好きなことで生きていけたら、そんなに幸せなことはない。
やりたいことを仕事にできたら、どんなにいいだろう。
そう思っている方にとって必見の「好きなことで生きていくために必要なこと」を紹介します。
今回は落合陽一さんの『これからの世界をつくる仲間たちへ』をもとに、世の中の今後の変化と、その時代においてどのように生きていけばよいかというヒントをもらいたいと思います。
<追記>
2020年6月に『これからの世界をつくる仲間たちへ』が新書化し、加筆修正などとともに『働き方5.0』として出版されました。社会に大きな影響を与えている新型コロナウイルスの感染拡大についても言及されています。
ではウイルス禍の中で事情はどう変わったか。世界では「Society 5.0」が提唱されているように、「AIやロボットが幅広い分野で進化し、人間とともに働いていく時代」へと変遷していることに変わりはないといいます。
そしてコンピュータやインターネットなどのデジタルなものがフィジカルな現実世界に溶け込んでいくデジタルネイチャー化する世界でも、本質的に大事なことは変わっていません。
システムに「使われる」側ではない生き方・働き方をしようと思うなら、何よりもまず、「こんな社会にしたい」「世界をこう変えたい」という強いモチベーションを持つべきでしょう。
「こいつは、このテーマで語らせたら永遠に喋り続けるんだろうな」−周囲の人間がそういって苦笑するぐらい個性的な世界観。これからの世界では、それを持っている人間ほど強いと思います。
またこのような状況を踏まえた新書版のまえがき・あとがきに加え、図表なども新しいものに刷新されていました。
ぜひこの機会に生まれ変わった『働き方5.0』を読んでみてはいかがでしょうか。
メディアアーティストとして有名な落合陽一さんですが、ピクシーダストテクノロジーズ株式会社の代表を務め、筑波大学で教鞭をとるなど多岐にわたって日本のトップを走り続ける彼にとって、「肩書き」ほど無意味なものはないかもしれません。既存の「肩書き」では表せないような活動をしているからです。
最近ではNewsPicksでWeekly Ochiaiという番組やnews zeroのような地上波にも出演していますよね。そんな日本の宝とも呼べる落合さんは、これまで数多くの著作を出しています。その中でもより汎用的で、より丁寧に落合さんの思考を綴った本が『これからの世界をつくる仲間たちへ』なのです。
コンピュータにできないこと
このIT化された社会では、コンピュータの役割というものが飛躍的に増加しており、人工知能(AI)の研究などが進むにつれて、ぼくたち人間の生き方は根本的に変化するでしょう(すでに変化の過渡期にあります)。
簡単に言うと、コンピュータがやってくれるから人間がやる必要がない仕事が出てくるということです。どの職業がなくなるかということについて、個別の職業を予測することにはあまり意味がないかもしれませんが(具体的に気になる方はこちら→『10年後の仕事図鑑』 堀江貴文×落合陽一)、ホワイトカラーと呼ばれる部分がコンピュータに置き換わっていくと言われています。
ホワイトカラーはwhite collar (白い襟)を意味し、白いワイシャツ、つまりスーツで働く典型的な職業を指します。落合さんはホワイトカラーを頭脳労働職と解説していますが、一般的に企画・営業・事務などの職種がわかりやすいでしょうか。
コンピュータが人間の生活と切り離せない存在となった今、人間の仕事を奪う敵ではなく、共存していくべき「隣人」としてみなす必要があります。
つまり、コンピュータが得意なことを知り、コンピュータにできないことを知ることが重要になります。
では人間がやればこそ価値のあるものとは、いったい何なのでしょうか。人間にあってコンピュータにないもの。その最たるものが、モチベーションです。
コンピュータには「これがやりたい」というモチベーションがありません。プログラムされた作業を淡々とこなすだけです。「ガッツ」や「根性」は人間にしかない、という考えはモチベーションとは違います。なぜなら、どんな作業もコンピュータは苦にせず淡々とこなすからです。人間はこの要素では勝てません。
「これが好きなだからこれをやりたい」というモチベーションこそがコンピュータとの差別化をはかる、人間の価値です。「好きなこと」を仕事にすれば、ストレスなく続けられます。
このような生き方を落合さんはワークアズライフと言っています。コンピュータが発展する時代においては人間はこのワークアズライフ的な生き方が求められます。
AI(人工知能)が発展し、人間を超える日が来るといわれて久しい今日この頃。 アメリカの人工知能研究の世界的権威レイ・カーツワイルは、そんな日が2045年ごろに到来するということを、「シンギュラリティ」という言葉を用いて予測しています。[…]
もしあなたが、「好きなことで生きていけたら、そんなに幸せなことはない」「やりたいことを仕事にできたら、どんなにいいだろう」と考えていたら、その考えは今後を生きていく上で大いに助けとなるでしょう。
とは言っても、好きなことをして生活をしていくというのは、決して簡単なものではないというのも事実ですよね。ではどうすればそんな生き方が実現できるのでしょうか。
①好きなこと/やりたいことを見つける
最初のステップは当然ですが、自分の好きなことややりたいことを見つけることです。「あなたの好きなものは何か?」「あなたは何がやりたいか?」と聞かれても、言葉に詰まる人は多いでしょう。その原因は自分の内側にしか目を向けていないことにあるかもしれません。
よく「自分探しの旅」で自分を見失っている人はまさにこのパターンだと言えます。
一方で、自分の外側に意識を向けてみるとどうでしょう。「自分が解決したいと思う小さな問題を探せ」と言われたらどうでしょう。まずはここを探ってみると、自分がやるべきことが見えてくる可能性が広がります。「カップラーメンの3分を待ちたくない」という日常から来る問題でもいいのです。考えてみるとこの「3分を待つ」という問題を解決できたとしたら、すごく価値のあることだと思いませんか?
すでに自分のやりたいこと決まっているという人もいるかもしれませんが、この好きなこと・やりたいことは単に趣味レベルで好きなものとは少し違います。そこに価値があることで、それを仕事として生きていくことができるのです。
その価値を精査するには、落合さんが紹介している五つの質問が役に立ちます。
- それによって誰が幸せになるのか。
- なぜ今その問題なのか。なぜ先人たちはそれができなかったのか。
- 過去の何を受け継いでそのアイディアに到達したか。
- どこに行けばそれができるのか。
- 実現のためのスキルは、ほかの人が到達しにくいものか。
この問いに対する答えば出せたら、それはもう問題の70%は解けていると落合さんは言います。
自分のやりたいことにはニーズがあるか。コンピュータの発達により可能になったことなのか。似たようなことをした人はいるのか。就職か起業家。オリジナリティはあるか。そんなことを考える必要があるのです。
②思考体力をつける
今後どうなるかわからない、常識と思われていたことが通用しない。そんな激変の時代には、自分の頭を駆使して考える力が必要になります。考えることで、暗黙知(他人に共有することが難しい知識)を自分の中に貯め込み、オリジナリティのある人材になることが重要です。
簡単に言うと思考体力とは以下のようなことだと言えます。
- 複数のオピニオンリーダーの考え方を並列に持つ
- 自分の人生と比較し、落とし込む
- どれとも違った結論に着地できないか常に考える
このようなことができる力が思考体力です。もちろん落合さんも、自分が参考にすべきオピニオンリーダーの一人だと言えます。読書をする目的の一つには、このオピニオンリーダーを見つけることがあると個人的には考えています。
そして意見を聞いてわかった気でいるだけでは、頭でっかちで終わってしまいます。しっかり自分の頭で噛み砕くことが重要です。そして自分の意見をその複数の意見と混ぜ合わせながら、新しい結論へと導くことが求められます。
この思考体力を、具体的に養う方法についても落合さんは触れています。思考体力の基本は「解釈力」です。
何かを調べるとき、検索で知った答えを鵜呑みにするのではなく、自分の生きてきた人生とどう接続されるのかを考えることで、形式知が暗黙知へと変わっていきます。
自分の人生と接続するというと難しそうに聞こえるかもしれませんが、要は自分なりの答えを考え続けるということなのです。これは抽象的に考えていることを具体的に言語化することで鍛えることができます。
例えば、「ピカソはカッコいい」。これだとすごく抽象的ですよね。この「カッコいい」を具体的に掘り下げていきます。「他にカッコいい画家は誰か?」→「その画家のピカソとの共通点・相違点は?」または「ピカソだけカッコいいなら、他の画家とは何が違う?」→「画家以外でカッコいいと思う表現者は?」→「そのカッコよさとピカソのカッコよさは同じ?違う?」
このような感じで、基礎知識と多様な知識を連結させながら、猛烈に頭を使うことで、思考体力は鍛えることができるのです。
③自分にとっての幸せとは何かを考える
好きなことを仕事にする。その上位目的を考えると、「幸せな人生をおくりたい」という最終目標が見えてくるのではないでしょうか。この「幸せ」について考えることは非常に重要です。
なぜなら映画やテレビなどが普及した「映像の世紀」を生きてきたぼくたちや親世代にとって、ドラマやCMなどから自然と強い影響を受けています。
「勉強を頑張っていい大学に入る」「いい会社に入って安定する」「結婚してマイホームを持つ」このような価値観が「幸せ」と直結する人も多いのではないでしょうか。
SNSで他人の生活が簡単に可視化できるようになった現代では、他人への羨望や嫉妬も生じやすくなっています。どうしても自分と比べてしまうのです。
幸せについて考えるには、他人と比べたり、漠然としたイメージを持つことよりも、「経済感覚」「時間感覚」を持つことが重要です。
人生には二つの基本方針があります。
- 時間を切り売りしてお金を稼ぐ
- 自由に使える時間を手に入れる
この二つのバランスで成り立っています。どちらを優先するかで、やるべき仕事も変わってくるでしょう。あなたはどちらに重きを置いているでしょうか。それは本当に幸せに直結するでしょうか。
ここで②に重視する人で勘違いが起きやすいのは、「自由な時間」=「余暇」だと考えてしまうことです。しかし、余暇がほしいなら、むしろ①で効率良くお金を稼いでそれを使うという方でしょう。つまり消費です。
一方でここで言う「自由な時間」というのは、投資的な考えに基づくものです。好きなことをすることで、自分の能力を高める、問題解決につながるという生き方はまさに、コンピュータが台頭しても通用する生き方です。
一方で①の生き方は消費的な生き方でしょう。生活のために特にやりたいわけでもない仕事をしてお金を稼ぐ。それがホワイトカラー的な仕事だったとしたら、今後同じような生活は続けていくのは難しいでしょう。
時間やお金を消費するのか、投資するのか。ここは自分にとっての「幸せ」を考える上で避けて通れないポイントです。
『これからの世界をつくる仲間たちへ』を行動にうつす
『これからの世界をつくる仲間たちへ』に学ぶべき、明日からはじめたい行動内容は、
「やりたいこと」を見つけること
です。自分の内側ばかりではなく、外側に意識を向けてみましょう。そのために「自分が解決したいと思う小さな問題をなに?」という自問自答をしてみるといいでしょう。どんなに身近で小さなことでもいいので、一度洗い出してみましょう!
最後に
落合陽一さんの言っていることには圧倒的な説得力があり、ときに自分の理解を超えてきます。いやかなりそういうことがあります。「この人は何を言っているんだろう…」と。しかしそれは批判的に捉えているのではなく、「それについてもっと知りたい」となってしまうのです。
そんな落合さんですが、本書『これからの世界をつくる仲間たちへ』はぼくでも理解できる今後の生き方のヒントが散りばめられていました。おそらく『魔法の世紀』や『デジタルネイチャー』とは違って、落合さんの「原液」よりは少し薄まった内容なのかもしれません。それをこのようなブログでさらに薄めてしまうのは、本意ではないでしょう。
しかしぼくは、「落合さんの考えを知るとこんなに楽しい」ということを知っています。それをまだ落合さんを知らない人に一人でも多く共有したいと考えています。なので、臆せず今回同様、今後も落合さんの本を紹介していきたいと思います。
『これからの世界をつくる仲間たちへ』は落合陽一入門としては最適な一冊です!
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