『読みたいことを、書けばいい』に学ぶ「つまらない文章」とは

『読みたいことを、書けばいい』田中泰延

書くということ、それは考えると同じくらい大事なことです。書くことで考えが整理できたり、外の世界にアウトプットをすることができます。考えているだけでは、何も伝わりません。書くことで初めてその考えが世界に誕生します。

書くことは出産です。少し言い過ぎでしょうか? しかし、書くことによって自分の考えを生み出し、その文章を大事な我が子のように愛でると言う点ではどちらも変わりません。

だからといって、

「SNSやブログで何か書きたいけど、書く技術もないしなぁ」
「自分が書いたものなんて誰かに読まれるのかな?」
「世間に対して『自分』を発信するのは恥ずかしいな」

こんな風に考える必要はないと思います。最近ではブログをはじめ、ツイッターやインスタグラムなど生活の一部として、書く機会が増えています。電子書籍なら誰でも本が出版できる時代になりました。現代は「一億総クリエイター時代」と言う人もいます。

ではだれもが書き手、発信者になったとき大事なのはなんでしょう?文章をバズらせることでしょうか?

もちろん多くの人に読んでほしいという人もいるでしょう。「ためになった」というような、人の役に立つという観点も大事かもしれません。しかし、最終的に文章を書く上で最も重視すべきは、「書いていて自分が楽しいかどうか」、「自分がそれを読みたいかどうか」ということなのではないでしょうか。

そう聞けば、「えっ、それでいいの?」と思う人もいるかもしれません。そんな自分が好きなことを書くということを後押ししてくれる本が『読みたいことを、書けばいい』です。

『読みたいことを、書けばいい』はどんな内容?

大手広告代理店の電通に入社し、24年間コピーライター・CMプランナーとして活動した著者、田中泰延さん。デジタルメディア『街角のクリエイティブ』におけるコラム「エンタメ新党」や「ひろのぶ雑記」で人気を集めた方です。そんな言葉のプロが「書くこと」についての独自の意見を述べていく本書。

タイトル通り「読みたいこと、書けばいい」という主張を軸に「なにを」「だれに」「どう」「なぜ」書くのか、についてを語ります。各章の間にはコラムが書かれていて、より汎用的で実用的なノウハウが凝縮されています。職業としてのライターだけでなく、SNSなどなにかしら「発信」をしている人なら誰でも楽しめる内容になっています。

読者はとりあえず1人でいい

著者の書くことに対する姿勢は一貫して以下の通りです。

本書では、「自分が読みたいものを書く」ことで「自分が楽しくなる」ということを伝えたい。いや、伝わらなくてもいい。すでにそれを書いて読む自分が楽しいのだから。

ここで重要なのは、書く目的です。「自分が楽しくなる」ことが根幹にある目的です。バスリたいから書くのではなく、お金を稼ぐために書くのでもありません。

「いやいやお金にならないのに文章とか学びたくないよ」「いっぱい『いいね』もらいたいな」という思いもあるかもしれません。たしかに完全に自分のためだけ書いていたら、誰にも読まれないかもしれません。しかしそもそも自分が楽しくなければ、文章なんて書く気にならないかもしれませんし、長く書き続けることもできません。

いったん、読者は自分1人でいい、というわけです!

つまらない文章とは何か?

「読者は自分1人でいい」そうは言っても、実際には「多くの人に共感してほしい」「稼げるくらいの技術を身に付けたい」と思う人もいるかもしれません。なので、「自分が読みたいことを書く」という前提で、つまらない文章を避けるための方法を紹介します。

有名人でもない知らない人のこんな文章を見て、どう思うでしょうか?

「今日のランチおいしかった」
「徹夜頑張ったのすごいでしょ。眠いわ〜」

……
………

いや知らんがな、ですよね?

つまらない人間とはなにか。それは自分の内面を語る人である。少しでもおもしろく感じる人というのは、その人の外部にあることを語っているのである。

わかりやすい例で言うと、「寒い寒い」と言っている人です。「おまえが寒いのはわたしには関係ない」と思われてしまうのがオチでしょう。

それに対して、「今日寒いのはラニーニャ現象の反動なんだ」と言えば、「なに?ラニャ?なんだって?」と興味を持ってもらます。

書くという行為において最も重要なのはファクトである。ライターの仕事はまず「調べる」ことから始める。そして調べた9割を棄て、残った1割を書いた中の1割にやっと「筆者はこう思う」と書く。

つまり、ライターの考えなど全体の1%以下でいよいし、その1%以下を伝えるためにあとの99%以上が要る。

自分の気持ちよりも「事実(ファクト)」を書くのが重要で、それが結局自分の気持ちを強調する大事な要素になってくるのです。

結局1人じゃない

「自分が読みたいことを書く」ということが重要なのは繰り返し言ってきましたが、あなたが読みたいことは、きっと他にも読みたい人がいるはずです。逆に「世界であなたにしか興味がないことはなんですか?」という質問に答えられる人はいるでしょうか?いたらその人は世界でオンリーワンな希少価値のある人物です!もう文章がどうとか悩む必要はないでしょう。

つまり自分が一人で熱狂していれば、誰か似た興味を持った人に届いて、その熱は伝播していくのです。著者はこう言います。

あなたは世界のどこかに、小さな穴を掘るように、小さな旗を立てるように、書けばいい。すると、だれかがいつか、そこを通る。

明日からはじめよう!

この『読みたいことを、書けばいい』から学ぶべき、明日からできる行動内容は、

とりあえず発信してみる

です!ツイッターでもインスタグラムでもブログでもいいので、世の中に発信してみましょう。そこがまずはスタートラインです。

もうやっているよ、という人は、

自分の気持ちより事実を書く

ことに注意してみましょう。「ここのラーメンマジで美味かった」と書くより、「新宿駅から徒歩3分で、たった500円で食べられます。待ち時間もありません。濃厚な豚骨スープと分厚いチャーシューが特徴です」の方が、興味を引くと思いませんか?

自信がない人でも大丈夫です。最後は著者のこの言葉で締めくくりましょう!

まずは自分だけが読者なのだから、恐れることはなにもない。もしひとりだけでも、読んで感想をくれる人がいたとしたら、自分のために書いたはずなのに、あくまで結果として、その人のために書いたことになる。

他にも学べること

□情報収集の仕方

□広告の書き方

□履歴書の書き方

□書くのに読むと良い本

etc.

いかがだったでしょうか?書くことに少しながら興味を持っていた人も、まったく興味がなかった人も、ちょっと考えて書こうかなと思ったのではないでしょうか。

著者の田中泰延さんの文章自体がすごく面白く、書いてる本人が一番楽しんでるんだろうな、というのがひしひしと伝わるので、読んでみるとすごく言っている内容がわかります。2019年時点でゆうに10万部は売れている本なので、いかに多くの人が書くことに興味を持ち始めているかがわかりますね!