【池上彰の伝える力を盗む】話す・書くがうまくなる7つのコツ

池上彰『伝える力』

今回は、池上彰さんの圧倒的な「伝える力」を身につけるために知っておくべきことについてお話します。話すことと書くことに焦点を当てて、具体的にどんなことを意識すれば相手にわかりやすく伝わるのかを解説していきます。

今や知らない人はいないジャーナリスト・池上彰さん。複数の大学で教授を務めていたり、ニュースや学習をテーマとした教養番組などのテレビで活躍する姿は、もはやいちジャーナリストという立場を超えて唯一無二の存在と言えるでしょう。

特に、社会の難しい問題などを誰にでもわかるように説明する力において右に出る者はそういないだろうなと感じます。

池上さんは、「週刊こどもニュース」というNHKの番組で、子どもたちにもわかるようにニュースを解説するという仕事を11年間続けられたそうです。池上さんの「伝える力」のルーツは、NHKの記者やキャスターに加え、このような番組出演にもあるのでしょう。

池上彰さん著『伝える力』は、ビジネスパーソンだけでなく、あらゆる人にとってのコミュニケーションの「バイブル」となりえます。ビジネスパーソンにとって、わかりやすい文章を書いたり、相手に自分の考えを明確に話すことは必須のスキルです。

身近な生活においても、美しい景色を見た、美味しいご飯を食べた、面白い出来事に出会った、そんな体験を誰かに話したいという欲求が常にあるはずです。ときにはお願い事や頼み事をするために、自分の思いをなんとか伝えたいということもあるでしょう。

それでは『伝える力』を基に、上手に文章を書き、話し、伝える7つのコツを池上彰さんに学んでいきましょう。

1. 自分がしっかり理解する

「伝える」ために大事なこと。
それはまず自分自身がしっかり理解することです。自分がわかっていないと、相手に伝わるはずがないからです。

何か物事を相手に伝えたいときは、それを相手に知ってほしいと思います。しかし、重要なのはまずは自分が理解していることなのです。

自分が理解していないと、説明も表面的なものになってしまいます。相手が「それってどういうこと?」と聞く耳を持っても、より詳しく説明してあげることは難しいでしょう。

特に子どもなどが典型ですが、わかっていない相手に物事を伝えるには、わかりやすく簡単に説明する必要があります。わかりやすく簡単に説明するということは、その物事の本質を捉えていないとできません。

まずは第一に自分自身がしっかり理解できるまで、調べて、考えることに時間を使いましょう。

2. どのように理解を深めるか

何かを調べるときには、「学ぼう」「知ろう」という姿勢にとどまらず、まったく知らない人に説明するにはどうしたらよいかということまで意識すると、理解が格段に深まります。

これは「1. 自分がしっかり理解する」と表裏の関係にあるといえます。そもそも何かを学ぶ時には、誰かに伝えるというアウトプット前提で考えると、理解の精度があがります。なぜなら、自分がしっかり理解していないと相手に伝えることはできないからです。

また「自分が知らないことを知る」ということも、理解の入り口であり、重要なポイントです。無知の知ともいわれますが、「自分が知らないということにも気づいていない」状態では何かを学ぶ機会は訪れません。

ここで厄介なのは、一見難しくなさそうに思える事象や言葉です。たとえば、ニュースや新聞で取りざたされる「逮捕」。その逮捕の礼状ある逮捕状を出しているのは誰かわかりますか?多くの人は警察だと考えるでしょう。しかし、答えは裁判官です。

このように、「そもそもどういう意味だっけ?」と疑う力が、理解をするためのきっかけになります。さらなる問題は、暗記しただけでは「理解した」ことにはなりません。この逮捕状の例でいうと、「なぜ逮捕状を出すのが、警察ではなく裁判官なのか?」という本質を突き詰めて考えることが本当の理解につながります。

3. 「もう一人の自分」でツッコむ

物事を誰かに伝える場合は、独りよがりにならないようにすることです。そのためには、「もう一人の自分」を持って、それを育てていくとよいでしょう。

自分の考えを相手に伝えるときに、相手が自分と同じように理解できると思わないことが大切です。自分本位だと、相手が自分と同じように理解してくれる前提で話したり、書いたりしてしまいがちです。

伝える内容を客観的に見ることが欠かせません。気軽にフィードバックをもらえる人がいれば、意見を聞いてみるのも手でしょう。もっと気軽なのは、自分の中の「もう一人の自分」という意識で、「文章がわかりにくくないか?」「これ、本当におもしろいか?」などとツッコむように自問自答していくことで、その伝えたい内容は洗練されます。

4. 難しいことも簡単に書く・話す

「簡単なことは簡単に」「難しいことも簡単に」
これは、何かを伝えるときの基本です。

池上さんは記者として訓練を受けたときに「中学生にもわかる原稿を書け」と指導されたそうです。「1. 自分がしっかり理解する」でも説明しましたが、ある物事を知らない人に説明するときは、自分がしっかり理解していないと相手が理解できるように伝えることができません。

この「中学生にもわかる」というのは絶妙なポイントです。ビジネスの世界だろうが、日常的な会話だろうが変わることはありません。「簡単に説明すると、その内容の重要度が低くなってしまいそう…」という懸念もあるかもしれません。

難しいことを易しく表現したからといって、中身自体の質が高ければ、中身が色褪せることはありません。

池上さんはこう考えます。簡単に説明できるということは、伝える相手や場に合わせて、レベルを調整することもできるはずです。まずは「中学にもわかる」ように伝える意識を持ちましょう。

5. 便利な言葉に頼らない

便利な言葉を使っていると、使う人が思考停止になってしまう恐れがあることを、知っておきましょう。

この便利な言葉の代表が、「〜性」「〜的」という言葉で、誰でもあらゆる会話や文章の中で使っているのではないでしょうか。

例えば、「この手帳は機能的で利便性が高い」と言った場合、たしかになんとなく意味は通じるでしょうし、なんとなくポジティブな印象も受けるかもしれません。しかし、何一つ具体的な特徴などは伝わってきません。本当に伝えたいこと(話し手にとって)や知りたいこと(聞き手にとって)は、「どんな機能があって、なぜ便利と言えるのか」ということなはずです。

その手帳は「日毎のスケジュールに区切られていて、自由なメモ欄もあるから使いやすい」と説明すれば、伝わる内容が全く異なります。

ついつい使ってしまう便利な言葉を、考えることなく使っていたら、少し注意してみましょう。本当に伝えたいことをもう少し詳しく考えてみる必要があるサインです。

これは言われないと気づけない点かもしれません。ぼく自身も本書を読んで、このような指摘をされてよかったと思います。

6. なるべく使用を避けたい言葉

本書では大きく分けて4つの「文章で使用を避けたい言葉」が挙げられています。その4種類と使ってはいけない理由を解説していきます。これらはついつい文章中で使ってしまいがちなので、注意が必要です。

①そして/それから
②順接の「が」
③ところで/さて
④いずれにしても
①そして/それから
「そして」「それから」などの接続詞が多い文章は幼稚になりがちだといいます。文章の論理が続いていたり、時間の経過が明らかなら、「そして」「それから」を使わなくても十分伝わる文章になります。
②順接の「が」
「〜ですが」「〜だが」の「が」は通常逆説の意味で用いられます。「が」の前後で意味が反対になっていれば自然な用法です。しかし、「が」を順接として使っている文章はよくあります。
例えば「彼は仕事ができるが、スポーツもできる」はなんとなく自然に見えます。これは「彼は仕事ができるし、スポーツもできる」で問題ないわけです。
話すときにはそこまで厳密にする必要はありませんが、文章では順接や曖昧な「が」を使うと非常にわかりにくい文章になってしまうので、注意しましょう。
③ところで/さて
「ところで」「さて」の使いすぎは、論理の積み重ねの腰を折ってしまうことになります。本当に話題を変えたりするタイミングでの使用は適切ですが、スムーズな文章をこころがけたい場合は、気をつけたい言葉です。
④いずれにしても
「いずれにしても」は、絶対に使ってはいけないと池上さんは主張します。その直前まで書いていたことの論理に関係なく話を無理にまとめる言葉が「いずれにしても」なのです。せっかくそれまで積み重ねた論理がこの一言で台なしになってしまいます。

7. 小説を読んで良質なインプットをする

「書く」行為や「話す」行為をアウトプットとすると、インプットは「読む」行為といえます。質の高いアウトプットをするためには、インプットが欠かせません。

昨今、ビジネス書などでは「アウトプットこそ全てだ」というような論調も目にしたりします。もちろん最終的にはアウトプットをすることで初めて世界に何かを生み出すことができます。しかし、何もないところからは何も出てきません。

常に良質なアウトプットをするための土壌をインプットによって、整えておく必要があるのです。そこで池上さんは、読書、とりわけ小説を読むことをおすすめしています。

小説を読むことのメリットは大きく4点あります。

小説を読むメリット①

小説からは、イメージの伝え方が学べます。相手に何かを伝えるときには、自分のイメージを相手に共有する必要があります。その共有方法は言葉でしかありません。その点小説は、頭の中に絵が浮かんでくるような、読者の想像力をかき立てる文章で構成されています。自分がありありと想像できていると感じた場面で、「どういう書き方をしているんだ?」と意識的に分析してみましょう。

小説を読むメリット②

小説に登場する人物の人生を疑似体験できることも、小説を読む大きなメリットです。たった一つの身しかない人生の時間は限られています。しかし小説を読むことで、描かれている状況を自分も疑似体験することができるのです。登場人物がどのような判断をするか、自分だったらどうするかなどを考えることで、人生にとって多くのことを学べます。自分の中に引き出しが増えるのです。

小説を読むメリット③

読書の中でも、ぼくたちが受けられる小説ならではの恩恵が、「感性を豊かにしてくれる」点です。感動したり怒ったり笑ったりすることで、完成は豊かになります。それは話すときにも文章を書くときにも「人間としての幅」となって現れてくると池上さんは言います。

小説を読むメリット④

これが読書をする上でもっとも知られたメリットだと思いますが、ボキャブラリーが増えることはアウトプットをする上で強力な武器になります。気になった言葉を調べる、知っていたけど使い方が特徴的な文を参考にする。小説はまさにボキャブラリー・表現の宝庫です。これを有効活用しない手はありません。

以上7点が、池上彰さんの『伝える力』を参考にした「話す・書くがうまくなるコツ」であり、伝える力を鍛える方法です。ぜひ実践してみましょう。

『伝える力』を行動に移す

『伝える力』から学ぶべき、明日から始めたい行動内容は

小説を読む

です。小説を読んでインプットの質を高めアウトプットにつなげましょう。小説を読むメリットは上記の通りです。また、その小説を誰かに紹介して魅力を伝えてみましょう。伝えるべきポイントが自分でもしっかり理解できていないと説明も難しいはずです。伝える絶好の練習機会になるはずです。

本書には池上さんの伝えるための知識が凝縮されています。200万部売れているという事実からも、間違いはない本です。ぜひお手にとってみてください。

それでは楽しい読書ライフを!

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