前田裕二 伝説の24時間本 【ギフトのあけ方】

ギフトのあけ方

誰にでもあるギフト (才能)。これに気づけていない人は、本来の20~30%くらいの力しか発揮できていないかもしれません。

自分をプロディースするように、いかに自分のやりたいことを見つけ、市場に売っていくか。

今後はそんな生き方が重要になってくると語るのはSHOWROOM代表の前田裕二さんです。

前田さんは自身の半世紀を綴った『人生の勝算』と日常的に行なっているメモ術をまとめた『メモの魔力』の2冊のベストセラーを世に送り出してきました。

そして念願の3冊目が少しユニークな方法で出版されたのが、2019年の11月でした。

SHOWROOMとニッポン放送がコラボして、ラジオ番組『オールナイトニッポン』での前田裕二さんの24時間密着企画が実現しました。その24時間番組の中で本を一冊完成させてしまおうというとんでもない企画が行われたのです。

結果からいえば、本当にそこで本が一冊誕生してしまいました。しっかり印刷して物理的な形で完成したのです。

その本が『ギフトのあけ方』です。

その一部始終が、『ギフトのあけ方』完成の立役者の一人であるライターの金藤 良秀さんのnoteにおさめられています。

テーマはズバリ「プロデュースの民主化」でした。個人の時代になったと言われる現在、ではどのように自分や周りの個人をブランディングしていくかというテーマで作成された本書。

幻冬舎編集者の箕輪厚介さんとの対話の中で、この誰もが発信できる時代におけるプロデュース力とは、コアと市場の往復だという話になりました。

この「コアと市場」こそが本書の本質的な内容であり、タイトル候補にまでなった言葉です。24時間の中で一冊の本が作り上げられる過程を見るのも醍醐味でした。

タイトル案がこちらです↓

ギフトのあけ方 タイトル案
ギフトのあけ方 タイトル案

また、他のデザイン案(左)や限定10冊の手作り本(右)の表紙デザインがこちらです↓

ギフトのあけ方 デザイン案
ギフトのあけ方 デザイン案

本書は前田さんと多様な業界で活躍する7人がそれぞれ対談するという形式になっています。その7人とは、

  • 中田敦彦 (オリエンタルラジオ)
  • 鬼龍院翔 (ゴールデンボンバー)
  • 松村沙友理 (乃木坂46)
  • 西野亮廣 (キングコング)
  • ゆうこす (モテクリエイター)
  • 蜷川実花 (写真家)
  • 檜原麻希 (ニッポン放送 社長)

とそうそうたるメンバーです。カッコ内の肩書きは本の一部にすぎず、それぞれ自分のギフトをあけていかんなく活躍されているかたばかりです。

そんな7人と前田さんとの対話の中で、特にキーだと思うメッセージを切り出していきたいと思います。

前田裕二

多くの人間は自分の持っている力の、20%ほどしか発揮できていません。それを100%発揮できるようになるためのスキルが「プロデュース」だと思っています。

冒頭でも述べた通り、前田さんもSHOWROOMを運営していて数多くの悩める人を見てきているからこそ、言える言葉でしょう。

そしてこの「プロデュース」については、箕輪さんも言っていることですが、このように述べられています。

プロデュースの極意は、自身のコアな部分を見つけ出し、それを市場という冷徹な視線晒して、研ぎ澄ませることです。

つまり、自分の奥底にある「好きなこと」や「やりたいこと」が大事である一方で、それが誰にも刺さらない自己満足でしかないものだと意味がないということです。

コアな部分を大事にしつつ、市場に当てて、またコアを見直して、という繰り返しが大切なわけですね。

この前田さんや箕輪さんの考え方をベースに、7人の主張も見ていきましょう。

中田敦彦

10割の臭みから削りに削って「2~3割まで削りました」という大吟醸みたいなイメージです。

自分のコアからスタートする人と、市場を見てスタートする二種類の人がいます。中田さんは完全にコアスタートだと述べています。

自分のコアの部分を「臭み」という表現をしていますが、その臭みのままだと市場には受け入れられない。そこで自分のコアは大事にしつつ、7~8割は市場に合わせるために削って研ぎ澄ましていくスタイルだと言います。

オリエンタルラジオのネタも、「中田敦彦のYouTube大学」も数知れぬトライアンドエラーを繰り返し、残ったものがヒットしているというわけですね。

鬼龍院翔

今やゴールデンボンバーなどで知られる鬼龍院さんですが、もし今SHOWROOMで超無名な自分をプロデュースするとしたら、どうするかという質問に対し、このように答えています。

理由はないけどみんなが勝手にできないと決めつけていることを探します。校則で禁止されたことをかいくぐる悪ガキみたいなものですね。

つまり、前田さんの言葉を借りるなら、「優れるな、異なれ」ですね。

自分より歌がうまい人なんていくらでもいる。自分よりダンスがうまい人もそう。つまり競争が激しいところで勝負するよりも、誰も見つけていない路線を切り開くという考え方ですね。

鬼龍院さんは市場を徹底的に調べ、自分ができることを当てていくというスタイルだと言えそうです。市場スタートにも関わらず、「鬼龍院さんっぽい」「ゴールデンボンバーっぽい」ものを表現できているのがすごいところですよね。

松村沙友理

松村さんは乃木坂46というトップアイドルグループに身を置いているからこそ、そもそも市場の中に立っているといえます。

市場の中にいると、この産業の中ではここが隙間だなというのをすごく感じますね。私は市場に中にいて、その中にある隙間にコアを出す感じです。

人気がものをいうアイドル業界という見方をすれば、たしかに「1位」になるだけが勝負ではないと気づける松村さんにはオンリーワンのギフトを感じざるをえません。

乃木坂46の中にも「さゆりんご軍団」というユニットを自ら立ち上げたり、ライブの前に自己制作の動画をファンに向けて流すなど独自の方法で突き進んできた松村さん。

冷静に市場を見つつ、まだ誰もやっていないことで自分ができることをやる。どんな職種の人にも当てはめることのできそうな戦略です。

西野亮廣

今やエンタメ界においてもビジネス界においてもトップの座に君臨する西野さん。西野さんが考える自分をプロデュースする上で重要なこととはなんなのでしょう。

まずは頑張ってクオリティを上げる。次は売り場を選ぶ。

結論としては、まずは自分のコアを見つけ、努力してクオリティを高める。「ここに近道はない」と前田さんも言います。そしてその次が重要なポイントですが、売り場を間違えないということです。

本書ではサイクリング雑誌の例が出てきますが、サイクリング雑誌は本屋さんよりも自転車屋さんのほうが売れるらしいのです。

つまり当たり前だと思われていることでも問い直すことです。ただCDを売るだけだったアーティストの常識を破り、握手券を売ったAKB48などもまさに、「売る場所」を変えているわけですね。

西野さんも売れっ子芸人であったにも関わらず、自分の売り場をバラエティ番組のひな壇から、絵本作家へと移しました。そのように絶えず自分の最適な売り場を考えて、新しいことに挑戦していくということが重要なのですね。

ゆうこす

ゆうこすさんもコアスタートの一人です。かわいくなりたいというコア一心ではじめたモテクリエイターへの道。しかし、当初は「ぶりっ子」という批判があとをたたなかったと言います。しかし、そんな市場の声よりも、自分の声に耳を傾けていました。

最初はニッチな世界でいちばんになりたかったんですよね。とにかくぶりっ子の共感を得たかったので、「今はいいかな」って受け流してました。

需要がどれほどあるかわからないニッチな分野を、自分のコアを大事に突き詰める。それがゆうこすさんの自己プロデュースだったわけです。そして、ニッチな領域でも、その少しの人たちが応援団となりマスにまで広がったのです。

自分のコアを大事にして、熱狂にちかいくらいやり抜けば、その熱にファンもついてくるという例を作ってくれたのが、ゆうこすさんでしょう。

蜷川実花

前田さんも「完全にコアスタート派」だと語る蜷川実花さん。美大生のときも、写真家になった当初も、変だとかこんなの写真じゃないというようなことを言われてきたと言います。しかし、蜷川さんは一貫して自分を貫きました。

「人と違って全然構わない」と思えるか。それほどの努力を、自分なりにしていたということなんですよね。

人間誰しも、自分のやっていることに不安を抱くものでしょう。しかしそんな自分のコアに自信を持たせてくれるのは、努力しかないのだと教えてくれます。

女性だから、あの蜷川幸雄の娘だから、というフィルターに絶えず晒されてきたのだと思いますが、今では「蜷川実花」という存在を確立しているといえます。その裏付けは圧倒的な努力があったんですね。

檜原麻希

結局はプロデュースって、「愛」以外の何ものでもありません。

そう締めくくったのは、このラジオ番組『オールナイトニッポン』を運営するニッポン放送のトップ檜原麻希さんです。

コンテンツにしろ、自分という存在にしろ、市場から愛され、その受けた愛をさらに市場に還元していくという愛の循環。深いようですが、結局はここに行き着くという結論が、檜原さんや前田さんのような「突き抜けた人」が見ている景色なのではないでしょうか。

愛がなければ、自分もやり抜けませんし、市場からも見透かされてしまいます。

コアを大事にするべきというのは、自分が好きになれるかという点からも重要だったわけですね。

結論

結局何が重要かというと、コアか市場のどちらかではなく、どちらも重視すべきなのです。

コアを大事にしないと、誰でにもできるコモディティ化したものになってしまいます。市場を大事にしないと、誰でも振り向かれないものになってしまいます。

コアと市場を圧倒的な回数往復するというのが、自己プロデュース力というわけです。

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