今回は、やる気を起こし、いかに持続させるかということに焦点を当てた本を紹介します。
名門コロンビア大学の社会心理学者ハイディ・グラント・ハルバーソンが書いた『やる気が上がる8つのスイッチ コロンビア大学のモチベーションの科学』です。
やる気を起こし、モチベーションを維持したい、と思っている人はもちろん、部下や生徒などを指導する立場の人にも相手を理解する上で非常に役に立つビジネス書です。
やる気に火をつけ、その火を消さずにともし続ける方法とは、いったいなんなのでしょうか。
本書では、「誰にでも即効性のある万能薬なんてない」と主張します。
それもそうですよね。十人十色の性格がある中で、やる気の上げ方はそれぞれの人で異なるべきです。
そこで行動やパターンを8タイプに分類し、それぞれの特徴とやる気の出し方を提案したのがこの『やる気が上がる8つのスイッチ』なのです。3つの要素を軸として以下のような分け方をします。
感情的に熱くする、一気にモチベーションを上げるという方法ではありません。いかに適切にモチベーションを持続させるか。それを心理学的アプローチで解明していきます。
同著者の『やり抜く人の9つの習慣』では、目標達成のためにいかにやり抜く力を身につけるかということに特化していました。このモチベーション分野の第一人者としても知られる著者に「やる気が上がる方法」を学びましょう。
『やる気が上がる8つのスイッチ』はどんな内容?
やる気の上がる方法は人によって異なるとして、人の性格や行動パターンを8タイプに分類します。8タイプそれぞれの特徴や問題点さらには「治療法」までがわかりやすく簡潔に紹介されているのが『やる気が上がる8つのスイッチ』。まるで自分がカウンセリングを受けているかのような気持ちになるので、自分の状況と照らし合わせ、深く理解することができます。
どんな人でも「マインドセット」「フォーカス」「自信」の3つの軸から構成されていると考え、その組み合わせで8タイプを分類します。やる気を持って目標達成や成長を目指すためには、それぞれのタイプに適した方法があります。しかし同時に、どのタイプにも共通する「処方箋」も提示されています。自分の適切なやる気の上げ方や、部下や後輩、生徒などのモチベーションの保ち方を理解するのに最適な本です。
成長マインドに切り替えよう
まずどのように8つのタイプに分けるかというと、以下の3軸によって区別します。
- 証明マインドセットか成長マインドセット
- 獲得フォーカスか回避フォーカス
- 自信があるかないか
これは冒頭でも紹介した図の通りです。やる気を持って目標を達成したり、成功をつかみ取るのに好ましいタイプは、「成長マインドセット」で「自信がある」タイプです。そんな人が「獲得フォーカス」なら「新星」、「回避フォーカス」なら「熟練の匠」というタイプに分類されます。
この3つの軸で最重要ポイントは、マインドセットであり、証明ではなく成長マインドセットであることです。さらに自信があるという状況がやる気を保つ上で重要だと説いています。
獲得フォーカスか回避フォーカスというのは、上も下もなく、その人の傾向の違いにすぎないので、無理にどちらかに変えようとする必要はありません。
ここではその最重要ポイントの成長マインドセットについて紹介します。
マインドセットとは、その人の考え方の癖や傾向のことを言います。「気の持ちよう」とも言えるかもしれません。証明マインドセットと成長マインドセットの簡単な違いは以下のとおりです。
- 証明マインドセットを持つ人は「すごい人と思われたい」
- 成長マインドセットを持つ人は「すごい人になりたい」
証明マインドセットを持つ人は、人の目を気にし、自分がこんなに能力があるということを証明することに重きを置きます。自分ができること以上のことはしないので、成長は見込めません。本書では証明マインドセットをこう説明します。
証明マインドセットを持っているがゆえに起きる不安感、拒絶されることへの恐れ、自分を守ろうとして築く壁は私たちの学ぶ力を阻害します。
一方で、成長マインドセットを持つ人は、人の目は気にしないので、他人がどのように思おうが、自分が決めたことはやり抜きます。思い通りにいかないときも、やる気を持続させ粘り強く立ち向かうことができます。成長マインドセットが何よりも重要なのは、以下の言葉のとおりです。
成長マインドセットをまず初めに持つようにするということは肥沃な土地に種をまくようなものです。その後のすべての努力を実り豊かなものにする土壌を作ることになるのです。
証明マインドセットから成長マインドセットに変えることは決して簡単なことではありません。
しかし以下のようなステップを踏むことで、成長マインドセットへの転換が可能になるといいます。
1.「成長」を意識して目標を考える
こんな言葉を使いながら、目標をたてるように意識しましょう。
- 学び
- 改善
- 発展
- 成長
- 前進
- 将来的に
例えば、
「よい人間関係の中に身を置きたい」という目標があるなら
→「よい人間関係をもつために必要なスキルを学びたい」というふうに言い換えていきましょう。
2. 期待値を変えてみる
能力があれば何でもすぐにうまくいくという考えを捨てましょう。困難や難題にぶつかったときには逃げたり手っ取り早く解決しようとしたりするのではなく、腰を据えてじっくりと取り組むことが必要だと考えましょう。
その場限りでしのぐ、もしくはあきらめてしまうという性急な対応をするのではなく、根本的な問題点を自分の中に見出し、必要であれば人の助けをかりることも大事なポイントです。
3. 他の人と比べない
他人は他人、とよく言いますが、その通りだと思います。比べるべきは他人ではなく、昨日までの自分です。
他人と比べてしまうと、その人の良いところばかりに目がいってしまい、逆に自分が劣っている部分ばかりが気になってしまいます。しかし、そもそも自分と他人の成長の軸、幸せの軸は異なります。
すこしずつの前進だと、焦ることもあるかもしれませんが、1日わずかでも成長を感じられればいいのです。
4. 根気よく続ける
「自分ができることを証明したい」「できないことには挑戦しない」というようなマインドセットで生きてきた人にとっては、「できないことをできるようにしたい」「失敗しても挑戦したい」と思うことは簡単ではありません。
しかし、あきらめないでください。必ず変わることができます。
本書では、そう主張します。自分を信じて続けましょう。
「継続は力なり」は裏切りません。
まずはこのマインドセットという基礎を築いた上で、その他の要素である「自信」や「フォーカス」を意識していきましょう。本書『やる気が上がる8つのスイッチ』は、段階的にマインドセットを切り替え、自信を持ち、自分のフォーカスを理解できる構成になっています。
明日からはじめよう!
『やる気が上がる8つのスイッチ』から学ぶべき、明日からはじめたい行動内容は、
「成長」系の言葉を使って目標を立てる
です。すでに目標がある人は書き換える必要がありますし、まだ目標が明確でない人はこれを機に自分がどうなりたいか考えてみてはいかがでしょうか。
上記でも紹介したステップの最初の段階ですが、「学び」「成長」「前進」などの言葉を入れて目標を立てましょう。成長マインドセットを獲得する第一歩です!
他にも学べること
□自信を持つ方法
□自分の武器の磨き方
etc.
仕事でもプライベートでも何をするにしても、「やる気」というのは重要な要素です。今まであれこれ試してみたけど、長続きしなかったという経験がある方は、ぜひ自分のタイプを知るためにも本書を手にとってみてはいかがでしょうか。
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