もし自分の子どもに「なんで勉強をする必要があるの?」と聞かれたら、あなたならどう答えてあげますか? また小・中学生のときに、同じ質問を親や先生にしたことはありませんか?
「義務教育は必ず受けないといけないと決まっているから」「将来なにかの役に立つから」というような答えで子どもは納得するでしょうか?
「なんで勉強をする必要があるの?」という質問に対する答えを含め、ぜひ子どもに教えてあげたい大切なことを吉野源三郎さんの『君たちはどう生きるか』をもとに紹介していきます。
今回読んで参考にしているのがより読みやすい『漫画 君たちはどう生きるか』です。1937年に出版された小説『君たちはどう生きるか』自体が読みやすく、世代を超えたベストセラーといえますが、漫画版は子どもでも簡単に読むことができるのでオススメです。
主人公の「コペル君」は日常生活の中でさまざまなことを経験し、大切な気づきに対して「おじさん」が新たな教えを説いてあげる物語です。
勉強の必要性をはじめ、子どもにも大人にも教えてあげたいコペル君の学びを振り返っていきましょう!
自分の子どもに教えてあげたい3つの大切なこと
1. なぜ勉強をする必要があるのか?
アイザック・ニュートンは木からりんごが落ちてきたのを見て、もっと上から落ちてきても同じように落ちるのだろうか?と考え、その高さを月にまで伸ばしたことで万有引力の法則を発見したと言われています。
コペル君はそれを聞いて、自分が幼い頃に馴染んだ粉ミルクについて同じように思いを巡らせました。自分の口にミルクが届くまでには、その粉ミルクを店に並べる人、さらに遡ればオーストラリアの牛にまでルートを辿ることができると考えました。自分が粉ミルクを飲むために、数えきれないほどの人が関わっているという発見をしたのです。
数えきれない人たちが網の目のようにつながっているこの現象をコペル君は「人間分子の関係、網目の法則」と名付けました。その発見をおじさんに伝えると、それはすでに「生産関係」という言葉で知られている法則だと聞かされます。
「当たり前のこと」を改めて深く自分の頭で考え、そのような発見をすること自体とても素晴らしいことです。同時におじさんは、人類にとって本当に役に立ち尊敬に値する発見とは、人類がそれを初めて知ったというものでなければならない、とコペル君に教えます。
猿のような存在から今日の人間の文明があるのは、先祖が新しい発見を積み重ねてきてくれた成果です。そのような新しい発見をするためにこそ、勉強は必要なのです。まだ誰も気づいていないような発見をするために、ゼロから物事を考えていては一生を使っても時間が足りません。
だから、いろいろな学問は、人類の今までの経験を一まとめにしたものといっていい。そして、そういう経験を前の時代から受けついで、その上で、また新しい経験を積んできたから、人類は、野獣同然の状態から今日の状態まで、進歩してくることができたのだ。
一人一人の人間が、みんないちいち、猿同然のところから出直したんでは、人類はいつまでたっても猿同然で、決して今日の文明には達しなかったろう。
これと同じ意味で、西洋ではニュートンも使った言葉として「巨人の肩の上にのる矮人」が知られています。まさにこれまでの何千年、何万年とかけて築き上げられた人類の叡智をほんの数年、数十年で学べてしまうのが学問、つまり勉強のすごいところです。
これが子どもに「どうして勉強をする必要があるの?」と聞かれたときの答えとなるでしょう。しかし、「人類の学びを効率的に学ぶことだよ」「新しい発見をするためだよ」と教えても、うまく納得できない子どももいるでしょう。
つまりその先の「自分で何かを発見する面白さ」を子どもに教えてあげることが最も重要なのではないでしょうか。『君たちはどう生きるか』を読めばそのきっかけになるとぼくは思っています。まさに同じ経緯でコペル君は自分で何かを発見する面白さ」と「勉強の必要性」を学んだのですから。
誰しも何かを新しく発見した高揚感や達成感、さらにはそれを褒めてもらえた承認感は心地良いものでしょう。そういうものを子どもに実感として与えてあげるのが大切ですね。
2. 後悔しないたった一つの方とは?
コペル君は『君たちはどう生きるか』の中で死にたいほど後悔する出来事に直面します。ある日、コペル君の友人である北見君(ガッチン)が上級生に目をつけられてしまいます。もし北見君に何かあったときには、「ガッチンの前で壁になる」「絶対に逃げずにみんなで戦う」と北見君や浦川君と約束します。
しかし現実に上級生が北見君を呼び出したとき、浦川君たちは北見君を守ろうとしてあげるのに対し、コペル君は恐怖で足を動かすことができませんでした。つまり北見君や浦川君を裏切ってしまったのです。
それからコペル君は学校に行くことができなくなってしまいます。どうしてあのとき自分も北見君を守ってあげれなかったんだろうと後悔して、体調まで崩してしまいます。
そんなコペル君を見て、お母さんはある自分の体験談をコペル君に聞かせてあげます。
まだお母さんが学生だったころ、ある神社の石段で起きた出来事です。その石段を重そうな荷物を持ったおばあさんが登っているのを見て、「荷物を持ちましょう」という声をかけようと思ったそうです。しかし今声をかけたら、おばあさんは「どうしてもっと早く言ってくれなかったのかしら」と思うかもしないと考え、ついに言い出せなかったと言います。
「どうして思ったことを行動に移せなかったんだろう」と情けない気持ちになったそうです。このような後悔は誰もが経験したことがあるでしょう。そんな後悔を後悔にしないためには、それを思い出して次の機会に生かすことが大切です。
たとえその後悔した経験が苦しいものでも忘れなければ、長い人生で何度も背中を押してくれるからです。そのときはたしかに後悔だったかもしれません。しかしそれを糧に今後の人生で勇気を持つことができると考えれば、後悔なんかではなくむしろ貴重な経験だったといえるでしょう。
おじさんも、後悔するということは、自分が本当になすべきこと、あるべき姿を知っているからこそだということをコペル君に教えます。つまり後悔をするということは自分が正常な証でもあります。反省し、自分の行動を見つめ直すことができれば、後悔は決して無意味なものではなくなります。
3. 悩んだときはどう乗り越えればいいか?
コペル君が友達を裏切って後悔を抱き悩んでいるとき、おじさんは悩んだときの対処法を話します。
あのとき自分一人だけみんなのもとに駆けつけられなかったこと、みんなが自分を軽蔑しているであろうことをずっと考え込んでいたコペル君。おじさんはそんなコペル君の話を聞いてこんなアドバイスをします。
一度考えるのをやめてごらんよ
変えられないことを考えるのをやめれば、余計な感情に、足をとられない
いま自分がしなければならないことにまっすぐむかっていける
すでに起きてしまった過去も、友達が自分をどう思うかも、今の自分に変えられることではありません。そんな変えられないことをいつまでも考えるのはやめる。余計な感情については考えない。これがおじさんの教えです。
こんな悩みは小学生でも中学生でも頻繁に抱いてしまうものではないでしょうか。学校や部活でのささいな出来事、友人とのけんか。自分の力ではどうにもならないことで悩むことは、山のようにあります。そんなとき「とにかく今自分ができることに集中してみよう」という助言は子どもを助けてあげられる可能性がじゅうぶんにあります。
自分のコントロール外のことは考えてもしかたがないというこのおじさんの教えは、アドラー心理学にも通じます。近年のベストセラー『嫌われる勇気』でも同じような教えが書かれています(興味ある方はぜひこちらも参考に>>『嫌われる勇気』アドラー心理学であらゆる悩みを解消しよう!)。
ここでは「自分の子どもに教えてあげたい3つの大切なこと」として紹介しましたが、『君たちはどう生きるか』からは、大人にとっても重要な本質的な教えを見出すことができます。今回紹介した3つもそうですが、各ストーリーから自分の人生に生かせる教訓を見つけることができるのが『君たちはどう生きるか』の魅力です。
ジブリ映画としても次の宮崎駿作品としても『君たちはどう生きるか』のアニメ化は注目を集めています。まずは原作かこの漫画版を読んでみてはいかがでしょうか。原作もじゅうぶん読みやすいものになっています!
それでは楽しい読書ライフを!
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