AI(人工知能)が発展し、人間を超える日が来るといわれて久しい今日この頃。
アメリカの人工知能研究の世界的権威レイ・カーツワイルは、そんな日が2045年ごろに到来するということを、「シンギュラリティ」という言葉を用いて予測しています。
シンギュラリティとは「技術的特異点」のことを指し、コンピューターが人間の知能を超える転換点あるいはそれによって起こる変化のことです。人工知能が自分の人工知能より優れた人工知能を生み出すことが可能となり、それが加速度的に繰り返されることで起こること人間の知能を上回るというものです。
しかし2045年まで待たずとも、コンピュータはものすごい速さで進化しています。テクノロジーの発展により、これまで身につけてきた専門的技能は誰にでもコピー可能になってしまったものもあるでしょう。コンピュータ自身が人間に取って代わる労働力となることもあります。
このような時代をいかに生き抜いていくべきかについて、落合陽一さんは『超AI時代の生存戦略』にていくつかの提言をしています。
そこで鍵となるのが「ワークアズライフ」という生き方です。今回は、この「ワークアズライフ」とはどのようなもので、どうやってそれを実現すべきかについて落合さんに学んでいきたいと思います。
ワークアズライフとは?
“Work As Life” 直訳すると「生活としての仕事」「生活をするように仕事をする」という意味ですが、まさにそんな生き方がワークアズライフです。
筑波大学学長補佐・助教授でありメディアアーティストとしても知られる落合陽一さんが提唱する、働き方ひいては生き方です。
これまで「ワークライフバランス」という言葉はしばしば耳にしたことがあるでしょう。この考えの解釈も多様だと思いますが、この言葉を聞くと、仕事は仕事で割り切って働いて、プライベートでリフレッシュするというイメージが先行してしまうのはぼくだけではないはずです。
現に仕事で溜まったストレスを、プライベートで発散するという人は多くの企業にいるのではないでしょうか。
しかし、インターネットと通じて情報がどこでもアクセスできるようになった今、いつでも仕事とプライベートは混在する環境になりました。
そのような時代では、「余暇のようにストレスレスな環境で働けるように環境を整えていくことが重要」だと落合さんは言います。
これは休日をだらだらエンタメ(テレビを見たり)で潰すということではありません。ライフ(プライベートと見なされていた領域)においても戦略を定め、オリジナリティのある人材を目指すことが重要なのです。
ストレスなく好きなことで働き、結果個性あるオリジナルな価値を持つ生活をおくれれば理想だと言えるでしょう。これがワークアズライフの生き方です。
このワークアズライフ的な生き方を早くから提唱していたのが、落合さんも唯一無二のクリエイティブクラスの人材だと認める佐藤可士和さんです。
クリエイティブ。 このワードを聞いてどんなことを思い浮かべますか? 個性的なアートでしょうか。センスのあるデザインでしょうか。 いずれにしても、なにか特別な才能で、自分にはあまり縁がないと思っている人も多いのではないでしょうか。 […]
ではこのワークアズライフをどのように実現し、今後AIなどを脅威に感じずに楽しく生きていくべきなのでしょうか。
ブルーオーシャンを狙う
血を血で洗うような競争が起きている領域のことをレッドオーシャンと呼んだりします。
例えば、パソコンメーカー(あくまで例です)。需要はあるし、数多くのメーカーがいます。しかしスペックや多少のデザインの違いなどあれど、どんなパソコンを買ってもよほど専門的なことに使わなければたいていのことはできてしまいます。そうなると消費者はできるだけコストを抑えたいので、同じ性能なら安いパソコンを選びますよね。結果価格競争に陥って、メーカーも苦しくなっていくというのがレッドオーシャンの典型です。
一方で、「赤い海」と対比して「青い海」つまり争いのない領域をブルーオーシャンと言います。もともとはW・チャン・キムさんの『ブルー・オーシャン戦略』の中で提唱された経営戦略論です。
このブルーオーシャン的な戦略が、ワークアズライフを実現するキーポイントの一つです。要は、人と違うことをして、その道が正しいと信じることです。他人との競争に陥らず、オンリーワンの価値を提供できることはもちろん、何をやるかが決まっていない状況では人間に勝てないコンピュータに対しても優位性があると言えます。
ブルーオーシャンを見つける上で必要なことは、「今この世界で誰が何をやっているかを知っておく」ことです。まだ空いている領域を見つけるには、埋まっているところを知っておく必要があります。
また時代性を知るということも重要です。ゼロから何かを生み出すことができれば、それはブルーオーシャンへの近道なのは言うまでもありません。しかし全く新しいものを生み出すということはかなり難易度の高いことです。これまでどんなに新しい発明とされてきたものでも、たいていは既存の要素同士の組み合わせでしかありません(スマホ=電話×パソコンのように)。
なのでこれまで何がなされてきて、今の時代にしかできないことは何かを考えることは必須と言えるでしょう。
目指すべきブルーオーシャンが見つかれば、あとはいかに自分が信じた道を淡々と進めるかという一点に尽きるでしょう。その道でストレスなく自己実現に向かえれば、ワークアズライフ的に生き方で、こんなに幸せなことはないでしょう。
仕事になる趣味を3つ持つ
ワークアズライフに必要なのが、「趣味性」でもあります。つまり特に誰からも強要されているわけではないけど、なんとなくやってしまうことです。
この趣味性は「他人とは違って何かをしたい」原動力になりやすいもので、コンピュータにはないものです。
理想を言えば、趣味性の高い仕事をして、ストレスなく利潤を継続的に得られる状況が好ましいと言えます。
落合さんは、このワークアズライフを実現する上で、仕事になるような趣味を3つは持ちたいと主張しています。たしかに3つあれば、リスクヘッジにもなりますし、その3つの掛け合わせによりさらなるオリジナリティへとつながります。
ではこの仕事になる趣味とは、どのように見つけるべきでしょう。それは、「一番やりたいことをやるべき」という使い古された言葉に戻るのだと言います。
一番やりたいうことをもっと砕いて自分に質問するとすれば、「すべてのタスクから解放されたときに、最初にやりたいことはなにか?」です。
このような「好きなこと」「やりたいこと」が見つからなくて困っているという方は、こちらも参考にしてみてください!
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ゲーム的な遊び感覚で仕事をする
ワークアズライフを実現するためのキーワードの一つが「遊び」です。「ライフとしてのワーク」と聞くと、「じゃあ一日中働けってこと?」という疑問を持つこともあるかもしれません。
しかし、そうではなく、「小さい遊びを生活の中にたくさん詰め込む」というニュアンスの方が適切です。ストレスフリーな好きなことを仕事にすれば、おそらく「一日中仕事するのか〜」というネガティブな発想にはならないでしょう。
ではどのように仕事を遊びに変換するかというと、ゲーム的に捉えることが重要です。
一度スポーツで考えてみるとわかりやすいのですが、スキーというスポーツを分解すると、「スキーをより速く滑るという問題があり、その滑り方を解決し、風を切る気持ちいい感覚という報酬」と考えることができます。
つまり、問題・解決・報酬というゲーム的なフレームワークを自分で設定することこそが、「遊び」の肝です。
さらに、仕事を継続させるためにも、モチベーションも大事な要素になります。自分がどのような報酬を求めているかを知るということです。
この報酬・モチベーションを落合さんは三種類に分類します。
- ギャンブル的な報酬
- コレクション的な報酬
- 心地よさの報酬
「ギャンブル的な報酬」に関しては、誰かと競争して勝つというようなことにモチベーションを感じます。「コレクション的な報酬」は、作業などの積み重ねが可視化されることがモチベーションになります。「心地よさの報酬」は上のスキーの例のように、五感に関するものです。美味しいものを食べる、美しい風景を見るなどが挙げられます。
このように、ゲーム的に遊び、自分にとって最適な報酬を設定することが継続のコツであり、ワークアズライフを実現するための最重要ポイントの一つというわけです。
『超AI時代の生存戦略』を行動にうつす
本書に学ぶ明日からはじめたい行動内容は、
自分のやりたいことの時代性を知る
です。
「やりたいこと」の見つけ方はこちら(【落合陽一 入門】好きなことで生きていくために必要なこと)に譲るとして、その見つかった自分のやりたいことのコンテクスト(文脈)を知っておきましょう。
その領域はどのように誕生し、普及したのか。誰がどんなことを成し遂げてきたのか。テクノロジーや時代性を活かして今だからこそできることはなんなのか。そんなことを考えながら、ブルーオーシャンを模索していきましょう!
最後に
前回、【落合陽一 入門】好きなことで生きていくために必要なことで紹介した『これからの世界をつくる仲間たちへ』と同様、本書『超AI時代の生存戦略』は落合さんの書籍の中でも、読みやすいものになっています。
この二冊は専門性が高くない人にとっても、今後を生きるための必読書だと主張したいです。
今回紹介したワークアズライフという生き方。すでに実践されている方はたくさんいます。ホリエモン、西野亮廣さん、箕輪厚介さん、前田裕二さんなど、時代の最先端を走る人ばかりですね。
自分でもなんとか、ワークアズライフに近づきたくて、一般的な企業で働きつつも、その仕事をゲームかしたり、自由な時間でも好きな本を読んだりしています。なんとか仕事と呼べる趣味を3つ探したいともがいているところです。
みなさんもぜひこのワークアズライフという生き方を参考にしてみてはいかがでしょうか。
本書には他にも、今後に備える34のリストとして多数の生き方のヒントが散りばめられています。自分に合ったワークアズライフを見つけるため、一度全体を読んでみてはいかがでしょうか。
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