼくたちは生きている中でさまざまなことを経験し、その経験を活かして効率的に物事を判断しています。しかし、それは「変化を捉える、変化を起こす」には足かせになっていると著者は言います。

そこで、VTS (Visual Thinking Strategy)という方法でこの「見る力」を養っていきます。これは「平たく言えば、ビジュアルアートを用いたワークショップによる鑑賞力教育」ということになるそうですが、徹底的に作品を「見て、感じて、言葉にする」ことが求められます。

具体的な方法は以下の通りです。

  1. 何が描かれているかを言葉にする
  2. 絵の中で何が起きていて、これから何が起こるかを考えて言葉にする
  3. どのような感情や感覚が自分の中に生まれているかを言葉にする

まずはこの絵画で試してみましょう!

Edward Hopper, Ground Swell, 1939
Edward Hopper, Ground Swell, 1939

2. 哲学に親しむ

哲学なんて言葉を聞くと、難しそうだな〜と思ってしまいますよね。

しかし、ソクラテス、プラトン、アリストテレス、ロック、ルソー、マルクスなど、何人かの哲学者の名前は聞いたことがあるのではないでしょうか。
日本ではあまり哲学について学ぶという授業が学校教育ではありませんが、海外のエリートたちにしてみれば必修科目だといいます。

では哲学から何を学ぶべきかというと、以下の三点です。

  1. コンテンツからの学び: そのて哲学者の主張する内容そのもの
  2. プロセスからの学び: その主張に至るまでの気づきと思考の過程
  3. モードからの学び: その哲学者の世界や社会への向き合い方や姿勢

①については、教養として知っておくべきではあるものの、現代において彼らの過去の主張が「誤り」だったことは数多く証明されています。しかし②、③についての重要性を著者は強調しています。

その哲学者がなぜそのように考えたのか、どのような知的態度でもって世界や社会と向き合っていたのか、という点については、いくら実際の論考内容=コンテンツが誤りであったとしても、私たちにとって学びとる点はたくさんあるわけです。

この哲学について学ぶ方法は特に指定されていませんが、ぼくの個人的なおすすめは、『世界十五大哲学』という文庫本です。あの現代の知の巨人ともいえる佐藤優さんが推奨していたのをきっかけに購入しましたが、哲学の「て」の字もわからなかったぼくでも理解できるほどわかりやすく、哲学とはなにかというところから、各有名な哲学者についての解説が掲載されています。

3. 文学を読む

直感や美意識を鍛える方法の三つ目は、文学です。小説などを読む方はこれがもっとも身近なトレーニング方法になるではないでしょうか。

著者が戦略コンサルティング業界において見てきた経験から、文学と美意識の関係性について以下のように述べられています。

「偏差値は高いけど美意識は低い」という人に共通しているのが、「文学を読んでいない」という点であることは見過ごしてはいけない何かを示唆しているように思います。

どの本を読むかについて、名作と呼ばれるものにハズレは少ないというのは間違いないですが、とりあえず親しむためにはどんな文学だっていいと思うのです。

それこそ最近の小説でも、読み方さえしっかりしていれば好きな本を読みましょう。

「この物語の中で本当の罪人は誰でしょう」「主人公の行動は正しかったのか」など数多くの物語からの問いに気づき、考えることが重要です。自分の価値観つまり「直感」や「真・善・美」に照らし合わせることが重要です。

『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』はどんな内容?

今、世界中のエリートがMBAなどの分析的スキルよりも、アートのような美意識を学んでいるという現状を紹介し、その背景や美意識の重要性について説いたビジネス書です。論理や分析などのサイエンス的思考でたどり着ける答えのコモディティ化を危惧し、直感や美意識などのアート的な感性に目を向けるべき時代がきていると著者の山口周さんは言います。どのような時代の変化が起きているのでしょう。どうすれば直感や美意識を鍛えることができるのでしょう。その答えが本書にあります。

明日からはじめよう!

『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』から学ぶべき、明日からはじめたい行動内容は、

絵画を見る

です。

とにかく見たもの、感じたことを言語化することが重要です。直感や美意識を鍛える方法の一つとして上記で紹介しましたが、哲学に親しむ、文学を読むなど自分の好きなものからスタートしてみてはいかがでしょうか。

山口周さんの本はこちらもおすすめです!

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