一生使える熟読術「分析読書」の実践方法【決定版】

分析読書

読書の入門書決定版とも言える『本を読む本』の読書レベル3「分析読書」の方法を紹介していきます。

「分析読書」は熟読・精読であり、一つの本を徹底的に読み、自分の頭でしっかり考え、理解するための読書法です。

現代で情報を得ようとするときには、すでにとても便利なテレビや雑誌、ネットなどがあります。本を読むよりも簡単だと思う人もたくさんいるでしょう。

しかし、より便利になったマスメディアなどの情報は、便利になりすぎてしまったがゆえに、ぼくたちが自分の頭で考える必要性や考える力を奪っているとも言えます。

テレビなどからの情報を得て、知識が累積し、頭を使った感じがしてしまうのも無理はありません。

しかしそのような状況だからこそ『本を読む本』は読書の重要性をこう説きます。

このような外からの刺激に反応していると、自分の精神も活動しているような錯覚におちいる。だが、外部からの刺激は麻薬と同じで、やがて効力を失い、人間の精神を麻痺させてしまうのだ。自分の中に精神的な貯えをもたなければ、知的にも、道徳的にも、精神的にも、われわれに成長は止まってしまう。そのとき、われわれの死がはじまるのである。

だからこそ、読書、とりわけ熟読による深い思考が必要なのです。

ここで紹介する熟読法「分析読書」は読み手にはかなりの努力が求められる読書術です。読む本全てで実践できるかと言えば、それは効率的ではないと言わざるをえません。なぜなら熟読に値しないような本が世の中にはたくさんあるからです。

そこでまずは念の入れて時間をかけてじっくり読むべきか、分析読書をすべきかという判断を下すために、前回紹介した「点検読書(読書レベル2)」が役に立つわけです。

取り組んだ本を完全に自分の血肉と化するまで徹底的に読み抜くことである」というように、大変な作業である一方で身につくものも計り知れません。何十冊、何百冊を「なんとなく」読むよりも、目的を持って1冊の本を「分析読書」によって読む方が得るものは大きいでしょう。

そんな「分析読書」には15の法則がありますが、具体的な手順とともに10の項目に簡潔にまとめました。「分析読書」は大きく分けて、「概略」「解釈」「批評」の3つの段階から成る熟読法です。

分析読書その1. 何に関する本かを知る

整理されたデスク

①本の種類を特定する

「分析読書」の第一の手順は、その本がどんな種類の本かを知ることです。フィクションなのかノンフィクションなのか。フィクションなら小説なのか戯曲なのか。ノンフィクションなら哲学書なのか歴史書なのか数学書なのか。などの種類を特定する必要があります。

「できれば読みはじめる前に知る方がよい」と言われている通り、まずはタイトルや目次などから推察していきましょう。この第一の手順は、読書レベル2の点検読書が活かされる部分でもあるので、こちらも参考にしてください。

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点検読書

②本全体を簡潔に説明する

どのような種類の本かがわかったら、次は前もって本の全体を知る必要があります。細部を読む前に全体を理解していることのメリットはかなり大きいと言えます。

その全体の説明を2~3行、多くても5行くらいの文でまとめてみましょう。これは、著者の意図や著者が何を言おうとしているかというテーマを指します。その本の前書きなどに当たる部分で述べられていることが多いので、注意深く読んでみましょう。

こちらも前段階の「点検読書」をしていると、すんなり理解できるはずですので、やはり「点検読書」の下読みは欠かせないプロセスです。

③本の構成を理解する

②で全体のテーマや主張を把握すると同時に、どの本の構成も把握する必要があります。著者の主な主張や扱うテーマはどれで、それがどのような部分で構成させ、どのような順番で述べられるか。さらにその各主要部分を支える下位部分はどれかなどを明確にしましょう。

本の構造化
このように主な部分がどのように支えられているかを細かく見ていく必要があります。

それは目次と同じじゃないの?と思うかもしれませんが、ときに自分で整理した構成の方が優れている場合もあります。目次を参考にするのはもちろん有益ですが、自分の頭でも再構築してみましょう。

ここでは目次のように簡単な概要だけを書いておけばOKです。その内容に詳しく立ち入ったことまで書く必要はありません。

④著者が扱う問題を知る

著者は何か主張したいことやある問題を解決するために本を書いています。その著者が答えようとしている問題は何かをしっかり把握しましょう。②、③の手順と関連しているので、さほど難しいステップではないはずです。

主要な問題が複合的に構成されている場合は、それを構成する小さな枝葉の部分まで詳しく書き出してみましょう。

少し抽象的に書きますが、たいていは、「〜は存在するか」「〜はどんな種類のものか」「〜が存在する原因はなにか」「〜の目的は何か」など人間が抱く疑問に集約されるはずです。

分析読書その2. 本の内容を解釈する

読書する人

以上4つのステップで、本の全体や構造がわかったところで「分析読書」の第一部は終了です。次に第二部「本の内容を解釈する」に移っていきます。

⑤単語を理解する

第二部「本の内容を解釈する」はいわば、著者と折り合いをつける部分だとも言えます。著者が放つ言葉を、意図通りに汲み取らなければなりません。

そのためにまず、重要な単語を見つけ出すことからはじめましょう。第一部で全体のテーマや主張が理解できていれば、重要そうな単語もわかってくるはずです。

それを見つけ出し、その単語の意味を正確につかむ必要があります。単語の意味というのは、知らない単語ならば辞書をひくなどすればいいですが、当たり前に使っている単語にも複数の意味がある場合があるので、慎重に理解に努めなければなりません。

例えば、本を「読む」といってもいろいろな意味があります。「娯楽のために読む」「情報を得るために読む」「理解を深めるために読む」など、著者が意図した「読む」は必ずしもあなたが思っている意味ではないかもしれません。

⑥文を理解する

⑤の単語の理解を文という単位で行います。ここでも、まず重要な文を見つけ出します。ビジネス書などは重要な主張が太文字になっていたりしますが、たいていの本にそのような目印はありません。目次を有効活用したり、⑤で把握した重要な単語を足がかりに、重要だと思う文を見つけます。

そしてその文もまた、正確に意味を理解する必要があります。一番良いのは、その文の意味を自分の言葉で言い換えてみることです。そうすればしっかりその内容が理解できているのかがわかります。

⑦根拠を探す

⑥で把握した重要な文には、著者の大切な主張が含まれています。ここで行うのは、その主張を裏付ける根拠(『本を読む本』ではその文の命題に対する論証という言葉で表されています)を見つけるということです。

その重要な主張を支えるもっとも重要な論証(根拠)が含まれる段落を探します。そのようなまとまった段落がない場合は、あちこちに散りばめられた文を集めて論証を構築する必要があります。

⑧著者の解決が何であるかを検討する

「分折読書」第二部の最後は、著者が解決しようとした問題のうち、解決できたのはどの問題かを振り返るステップです。解決を目指す途中で、新たな問題にぶつからなかったか、または解決できなかった問題はなかったかを検討します。

分析読書その3. 本を正しく批評する

本を持つ少年

分析読書第一部は「概略」、第二部は「解釈」のプロセスだったと言えます。一般的な熟読では、ここまですればかなり深くまで本が読めたと言えるでしょう。しかし、本の内容を理解して満足ではもったいないと言えます。

自分(読者)がその内容をどのように受け止めるか、どのような言葉をアウトプットするかが読書の中でも、自身を成長させる最も重要な部分です。

⑨賛成か反対かの判断を下す

「分析読書」第三部では、まずその本や著者の主張に対して、賛成か反対か、あるいは判断保留かを明らかにすることです。ただし、「この本がわかった」とある程度確実に言えなければ、賛否の判断には正当性を書いてしまいます。著者からすると、「わかってないのに何言ってんだよ」となってしまいますよね。

なので①から⑧までのプロセスをしっかり踏み、本の内容を賛否関わらず、まずは理解する必要があるのです。

⑩論理的に反論する

もし納得できないような立場になったなら、しっかり筋道を立てて反論することにしましょう。「けんか腰はよくない」と言うように、反論には客観的な説得力が必要ですし、自分が間違っているとわかった上で、相手を言い負かしたところで何にもなりません。

もし批評的な立場をとる場合でも、相手(著者)に歩み寄る努力をしてみるというものです。同意「する」必要はなく、同意「できる」かどうかに注目します。

本に何か自分の意見と違う箇所を見つけたら、まず読み手はその反論が自分の誤解から生じていないかを考える必要があります。客観的な事実と主観的な意見をはっきり区別することが重要です。どのような判断にも、必ずその根拠を示す必要があるというわけです。

この第三部の「批評」パートでは、もう少し詳しく注意点が述べられていますが、まずは基本だけ身につけておきましょう。

最後に

以上が基本的な本の熟読法「分析読書」の手順です。一冊の読書にしては、かなりの時間と労力をかけることになります。しかし、自分の血肉となったその学びは、あなたの一生ものの財産になっていくはずです。

ここでぼくが主張したいのが、本を読んで、理解して、自分の考えを形成するというプロセスにもう一歩先があるということです。それは「行動にうつす」ことです。

まずは、本気で読書に磨きをかけたい方には、本書『本を読む本』を読んでいただき(この記事でも十分実践できると思います)、この「分析読書」を実践していただきたいです。

そしてその熟読術で、本を読んでいく中で、その内容をしっかりあなたの人生に反映していくことができれば、読書ほど有益な行いはないはずです。

それでは楽しい読書ライフを!