資産形成のために株式を長期保有すべき理由と銘柄を選ぶポイント

株の選び方と保有術

『ビジネスエリートになるための教養としての投資』まとめ

将来の資産形成のために長期的な株式への投資は強い味方になります。特に若いうちにはなおさら重要なのが投資です。

一方で、「株式投資」と聞くと怖いと感じる方も多いでしょう。

「投資自体よくわからないし、株式なんて難しそう…」

「そもそも投資と株は何が違うの?」

そんなゼロからの疑問をぼくも持っていました。でも大丈夫です。ここでは奥野一成さんの『ビジネスエリートになるための教養としての投資』をもとに、株式投資のポイントを紹介していきます。株式に投資するとはどういうことかそれがどれほど重要なことかというところから、株式の選び方長期保有の方法などまで解説していきます

なぜ株式に投資すべきなのか?

超低金利と言われる今の日本において、銀行にお金を預けていただけでは資産は増えません。金利がほぼゼロパーセントだからです。しかしぼくたちは将来のために自分で資産形成をしなければなりません。

ここで理解しておくべきなのは、銀行預金にもリスクはあるということです。銀行が倒産すれば預金が全額守られるわけではありませんし、物価が上昇すれば現預金の価値は下がってしまいます。どうせリスクを取るなら、もう少し割りに合ったリスクを選ぶべきです。

その割りに合ったリスクこそ株式への投資です。投資と一口に言っても種類は多様です。株式をはじめ、投資信託や債権、不動産、FX、コモディティと実に多様です。中でも株式に投資するということは、その会社の一部を自分が保有するということになります。その会社に利益が生まれることによって株主となった自分は配当金を得たり、株の値段が上がったりするのです。

そして株式への投資と言っても、日々値動きをチェックして売買を繰り返すというイメージのものではありません。ここで推奨するのは、長期的に株式を保有するという前提での投資です。

全く増えることのない銀行口座にお金を預けておくよりも、少しリスクをとってもう少し大きなリターンを得る方法を知っておきましょう。投資が怖いのは「よくわからないもの」だからで、基本を知っておけばあなたの資産形成の選択肢も増えることになります。

なぜ株式を長期保有すべきなのか?

それではなぜ株式に投資して、長期間的に保有しておくべきなのかについてお話しします。『ビジネスエリートになるための教養としての投資』の中から、大きく三点のポイントに絞って説明しましょう。

1. 限りある時間を有効活用できるから

誰もが平等に与えられている1日24時間を使って、最大の利益を生み出す方法はなんでしょう。24時間休むことなく働くことでしょうか。『ビジネスエリートになるための教養としての投資』では労働者としてのマインドセットしか持ち合わせていない人を「労働者1.0」と呼んでいます。

「自分の時間と才能という自己資産を、他の誰かから搾取されている」のと同じです。ほとんどの日本人がこのような考え方から脱却できずにいます。しかし、「労働者1.0」では自分の身一つという上限があります。

一方で「労働者2.0」は他人に働かされているわけではなく、「自分が働いている」という主体性を持っています。自分の才能を伸ばすために自己投資もできますし、「他人の時間や才能を使う」資産家的な考えも持ち合わせています。

つまり投資という発想が生まれるのです。自分が働く以外にも、ソフトバンクの株式に投資すれば孫正義さんを、日本電産に投資すれば永守重信さんを「部下」として働かせることができるのです。

安く株を買って高いタイミングで売る、というデイトレードのような投資は結局自分の時間を搾取されているようなものなので「労働者1.0」的な発想と言わざるを得ません。しかし長期的に成長を見込める企業に投資すれば、その株式を長期保有することができます。毎日値動きに気をとられる必要もありません。

2. 企業が成長することによる利益を享受するため

株式を長期保有すべきという主張は、企業が成長することによって利益も増えることが前提で成り立ちます。投資した企業に将来性があり、今後も成長することによって企業は利益を増やします。その利益で株式に配当金を出したり、株の値段自体が上がっていきます。

短期的な値動きを追って株式を売買する手法は上記で述べたように「労働者1.0」的な発想にすぎません。『ビジネスエリートになるための教養としての投資』で主張されている投資の本質は、企業の成長を見越してのものです。

3. 投資のメリットを最大化するため

長期保有することで得られる最大のメリットは、企業の成長後の利益の拡大を期待できることと同時に、短期的に下落してしまった株価の回復を落ち着いて待てる点にあります。

例えば長期保有を前提に買った株式でないと、その企業の成長を信じることもできませんし、大きな損失を恐れて焦って売ってしまう可能性があります。

逆にしっかり考えた上で長期保有すべき株式を購入したら、不況や新型コロナウイルスのような緊急事態時にも、焦って損をすることはなくなります。

とはいえしっかり長期保有できる株式の選ぶ方や、売らざるを得ない例外も学ぶ必要があるので、以下でそれぞれ解説していきます。

投資と投機の違い

投資と投機の違い

長期保有できる株式の選び方の話に入る前に、今一度投資と投機の違いについて言及しておきましょう。「投資は怖いものだ」「騙されそう」「大きな損失を被りそう」というイメージがある方は、投資と投機を混同している可能性があります。

投資的な発想:

「その企業が行なっている事業から、どれだけの利益が得られるのか」を考えて株式を買う

──『ビジネスエリートになるための教養としての投資』

投機的な発想:

「この株式を買うことでどれだけの値上がり益が得られるのか」を考えて株式を買う

──『ビジネスエリートになるための教養としての投資』

つまり投資は「価値」を見極めるのに対し、投機は「価格」を予想しているにすぎません。値動きのみに注目するFXやコモディティ取引はいわば、投機に近い感覚です。このようなギャンブル的な投機を「投資」と勘違いしている人が多いのです。

日本では米国に比べて利益が増え続ける企業が少ないために、短期的に株式を売ったり買ったりする傾向にあるとも言えるでしょう。

『ビジネスエリートになるための教養としての投資』で紹介されている株式を長期保有するというスタンスは、投資のイメージを一新してくれるものです。では具体的にどのように買う銘柄を選べば良いのでしょうか。

長期保有できる株式の選び方

日々値動きに惑わされることのないよう、どっしり構えて長期的に保有しておける株式を選ぶポイント。それはその企業が「強靭な構造」を持っているかどうかだと著者の奥野さんは主張します。この「強靭な構造」を支える3つの要素をそれぞれ解説していきましょう。

1. 高い付加価値

「強靭な構造」を構成する要素の一つが高い付加価値です。その企業が「本当に世の中にとって必要か?」ということです。本書ではウォルト・ディズニーが例に挙げられています。

例えばウォルト・ディズニーがなければ、「トイ・ストーリー」などのPIXARや「アベンジャーズ」などのマーベル、さらには「スターウォーズ」などの映画作品が存在しなくなります。それでは楽しい映画館も成り立たなくなってしまいます。デートでディズニーランドに行くこともできなければ、ディズニーキャラクターに衣服を子どもに買ってあげることもできません。

つまりウォルト・ディズニーは世の中にとても必要とされているため、高い付加価値があると言えます。

2. 高い参入障壁

高い参入障壁も「強靭な構造」の重要ポイントです。これは「今更その人たちの向こうを張って勝負しようだなんて、誰も思わないほど圧倒的に強いか?」ということです。

例えばこれからネズミのキャラクターを作って、ミッキーマウスの人気に抗おうとする人はいるでしょうか。このようなキャラクターを含むブランド力やディズニーランドなどの巨大な設備は、他の企業が新しく参入するのが難しいと思わざるを得ない障壁となります。

簡単に真似できないからこそ、差別化された商品やサービスは長期的に利益を出し続けることができるのです。

3. 長期潮流

そして株を選ぶべきポイントの「強靭な構造」を支える最後の一つが長期潮流です。これは普遍的で不可逆的なものを指します。長期潮流は「これから〜が流行りそう」というような中期的なトレンドではなく、もっとはるかに長期的な流れを意味します。

例えば「人口動態」が長期潮流の好例です。30年前に50億人だった世界人口は今や70億になり、今後さらに100億人に迫るなど増えていくことはほぼ間違いありません。この見立ては予想というよりも、一種の「事実」です。

人口が増えれば映画などのコンテンツを消費する人も増えるわけですから、先ほどからの例であるウォルト・ディズニーにとっては、長期潮流的な側面でも買うべき銘柄だという判断材料になりうるのです。

投資は楽に稼げる手段ではなく、このように必死に頭を働かせて判断するものなのです。簡単ではありませんが、ビジネスにおける思考力も鍛えられますし、資産形成にも役立つという便利なツールなのです。

株式投資の注意点

株式投資の注意点

『ビジネスエリートになるための教養としての投資』では株式に投資する際の注意点にいくつか触れられています。重要なものを二点ほどピックアップしたので、参考にどうぞ。

1. 会計の知識が必要

個人として株式に投資する場合は少なくとも会計の知識は持っておいた方が良いと言われています。株式を選ぶポイントはPERなどの数字だけでなく、上記で紹介した「強靭な構造」かどうかです。しかしその仮説を立てる際には、過去の数字も分析する必要があるでしょう。

もし会計の知識がなく、投資を始めたいという方には投資信託が推奨されています。投資信託は例えるなら株式の詰め合わせ商品のようなもので、利益も損失も幅が狭くなります。株式は投資した企業のパフォーマンスが悪ければ、自分の資産に直接悪影響を与えますが、投資信託は複数の株式で成り立っているので一つの企業の成績に直接左右されることはありません。

リスクを軽減するという意味でも投資信託は投資初心者にはおすすめなのです。

2. 投資期間は分散せよ

一度に100万円分の株式を買うのと、20万円を5回に分けて買うのとではどちらが良いでしょうか。これは一長一短あるので、万人に共通する答えはありません。

しかし本書では期間を分散する方法をおすすめしています。投資する期間を分散することで、高い値段で一気に購入してしまうリスクを防ぐことができるからです。一方で安い値段で一気に買えるチャンスを逃すことも意味しています。

著者の奥野さんは自身の経験から、それでも期間を分散して投資すべきだと主張しています。特に初心者はそうすべきでしょう。つみたてNISAという毎月積立ができる税優遇制度もありますし、まずは期間を分散する方法での投資から始めてみてはいかがでしょうか。

売らざるを得ない3つのケース

ここまでは株式を長期保有するという投資法について紹介してきました。売らなくても企業が順調に成長し、株価も上がり続けていく会社に投資できればベストです。それでも売らざるを得ない例外的なケースが3つあるのだと言います。こちらも参考にしましょう。

1. 間違いに気づいたとき

購入前にしっかりと「強靭な構造」を分析し、高い付加価値、高い参入障壁、長期潮流に当てはまっていると見立てても、購入後にたいして強靭な構造ではなかったというような間違いに気づくこともあるかもしれません。

長期保有できる企業には「強靭な構造」があることが前提なので、間違っていたと思ったら売却せざるを得ません。

2. より面白い投資機会が出てきたとき

A社に投資したものの、新たに出てきたB社の方が付加価値も参入障壁も高かったとしたら、A社の株式を売却して、B社の株式を買うこともあるでしょう。

3. 株価が上がりすぎたとき

「適正価格」であるフェアバリューと比べてその株価が上がりすぎたときは、一度利益を確定させるために売却します。株価がフェアバリューに対して2倍、3倍などと大きく上回ったときは、ひとまず売って利益を確定させるそうです。

このように上昇を見せたときには、どこかの局面で必ず値下がりするのだと言います。そのときは再度「強靭な構造」について分析し、まだ競争力が維持できそうなら再度購入すれば良いのです。

まとめ

投資初心者の方でも、株式投資について、株式を長期保有することについてわかっていただけたでしょうか。まず第一歩は投資についての正しく理解し(投機との違いを明確にし)、自分の選択肢にも当然ながら入れるべきだと気づくことです。

多少リスクを冒してでも、株式や投資信託に投資すべきだと判断する人は多いはずです。投資をする際に磨かれる思考力も大きな武器になるでしょう。

今回紹介した『ビジネスエリートになるための教養としての投資』は、あのUSJをV字回復させた伝説のマーケター森岡毅さんも「社会人は教養として金融リテラシーが必要。これは最良の教科書である」と絶賛しています。

ぜひ将来の資産形成のため、より効率的な働き方を求めるビジネスパーソンにはおすすめしたい一冊です。

それでは楽しい読書ライフを!

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