メリットとデメリットを比較し、正しい意思決定をする方法 【武器としての決断思考】

武器としての決断思考

人生に悩みはつきものですが、重要なのは「後悔しないために、どのように意思決定をするか」という点ではないでしょうか。

進学か就職か、企業か起業かフリーランスか、家は買うべきか賃りるべきか…

などなどあらゆる場面で重要なものからささいな意思決定をしなくてはなりません。

今回は、自分が納得し(相手を説得し)、後悔しないための意思決定術を学ぶため、『武器としての決断思考』を紹介していきたいと思います。

本書は経営コンサルタントやエンジェル投資家、さらには京都大学で客員准教授をつとめる瀧本哲史さんによって書かれたビジネス書です。瀧本さんを知っている方も多いと思いますが、ぼくが以前にも紹介した『僕は君たちに武器を配りたい』『ミライの授業』など数多くの書籍を出版されています。

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ミライの授業

本当に残念なことですが、日本の未来に欠かせない人物であった瀧本さんは、昨年亡くなりました。大学生やもっと若い年代にむけて、今後の人生をどう生きていくべきかということを伝え続けてきた方です。。

そんな未来の若者のために命を削っていたと言える瀧本さんが残した「武器」の一つが「決断思考」です。

瀧本さんは、この変化が目まぐるしく、未来が読めない時代についてこう述べます。

こんな時代に生きる私たちは、過去のやり方が通用せず、未来予想もうまくできない中で、自分の人生や家族の将来を見据えながら、ひとつひとつ現時点で最善と思える「意思決定」を行なっていかなければなりません。

そして、どんな状況でも、自分で決めて、自分で生きていくしかないと語る瀧本さんは、ぼくたちを勇気づけてくれるこんな言葉を残しています。

人生は、なかなか自分の思うようにいきません。
つらいときも、苦しいときもある。
でも、だからといって、人生をあきらめてしまうわけにはいかないでしょう。なかなか実感することはむずかしいですが、人生は一回きりしかないのです。
だとしたら、どんなに困難な状況、困難な時代にあったとしても、前を向いて歩いていくしかありません。
そのときに必要となるのが「思考」であり、その思考をもとにした「決断」なのです。
これからの時代を生き抜くための正しい意思決定の方法が書かれているのが本書『武器としての決断思考』であり、そのプロセスをここから簡単に説明できればと思います。

『武器としての決断思考』はどんな内容?

人生のあらゆる場面で求められる「思考」と「決断」の重要性を説き、具体的にどのような意思決定をすれば、自分も周りも納得できる強い結論を出すことができるのかを簡単に説明したのが『武器としての決断思考』です。

あるテーマを設定して、それに対して賛成意見と反対意見を戦わせる「ディベート思考」に基づき、正しい問いの立て方、メリット・デメリットの比較方法、さらに説得力をもたせる反論のしかたなどが紹介されています。具体例とともにわかりやすく解説されているので、簡単に自分の直面している悩みや問題に応用することができます。

適切な意思決定のために「問い」を具体化する

まず正しい決断をするために必要なのが、適切な問いを立てることです。

例えば、災害の対策をするために意思決定をとりたい場合、

「どうすれば災害の被害を最小限におさえるか」

という問いを立てたとします。一見ありがちな論題だと思います。

しかし、これでは正しい意思決定ができません。なぜなら具体的でないからです。

ではどうすべきかというと、まずその大きな問いを因数分解するように細かくしていきます

「災害の被害を最小限におさえる方法」を細かく分けると、「古い建物を建て替える」「予知システムを発展させる」「国民の意識を高める」「原発を全廃する」などのような被害をおさえる要素が挙げられます。

そして具体的にしたのち、その細かい要素から一つを選び、「〜するべきか、否か」という問いに当てはめます

要はYesかNoで答えられる形にするということです。

例えば、

「原発を全廃すべきか、否か」という問いにします。

具体的にして、やるかやらないかの二択を問う形にして、はじめて正しい決断をするスタートとなるのです。

正しいメリット・デメリットを挙げる

では二択を問う形にして、どのように意思決定をしていくかというと、簡単な話です。

賛成・反対をメリットとデメリットとともに考えることです。そしてメリットとデメリットを比較した上で、どちらにすべきか最終判断を下すというわけです。

しかし、このメリットとデメリットの考え方も、適切な(説得力がある)意思決定をするためには、正しい理解が必要です。メリットにもデメリットにも満たすべき3つの条件があります。

ここでは先ほども述べた「日本は原発を全廃すべきか、否か」という問いを例に、メリット・デメリットの考え方を紹介していきます。

メリットが成立するための「3つの条件」

内因性 (なんらかの問題があること)
ポイント: すでに解決している問題や放置しておいても解決するような問題ではないこと。
重要性 (その問題が深刻であること)
ポイント: 「なぜ問題なのか」「どう問題なのか」を明確にする必要がある。
解決性 (問題がその行動によって解決すること)
ポイント: その行動によって解決できるかどうかをしっかり考える。
以上がメリットが成立するための条件なのですが、それでは以下のようなメリット側の主張を例に、しっかり条件を満たしているか見ていきましょう。
メリット側の主張: 「日本の原子力発電所は、大地震が起きると大爆発する可能性がある。周辺地域の放射能汚染を防ぐために、原発を全廃すべきだ」
①日本の原子力発電所は、大地震が起きると大爆発する可能性がある
→原発があることで問題が生じている
②大爆発が起きると、周辺地域が放射能に汚染される (結果、多くの人が死ぬ)
→かなりの重要性
③原発を全廃すれば事故の可能性はなくなる
→全廃という行動を取れば大爆発の問題は解決
どうでしょうか。
3条件ともクリアしていると言えそうですね。

デメリットが成立するための「3つの条件」

発生過程 (その行動を取ったときに、新たな問題が発生する過程)
深刻性 (その問題が深刻であること)
固有性 (現状ではそのような問題は生じていないこと)
以上が適切なデメリットのための条件です。基本的にはメリットの条件と同じようなことが言えます。
ここで仮に、反対側のデメリットを簡潔に述べた場合、「原発を全廃すれば、停電が発生する可能性が高まる。停電によって経済的な損失が生まれるため、全廃はやめるべき」という主張をしたとします。
しかし、これでは厳密に言えば「3つの条件」が満たされていません。条件を一つずつ丁寧に考えることが大切です。
①原発全廃が停電につながる発生過程を順序立てる
発生過程1. 原発の電力を他の発電所で補わなければならなくなる
発生過程2. 他の発電所では原発の電力を補いきれない
発生過程3. 電力が多く消費されたときには大規模な停電が発生する
②停電によって大きな経済損失が生じる
→深刻な問題
③現状では原発があるので電力供給に問題はなく停電は発生しない
→新たな問題は行動を取らないかぎり生じない
メリットやデメリットが「なんとなく思いつきで考えた」ようなものでは、納得できる意思決定ができないということがわかって頂けたでしょうか。
さて、それではメリットとデメリットを比較して、
といきたいところですが、メリットとデメリットを比較するのは、もう一つステップをはさんでからになります。

反論をする

メリットとデメリットを挙げたら、それが本当に正しいのかどうかを検証するために、反論 (つまりツッコミ)をすることが重要です。

ここでは、原発の例を離れて、より身近でわかりやすい例で、反論をしていきたいと思います。

「ふとん圧縮機を買うべきか、否か」という意思決定において考えてみましょう。
買うべきというメリット側の主張が以下のとおりだったとします。
①使わないとふとんが押入れの場所を取っています
②押入れが狭くなって、他のものが収納できません
③この圧縮機でふとんを圧縮すれば、押入れの場所を取らなくなります
原発問題と比べ、程度の差こそあれ、内因性、重要性、解決性の3つの条件は満たしています。
さあここにツッコミをしていきます。
①使わないとふとんが押入れの場所を取っています
→冷静に考えると、それほど場所を取っていないんだけど
→他に入れるものがそんなにないから、そもそも邪魔じゃない
②押入れが狭くなって、他のものが収納できません
→他のものを収納できなくても困ってない
③この圧縮機でふとんを圧縮すれば、押入れの場所を取らなくなります
→ふとんを圧縮したくらいではあまり変わらないのでは
→自分のふとんは、本当にそこまで圧縮できるのか
このように自問自答をして、主張を削っていき、生き残ったものが検討に値するメリットです。3つの条件のうち、どれか一つでも成立しないことがあれば、その主張は崩れてしまいます。
デメリットでも同じように言えます。

メリット・デメリットを比較する

ついに、決断のときです。

ここにきてようやく、メリットとデメリットを比較します。反論を重ね、生き残ったメリットとデメリットを比較して総合的に結論を出していきます

ここで重要なポイントが二つあります。

一つが正解なんてないということです。自分の悩みについては特にそうですが、「この決断をすれば正解だ」と言えることなんてそうそうありません。だからこそ悩んでいるはずなのです。しかし、上記のプロセスで徹底的にメリットとデメリットを比較することで、少なくとも自分は納得できる意思決定をすべきなのです。

決断したあとからだって、自分の行動は変えられます。間違っていたと思ったら修正していけばいいのです。後戻りができな状況なんて、よくよく考えればそんなにあるものではありません。

二点目のポイントは、最後の最後は「主観で決める」ということです。

最初から主観的にものごとを決めるのではなく、一度、客観的に考えてみてから、最後には主観をもって決める。

その問題がどれほど重要であるかということは、自分にとっての尺度でしかありません。だからといって、はじめから直感にしたがって自分の意見を真っ向から取り入れるのでは、最終的に満足のいく決断ができるとは思えません。

だからこそ長期的に自分が納得できるように、一度客観的にあらゆる要素を比較検討することが大切だということです。

明日からはじめよう!

『武器としての決断思考』に学ぶ、明日からはじめたい行動は、

メリット・デメリットを考える癖をつける

です。

自分の悩みがあるなら、ここまで紹介してきた方法で、問いを立て、メリットとデメリットを比較してみましょう。すぐに浮かばないという人は、ニュースを見れば、賛否が巻き起こりそうな議題はたくさんあります。

自分の直接的な悩みではなくても、メリットとデメリットを考える癖をつけると、その意思決定のスピードは上がっていきます。よく「頭が良い」「頭の回転が速い」と言われる人がいますが、この決断のプロセスを高速で行なっているような人がまさにそのような人なのだと思います。

ぜひ頭の体操くらいに思って、試してみてください!

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【瀧本哲史 おすすめの本 ベスト5】瀧本哲史さんの本をまず何から読むべきか?

他にも学べること

□意思決定のゆがみの原因

□生産的な会議の条件

□「深く考える」コツ

□武器としての「情報収集術」

etc.

瀧本さんの本は、これからの時代に身につけるべき必須教養と言えるでしょう。そんな教養を「武器」と表現していますが、もっとも優先的に手に入れるべき武器が、この「決断思考」です。

気になった方はぜひ、お手にとってみてください!

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