【全199冊+α】村上春樹の長編全15作に登場する本と作家<永久保存版>

村上春樹の長編全15作に登場する本まとめ

村上春樹の長編小説全15作に登場する本199冊+α全てを紹介します

すべての読書家たちへ。ついに村上春樹の全長編小説に登場する本や作家をまとめあげました。

世界的作家である村上春樹の作品には実に多くの本が登場します。それは少年時代から大量の書籍を読み漁ってきた著者ならではのなせる技で、村上春樹の小説では国内外問わず重要な作品が数多く言及されています。主人公が旅の道中読書をしたり、素敵な比喩に文学作品の特徴や登場人物が使われたりします。

現在、村上春樹の長編小説は15作を数え、そのすべての作品に他の作家や小説のタイトルが登場します。

そして今回、村上春樹の長編小説に登場する作家名や本のタイトルをすべて抜き出してまとめたところ、作家は80人を超え、200冊弱もの本が登場していることがわかりました。歴史的に重要な世界文学作品から、童話、宗教の経典、哲学書にいたるまで幅広いジャンルが扱われています。これらの小説内の作品が、物語上重要な役割を果たしているために村上春樹作品の理解を深める手助けになる場合も少なくありません。

また僕たち読み手にとっては、村上春樹を起点に、読書の幅を広げる機会にもなります。著者自身が読んだことの作品に触れることはあまり考えられないので、あえて言及されているこれら村上春樹作品内に登場する200冊近くの本は、村上春樹が厳選した上質なブックガイドとして見ることもできるでしょう。

この記事では村上春樹作品に登場する本や作家の全リストの紹介から、作品の登場数ランキング、村上春樹と読書の関係などまで、あますことなく語り切ります。

目次

村上春樹作品と書物の関係性

考えてみれば、僕は10代の頃に浴びるほど本を読んだ。何はなくとも、とにかく本さえ読んでいられれば幸福だった。たくさん本を買ったし、図書館の本も読みまくった。読んだ本の多くは小説だった。(『BRUTUS 2021年10月15日号 No.948 [特集 村上春樹 上 「読む。」編] 』より)

一人っ子であることも関係して、少年時代からかなり多くの本を読んできたと語る村上春樹ですが、なんと父親の許しで書店ではツケで書籍を購入できたそうです(『村上朝日堂』より)。作家になってからも午前中に主な執筆活動をする傍ら、午後には読書や音楽を嗜んでいることはしばしば本人の口から語られています。

翻訳家としても知られている村上春樹は、敬愛するフィッツジェラルドやチャンドラー、カーヴァーなど英語圏の小説を中心に実に多くの作品の日本語訳を手がけています。好きな本を翻訳するほどの深さで読み込むというには、究極の読書法ではないでしょうか。

エッセイや読者との質疑応答などでも面白かった本を紹介し続けていることからも、いまだに創作をしつつ読書の時間も大切にしていることがうかがえます(エッセイなどで紹介されている村上春樹おすすめの小説についても今後まとめたいと思います)。

多作な作家でありながら熱心な読書家としての一面を持つ村上春樹は、自分の小説内でもふんだんに他作品や他作家への言及を惜しみません。一度ならず二度三度登場する小説や作家も存在し、村上春樹自身の愛読歴と関連していることも否めないでしょう。

村上春樹の愛を感じる登場作品ランキングベスト3

村上春樹作品に登場する小説やその他ジャンルの本の全作品をリストアップする前に、「ではどの作品が最も登場頻度が高いのか」という疑問に答えてしまおうと思います。登場本全199冊のうち、村上春樹が自身の作品内でこれでもかというくらい繰り返し言及する作品や作家、その珠玉のランキングをここで紹介したいと思います。

*全長編小説のうち何作に登場したかでカウントし、同作品内で複数言及されてもカウント数は1としました。

村上春樹作品に出てくる回数ランキング第3位タイ: 『聖書』

『聖書』村上春樹登場

村上春樹の長編小説のうち3番目に登場する作品数が多かったのは、『聖書』で、『海辺のカフカ』『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』『街とその不確かな壁』の3作品に登場します。『海辺のカフカ』では「アダムとイブ」という有名な登場人物およびエピソードに触れられ、『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』では「ヨナ書」のエピソードを思われる記述が見られます。

『聖書』は、宗教書としてだけでなく、その物語性や文学的価値からも評価される、世界で最も広く読まれている本です。その累計発行部数は50億冊を超え、毎年数億冊が印刷されています。世界中で数千の言語に翻訳され、多くの人々に影響を与え続けています。一見すると、『聖書』を「小説」と呼ぶのは違和感があるかもしれませんが、物語形式という点では聖書は小説的な要素を多く持っていると言えます。

村上春樹作品に出てくる回数ランキング第3位タイ: 『失われた時を求めて』

『失われた時を求めて』村上春樹登場

3作品に登場し第3位にランクインした小説がもう一つあります。それが世界文学の大長編小説の筆頭であるマルセル・プルーストの『失われた時を求めて』です。『羊をめぐる冒険』の主人公は、『失われた時を求めて』を読んだことがあると言います。『1Q84』では潜伏する身となった「青豆」が読む機会を与えられたのが、よほど時間がないと読む機会はないとされる『失われた時を求めて』でした。また、『騎士団長殺し』では「マルセル・プルーストは、その犬にも劣る嗅覚を有効に用いて長大な小説をひとつ書き上げました」という『失われた時を求めて』を特定できる発言が見られます。

村上春樹自身、『村上さんのところ』での質問者への返答で、「僕も『失われた時を求めて』に関しては、高校生の時からずっと挫折しっぱなしです」と発言しています。「いつか読もうと思っているんだけど、果たせないかも」という弱気な発言も。ちなみに、『失われた時を求めて』の他に、イギリスの小説家ロレンス・ダレルの『アレクサンドリア・カルテット』(『アレクサンドリア四重奏』としても知られる)も読みたいけど読めていない作品として挙げられています。

村上春樹作品に出てくる回数ランキング第2位: 『不思議の国のアリス』

『不思議の国のアリス』村上春樹登場

4つの長編に登場し第2位の座を得た作品は、ルイス・キャロルの世界的名作『不思議の国のアリス』です。意外でしょうか。『不思議の国のアリス』は映像作品としても有名なので、厳密に小説と映画のどちらを指しているかは特定しづらいですが、登場する4作品ともに小説との解釈をしても不自然ではないので、ランクインとなりました。

『1973年のピンボール』で「直子」が見せた消えた後も心に残る笑い方が、「『不思議の国のアリス』に出てくるチェシャ猫のよう」だと描写されます。『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』では、「私」頭の中の仕組みを説明する際に、『アリスの不思議の国』に出てくる特殊な薬が比喩として用いられます。また「博士」は「ルイス・キャロルのあの話は本当によくでてきておるです」と評します。『ダンス・ダンス・ダンス』では、居心地の悪い食事の場を、「『不思議の国のアリス』に出てきる気違い帽子屋のお茶会の方がずっとましだった」と表現しました。主人公「私」の妹であった「コミ」が、ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』の熱狂的なファンだったとされる『騎士団長殺し』も印象深いです。

また『ダンス・ダンス・ダンス』では続編の『鏡の国のアリス』にまで言及している点も見逃せません。

村上春樹作品に出てくる回数ランキング第1位: 『カラマーゾフの兄弟』

『カラマーゾフの兄弟』村上春樹登場

そして村上春樹作品登場回数ランキング第1位に輝いたのは、長編5作品にその名を連ねたフョードル・ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』です。『カラマーゾフの兄弟』は『風の歌を聴け』『羊をめぐる冒険』『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』『ねじまき鳥クロニクル』『1Q84』に登場しました。

『風の歌を聴け』では「鼠」が書いた小説の一つが『カラマーゾフの兄弟』を下敷きにしたコミック・バンドの話だったといいます。また『羊をめぐる冒険』では、なんと「僕」が『カラマーゾフの兄弟』と『静かなドン』を3回も読んだと語ります(あれほど長い小説を3回もすごいですよね)。ちなみにロシア文学にも精通していると思われる村上春樹自身も、十代の頃に『カラマーゾフの兄弟』や『戦争と平和』を3度も読んでいると語っています。

『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』の「私」は「図書館の女の子」に『カラマーゾフの兄弟』を読んだことはあるかを聞き、彼女はずっと昔にあると答えます。『ねじまき鳥クロニクル』の主人公である「僕」は『カラマーゾフの兄弟』の兄弟の名前を全部覚えていると語ります。『1Q84』においては、「青豆」と「リーダー」の会話の中で『カラマーゾフの兄弟』が登場し、2人とも読んだことがあると言います。

世界中で最も知られる総合小説の一つである『カラマーゾフの兄弟』を村上春樹が自身の作品内に繰り返し登場させることに違和感はないでしょう。しかも村上春樹は「世の中には二種類の人間がいる。『カラマーゾフの兄弟』を読破したことのある人と、読破したことのない人だ」と言うほど、この作品に特別な思い入れを持っています。

ぜひ一度は通読したい作品ですね。複数の翻訳がありますが、村上春樹は読みやすいと言う理由で亀山郁夫訳(光文社古典新訳文庫)をおすすめしていたこともあります(『村上さんのところ』より)。

村上春樹長編に出てくる作品の登場数ランキング(補足)

登場作品をカウントする上で、作品内の登場人物への言及にも注目をしていました。その中でも度々登場した「スヌーピー」や「チャーリー・ブラウン」でお馴染みのチャールズ・M・シュルツの漫画『ピーナッツ』は、合わせると4作品に登場しました。実質第2位に並ぶ登場作品数ですが、Tシャツやタンブラーに描かれているデザインとしての登場が多く、漫画自体を指す記述が見られなかったので、今回のランクインは見送りました。『ピーナッツ』はアメリカの歴史を生々しくもコミカルに描いてきた立派な世界文学と見ることもできますが、村上春樹の背景的にはキャラクターのデザインアイテムのようなカルチャーのほうが身近にあったのかもしれません。

村上春樹の愛を感じる登場作家ランキングベスト3

村上春樹の全長編小説において、作家の名前は85人が登場します(登場本の著者を含めると約170人)。登場本に続いて、登場作家ランキングも発表します。

*このランキングでは、登場する作品の著者も作家としてカウントしています(例えば『ライ麦畑でつかまえて』が登場すれば、作家名には言及されていなくてもJ・D・サリンジャーもカウント)。

村上春樹作品に出てくる回数ランキング第3位: フランツ・カフカ

村上春樹作品に登場するカフカ

村上春樹長編作品にて登場が最も多いランキング第3位には、6作品に登場するフランツ・カフカがランクイン。村上春樹第10作目の長編『海辺のカフカ』のタイトルにも使われている通り、カフカは村上春樹にとっても非常に特別感のある作家です。最初に登場したのが第6作目の『ダンス・ダンス・ダンス』で、「僕」が刑事に取り調べを受ける前日にカフカの『審判』(『訴訟』)を読んでいたことが述べられます。『ねじまき鳥クロニクル』では、病院の待合室の陰鬱さを表すのにカフカが比喩として使われます。『海辺のカフカ』では、『城』『審判』「変身」「流刑地にて」というカフカの代表的な長短編が4つも登場します。

『1Q84』でもカフカの名前だけでなく、「変身」の主人公「ザムザ」の名前まで言及されます。『騎士団長殺し』では、謎に包まれた「騎士団長」がフランツ・カフカのことをよく知っていたことを仄めかす場面があります。次作『街とその不確かな壁』でも登場し、「イエローサブマリンの少年」の長大な読書リストの中にカフカの名前が上がっています。

村上作品には、カフカが遺した長編小説三作のうち『城』『審判』に加え、「変身」「流刑地にて」などの有名な中短編も登場します。さらに内容にまで言及される箇所もあります。逆に登場しない長編『失踪者』(『アメリカ』)を村上春樹がどう評しているかも気になるところです。いずれにしても村上春樹が好きな読者はカフカは読んでおいて損はないでしょう。

村上春樹作品に出てくる回数ランキング第2位: アーネスト・ヘミングウェイ

村上春樹作品に登場するヘミングウェイ

作家ランキング第2位はアメリカ文学における知名度トップクラスのアーネスト・ヘミングウェイです。こちらも3位のカフカと同じ登場数の6作品ですが、直接作家名に言及されていた回数がカフカよりも多かったため、3位タイではなく2位としてランクインさせてもらいました。

ヘミングウェイは村上春樹のデビュー作『風の歌を聴け』から登場しています。作品内で大きな存在感を示す架空の作家「デレク・ハートフィールド」の同世代としてヘミングウェイの名前が挙げられます。続いて第4作の『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』では、「私」は受け取って困っている一角獣の頭骨を見て、ヘミングウェイならどうするかに思いをめぐらせます。『ねじまき鳥クロニクル』ではヘミングウェイの代表作のひとつ『武器よさらば』が言及されます。

『海辺のカフカ』の「大島さん」はスペイン戦争の時代について「ロルカが死んで、ヘミングウェイが生き残った」と述べます。『1Q84』ではヘミングウェイがよく利用していた酒場をイメージしたバーが登場します。『街とその不確かな壁』では、「私」は「コーヒーショップの女店主」との会話の中で、彼女の言葉を「ヘミングウェイの短編小説の出だしみたいだ」と表現します。

ヘミングウェイの代表作は、『日はまた昇る』や『老人と海』などたくさんあるものの、村上春樹の長編で直接言及されるのは『武器よさらば』のみにとどまります。ですがヘミングウェイ作品の冒頭の雰囲気を覚えていたり、通った酒場のエピソードを知っていたり、村上春樹はある程度ヘミングウェイを読み込んできた形跡が見受けられます。

村上春樹作品に出てくる回数ランキング第1位: フョードル・ドストエフスキー

村上春樹作品に登場するドストエフスキー

堂々の第1位は、登場作品9作と2位に大差をつけたロシアの文豪フョードル・ドストエフスキーです。村上春樹の長編全15作のうち、9作にドストエフスキーの名前か作品が登場するなんてすごいですよね。登場本ランキングでも5作品に登場した『カラマーゾフの兄弟』が第1位に輝き、村上春樹の中でドストエフスキーが特別な位置付けにあることは間違いありません。

デビュー作の『風の歌を聴け』から『カラマーゾフの兄弟』が登場し、続編『1973年のピンボール』でもドストエフスキーの名は見られます。続く第3作『羊をめぐる冒険』では「僕」が『カラマーゾフの兄弟』を3回も読んだエピソードが紹介されます。

第4作『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』では「私」と「図書館の女の子」が『カラマーゾフの兄弟』を読んだことがあり、第5作『ノルウェイの森』では「永沢さん」が会話に「ドストエフスキーが賭博について書いたもの」を引き合いに出します。『ねじまき鳥クロニクル』では、「僕」の珍しい特徴として「『カラマーゾフの兄弟』の兄弟の名前を全部覚えている」ことが挙げられます。

『1Q84』の「青豆」と「リーダー」は『カラマーゾフの兄弟』を読んだことがあると話します。また「牛河」が『罪と罰』の「ラスコーリニコフ」と「ソーニャ」に言及します。『騎士団長殺し』では、「雨田政彦」がふとドストエフスキーの『悪霊』に言及し、思い出せない登場人物について「私」は「キリーロフ」だと答えます。さらに「私」はドストエフスキーの小説について「自分が神や通俗社会から自由な人間であることを証明したくて、馬鹿げたことをする人間がたくさん出てくる」と評します。『街とその不確かな壁』の舞台となっている図書館では、たまに貸し出される本としてドストエフスキーの名前が挙げられます。

以上のように、村上春樹はドストエフスキーの名前のみならず、五大長編のうち比較的知名度の高い『罪と罰』『悪霊』『カラマーゾフの兄弟』を直接的または間接的に登場させています。村上春樹自身もドストエフスキー(特に『カラマーゾフの兄弟)については、エッセイや質問回答コーナーなどで多く触れ、自身の読書歴を披露しています。

長い小説ばかりですが、小説は長いほど良いと考える村上春樹なので、気になる方はぜひ挑戦されることをおすすめします。

村上春樹長編に出てくる作家の登場数ランキング(補足)

ちなみに気になる第4位以降ですが、第3位より1作少ない5作品に登場した作家がなんと5人もいます。どの作家も世界文学の中では重要な存在で、有名どころばかりです。ウィリアム・シェイクスピア、F・スコット・フィッツジェラルド、マルセル・プルースト、アーサー・コナン・ドイル、オノレ・ド・バルザックが第4位タイとなります。村上春樹が最も愛すべきフィッツジェラルドが5作品なのは意外ですが、自身で翻訳もしていますし、じゅうぶんすぎる登場数でしょう。

国内作家への言及も少なくありませんが、それでも登場数トップが海外の作家で占められているのは、村上春樹らしいと言えるでしょう。

村上春樹全15長編小説に登場する本全199冊+αリスト

村上春樹の長編に登場する本と作家のベスト3を紹介しましたが、ここからはデビュー作『風の歌を聴け』から最新作『街とその不確かな壁』まで全15長編を網羅し、1作ずつ注目して登場本と作家を全てリストアップしています。各作品や作家を解説するとともに、小説内での登場シーンも解説した詳細記事も用意しています。好きな長編があればぜひチェックしてみてください。

村上春樹による全199冊(特定が難しいものも含めると243冊)の圧倒的な選書をとくとご覧あれ。

長編第1作『風の歌を聴け』に出てくる本9冊

『風の歌を聴け』登場本一覧 (第二版)

村上春樹のデビュー長編小説は、事実上の長さこそ中編程度ですが、この頃から他作品への言及はすでに始まっていました。『風の歌を聴け』にて具体的に明示されている作品の数は9冊です。作家は3人。また特定が難しい形で言及されている本もありますが、なんといっても『風の歌を聴け』の目玉は「デレク・ハートフィールド」という作家の存在でしょう。みなさんも初めて読んだとき、「こんな作家聞いたことないけど」と思ったに違いありません。それも当然でこの作家が村上春樹が創造した架空の作家だからです。ただ村上春樹んの本当に実在するかのように感じされる語り口があまりに自然なんです。『風の歌を聴け』は、すでに村上春樹の作家としてのあり方の片鱗のようなものが垣間見える興味深い初期作品です。

全登場本リスト

村上春樹作品にはたくさんの実在する作家や小説のタイトルが登場します。それはストーリーとは直接的にはあまり関係ないものもあれば、重要な役割を果たすものもあります。物語を読み解くための手がかりになったり、単純に次に読む本を決めるためのブックガイ[…]

『風の歌を聴け』登場本一覧

長編第2作『1973年のピンボール』に出てくる本8冊

『1973年のピンボール』登場本一覧 (第二版)

村上春樹の第2作であり、『風の歌を聴け』 の続編的な立ち位置の作品が『1973年のピンボール』 です。こちらも長さは中編程度ですが、8つの書籍、3人の作家が登場します。主人公が翻訳の仕事をしているので、実在する書籍から架空と思われる本(またはその断片)が多数出てきます。

全登場本リスト

この記事では、村上春樹の二作目の長編小説『1973年のピンボール』に登場する本のタイトルや作家名を紹介します。 前作『風の歌を聴け』に登場する本や作家名についてもこちらでまとめましたが、その続編として、第二作『1973年のピンボール』[…]

『1973年のピンボール』登場本

長編第3作『羊をめぐる冒険』に出てくる本14冊

『羊をめぐる冒険』登場本一覧 (第二版)

初期作品群の第三部である『羊をめぐる冒険』 には、多くの海外文学の名作を含む14冊の本が登場します。加えて、主人公が訪れる町に関する『十二滝町の歴史』という架空の書籍や、「コンラッドの小説」のように具体的なタイトルを示さない言及も見られます。また国内外の有名作家の名前も6人ほど挙げられます。本作で重要な場所となる「いるかホテル(ドルフィン・ホテル)」の名前の由来となったハーマン・メルヴィルの『白鯨』や、村上春樹の読書歴と重なる「フョードル・ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』を3回読んでいる」という発言が特に興味深いと思いました。

全登場本リスト

1982年に出版された村上春樹の第三作目の長編小説『羊をめぐる冒険』に登場する本や作家の名前を一覧にして紹介します。 文庫本では上下巻で構成される『羊をめぐる冒険』には、実に多くの書籍名や作家名が登場します。架空の本もありますが、その[…]

羊をめぐる冒険 登場本

長編第4作『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』に出てくる本19冊

村上春樹初の書き下ろし長編小説『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』は、物語の質と量ともに厚みが出てきた初期作品ですが、そのボリュームに比例して多くの小説や作家が登場します。本作では、19冊の本と11人の作家名が明示されています。

村上春樹作品ではお馴染みの図書館という場所が重要な意味を持つのも、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』からといえるでしょう。調べ物のために図書館で借りてくる本の中で、『動物たちの考古学』という本が架空のものかと思いきや、『幻獣辞典』は実在するという事実に驚いたのを覚えています。これらの本が巻末の参考文献として記されたのも、村上春樹作品では珍しいことです。全体を見ると、ロシアやアメリカ、フランスといった世界文学の中心的存在である作家名や作品名が連なる点が興味深く、まさにこの作品自体が図書館のような機能も果たしているかのようです。

全登場本リスト

村上春樹の四作目の長編小説『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』には、小説や作家の名前がたくさん登場します。図書館がひとつの重要なモチーフとなっていたり、主人公が読書家であることなども関係しています。 この記事では『世界の終り[…]

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド 登場本

長編第5作『ノルウェイの森』に出てくる本19冊

村上春樹の最も有名な小説『ノルウェイの森』はリアリズム小説ということもあって、実に多くの実在する本や作家の名前が登場します。19冊の本と18人の作家名が直接的に言及されます。その中でも印象的な作品は、なんといっても主人公の「ワタナベ」が読むトーマス・マンの『魔の山』です。これは読んでいる場所と小説の内容が関連していて、まさに『ノルウェイの森』をより深く味わうために読んでみたくなる読書案内のようです。村上春樹らしい海外の作家ばかりでなく、高橋和巳や大江健三郎、三島由紀夫、太宰治など複数の日本人作家にも言及している点も興味深いでしょう。また村上春樹にとっても最も重要な作品のひとつである『グレート・ギャツビー』の名前が何度も繰り返される場面も注意をひかれました。

全登場本リスト

村上春樹作品で最も売れた小説『ノルウェイの森』にはたくさんの小説や作家の名前が出てきますが、それらを一挙にまとめて紹介します。 『ノルウェイの森』は村上春樹の五作目の長編小説です。他の村上作品にも多数の書物への言及がありますが、このリ[…]

ノルウェイの森 登場本

長編第6作『ダンス・ダンス・ダンス』に出てくる本14冊

『ダンス・ダンス・ダンス』登場本一覧 (第二版)

『羊をめぐる冒険』の続編である『ダンス・ダンス・ダンス』 には、14冊の本と9人の作家が登場していると特定できます。札幌を訪れる主人公が海外文学を読むシーンが印象的な小説で、ジャック・ロンドンから、ディケンズやカフカなど世界各国の有名作家の作品が登場します。

全登場本リスト

村上春樹の長編第六作にして、初期三部作(鼠三部作)の続編でもある『ダンス・ダンス・ダンス』に登場する本や作家をまとめました。 相変わらず他の村上春樹の小説と同様、『ダンス・ダンス・ダンス』にも世界の名作をはじめとする多くの小説や作家名[…]

ダンス・ダンス・ダンス 登場本

長編第7作『国境の南、太陽の西』に出てくる本2冊

『国境の南、太陽の西』登場本一覧

『国境の南、太陽の西』は短めの長編小説で、村上春樹作品にしては珍しく登場する小説や作家の数が極端に少ないです。数少ない例として雑誌の「ブルータス」が登場します。主人公が経営するジャズバーの取材記事がブルータスに掲載されますが、これは村上春樹が実際に経営していたジャズバーが1980年12月号の『ブルータス No.9』に掲載された事実に重なるのも興味深いです。また「十九世紀の小説」という曖昧な形での表現もありますが、その時代の作家でいうと、ドストエフスキーやフローベール、スタンダール、ディケンズ、コンラッド、メルヴィルなど名だたる世界の文豪が想像されます。

全登場本リスト

この記事では、村上春樹の七作目の長編小説『国境の南、太陽の西』に登場する本や作家の名前を紹介します。 『国境の南、太陽の西』は、村上春樹の長編小説としては例外的に本や作家への言及が少ない作品です。中編程度の作品ということを考えても、さ[…]

国境の南、太陽の西 登場本

長編第8作『ねじまき鳥クロニクル』に出てくる本11冊

『ねじまき鳥クロニクル』登場本一覧 (第二版)

村上春樹史上最高傑作とも評される『ねじまき鳥クロニクル』では、11冊の本と2人の作家の名前が見られます。村上春樹作品には常連レベルの『カラマーゾフの兄弟』はもちろん、ギリシア神話の『オイディプス王』や中国の古典『礼記』などの古い文献にも触れられています。また作品中に重要な要素の一つであるノモンハンに関連した書籍が参考文献として多数記載されています

全登場本リスト

村上春樹の第八作目の長編小説にして、最高傑作のひとつ『ねじまき鳥クロニクル』に登場する本や作家についてまとめてみました。 『ねじまき鳥クロニクル』には海外文学の王道小説から神話の物語まで多くの書物や作家の名前が登場します。また村上春樹[…]

ねじまき鳥クロニクル 登場本

長編第9作『スプートニクの恋人』に出てくる本7冊

『スプートニクの恋人』登場本一覧

村上春樹が当時の文章技術の総決算的な位置付けとした『スプートニクの恋人』にも、当然ながら多くの小説や作家が登場します。一巻完結にも関わらず、7つの作品と4人の作家が言及されます。フィッツジェラルドやコンラッドなど村上春樹お気に入りの海外作家はもちろん、『三四郎』が登場するなど日本人作家としては夏目漱石への愛着を感じさせます。

全登場本リスト

村上春樹の九作目の長編小説『スプートニクの恋人』に登場する小説や作家をまとめて紹介します。 『スプートニクの恋人』は一冊に収まる中編小説的なボリュームにもかかわらず、村上春樹作品らしく世界的名著や文豪の名前が多数登場します。まとめてラ[…]

『スプートニクの恋人』登場本

長編第10作『海辺のカフカ』に出てくる本33冊

『海辺のカフカ』は図書館が重要な舞台となるだけあって、村上春樹作品の中でも突出して多くの本や作家の名前が登場します。具体的に特定できる本が33冊(架空の本やタイトルの特定が難しい本も合わせると42冊)、作家が18人も登場します。『海辺のカフカ』のタイトルにもあるように、やはり目立つ作品といえばフランツ・カフカの名作『変身』『流刑地にて』『審判』『城』でしょう。また夏目漱石の存在感も大きい印象です。国内外の作家への言及も多く、『海辺のカフカ』は一級品の読書案内とも言えます。

全登場本リスト

村上春樹の十作目の長編小説『海辺のカフカ』に登場する本や作家を一挙に紹介します。『海辺のカフカ』は村上春樹作品でも最も世界的な評価を得ている長編の一つで、その作品中には世界文学や国内文学の名作がずらりと顔を並べます。 またとある図書館[…]

『海辺のカフカ』登場本

長編第11作『アフターダーク』に出てくる本1冊

『アフターダーク』登場本一覧

村上春樹の短めの長編小説『アフターダーク』は同じくらいの長さの『国境の南、太陽の西』と同様、登場する本の数は限られています。直接的に本の可能性がある言及は『グリム童話』に収録される『白雪姫』の1作品のみです。作家名も2人と少なめですが、ジョージ・オーウェルとイマヌエル・カント(作家というよりも哲学者というイメージが強いかもしれません)で代表作を思い浮かべるのが容易な作家たちです。次作の長編『1Q84』とは大きな関連を持つジョージ・オーウェルがすでに登場している点が興味深いです。

全登場本リスト

村上春樹の11作目の長編小説『アフターダーク』に登場する本や作家をまとめて紹介します。 作中で多くの小説や作家の名前に言及する村上春樹ですが、『アフターダーク』では例外的に登場する本や作家の数が極端に少ないです。決定的な具体的書籍の名[…]

『アフターダーク』登場本

長編第12作『1Q84』に出てくる本26冊

村上春樹の長編小説の中でも最も長いページ数を持つ『1Q84』ですが、そのボリュームに負けじと多くの本や作家が登場します。『1Q84』からは、26冊の本と12人の作家名を抽出することができます。村上春樹も愛読するアントン・チェーホフの存在が特に顕著に感じられます。また村上春樹が読了には至っていないマルセル・プルーストの大長編小説『失われた時を求めて』を、突然読書する時間が余るほど与えられた青豆が読むという描写も、著者の願望も含まれていそうで面白いですね。

全登場本リスト

村上春樹の12作目の長編小説『1Q84』に登場する本や作家の名前をまとめました。それぞれの作品・作家について、『1Q84』での登場シーンとともに紹介します。 『1Q84』ではじつに40を超える書籍名や作家名について言及され、まさに村上[…]

1Q84 登場本一覧

長編第13作『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』に出てくる本6冊

『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』登場本一覧 (第二版)

『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』には6つの書物と4人の作家の名前が登場します。村上春樹の全長編作品を見通して、王道は言い難い本作の立ち位置が示すように、異色の登場本ラインナップとなっています。オルダス・ハクスリーでも『すばらしい新世界』ではなく『知覚の扉』、コナン・ドイルでも「シャーロック・ホームズ」シリーズではなく『失われた世界』が登場します。

長編第14作『騎士団長殺し』に出てくる本12冊

『騎士団長殺し』登場本一覧

『騎士団長殺し』に登場する本の数は12冊、作家は4人を数えます。読書家や文学に精通する登場人物などの会話の中で多くの小説などが触れられます。霊界や異界とも言える不思議な世界と触れ合う作品ですが、上田秋成の『雨月物語』や『春雨物語』が重要な役割を果たしていることは自明です。第1部の最終章は、サムエル・ヴィレンベルクの『トレブリンカ叛乱』からの引用で占められていることも印象的です。またハーマン・メルヴィルの『白鯨』やマルセル・プルーストの『失われた時を求めて』など世界文学の傑作が、タイトルにこそ直接言及されないまでも、特定できる要素が残されていることも興味深いですね。上記の他にタイトルが明記されませんが、「スペインの『無敵艦隊』についての本」という書物も登場します。

全登場本リスト

この記事では、2017年に出版された村上春樹の14作目の長編小説『騎士団長殺し』に登場する小説やその他の本、国内外の作家名などを網羅的に紹介します。 『騎士団長殺し』には、村上春樹が愛読してきた本はもちろん、本作の物語上重要な役割を果[…]

騎士団長殺し 登場本一覧

長編第15作『街とその不確かな壁』に出てくる本18冊

『街とその不確かな壁』は、『海辺のカフカ』のように図書館が物語の舞台となるため、多くの本や作家の名前が含まれています。特定できる本は全18冊、作家は15人が確認できます。『聖書』や『コーラン』のような世界的宗教の経典から、「シャーロック・ホームズ」シリーズや『アンネの日記』など国内でも知名度の高い海外文学まで幅広い本が登場します。ものすごい読書量と暗記量を誇る「イエローサブマリンの少年」のおかげで、「スティーブ・ジョブズの伝記」や「全国農業年鑑」など、普段村上春樹作品では見ることのできないような分野の本も出てきます。「ヘミングウェイの短編小説」のように一冊に特定できない形での言及もあります。

全登場本リスト

本記事では、2023年に出版された村上春樹の15作目の長編小説『街とその不確かな壁』に登場する本や作家を全てリストアップして紹介していきます。 図書館を舞台とする『街とその不確かな壁』には、じつに40弱の本や作家の名前が登場します。そ[…]

街とその不確かな壁 登場本一覧

村上春樹の長編全15作に登場する本と作家: まとめ

いかがでしたでしょうか。以上が村上春樹の長編小説に登場する本と作家の全まとめでした。

200冊近くの本と80人以上の作家が登場する中でも、最も多くの作品にて言及されたのがドストエフスキーであり、『カラマーゾフの兄弟』でした。これは村上春樹愛読者ならば読まない手はありませんよね。『カラマーゾフの兄弟』はとても長い小説ですが、複数の翻訳が出版されているため、自分に合ったものを選ぶとよいでしょう。僕は新潮文庫の原卓也訳でスムーズに読めましたが、村上春樹が好評した光文社古典新訳文庫の亀山郁夫訳も読みやすさに重きを置いていておすすめです。

以下、村上春樹関連の記事をまとめたので、興味がありましたら、ぜひご一読ください。

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村上春樹全長編を読むおすすめの順番
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村上春樹の1冊目はなにから読むべきか