今のこの時代にこそ身につけるべき「マーケット感覚」という言葉、聞いたことがあるでしょうか…?
これは、ちきりんさんの『マーケット感覚を身につけよう』というビジネス書で使われている言葉です。
モノや人の価値を判断することって、意外と難しいと思います。コンビニに売っているおにぎりやスーパーのお肉など、世の中で売っているものはだいたい値段がついているので、そのモノの価値は誰もが共通認識を持っています。
しかし人や感情のように、値段がついていないものの価値についてはどうでしょう。
「マーケット感覚」とは?
例えば自分について
・「自分には武器がないから転職なんてできない」
・「自分には特別な才能や能力がない」
と考えている人って少なくないと思います。そんな人たちについて著者のちきりんさんはこう言います。
もしそう感じるのだとしたら、その人に足りないのは「価値ある能力」ではなく、「価値ある能力に、気がつく能力」です。
ぼくたちは金塊を見たときに、「これにはかなり価値がある」ということがすぐにわかるはずです。一方で、幼児や動物の目の前に金塊が落ちてたとしても、ただの石と変わらないような認識でしかないでしょう。
自分が「売れる価値あるもの」を持っていても、その価値を認識することができなければ、金塊に価値を見出せない幼児や動物と同じにすぎません。
この「売れるものに気がつく能力」「価値を認識する能力」こそがマーケット感覚です。
ではこのマーケット感覚を身につけるにはどうすればよいのでしょうか。ここでは、価値を正しく判断するために必要なものとマーケット感覚の養い方を紹介していきます。
価値を正しく判断する方法
ぼくはちきりんさんの『マーケット感覚を身につけよう』を読んで、価値を正しく判断するには4つの力が必要だと思いました。それはモノでも人でも、値段が付いていないもっと曖昧なものでも同じことが言えます。
価値を正しく判断できるといろんな良いことがあります。
・新しいビジネスチャンスに気づける
・騙されにくくなる
…etc
1. 客観的に見る力
価値を正しく判断するための第一歩は、価値を見出すべき対象を「客観的に見る」ことです。もちろんこの客観的に見る力は、価値がどのくらいあるかを見極める力までは求められません。ただ客観的に事実を並べるだけです。
先ほどの金塊が目の前にあるという状況の例で言うと、以下のようになります。
・金色の鉱物である金がある
・重さは100gである
自分のことに対しても同じです。
・エクセルで〜が素早く処理できる
・文章を1時間〜文字書くことができる
・プログラミングで〜が作れる
・〜社と契約ができるほど交渉能力(コミュニケーションスキル)がある
などとにかく自分に対しても客観的に見ることが重要です。
2. 論理的思考力
これをちきりんさんは「場合分けをしながら、一歩一歩順を追って論理的に考えていく方法」と言っています。
商品やサービス、人の価値や役割を考えるときに、一つずつ要素を分解していきます。
例えば『マーケット感覚を身につけよう』では航空会社のANAの例が提示されています。
ANAの航空事業にはどのような役割があるだろう?どんな人が利用するだろう?と考えると
この図のようなものが見えてきます。この場合分けの考え方(ロジックツリーとも呼ばれます)は論理的思考の基本です。
飛行機の役割として人を運ぶ場合と貨物を運ぶ場合があります。利用客にも国内線と国際線を使う人に分かれます。国内線の中でもビジネスでの出張、観光、里帰り、単身赴任などの目的に分かれます。
「1. 客観的に見る力」で挙げた自分のできることも、細分化して見ていくことができるはずです。
3. 想像力
この想像力こそマーケット感覚の肝と言えるでしょう。ここで言う想像力とは「リアルな現場をイメージしながら考える」ことです。
先ほどのANAの役割を考えたときに、ビジネスでの利用客というのは一定数いるはずです。通常、ANAは同じような役割を果たす競合を他の航空会社だとみなすでしょう。これは当然です。
一方でユーザーの状況を具体的に想像してみることも非常に重要です。
例えばビジネスで利用する人は、地方支店との打ち合わせに行くために東京から飛行機に乗るでしょう。しかし、実は「打ち合わせのためだけに飛行機まで乗って移動するのは効率が悪いなあ」などと思っているかもしれません。会社側も「出張費で出て行く支出が大きいな」と負担を感じているかもしれません。
そんなときに、社内で「オンラインミーティングに切り替えてはどうか」という提案が出たとします。今では当たり前に出てきそうな選択肢ですよね。
この場合、ANAにとっての競合は他の航空会社だけではなく、通信システムを扱う会社も含まれるということになります。論理的思考だけでは見出せなかった可能性です。
このようにそのモノや人の表面だけでなく、背景にあるものまで想像を巡らせることが非常に重要です。
4. プライシング能力
そして最後の正しく価値を判断するための力は「プライシング能力」、つまり「値付け力」です。これこそがマーケット感覚の根幹にある力です。
なのでこのプライシングの習慣をつけることが非常に重要なのです。
「過去に経験のない場面に遭遇したときにも、自分で判断できる独自の基準や肌感覚を持つこと」が大切だとちきりんさんは言います。
プライシング能力の養い方については、以下で紹介していきます。
マーケット感覚の鍛え方
このマーケット感覚を鍛える方法こそが、プライシング能力を向上させることです。
これから必要になるのは「感動させてくれる」「選んでくれる」といった、非伝統的な価値にも気づくことのできる能力です。
今後は今までになかった価値を見出すための、自分独自の価値基準を持つ必要があります。
コンビニアイスマニアのアイスマン福留さんという方がいます。ただコンビニのアイスが好きだということに、これまでどのくらいの人が価値があると思っていたでしょう。大半の人はアイスが好きでもその価値を見出すことはできなかったはずです。しかしアイスマン福留さんはこの価値に「気づいた」のです。
このような全く新しい価値に気づくためにも、プライシング能力を鍛えることは重要なのです。
ではどのように鍛えればいいかというと、まずはすでに値段が付いているものについても、自分の基準に基づいてプライシング(値付け)してみるのです。
日常的にモノを買う際に、「この商品は自分にとっての価値はいくらなのか」というふうに考える癖をつけるのです。
あくまで「自分の価値基準」が重要であり、正解不正解はありません。
世の中には、相場的には割高でも、自分にはそれだけの価値がある、というモノもあれば、相場から見れば格安でも、自分には不要という物もあります。
例えば、沖縄のプール付きの豪華な別荘が500万円で売られていたとします。だいたいの人がお得だと思うかもしれませんが、暑い場所が嫌いな人にとっては500万円なんて払えないと感じるでしょう。
好きなアイドルのサイン付CDに10万円を出すというアイドル好きもいるかもしれません。
世の中のほぼ全てのものにすでに値段が付いているため、この社会システムに慣れてしまうと、自分のプライシングする経験が得られません。自分独自の価値判断ができないと、値段が付いていないものの価値はゼロに思えてしまいます。
この問題は、今自分が評価されていなかったり、雇ってもらえないのは、自分に価値がないからだと考えるようになってしまいます。
なので、常に買い物をするときやサービスを利用するときに、すでに付いている値段はいったん忘れましょう。そして自分にとっての値段を考える習慣をつけるのです。
日々そういう意識を持って買い物をしていると、自分にとって何が価値であり、どんなものに、どれだけの価値があるのか、少しずつわかってきます。考え続けることにより、「自分独自の価値基準」も明確になってくるのです。
プライシングの例題を解いてみよう
『マーケット感覚を身につけよう』では、プライシングの例題が3つ掲載されているので紹介します。自分の価値基準に基づいて答えてみましょう。
- 毎日、洗濯と掃除と洗い物をやってもらえるサービス(1日2時間)
- テーマパークで、自分の代わりに1時間x3つのアトラクションの行列に並んでもらえるサービス
- 毎年、妻/夫の誕生日、結婚記念日、義理の両親の誕生日、母の日、父の日などに、それぞれの該当者に花束を贈ってもらえるサービス
いかがでしょうか。似たようなサービスはあるかもしれませんが、一般的に「相場」が決まっていないようなサービスばかりです。ネットで値段を調べても意味がありません。
自分ならいくら出してこれらのサービスを受けたいかを考えましょう。プライシングを続けていれば、お金だけでなく、時間の価値観も明確になっていくでしょう。
『マーケット感覚を身につけよう』を行動に移す
『マーケット感覚を身につけよう』から学ぶべき、明日から始めたい行動内容は
買い物をするときに自分なりの値段を付けてみる
です。これまでじゅうぶん過ぎるほど述べてきましたが、プライシングの習慣を持つことは、マーケット感覚を身につける上で非常に重要です。
スーパーでもネットショップでも、付いている値段を無視して、自分なりの価値を考えてみてください。
モノや自分を売る術が集約されているのが『マーケット感覚を身につけよう』です。ぼくたちの生活に寄り添ったわかりやすい例と語り口で綴られるちきりんさんの書籍。得られるものは本代なんかよりはるかに多いといつも感じます。気になった方はぜひお手にとってみてはいかがでしょうか。
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