あなたの読書は速読派ですか?それとも時間をかけて読む派ですか?
できる限り速くたくさん読むか、一冊にゆったり時間をかけて味わうか。どちらが正しい本の読み方なのでしょうか。
この答えは、本の種類や読書する目的によっても違うと思いますが、大きく分けると情報収集が目的の場合は速読、楽しむこと自体が目的の場合はゆっくり味わって読むのが最適な読書法でしょう。
今回は、後者のゆっくり時間をかけて読む方法いわば「スロー・リーディング」の魅力と実践方法を紹介していきたいと思います。
読書の楽しみ方や理解精度がガラッと変わること間違いなしです。間違いなしです(自信があるので2回言わせてください)!
なぜ今、速読よりスロー・リーディングか
今回このスロー・リーディングを紹介するきっかけとなったのが、『マチネの終わりに』などで知られる小説家・平野啓一郎さんの『本の読み方 スロー・リーディングの実践』でした。
ぼくは一時期とにかくたくさんの本を読みたい、その上理解力も落としたくない、と数多くの速読本を読んでは実践しようとしてきました。もちろん効果的な速読法もありますし、速読すべき目的を明確にすればとても有意義な読書方法の一つだと思います(詳しくは以下参考)。
しかし心のどこかでは、本(特に小説など)ってもっと時間をかけてゆっくり味わうのも醍醐味だよなとは思っていました。そんなときに出会った本が平野啓一郎さんの『本の読み方 スロー・リーディングの実践』だったのです。
平野さんは読書のあり方についてこう述べます。
本当の読書は、単に表面的な知識で人を飾り立てるのではなく、内面から人を変え、思慮深さと賢明さとをもたらし、人間性に深みを与えるものである。
毎日新刊が出版され続け、インターネットにも情報が溢れるこの時代。ゆっくりと本を読み、思索する必要性がこれまでにないほど高まっています。そのような時間を持たずしては、人生の重要な局面で正しい判断をすることや、真偽を見極めることができないほど翻弄されてしまうでしょう。
情報が多いからといって、「たくさんの情報を速く読まなくては」という一種の「速読コンプレックス」に陥ってしまっている人は多いのではないでしょう。ぼくもその一人でした。
しかし、「速読家の知識は、単なる脂肪である」という平野さんの言葉のように、自分の身となり、筋肉となるような知識を得なければなりません。
ページをめくりながら、自分の頭で考え、自分なりに感じたことを、いかに自分の生活に落とし込んでいくか。スロー・リーディングを通じて、深い読書の楽しみ方を体験しましょう。
ではスロー・リーディングではどのように本を読むべきなのでしょうか。
スロー・リーディングの極意
スロー・リーディングの極意は大きく分けて二つあります。
- 作者の意図を考える
- 自由な「誤読」を楽しむ
まず一つが、作者が何を意図しているかを随時考えることです。ご自身が小説家である平野さんは、作品には必ず作者の意図がある、と言い切ります。その作者の真意を読み取ることこそが、スロー・リーディングの醍醐味です。
一方で、自分なりの解釈を持つことも重要です。自由な「誤読」を楽しむというのは、勘違いや読み間違いをするという意味ではありません。「これはこういうことなのではないか」「自分ならこう思う」などと自分なりの仮説を持って読むことです。
ではスロー・リーディングの極意がわかったところで、具体的にどんな点に気をつけて読めばいいかについて解説していきます。
疑問を持つ
疑問を持ちながら読む、というのがスロー・リーディングの最重要ポイントです。なにか理解できない内容があったら、「この作者は何を言ってるんだ」と突き放して終わるのではなく、「なぜわざわざこんな書き方をしたのだろう」「なぜあえてこんなことを書いたのだろう」という疑問を持ちましょう。そうすることで、作者の意図に近くきっかけになります。
時代背景が関連しているのかもしれないし、他の作家からの影響を受けているのかもしれません。この「どうして?」と考えるのと考えないのとでは、読書の理解度に雲泥の差が生じるのは言うまでもないでしょう。
自分の立場に置き換える
スロー・リーディング、いや読書自体をする上で重要なことが、「自分の立場に置き換えてみる」ということです。読書する最上位目的は。その読書経験や知識を自分の人生に生かすことだと思います。
なので小説ならば「自分だったらこうするな」という考えを持ち続けることが重要です。有限な人生の中で、自分の身一つで直接経験できることには限りがあります。ですが、このように深い考えとともに内容に没頭することで、その登場人物の人生を疑似体験することができるのです。
ビジネス書などでもその姿勢は変わらないと思います。いかに自分の人生にいかすかと言うことを考えれば、すぐに内容を実践できて、自分の地肉にすることができます。
線を引く・印をつける・書き込む
よく本は汚さずきれいに読みたい、という人がいます。しかし、このスロー・リーディングでは、傍線を引いたり印をつけたりすることが前提となります。
まず、気になるところ、重要だと思う箇所に線を引きます。これをすることで、二度読んでいることとになるので理解度が深まります。
キーワードなどを丸で囲ったり、自分の心情などを書き込んでもいいでしょう。再読した時に、記憶の足がかりになり、スムーズに内容を思い出すことができます。
どんな読書法にしても、ぼくも本を汚すことには大賛成です。本に書き込みをするだけで、その本はどこにも売られていないオンリーワンの本になります。
人に話すことを想定する
読書の目的は人それぞれかもしれません。しかし、本読む理解度を深めるためには、誰かに内容を話すつもりで読書することがおすすめです。家族や友達に共有してもいいですし、SNSで軽く発信することから始めてもいいでしょう。
こうすることで、わからない箇所を繰り返し読んだり、自分をごまかしたりしなくなるので、単純に理解力が上がるのです。
複数の本を比較する
本を読んでいて、「あの本に書いてったことと似てるな/同じだな/真逆だな」と感じたら、手間を惜しまず、その本を開きましょう。同じならどちらかが影響を与えているのか、それとも他の発信源となった本があることに気づくかもしれません。
どこが共通していてどこが違うのか。そんなことを他の本と関連させながら読むことで、読書の世界が一気に広がります。
再読する
このスロー・リーディングの最も魅力的なポイントの一つが、「再読する」という点でしょう。同じ本でも、自分のそのときに置かれている状況や意識のありようで、感じ方が大きく違ってきます。
昔読んでもつまらなかった本が、今読むと異常に面白いと思うことも珍しくないはずです。変わらず面白いが、以前自分が書き込んだことと今の意見は違うなと気づくこともあるかもしれません。
この再読によって感じることは、あなたの過去の読書体験を通してしか手に入りません。良書というのは、何度読んでもいいものです。そしてこの「良書」の基準は、「自分にとって」でよいのです。
最後に
では、具体的な作品を通して、スロー・リーディングのお手本を見てみよう、というのは本書に譲りたいと思いますが、本当に面白いです。
有名は8作品の抜粋と共に、平野さんの解説が入るのですが、自分のこれまでの読書法では絶対に思いもよらなかった解釈の仕方ばかりで、まさに目から鱗という内容でした。
特に個人的には、森鴎外の『高瀬舟』とカフカの『橋』への解釈が面白すぎました。全く難しい内容でもありません。自分でも内容は理解できたはずです。しかし、やはり理解の深さが違うのです。
このスロー・リーディングで感じたことや学んだことは、明日明後日で活かすことは難しいかもしれません。しかし、5~10年後に確実に自分の人生へと反映されるのだと強く感じます。
ぜひこの実践例は読んでほしいと思います。680円で自分の読書が変わるなら、こんなに手頃な「投資」はないと思いませんか?
ここから買わなくてもいいのですが、本当にこの平野さんがスロー・リーディングを実践する様子は直接見てほしいと思いました。
『本の読み方 スロー・リーディングの実践』を行動にうつそう
本書『本の読み方 スロー・リーディングの実践』に学ぶ、明日からはじめたい行動内容は、
「どうして?」と問いながら本を読む
です。
本来は明日にでもこの本を手にとって読んでほしいな〜と思うのですが、とにもかくにも、次本を読むときは、作者の意図を問い続けながら本を読んでみましょう。今まで見えなかった世界が見えてくるかもしれません!
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