常識を疑うことの重要性『迷路の外には何がある?』

迷路の外には何がある?

今まで当たり前だと思っていた常識。自分が大切にしてきた価値観。

これを否定されたとき、あなたはどのような反応をするでしょうか?

「そんなの昔から決まっているんだから正しいはずだ」、「間違っているのは相手や社会で自分は正しい」と思ってしまう人はきっと多いはずです。もちろん古くからの考えで大切なものも数多くあるでしょう。自分の中で譲れないもの譲ってはいけないものもあるでしょう。

しかし、情報伝達が手紙からメールや電話に変わったこと、早い移動手段が馬から車や新幹線に変わったことなどを考えると、古い常識や偏った自分の価値観を見直すことは重要だということに気づくはずです。

ここでは、前回紹介した、変化にどう対応するかを説いた本『チーズはどこへ消えた?』の続編『迷路の外には何がある?』を紹介します。『迷路の外には何がある?』も約100ページ程度の薄い本ですが、その内容は本質的で、様々な人が共感できる本になっています。

「仕事もプライベートもなぜかわからないけど上手くいかない」、「自分ってちょっと頑固かもな」などと思っている人にこそ特に読んでもらいたい一冊です。普段あまり読書をしない人でも1時間程度で読めてしまうのでおすすめです。

『迷路の外には何がある?』はどんな内容?

まずは『迷路の外には何がある?』の前の物語『チーズはどこへ消えた?』を簡単におさらいしてみましょう。

迷路の中で食糧であるチーズを探す二人の小人のホーとヘム。苦労した末にチーズを見つけ、その場所に定住する。しかしある日突然チーズがなくなってしまう。そのとき二人の反応は大きく違ったものになる。ホーはこのままではダメだと変化を受け入れ、新たなチーズを探す旅へ出る。一方ヘムは現実を受け入れられず、またチーズはそこに戻ってくると考える。変化を嫌い、慣れた場所から動くのは怖がり、その場所に留まってしまう。その後、ヘムはどうしたかという『チーズはどこへ消えた?』の続きの物語である。

ヘムはこのままではいけないと新たなチーズを探す旅に出る。見知らぬ道を歩き続けることは簡単ではなかったが、あるとき新しい小人のホープと出会う。そして食べ物はチーズだけでないことや、食糧を探す方法は一つではないことを学ぶ。新たな価値観に戸惑いながらも、自分の考え・信念をアップデートすることで、新たな世界に到達する物語。

新たな視点を手に入れる

『迷路の外には何がある?』の物語で、もっとも大きな教えは「従来の考えにこだわらず、新しい視点で物事を考えよう」ということです。本書の主人公は変化を嫌い、古い信念に固執する小人ヘムですが、彼の致命的な価値観は以下の二点です。

・食べ物はチーズだけだ

・迷路の中が世界の全てである

あるとき自分の定住エリアからチーズがなくなり、新たなチーズを探す旅に出ざるを得なくなったヘム。その旅の道中に出会った新たな小人ホープの助言により、新たな視点を手に入れることとなる物語です。従来のやり方でチーズを必死に探す光景は、まさに過去の成功体験にしがみついて、新しい考えや物事を無視するビジネスパーソンそのものに見えます。

目的と手段の違いを明確にする

ヘムは生きるためにこのように考えます。

どうしても新しいチーズをみつけなければならない。さもなければ死んでしまう。

ここでの目的を考えてみましょう。目的はチーズを探すことでしょうか?

違います。チーズをなぜ探すかというと、チーズを食べるためですよね。しかしこれも正解ではありません。

チーズを探す目的は生きるためです。目的が明確になれば、「チーズを探す」というのは目的の一つでしかないことがわかります。そもそも生きるための食糧はチーズだけではないですし(ヘムには食べ物=チーズという考えしかないですが、その問題はまた後ほど述べます)、他の食べ物を探す以外にも、自分で食べ物を栽培していいかもしれませんし、誰かと何かを交換してもいいかもしれません。

これは一般的にも言える話です。例えば。

英語を勉強することは無条件に良いこととされています。しかし英語学習を目的にしている人というのはほぼいないでしょう。なぜなら、何かを成し遂げるために英語を使いたいと思う人がほとんどだからです。つまり、英語は目的ではなく手段でしかありません。

海外の人とコミュニケーションをとるため、TOEICで高得点をとるため(これも「外資系の企業に就職したい」などのもっと上位の目的があるはずです)などの目的のために英語は勉強するものではないでしょうか。

それがいつしか英語学習が目的にすり替わってしまうことも多々あります。「なんとなく役に立ちそうだから勉強している」、「みんなが勉強しているからしている」など自分がなぜそれをしているかがわからなくなってしまうのです。

ここで重要なのは「なぜそれをしているか」を考えることです。なぜ英語を勉強するのか。なぜチーズを探すのか。そうすることで、その真の目的の達成手段は他にも見えてくるのです。

常識を疑う

新たに出会ったホープにヘムは「赤くて硬い石ころ」をもらいます。ヘムにとっては食べ物=チーズという考えしかないので、それを「リンゴ」だとは認識できません。これを食べられると教えてもらわなければ、みすみす生きる手段である食糧を逃していたことでしょう。

またなかなかチーズが見つからない中で、ヘムはホープにこんな問いかけをされます。

「以前、毎日チーズが出てきていたとき、それはどこから来ていたの?」

そんなことを考えたこともなかったヘムは、ホープの助言もあって、迷路の外の世界を認識することになります。迷路の中の世界が全てと疑いもしなかったヘムにとってはまさに青天の霹靂のような思考体験だったでしょう。

結局二人は、袋小路は暗くて行き止まりでしかないという常識を疑うことで、外の世界に通じるトンネルの入り口を見つけることができました。

さらに外の世界に出て、たくさんのチーズやリンゴを見つけたあとも、ホープはこのような発言をします。

「ここにはほかにも美味しい食べ物があるに違いないわ」

そこにあるのがチーズやリンゴだけという常識を疑い、現状に満足せず、さらなる「チーズ(成果)」を求めていくことになります。日常的に常識を疑うというのは簡単なことではありません。何を疑えばいいかもわからないからです。

しかし物事の本質を考える上で、「常識を疑い」、「目的を見つめ直す」魔法の言葉があります。それは、

なぜ」です。

明日からはじめよう!

『迷路の外には何がある?』から学ぶ、明日からできる行動はこちらです。

当たり前の常識を疑う

自分が日頃当たり前にやっていることや、おかしいなということを疑ってみましょう。「なぜそれをしているか」「これはなんでこうなっているんだろう」というWhy?を自分に投げつけるのです。「会社に言われてやっている」「国が決めたことだから」という考えは危険です。あなたの思考を停止させてしまうからです。日頃から「なぜ」を問いかけるくせをつけると、自分の思考が深くなっていくことを実感するはずです。

他にも学べること

□主体的に動く重要性

□限界を決めつけないこと

etc.

最初の物語『チーズはどこへ消えた?』で学んだ「変化への対応の仕方」と本書『迷路の外には何がある?』で学んだ「新たな視点の手に入れ方」という武器があれば、今後変化が激しいと言われている時代も楽しく生きていくことができるはずです。

どちらも30分~1時間で読めてしまう本ですが、今後長くに渡って活かすことにできる考え方です。しかしなにより重要なことは、読んで終わりではなく、行動にうつすことです。ぜひ最初は少しづつでもいいので実践してみましょう!