『道をひらく』を今こそ、もう一度。
パナソニックの創業者として知られる松下幸之助の代表的著作『道をひらく』を読んだことない方は必読、読んだことのある方も今こそもう一度ゆっくり時間をかけて熟読してみませんか。
1968年に出版された『道をひらく』は日本の自己啓発書の古典としても広く知られ、多くの経営者、ビジネスパーソンの心に刻み込まれているでしょう。
「困難にぶつかったとき」「生きがいのある人生のために」など11の大きな章で構成され、全121篇が収録されています。その中から、仕事に向き合う姿勢や自分の人生を見つめ直すために、松下幸之助の名言を10項目にまとめて取り上げたいと思います。
日々周囲の環境に振り回されてしまう今こそ、「道をひらく」ために心に刻み込みたい言葉の数々です。
1. 自分には自分に与えられた道がある
本書はこの一節から始まります。
自分の道に迷うことも絶望することもあるでしょう。しかし、この道しか進むべき道はないのです。
「隣の芝生は青い」というように、他人の道を羨むこともあるでしょう。しかし本当に自分の道は、他人を羨む必要のあるものでしょうか。逆に言えば自分に与えられた道は自分にしか歩めない道です。
休まず懸命に歩み続ければ、深い喜びも生まれると松下幸之助は説きます。
2. 恵まれている
「自分もあれくらい恵まれていたらな」と周囲の環境を羨んでしまうことがあります。一方で、自分がどんなに恵まれているかということに気づかない人は多いと松下幸之助は言います。
ここで発生する問題は、自分が恵まれているということをを自覚しろ言われて頭で理解していても、なかなか心に響かないことです。『道をひらく』には「日常の立居振舞に、今一度の反省を加えてみよう」と記されています。
その点読書はあらゆる登場人物の人生を代理体験させてくれます。そのような他人の境遇を知ることで、自分にしかないもの、自分がいかに恵まれているかということを実感することができるでしょう。
3. 人生は真剣勝負である
人生は、竹刀でも木刀でもなく、真剣での勝負であるべきだと松下幸之助は言います。「長い人生ときには失敗することもあるなどと呑気にかまえていられない」という心持ちを示しつつ、今からでも決して遅くないと後押ししてくれます。
またこの名言は、失敗を否定するものではありません。「くふうする生活」という項目では、「とにかく考えてみること、くふうしてみること、そしてやってみること。失敗すればやりなおせばいい」と述べられています。つまり松下幸之助の言う真剣勝負とは、毎日深く考え、どんな小さなことでもくふうを取り入れていくことだとも受け取れます。わずかな工夫や失敗の積み重ねが、大きな成果につながっていくのです。
4. もう一度、自問自答してみたい
他人の評価が気になるのは当然のことです。褒められれば嬉しいし、けなされればいい気分ではありません。いずれの評価も真摯に受け止めるべきですが、「やっぱり大事なことは、他人の評価もさることながら、まず自分で自分を評価する」ことも重要です。
正しく自己評価をするためには、本当に正しかったか、誤りはなかったか、ということを素直な自問自答を繰り返すことだというのが松下幸之助の教えです。
5. 要は仕事に没入することである
仕事が成功するかどうかはさておき、まずは仕事に一心不乱に取り組むことが重要だと説きます。仕事に没入し、そして後生大事にその仕事に打ち込んだ結果、成果が生まれるのです。実力不足を嘆く前に、後悔のないよう、心をこめて物事にはげみましょう。
また「引きつける」という篇でも仕事に関する名言が残されています。「なんとかしてこの仕事をやりとげよう、なんとしてでもこの仕事をやりとげたい、そういう誠実な熱意にあふれていたならば、そこから必ずよい仕事が生まれてくる」のです。そしてその誠意あふれる熱意は人をも引きつけると松下幸之助は考えます。
6. 日々是新
これは、心をあらためるの正月だけではなくともいいという名言です。年の始めの元日同様、一日の始めの朝起きたときもまたおめでたいことです。こうして毎日心をあらためれば、見るもの聞くものすべてのものが新しく感じられます。
「日々是新なれば、すなはち日々是好日」なのです。昨日の嫌なことは翌日には持ち越さず、まっさらな状態で一日を始めたいものです。
7. 身をもって知るということがが何よりも大事
松下幸之助は「頭で知ることも大事だが、身をもって知るということが何よりも大事」と説きます。「塩の辛さはなめてみてはじめてわかる」というように、人は自分が窮地に陥ってはじめて「世の中」に触れることができます。そしてそのような窮境は「身をもって知る尊いチャンス」と捉えることで、辛くとも勇気が出るのだと言います。
また頭で知っているだけでは足りず、体験してみることで初めてその知識は役に立つという教えが「体験の上に」という篇で語られています。水泳の名人の講義を聞いたところで、水に放り込まれても溺れるだけでしょう。「教えの手引きは、この体験の上に生かされて、はじめてその光を放つ」のです。
8. 心配またよし
心配事や不安はないに越したことはありません。しかし実際はそうもいかないのは誰もが知っていることでしょう。
一方で「心配や憂いは新しくものを考え出す一つの転機」と言うように、恐れるべきものではないのです。問題に直面し、悩んでいるときこそ、知恵や体力をふりしぼり、立ち向かっていきたいものです。
9. 学ぶ心さえあれば、万物すべてこれわが師である
「学ぶ心さえあれば、万物すべてこれわが師である」松下幸之助は学びに対しての名言も数多く残しています。中でもこの「どんなことからも、どんな人からも謙虚に素直に学びたい」という姿勢は、万人の土台となるべきものです。
自分一人で考え、何かを生み出したとしても、その土台にあるのは他から教わったものだと気づくはずです。子どもからでも日常の何気ない出来事からでも学べることは多分にあるはずで、そのような姿勢があってはじめて新しい知恵も生まれてくるのです。
10. わけ入れば思わぬ道がある
「わけ入れば思わぬ道がある」というのは人生に対しても言えることだと松下幸之助は考えます。仕事をやり遂げ、成功をおさめると思考はそこで停止しがちなもので、現状維持に甘んじたくなることも多々あります。しかしその先にさらなる可能性があるかもしれないと考えたことはあるでしょうか。
自分が思う「成功」が真の成功の妨げになってしまうこともあるということです。「もうこれでいいのだ、もうこれでおしまいだなどとあきらめないで、もっとよい方法があるはずだ」と考え続ける努力が、新たな発見を生み出します。
また『道をひらく』には「止めを刺す」という篇があります。これはかつての武士の心得ですが、現代にも通ずる心構えなのです。「せっかくの九九パーセントの貴重な成果も、残りの一パーセントの止めがしっかりと刺されていなかったら、それは初めから無きに等しい」と言います。
最後に
『道をひらく』の全121篇を読んだあと、「身にしみる」という表現以上に適切な言葉が浮かんできませんでした。なかでも特に心に深く突き刺さったのが、以上で取り上げた10篇あまりから来る松下幸之助の名言でした。
昭和の時代にこそ多くのビジネスパーソンの心を引きつけたことは容易に想像できますが、現代に読んでも、その言葉の威力は増すばかりです。
ある種の「処方箋」として、ぜひ1日に1篇でも読んでみませんか?
それでは楽しい読書ライフを!
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