アフターコロナの世界における10の価値観の変化

アフターコロナの価値観の変化

アフターコロナの価値観の変化①

アフターコロナの価値観の変化②

今回の新型コロナウイルスによるパンデミックは、人間社会にあらゆる場面での変化を促しました。もっとも身近なケースは、出勤のテレワーク化、学校のオンライン授業などが挙げられるでしょう。

アフターコロナの世界を生き抜くためには、このような生活的な変化から、より俯瞰したマクロ変化を認識し、新しい環境に順応する必要があります。

そこで「今回のコロナによって何が起きたのか」という総括的な振り返りから、「今後変わる価値観とはどのようなものなのか」という未来予測を第三者から学ぶべく、コロナ関連の書籍を10冊以上読み50人以上の専門家の話を聞いた内容をここにまとめます。

ここで紹介するアップデートすべきアフターコロナの価値観の変化10項目は、考えを強要するものではなく、一緒に考えるきっかけになればと思い、まとめたものです。各主張に参照元を明記しているので、興味がある箇所は本を手にとって深掘りしてみてください。

アフターコロナの世界とは

アフターコロナの世界とは文字通りコロナ後の世界ということですが、COVID-19の感染拡大が終息して急に新しい世界がやって来るわけではありません。COVID-19は、これまで存在はしていたが向き合ってこなかった問題を直視する機会を与えてくれました。つまりアフターコロナの世界とは言っても、わたしたちはすでにそのような世界にいたということ。コロナによってそれを認識させられたにすぎないということです。

「アフターコロナ」は他の表現もされる言葉です。ここでは「ポストコロナ」や、長期化するコロナ禍での生活「ウィズコロナ」、これまでとは異なる状況が常態化する「ニューノーマル」などの言葉も含んだ広義の意味だと捉えていただければと思います。

世界トップクラスの知性と言われる面々は口を揃えて、今回のコロナウイルスにポジティブな側面を見出すなら、深く考える機会をくれたことだと言っています。アフターコロナの世界に残された問題は感染症対策という一点のみならず、より膨大で長期的なものです。

そしてさらに重要なポイントは、コロナ以前の世界に戻ることはないというのが大方の専門家の意見です。そんなアフターコロナの世界において、わたしたちは新たな価値観にアップデートする必要があります。

アップデートすべき項目を具体的に10点まとめたので、少し立ち止まって一つずつ吟味していければと思います。

1. 早く元の世界に戻って欲しい→もう以前の状態には戻らない

「早くコロナが終息して、かつての状態に戻ってほしい」というのは多くの人の願いでしょう。しかしCOVID-19が終息しても、大きな影響を受けた企業が回復できるかは不明ですし、回復できたとしてもそれなりの時間を要するでしょう。また今回のパンデミックでは、仕事、授業などさまざまなものがオンライン化し、オンラインショッピングやフードデリバリーなどのサービスがより広い世代にまで普及しました。それらを不便だと考える人もいるかもしれませんが、一方でポジティブな側面を見出したことも事実です。学校に通いたい学生や通勤しなければ仕事ができない会社員もいるでしょう。しかし程度の差こそあれ、このようなオンライン化の流れは避けられません

また「欧州最高峰の知性」と呼ばれるジャック・アタリ氏は、今回のコロナウイルスが感染拡大した背景には医療制度の脆弱性や利己主義の蔓延などが挙げられると述べます。「すべてが非持続的であり、もはや許容しがたい状態にあると誰もが無意識のうちに感じていたところに、今回のパンデミックが発生したのだ」というように、数ある要因やそれによって起こる問題とは今後も向き合っていかなくてはいけません。

(参考:ジャック・アタリ『命の経済 パンデミック後、新しい世界が始まる』)

2. コロナウイルスはワクチンや特効薬で解決できる→今後も新興感染症は発生しうる

COVID-19に対するワクチンの接種や特効薬の開発などは世界の最優先課題に違いありません。しかしそれで全てが解決するわけではないのも事実です。その理由を、新興感染症(未知なる病原体による感染症)の出現は文明化が続く限り止まらないからであると指摘するのは、病理学を研究する仲野徹氏です。人が都市に集中し、森や林など人が住んでいなかった場所が拓かれると、それまであまり接触してこなかった動物から病原体が人に感染してしまうおそれがあるからです。(参考:仲野徹「人生100年時代、ポストコロナはダブルメジャーで」『ポストコロナ期を生きるきみたちへ』)

つまりわたしたち人類はより長期的な視点で感染症のことを考えなくてはいけません。生物学者の福岡伸一氏は「ウイルスを、AIやデータサイエンスで、つまりもっとも端的なロゴスによって、アンダー・コントロールに置こうとするすべての試みに反対する」と主張しています。(参考:福岡伸一「ウイルスは撲滅できない 共に動的平衡を生きよ」『コロナ後の世界を語る 現代の知性たちの視線』)

人類学者の長谷川眞理子氏は、人間の抵抗力の進化よりもウイルスの変異の速度のほうが速いことを理由に「人類がウイルスを完全に撲滅し、勝利することはありえません」と述べています。(参考:長谷川眞理子「野放図な資本主義への警告だ」『変質する世界 ウィズコロナの経済と社会』)

ワクチンや特効薬という言葉で思考を停止するのではなく、先代が多くの感染症と戦ってきたように、現代を生きるわれわれもウイルスとともに生きていくことを考えなければならないのです。

3. パンデミックは人類最大の脅威だ→パンデミックは人類が対応すべき問題の一部にすぎない

アフターコロナの世界では向き合うべき大きな問題が山積みです。正確には以前からすでに存在していた問題が、より浮き彫りになるということです。『銃・病原菌・鉄』の著者として知られるジャレド・ダイアモンド氏は、世界が一丸となって協力すべき問題として、パンデミックに加え、「気候変動や資源の枯渇、格差、そして核兵器の問題」などを挙げています。(ジャレド・ダイアモンド「コロナを克服する国家の条件とは?日本の対応とは?」『コロナ後の世界を語る 現代の知性たちの視線』)

COVID-19の人への感染および拡大には衛生問題も関わっていますが、地球温暖化などの気候問題も要因だと認識している人はどれほどいるでしょう。そして今回の危機をきっかけに考えるべき問題は気候変動だけでなく、「海洋汚染、集約的な農業、生物多様性、貧困、飢餓、(とくに女性に対する)教育機会の欠如、社会的弱者に対する暴力など」多岐にわたることを示すのはジャック・アタリ氏です。(参考:ジャック・アタリ『命の経済 パンデミック後、新しい世界が始まる』)

竹中平蔵氏も、二酸化炭素の排出量がコロナ発生後大きく減ったことから、今後環境問題に対する味方が一気に厳しくなると予見しています。(参考:竹中平蔵『ポストコロナの「日本改造計画」 デジタル資本主義で強者となるビジョン』)

つまりわたしたち人類は、これまで経済成長と引き換えに多様な問題を生み出してきましたが、今後はこれらの問題に最優先で取り組むべきなのです。『人新世の「資本論」』の著者・斎藤幸平氏も「経済成長を最優先にしたシステムからの大転換が今こそ必要なのではないか。経済成長ではなく、自然との共存や人々の幸福を重視する経済への転換が」と述べています。(参考:斎藤幸平「ポストコロナにやってくるのは気候危機」『ポストコロナ期を生きるきみたちへ』)

4. 住まい探しは職場へのアクセス優先→出勤の必要性に応じて快適な住まいを選ぶ

COVID-19の感染拡大により、テレワークの普及が加速しました。それによって最も大きく変わるのが、住まいを考える際の基準でしょう。これまで家を買うにしても借りるにしても、職場へのアクセスが最優先だった人が多いはずです。しかし出勤の必要がなくなったり、頻度が少なくなる人にとっては、狭いのに立地を優先して高いお金を出していることが割に合いません。それならばもっと広くて快適な環境へと身を移したいと考えるのが自然なことでしょう。

Airbnb Japan株式会社の執行役員などを務める長田英知氏は、今後の住まい選びの基準を以下のように示しています。①仕事場との距離感②生活の利便性③徒歩圏の幸福度④収益性⑤柔軟性の5点です。(参考:長田英知『ポスト・コロナ時代 どこに住み、どう働くか』)

今回のパンデミックは原因で、単純に東京一極集中が終わるという見方は早計である、と警告するのは地域経済に詳しい藻谷浩介氏です。(参考:竹中平蔵『ポストコロナの「日本改造計画」 デジタル資本主義で強者となるビジョン』) しかし働き方によっては、東京から地方まではいかなくとも、比較的人口密度の低い郊外などに移住するという選択肢はより現実的になるかもしれません。

またテレワークが可能かどうかは仕事や企業によって異なりますが、これまで当然だと信じて疑わなかった満員電車による通勤が不必要なものであったと気づいた人がいたことも事実です。在宅出勤に否定的な意見として「顔を合わせないと根回しや社内調整が難しい」というようなことも聞かれますが、それは「そもそも根回しなどするから意思決定がゆがみ、かつ、時間もかかってしまっていた」と指摘するのがパナソニック社外取締役などを務める冨山和彦氏です。「今回のコロナショックは大変な危機ではありますが、働き方はもちろん、ビジネスモデルから組織体制まで会社の基本的な形を根底から転換する『コーポレート・トランスフォーメーション』の大きなチャンスである」のです。(参考:冨山和彦「企業も個人も『トランスフォーメーション』が求められる時代に」『論客16人が予測する コロナ後の新ビジネスチャンス これから伸びる企業・市場、求められる人材・働き方』)

このようにかつては当たり前だと思っていたことを疑い、新たな環境を生み出すこともアフターコロナの世界ではますます重要になってきます。それについて興味深い示唆を与えてくれるのがイスラーム法学者の中田考氏です。「仕事に行かなくてはいけない」「オリンピックは行わなければいけない」などを例に、それらは本当は「〜しなければならないこと」などではなく「『〜しなくてはならない』と言う者が『人に〜させたいと思うこと』」でしかなかったのだと述べます。(参考:中田考「メメント・モリ」『ポストコロナ期を生きるきみたちへ』)

5. 労働時間で評価される→成果で評価される

今回のパンデミックで起きた最も大きな変化の一つが自宅からの出勤、テレワークです。これまでそのような働き方を考えてこなかった企業が緊急で取り入れた際、いきなり評価基準を変えることは難しかったでしょう。主に労働時間が評価の基準であった大半の企業では形ばかりの「テレワーク」を採用せざるを得ない状況でした。

しかし今後本格的にテレワークを導入し、有意義な働き方にするためには評価基準を労働時間から成果に変更する必要があります。そうすればライブ的に従業員の在宅風景を監視するなどといった表面的な対策も必要なくなります。

大前研一氏は「会社に依存しないキャリア形成」を推奨していますが、これは言い換えると「ジョブ型雇用」という雇用形態を指します。ジョブ型雇用とは、「雇用する側が『職務記述書(ジョブ・ディスクリプション)』を示して、職務の内容や必要な能力を明確にした上で、最適な人材に報酬を提示して、提示された側もそれでよければ契約し採用する」ものだと説明しています。(参考:大前研一『日本の論点2021~22』)

竹中平蔵氏も、ジョブ・ディスクリプションを明確にした働き方を「プロフェッショナルな技能を持ち、さらに責任と権限がある程度明確になっている。これならば、在宅勤務は効果的」と評価します。(参考:竹中平蔵『ポストコロナの「日本改造計画」 デジタル資本主義で強者となるビジョン』)

一方でこのような働き方に対応できる人ばかりではありません。国際労働機関(ILO)による「今回のパンデミックで二億人が職を失い、少なくとも二十億人の所得が減る見込み」との見方を考慮し、「とくに、中間層の労働価値はテレワークの導入によって減価するため、彼らの存在意義は大きく損なわれる」と警鐘を鳴らすのがジャック・アタリ氏です。(参考:ジャック・アタリ『命の経済 パンデミック後、新しい世界が始まる』)

新しい環境を味方につけるためにも、今一度働き方について、自分が身につける技能について見つめ直す必要があります。

6. 食える仕事に就く→好きなことを仕事にする

「好きなことを仕事にする」これは幅広く浸透してきた今後の働き方の価値観であり、アフターコロナの世界でも重要なコンセプトです。現状では生活のためにお金を稼ぐことを主目的に働いている人も多く、好きなことを仕事にできている人はそれほど多くないのではないでしょうか。ではなぜ好きなことを仕事にすることが重要なのでしょうか

ジャック・アタリ氏はコロナ禍において、「自分自身のために音楽を奏でたり料理をつくったりするように、多くの人々が喜びを金銭のやりとりではなく自分自身のなかに見出すようになった」と分析をしています。(参考:ジャック・アタリ『命の経済 パンデミック後、新しい世界が始まる』)

このようなことを身をもって経験した人も多いのではないでしょうか。山村にある「人文系私設図書館ルチャ・リブロ」のキュレーターを務める青木真兵氏は自身の経験から「自分の価値を『お金を稼ぐための労働』だけに絞らないことはとても重要」だと述べています。それは「なにごとかを行うことに積極的に係わる」ため、ひいては「楽しい生活」を送るためです。(参考:青木真兵「楽しい生活」『ポストコロナ期を生きるきみたちへ』)

ではどのように好きなことを仕事にするか。ポイントの一つが「ニッチであること」だと指摘するのが元マイクロソフト社長の成毛眞氏です。今ではニッチとは言えないほど人気となったYouTubeなどでのゲーム実況も、かつてはニッチであったがゆえに、今人気を博しているプレーヤーもいます。(参考:成毛眞『アフターコロナの生存戦略 不安定な情勢でも自由に遊び存分に稼ぐための新コンセプト』)

また経営コンサルタントなどとして活躍してきた山口周氏は、今後を生き抜く上で重要な「ユニークネス」を持つために、これまでのキャリアで身についたスキルや知識と自分の好きなものを掛け合わせることがポイントだと述べています。(参考:山口周「『ノーマル』がない時代に求められるのは、人生をデザインする力」『論客16人が予測する コロナ後の新ビジネスチャンス これから伸びる企業・市場、求められる人材・働き方』)

思想家の内田樹氏も好きなことで生きていくことを推奨する理由として「それで先行き『食えなく』ても、誰を恨むということもありません」と述べています。(参考:内田樹「ポストコロナ気における雇用について」『ポストコロナ期を生きるきみたちへ』)

何が食える仕事で何が食えない仕事にいつどのような状況でなるのかは、誰にも予測することはできません。それならば少なくとも自分が後悔することを避ける手段として「好きなことを仕事にする」ことは極めて理にかなっていると言えます。

7. 政治は国内優先であるべきだ→グローバルな協力関係は必須である

多くの世界レベルでの問題がそうあるように、今回のCOVID-19のような感染症問題も、もはや一国で解決することは不可能だということが露見しました。不衛生や貧困などが要因で発生した感染症が遠くの国で蔓延しても、もはや人ごとではないと痛感させられました。

一方で、グローバル化が感染症の拡大の原因だという声もあります。また、マスクが世界的に不足した際も、まずは自国優先で確保したいとの思惑が各国であったでしょう。そのときに自国ファーストと謳うリーダーがもてはやされることもありました。

しかしそれでよいのだろうか、ということを立ち止まって考える責任がわれわれにはあります。

経済学を研究する戸堂康之氏は、グローバル化の進行がパンデミックを引き起こした一因であることなどから、コロナ後には、グローバル化の衰退、とくに米中経済の分断がさらに進行する可能性が高いと予測します。(参考:戸堂康之「コロナ後のグローバル化を見据えよ」『変質する世界 ウィズコロナの経済と社会』)

グローバル化こそが今回の諸悪の根源だと主張する人がいる一方で、そのような結論を出すのは早計だとも言えます。ヤフー株式会社CSOを勤め、『シン・ニホン』の著者として知られる安宅和人氏が、グローバル化と都市化について「感染を加速させた面はあるかもしれませんが、たとえば半世紀前のパンデミックと比較すると、意外なことに感染速度に劇的な差はありません」と述べるように、現代のグローバル化の流れが直接のパンデミックの原因であったとは言いにくいでしょう。(参考:安宅和人「アジャイルな仕組みが国を救う」『変質する世界 ウィズコロナの経済と社会』)

また心理学者のスティーブン・ピンカー氏も、過去の黒死病は十四世紀であってもアジアからヨーロッパまで一気に伝播したことなどを挙げ、今回のパンデミックの直接的な要因がグローバル化だとは必ずしも言えないと述べます。そしてパンデミックや気候変動をはじめ、サイバー犯罪、ダークマネー、移民、テロリズム、海賊、核戦争など国際協力によって取り組むべき問題も多いと主張しています。(参考:スティーブン・ピンカー「認知バイアスが感染症対策を遅らせた」『コロナ後の世界』)

グローバル化を否定し、保護主義へと回帰する危険性を主張しているのはジャック・アタリ氏も同じです。パンデミックも含め戦争などの危機には徹底した保護主義が導入されてきた結果、悲惨な結果がもたらされた過去についても言及しています。(参考:ジャック・アタリ『命の経済 パンデミック後、新しい世界が始まる』)

広く長期的な視野で見て、われわれの、そして将来の世代のために選択すべきはどのようなものであるべきなのでしょうか。「保護主義VSグローバル主義」という単純な二項対立的な言葉に踊らされるのではなく、解決すべき問題に取り組むために必要な選択肢について考えていかなければなりません。

8. 危機こそ強いリーダーの力が必要不可欠である→個人の自由や権利も守る

COVID-19の発端となった中国では早期に独裁国家の権力のもと、感染拡大を封じ込めることに成功したという意見があります。このような危機こそ民主国家よりも、独裁国家のほうが効果的に対処できるのだと考えた人もいるでしょう

国際政治学者のイアン・ブレマー氏は、パンデミックにより労働者層や中間層にしわ寄せがのしかかるとポピュリズムやナショナリズムの伸長につながり、「特に途上国では、中国のような強権モデルに魅力を感じる層が増える可能性」も指摘します。(参考:イアン・ブレマー「国家と経済の役割と関係が変化 第4次産業革命が加速」『コロナ後の世界を語る 現代の知性たちの視線』)

しかしジャック・アタリ氏は、COVID-19の流行が始まったのが独裁体制の中国だったことこそが災いだったと主張します。独裁であるがゆえに事実を隠蔽したことが早期の感染終息を邪魔したのだという見方です。さらには世界全体が近隣の民主国ではなく、その独裁国家の中国の対応策を模倣したことが危機を招いたのだとも言います。一方で韓国や台湾などの民主国は感染症対策をうまくやったと評価しています。(参考:ジャック・アタリ『命の経済 パンデミック後、新しい世界が始まる』)

ジャレド・ダイアモンド氏も「民主主義国家よりも独裁国家のほうが感染症に対して有効に対処できたかというと、答えはノー」だと主張します。(参考:ジャレド・ダイアモンド「独裁国家はパンデミックに強いのか」『コロナ後の世界』)

音楽家の坂本龍一氏は今回のコロナ危機で「全体主義的な方向にまたガクンと一歩近づいた」「危機は権力に利用されやすい」との警鐘を鳴らします。「世界全体で、テクノロジーを駆使した全体主義的な傾向が強まってしまうのか。それとも、ウイルスや疫病とも共存しながらも民主的な世界を作っていけるのか」をわたしたちも真剣に考えるべきではないでしょうか。(参考:坂本龍一「パンデミックでも音楽は存在してきた 新しい方法で適応を」『コロナ後の世界を語る 現代の知性たちの視線』)

日本でも「自粛」という言葉に戸惑った人は多くいたことでしょう。外出などが禁止されるわけでもなく、外出すれば周囲の目で監視されるという状態が生まれました。そのような事態に「政府は命令しているわけではないから、責任をとらない。そういった曖昧な動きが連鎖して、ずるずるとわけのわからない相互監視状況が生まれ、悪循環に向かう危険性を孕んでいます」と危機感を語るのは人類学者の長谷川眞理子氏です。(参考:長谷川眞理子「野放図な資本主義への警告だ」『変質する世界 ウィズコロナの経済と社会』)

世界的に見ても命を守るために、個人の自由や権利が制限されることを受け入れる人は多かったでしょう。しかし映画作家の想田和弘氏が警告するように、先人たちがようやく獲得した基本的人権やデモクラシーを守るために「私たちは制約を課したり課されたりすることに、常に抵抗感と違和感を保たなければならないのであって、絶対に慣れてしまってはいけない」のです。(想田和弘「コロナ禍と人間」『ポストコロナ期を生きるきみたちへ』)

9. 目の前の問題に随時対応していく→自分がどうありたいかを考える

変わりゆく環境に適応しながら生きていく姿勢はアフターコロナの世界にも求められます。一方で目の前の問題に常に後手で対応していくと、変化の波にのまれてしまいます。そこで大切なのは自分の頭で「自分はどうありたいか」を思い描くことではないでしょうか。

アフターコロナの世界では、働き方から、住む場所、生き方すべて自ら選べる時代だと言えます。そしてそんな時代には「自分らしい生き方を主体的にデザインする力が求められる」と述べるのは山口周氏。(参考:山口周「『ノーマル』がない時代に求められるのは、人生をデザインする力」『論客16人が予測する コロナ後の新ビジネスチャンス これから伸びる企業・市場、求められる人材・働き方』)

安宅和人氏は「with コロナ」以後の世界を生き抜く上で必要な素養について「妄想力」だと答えます。「現実をフラットに受け入れつつも、既存の法則を超えて発想する力がなければ、時代の流れについていくことはできないし、危機を乗り越えることもできない」のです。世界中でアニメが愛されるように、日本人にはこの「妄想力」の素養が間違いなくあると言います。まずは「これは〇〇の理由で駄目だからやらない」と考えることが出発点です。(参考:安宅和人「アジャイルな仕組みが国を救う」『変質する世界 ウィズコロナの経済と社会』)

またSF(サイエンス・フィクション)も意外なことに、未来を構想する上で有益な研究対象です。予期せぬ未来に備えるためには「経済学の入門書よりもサイエンス・フィクション(SF)のほうが有益かもしれない」と述べるのはジャック・アタリ氏です。(参考:ジャック・アタリ『命の経済 パンデミック後、新しい世界が始まる』)

また、成毛眞氏も「今、世の中で起こっている科学技術の発達というのは、ほぼ100%、過去のSFで描かれていたことだ」とSF小説の有用性について述べています。(参考:成毛眞『アフターコロナの生存戦略 不安定な情勢でも自由に遊び存分に稼ぐための新コンセプト』)

近年逆転しがちな考えですが、「技術が社会を従わせるのではなく、社会が技術をコントロールすべき」だという教訓を今一度思い出すべきだと語るのが思想史家の白井聡氏です。(参考:白井聡「技術と社会」『ポストコロナ期を生きるきみたちへ』)

10. ネットで即時情報を手に入れる→SNSやネットニュースの特性を理解する

今やあらゆる情報をインターネットを介して手に入れることができます。その中には情報の質の乖離があることは事実ですが、情報へのアクセスの速さや容易さにおいてはこれにかなうものはないでしょう。しかし、このインターネットの速さや容易さゆえの注意点についても考慮しなければなりません

正解のない問題に直面し、情報も錯乱することが日常となるアフターコロナの世界においては、インターネットの情報の特性を理解し、上手に付き合っていく必要があります。

評論家の荻上チキ氏「社会運動が盛り上がる時は必ず単純化を伴います」と言うように、拡散する情報というのはわかりやすいがゆえにということを忘れてはいけません。(参考:荻上チキ「『ステイホーム』が世論に火をつけた一方ポピュリズムに懸念も」『コロナ後の世界を語る 現代の知性たちの視線』)

「〜が悪い」「〜を許すな」という単純化は目につきやすく、同調もしやすい一方で、重要な事実が見えなくなっていることもあるのです。また同じ意見にばかり偏る情報摂取も危険です。

今回のコロナ禍のような状況では特に、人と対面せず画面でのコミュニケーションが主となります。そのような状況下では「自分と同じ意見ばかり見るようになり、気に入らない書き込みを罵倒するようになる」と指摘するのはジャレド・ダイアモンド氏です。(参考:ジャレド・ダイアモンド「独裁国家はパンデミックに強いのか」『コロナ後の世界』)

さらに「世界最高のビジネススクール教授50人」に選出された連続起業家のスコット・ギャロウェイ氏は、「怒り」を誘惑する情報についての危険性を指摘します。閲覧数を稼ぐことで収益を伸ばすようなGAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)のアルゴリズムでは、読者と記事や投稿を強くつなぐのに便利なものは「怒り」です。(スコット・ギャロウェイ「新型コロナで強力になったGAFA」『コロナ後の世界』)

どのような意図でその情報が発信されているのか、事実は十分に網羅されているか、などを多角的に見る必要があります。

インフォデミック(インフォメーション+パンデミック)という言葉がありますが、「情報の氾濫も含めてパンデミックを捉える必要があります」と作家の瀬名秀明氏は指摘します。瀬名秀明「私たちは『人間らしさ』を問われている」『変質する世界 ウィズコロナの経済と社会』

速く大量の情報にアクセスできてしまうからこそ、自身でその情報へのアクセスを制御し、重要な情報については時間をかけて精査しなければ、ありもしないデマに振り回されてしまうことになりかねません。

まとめ

やはり今回のパンデミック危機でポジティブな面を見出すとするなら、今一度自分について、世界について深く考えるきっかけが与えられたということです。すでに問題化されていたにもかかわらず、目を背け続け、今回のような想像を絶するような危機に結びつくことがあるというのは覚えておかなければいけない教訓です。

そのような問題に取り組むため、世界が変わるためには、やはり自分たち一人ひとりの考え方や行動を見直す必要があります。

少しでも時間をとって、今回起きた変化、そしてアフターコロナの世界で再検討すべき価値観について考えて見ませんか?

今回は各主張に参考元の論者や著作を明記しました。これらは主に以下でまとめたコロナ関連の書籍を読んで出会ったものです。もし興味を持った専門家や主張があれば、より深く理解するために著作をあたってみてはいかがでしょうか。

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それでは楽しい読書ライフを!

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