今回はビジネスパーソンのための独学術を紹介していきたいと思います。参考にした『新・独学術』の著者はマッキンゼー・アンド・カンパニーで経営コンサルティングに従事した侍留啓介さんです。
侍留さんのことは知らなかったのですが、本書の帯に佐藤優さん絶賛という文言を見て、「この本だ!」と思い読みました。
ビジネスパーソンにとって本当に役に立つ最良の参考書。一段階上のキャリアを望む人は必読
あの知の巨人として知られる佐藤優さんがこれだけ絶賛しているのだから、自分で勉強をしていく上で非常に有益な本となると確信しました。キャリアを積み上げたいわけではありませんでしたが、読んでみて社会人後に身につけるべき知識や能力が明確になりました。
何をどう学ぶべきかというのが具体的に紹介されていて、独学を必要とするビジネスパーソン全てにとって役立つ内容だなと思いました。独学はどんなタイプの人にも今後は必要になってくると思いますが、特にこんな考えを持った方におすすめです。
具体的に学びたい内容が決まっているビジネスパーソンはもちろん、漠然と「勉強しなきゃな」と思っている方にも明確な方針を示してくれる独学本です。
シカゴ大学大学院でMBAを取得し、マッキンゼー・アンド・カンパニーで活躍してきた世界を知る著者ならではの独学術を参考に、必ず自分の力になる勉強法を実践していきましょう!
独学で何を身につけるべきか
ではビジネスパーソンになった今、どのようなことを独学で学んでいけばよいのでしょう。特に日本では良い大学・良い会社に入るために勉強し、入った後はそれほど力を入れて勉強しない傾向にある人が多数を占めます。
一方で著者がMBA取得にあたり海外の学生と学んでいたときの経験から、日本人に足りない力をこう語ります。
海外のプロフェッショナルと比べて、日本のビジネスパーソンが明らかに劣っている点があります。それは「学習量」です。知識のインプットと論理トレーニングの量において、海外のプロフェッショナルと日本のビジネスパーソンとでは大きな差があるのです。
つまり知識の量と論理的思考力を身につける必要があります。知識というのはビジネスで実践的に使えるものを指し、基本的・専門的問わず主体的に身につける知識の量が足りないのです。どんな仕事においても必要な論理の力というのみ、学校教育で鍛える機会というのはほとんどありません。
この知識と論理こそ独学によって鍛えるべきテーマとなるのです。
知識と論理という言葉では抽象的すぎるので、完結に定義づけをしておきましょう。
知識とは「より多くの物事を認識したり適切な判断を行ったり」するためのもので、
論理とは「知識と知識を組み合わせ、新しい概念を提示するための接着剤」だと本書では説明されています。
では知識と論理について、具体的にどのように学んでいけばよいかのでしょう。
ビジネスパーソンにとってのベストな独学法とは
知識と論理を学ぶにあたって、大学受験のやり直しほど効率的で、効果の高い学習法はありません。
ビジネスパーソンに必要な独学法とは、高尚な専門書を読むわけでもなく、難しい教材を使うわけでもなく、なんと大学受験用の参考書を使うのだと言います。
独学に大学受験用の参考書を使うメリットはまとめると以下の通りです。
・問題を解くことで正しい答えを導くスキルが身につく
・質が高いのに費用が安い
これは願ったり叶ったりのメリットです。
そして具体的にどのような科目で知識と論理を学んでいけばよいかというと、
知識を身につけるための政治・経済と倫理、論理を磨くための現代文と小論文、となります。
それでは各教科において身につけるべきポイントとおすすめの書籍を紹介していきます!
政治・経済の独学術
まずビジネスパーソンが身につけるべき知識を獲得するための必須科目が政治・経済です。
その最大の理由は「政治や経済の知識は、自らのビジネスを理解するベースとなり得るから」です。
政治や経済の動きによってビジネスのあらゆる業界が影響を受けます。特にこの新型コロナウイルスという100年に一度といわれる厄災の影響かでは、政治や経済の動きも活発に動きます。
自分の携わるビジネスや周辺の業界の動向を把握することで、新たなビジネスチャンスに気づくきっかけにもなります。
また、新聞やネット・TVニュースなどを見ていても、なんとなく理解した気になっていることが多々あるはずです。「マネーサプライ」「為替」「GDP」など表面上はわかった気でいても、その言葉を明確に説明することはできるでしょうか?
そのような言葉を根本的に理解していれば、世の中をより深く洞察することもできますし、他人(ビジネスの相手や政治家など)の「それっぽい」話などの虚偽性を疑う力も養うことができます。
この政治・経済を独学で学ぶ手順は以下の通りです。
まずはいきなり参考書を読むのではなく、問題集から取り掛かります。
というのも本書ではビジネスパーソンが効率良く知識を学ぶ上では、参考書の全体の2割の内容を覚えれば十分だと主張されています。
ではその重要な2割はどのように判断すればよいのでしょうか?
それはズバリ、問題集で「問いになっている部分」です。
だから参考書を読む前に問題集をこなして、まずは重要なポイントを押さえることが効率的な独学のキーになってくるわけです。
また、問題集に取り組む際は、普通に問題を解くのでは非効率です。答えを知らない問題に時間をかけても絶対に答えは出ないからです。なのでまずは、答えを書き写すことから始めましょう。
のちに赤シートなどで答えを隠せるように、赤ペンで答えを記入するとよいでしょう。穴埋め部分には言葉を書き写し、選択問題では答えの選択肢に丸をしたり、それ以外の選択肢にバツをつけるなどするとよいでしょう。
問題集は3回ほど繰り返しましょう。
次に参考書に移ります。問題集を解いたことにより、重要なポイントが頭に入っているのでスラスラ理解することができるはずです。参考書も3回ほど繰り返し読みましょう。
ひとまず問題集と参考書さえ押さえておけば、十分な知識が学べると思いますが、本書ではさらにスキマ時間などを利用して、「スタディサプリ」などで耳で聞く学習も推奨しています。
以上が独学の基本的な流れになります。
・『理解しやすい政治・経済』(文英堂)>>Amazonはこちら
・『政治・経済 標準問題精講』(旺文社)>>Amazonはこちら
・『もういちど読む山川政治経済 (山川出版社)>>Amazonはこちら
佐藤優さんも推薦していて、ぼくも読んでいますが、特に『理解しやすい政治・経済』がおすすめです。
倫理の独学術
なぜビジネスパーソンにとって倫理を学び直す必要があるの?と思うかもしれませんが、本書では倫理の重要性をこのように述べています。
倫理は、さまざまな物事の本質を学び、自ら考える糧とするものです。
さらに大学受験の科目としての倫理は、哲学、人間心理、宗教などに関連しており、「人類が思考してきたことのエッセンス集」とも言われています。
倫理で学べることは具体的に以下の2点です。
①人類誕生以来の叡智を総合的に学べる
②物事の分析の仕方を学べる
哲学、人間心理、宗教などに深く関連していることから、「①人類誕生以来の叡智を総合的に学べる」は理解しやすいと思います。これだけでも倫理を独学で勉強する価値はありますが、「②物事の分析の仕方を学べる」という点にはどのようにつながっていくのでしょう。
例えば、ドイツの哲学者・ヘーゲルの「弁証法」を用いれば、過去の流行や事象をうまく説明することができます。また、フランスの哲学者・デカルトの『方法序説』を知っていれば、物事の共通点や相違点、それらの原因を分析する力につながります。
仏教とキリスト教など異なる宗教を比較することで、物事の差を見抜く力を養うこともできるでしょう。
倫理の独学の手順も、政治・経済と同じ流れがいいでしょう。まずは問題集の答えを見て、重要なポイントを把握します。いきなり哲学書などを読んでも挫折してしまうかもしれません。
要点を押さえた上で、参考書を繰り返し読み、興味が出てきた分野の少し専門的な本へと深掘りしていくのが理想的です。
現代文の独学術
以上では「知識」にフォーカスを当て、政治・経済や倫理を取り上げてきました。次は「論理」を学ぶための現代文について解説していきましょう。
シンプルにいえば、現代文で論理力を身につけることで、自分の主張に対して、きちんと理由を述べられるようになります。
これが現代文を学ぶことで得られる最大のメリットです。
現代文の問題を解くにあたり、知識の基盤となる現代思想や名著を効率的に押さえることができるのも魅力です。しかし、本質的には的確に論点や主張をとらえる「ファクトを押さえる力」を伸ばし、論理的に物事を考えられるようになるのが現代文を学ぶ目的です。
現代文の問題の多くは、漢字問題を除くと、「なぜ、そういえるのか?」「それはどういうことか?」の2つしか聞いてこないと言います。確かに受験期を思い返せば、「この下線部分はどういうことか?」というような問題が多かったような気がします。
まず「それはどういうことか?」というのはSo what問題などとも言われます。誰かの話を聞いて「だから何?」と思ったことはありませんか?また、上司などに「結局何が言いたいの?」と言われたことはありませんか?
それは論理的かつ簡潔に「どういうことか」が説明できていないのです。このSo what問題では、
①具体的な話を抽象的にする
②抽象的な話を具体的にする
このどちらかの作業でしかないと言います。この具体と抽象の行き来というのは、思考力の基本でもあります。本書でもおすすめされていますが、細谷功さんの『具体と抽象』という本がわかりやすくておすすめです。
突然ですが、あなたは頭が良い人ってどんな人だと思いますか? 勉強ができる人でしょうか?計算が早い人でしょうか?論理的に頭を働かせることができる人でしょうか? 僕は、具体と抽象の違いをよく理解し、自由に行き来できる人だと思います。 そし[…]
また「なぜ、そういえるのか?」というのはWhy問題と言えます。この「なぜ」を考えることで、「さまざまな事象の原因と結果を論理的に検討する訓練をすることができる」のです。
現代文の独学法は、質の良い問題集を解くことに限ります。本書で紹介されている書籍を参考にして勉強を進めていきましょう。
小論文の独学術
現代文は「論理」のインプットを支える部分だと言えます。一方で論理的なアウトプットの力を養うためには、小論文を学んでいきます。
小論文とは、まさに「知識量と論理力」をフル活用し、自らの主張を明確に相手に伝えるトレーニングです。これほどビジネスに直結する学びはないといっても過言ではありません。
ビジネスにおける小論文を学ぶ重要性がおわかり頂けると思います。
小論文を学ぶことで得られるメリットは大きく分けて4つあります。
まず1つ目が、オリジナリティのある視点が身につきます。例えば、「格差社会」についての論文問題が出たとします。大体の人は「格差社会は深刻な問題だ」「格差社会は是正されるべきだ」というような主張になると思います。
しかしここで「そもそも」の視点を鍛えていれば、そのような通り一遍な答えにはなりません。「そもそも格差社会とは何だろう」と考えることで、「格差社会の問題は貧富の差自体ではなく、貧富の差が固定していることが問題なんだ」という視点で主張を論じることもできるでしょう。
2つ目の具体的なメリットは、問題解決の手法を身につけることができます。論文の構成は、コンサルティングの問題解決のプロセスと似ているそうです。それは「問題提起」「主張の明確化」「理由付け」という3ステップの問題解決の手法ですが、それをマスターすることができます。ビジネスに直結するスキルといえるでしょう。
3つ目が、現代社会の課題と解決策を知れるという点です。一般的にニュースになっていることや、社会問題となっていることは、小論文のテーマとしても取り上げられやすいものです。そしてそのテーマについての論点がカバーされているので、それを知っておくだけでも、自分の意見形成に役立ちます。
そして小論文を学ぶメリットの4つ目が、シンプルに伝わる文章力が身につくことです。論理的思考と同じくらい重要なのが、この力です。本書では具体的に、「とても」や「非常に」などの「程度を表す形容詞」の使用を避けるなどのアドバイスがなされています。小論文の問題を解く中で、このような文章力が独学で身につくことはビジネスパーソンにとって大きなアドバンテージといえるでしょう。
小論文の独学の手順ですが、忙しいビジネスパーソンに向けて、模範解答を読み込むだけでも十分なトレーニングになると言います。とにかく問題集に取りかかり、余裕があれば自分なりの解答と模範解答を比較するなどして論理力に磨きをかけていきましょう。
「時間がない」「お金に余裕がない」と言い訳をせずに、これだけコスパの良い投資はないと考え、積極的に独学にトライしてみましょう!
『新・独学術』を行動に移す
『新・独学術』から学ぶべき、明日から始めたい行動内容は
まずは大学受験用の参考書を買う
です。とにもかくにも、スタートラインに立つことが重要です。政治・経済、倫理、現代文、小論文のどれからでもいいと思います。上記で紹介した科目で、自分が今最も身につけたい力に該当する科目を見つけて、まずが一冊参考書もしくは問題集を手にとってみましょう。
侍留啓介さん著『新・独学術』はやはり、佐藤優さんが推薦するだけあって、超実践的で納得させられる内容の独学本でした。他にも英語の学ぶ方や、独学の時間の使い方なども書かれています。これから本格的に独学を始めようという人は、読んでおいて損はない1冊です!
▽他にも独学がテーマで面白い本がこちらです!▽
それでは楽しい読書ライフを!
▽他にもオススメしたい本がたくさんあります!▽
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