本記事では、2023年に出版された村上春樹の15作目の長編小説『街とその不確かな壁』に登場する本や作家を全てリストアップして紹介していきます。
図書館を舞台とする『街とその不確かな壁』には、じつに40弱の本や作家の名前が登場します。その中には谷崎潤一郎や大江健三郎などの国内作家から、ドストエフスキーやフローベールなど海外文学の巨匠たちの名前も見られます。また『街とその不確かな壁』には、村上春樹作品では珍しい「あとがき」や「参考文献」も付与されており、その中には実在する作家や小説の名前が記載されています。
村上春樹の集大成的な『街とその不確かな壁』を、読書を愛する村上春樹による本気のブックガイドとして受け止め、さらに広くて深い読書の海を航海してみてはいかがでしょうか。
『街とその不確かな壁』と本の関係
第一部では具体的な本はほとんど登場しませんが、なんといっても第二部からの物語の舞台は図書館です。日本文学の名だたる文豪たちや、偉大な世界文学の著者まで幅広く登場します。主人公である「私」は福島のとある町営図書館で働くことになり、本に触れる日々を送ります。自身でも読書しますが、その図書館に通う「イエローサブマリンの少年」は一心不乱にあらゆるジャンルの本を読み耽り、一度読んだ本は一言一句違わずに暗記をしてしまいます。
また、図書館に収蔵され、閲覧や貸出の履歴がある本として「そのときどきのベストセラー本」や「気楽に読めるエンターテインメント」というくくりで紹介されています。このような本は、実名で紹介される文学作品などとは一線をひかれている印象を持ちます。
また小説からの引用が複数箇所に見られることや、参考文献にて書物名が記されているのも『街とその不確かな壁』の特徴です。
『街とその不確かな壁』に出てくる本【一覧】
1. アンネの日記
『アンネの日記』は、第二次世界大戦中にナチスの迫害から逃れるため、オランダのアムステルダムで隠れ家生活を送っていたユダヤ人少女アンネ・フランクが書いた日記です。1942年から1944年にかけて書かれたこの日記には、隠れ家での生活や家族、隣人たちの関係、戦争の恐怖と希望が詳細に記されています。アンネの誠実で感受性豊かな記述は、戦時中のユダヤ人の苦難と人間の強さを象徴し、後世にわたって広く読まれています。『街とその不確かな壁』では『アンネの日記』の「隠し部屋」や「ナチの兵隊に取りかこまれる」といった内容にまで踏み込んだ描写が見られます。また本作で言及されているように、『アンネの日記』は複数の映画化がなされています。
【『街とその不確かな壁』での登場】
ぼくはきみから、彼女が見たある夢について綴った手紙を受け取ります。家族とも友達とも心を通いあわえることができない彼女は、夢の記録をつけるために枕元にノートを置いて眠るといいます。そのノートを「わたしにとってのかけがえのない心の友だち」と表現します。そして彼女は「ノートがゆいいつの友だち、なんてまるで『アンネの日記』みたい」と言います。また物語の終盤で、コーヒーカップの店員が自宅の便利性について語る際に、『アンネの日記』について言及しますが、こちらは映画を指しています。
2. 感情教育
ギュスターヴ・フローベールは、フランスのリアリズム文学を代表する作家です。代表作『ボヴァリー夫人』では、田舎の医師の妻が抱える不満と悲劇を詳細に描き、当時の社会道徳に挑戦しました。フローベールは、その緻密な文体と写実的な描写で知られ、他にも『感情教育』『サランボー』『聖アントワーヌの誘惑』など多くの重要な作品を残しました。『感情教育』は村上春樹のデビュー作の『風の歌を聴け』で登場したことが印象的で、フローベールの名前自体は『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』でも言及されました。
【『街とその不確かな壁』での登場】
夜中の寝支度前に子易さんからの電話があり、私は図書館の半地下の部屋に呼ばれます。その子易さんからの電話のベルが鳴る直前まで私は、読書用の古い安楽椅子に座ってフローベールの『感情教育』を再読していました。
3. 聖書
キリスト教の聖書は、旧約聖書と新約聖書の二つの部分から成る聖典です。旧約聖書はユダヤ教の聖典でもあり、創世記や詩篇、預言書などを含み、神とイスラエルの民の関係を描きます。新約聖書は、イエス・キリストの生涯と教え、使徒たちの活動を記録し、福音書、使徒行伝、書簡、黙示録から成ります。本作でも言及される『詩編』は、旧約聖書に収められている150の詩の集まりです。これらの詩は、古代イスラエルの礼拝や個人的な祈りで用いられ、神への賛美、感謝、悔い改め、嘆き、願いなど、さまざまな感情を表現しています。
【『街とその不確かな壁』での登場】
私は半地下の部屋で子易さんの正体を打ち明けられました。そして別れ際に、子易さんにキリスト教の聖書は読んだことがあるかと聞かれます。私はきちんと読んだことがないと答えますが、子易さんは信仰などとは関係なく、若い頃から聖書を読むのが好きだと言います。そして『詩編』の中の「人は吐息のごときもの。その人生はただの過ぎゆく影に過ぎない」という一節が紹介されます。
4. パイドパイパー
『パイドパイパー』は、ドイツの民間伝承に基づく有名な話で、「ハーメルンの笛吹き男」とも呼ばれています。ネズミの大発生に悩む町の人々は、派手な服を着た笛吹き男に助けを求め、彼の笛の音でネズミを追い出してもらいます。しかし、約束の報酬を支払わなかったため、笛吹き男は復讐し、今度は笛の音で町の子供たちを連れ去ります。ちなみに、この民間伝承からタイトルを着想した、イギリス人小説家ネビル・シュートによって1942年に書かれた『パイド・パイパー』という小説も存在します。
【『街とその不確かな壁』での登場】
添田さんは私に子易さんの過去について話します。子易さんは愛する我が子と妻を亡くし、ベレー帽をかぶったり、スカートをはくなどの「奇行」を始めたといいます。そのような子易さんの姿に、町の子供たちは抗しがたく惹きつけられていたようで、まるで昔話のパイドパイパーのようだったと表現されています。
5. 2001年宇宙の旅
『2001年宇宙の旅』は、20世紀を代表するイギリスのSF作家アーサー・C・クラークが書き、スタンリー・キューブリックが監督した1968年のSF映画です。のちに小説としても刊行されているのでこちらの登場本リストに記載しましたが、この『街とその不確かな壁』で言及されている『2001年宇宙の旅』は、やはりオリジナルの映画版を指している可能性が高いです。物語は、月面で発見された謎のモノリスを調査するため、木星に向かう宇宙船ディスカバリー号の旅を描いています。人工知能HAL 9000が暴走し、乗組員が危機に直面する中、物語は人類の進化、技術の可能性と危険性を探求します。
【『街とその不確かな壁』での登場】
私は町外れの墓地にある子易家の墓を訪問します。その墓石は、『2001年宇宙の旅』に出てくるモノリスのようなのっぺりとした扁平な石だったと表現されます。
6. 夜明け前
『夜明け前』は近代日本文学を代表する作家の一人、島崎藤村による最後の長編小説で、二部で構成されています。藤村の父をモデルにした主人公、青山半蔵の視点から幕末から明治初期の激動の時代を描いています。物語は長野県木曽地方を舞台に、封建社会の終焉と新しい時代の到来に直面する半蔵の苦悩と葛藤を描写しています。
【『街とその不確かな壁』での登場】
私はイエローサブマリンの少年に声をかけられます。そして添田さんに彼が学校の代わりに図書館に通っていることや、読んだ本をそっくりそのまま暗記できることを聞きます。その説明の際に、添田さんは島崎藤村の『夜明け前』を例に出します。
7. コーラン
本作では「イスラム教の経典」として登場するコーラン(クルアーン)は、イスラム教徒にとって最も重要な聖典です。7世紀に預言者ムハンマドに啓示された神の言葉として、アラビア語で記されています。コーランは114の章(スーラ)と各章の節(アーヤ)で構成され、神の存在、道徳、法律、礼拝、社会生活などについて詳細に述べています。コーランはイスラム教徒の信仰と行動の指針であり、日々の祈りや宗教儀式、法律の基盤として重視されています。
【『街とその不確かな壁』での登場】
私は添田さんが一昨年の春から記録しているイエローサブマリンの少年の読書記録のリストを見せてもらいます。そこには驚くほど多くの数の、驚くほど多くの種類の書籍が並んでいました。言及されている名前としては、イマヌエル・カント、本居宣長、フランツ・カフカ、イスラム教の経典、遺伝子の解説書、スティーブ・ジョブズの伝記、コナン・ドイルの『緋色の研究』、原子力潜水艦の歴史、吉屋信子の小説、昨年度の全国農業年鑑、『ホーキング、宇宙を語る』、シャルル・ドゴールの回顧録、が挙げられました。
8. スティーブ・ジョブズ
「スティーブ・ジョブズの伝記」として登場する本書は、原書、日本語訳ともに2011年に出版されたウォルター・アイザックソン著『スティーブ・ジョブズ』でほぼ間違いないでしょう。著者のウォルター・アイザックソンはCNNの会長や『タイム』誌の編集長などを歴任しただけでなく、アメリカでは伝記作家としても知られています。本書ではアップル創設の経緯から、iPhone誕生秘話までスティーブ・ジョブズの全てが語られています。
【『街とその不確かな壁』での登場】
上記「コーラン」の項目を参照。
9. 緋色の研究
アーサー・コナン・ドイルの『緋色の研究』は、タイトルからはわかりづらいですが、実は1887年に発表されたシャーロック・ホームズシリーズの第1作です。この小説は、名探偵シャーロック・ホームズとその友人であり助手のジョン・ワトソン博士の出会いを描いています。物語はロンドンでの謎の殺人事件から始まり、ホームズがその優れた推理力で事件の真相を解明していく過程を追います。コナン・ドイルは『羊をめぐる冒険』『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』でも登場する作家です。
【『街とその不確かな壁』での登場】
上記「コーラン」の項目を参照。
10. 日本農業年鑑
「全国農業年鑑」として登場する本書は、日本の農業に関する統計や情報を包括的に収録したような年次報告書だと思われます。家の光協会というJAグループの出版事業団体から、1987年から2001年まで『日本農業年鑑』という書籍が刊行されていました。農業生産、農地利用、農業経済など、幅広い分野のデータが詳細にまとめられています。本年鑑では「農業に関する幅広い情報を網羅した日本で唯一の農業総合年鑑」と謳われていたので、おそらく『街とその不確かな壁』で登場する「全国農業年鑑」もこの『日本農業年鑑』を指しているものだと推測しました。
【『街とその不確かな壁』での登場】
添田さんが記録していたイエローサブマリンの少年の読書記録の中に、昨年度の全国農業年鑑も含まれていました。また物語の終盤でイエローサブマリンの少年と一体化した私は、少年が外の世界で蓄積した膨大な量の書物を「心を使って」読むことができました。その中では、農業年鑑、ホメロス、谷崎、イアン・フレミングという名前が言及されました。
11. ホーキング、宇宙を語る
『ホーキング、宇宙を語る』は、理論物理学者スティーブン・ホーキングによって1988年に発表された科学書です。この本は、一般読者向けに宇宙の起源や構造、時間の概念、ビッグバン理論、ブラックホール、量子力学、統一理論などの難解な物理学のテーマをわかりやすく解説しています。ホーキングは、専門的な数学や物理の知識を持たない読者でも理解できるように、比喩や具体例を多用しながら、宇宙の神秘を紹介しています。
【『街とその不確かな壁』での登場】
上記「コーラン」の項目を参照。
12. ドゴール大戦回顧録
『街とその不確かな壁』で登場する「シャルル・ドゴールの回顧録」はタイトルの通り、第二次世界大戦中にフランスのレジスタンス運動を率いた軍人、政治家であるシャルル・ド・ゴールによる回顧録に関する書籍です。ド・ゴールは、1940年のフランス降伏後、ロンドンに亡命し、自由フランスの指導者としてナチス・ドイツに対する抵抗を続けました。回顧録では、戦時中の戦略や政治的決断、盟友との関係、さらには戦後のフランス再建に向けた努力が描かれています。日本では1960年から1966年に、みすず書房から『ドゴール大戦回顧録』というシリーズが全六巻にて刊行されました。こちらは1999年に新装版として再刊行されました。
【『街とその不確かな壁』での登場】
上記「コーラン」の項目を参照。
13. アイスランド サガ
『アイスランド サガ』は、中世アイスランドの物語群で、13世紀から14世紀にかけて書かれました。これらのサガは、アイスランドの開拓時代やヴァイキングの冒険、家族の争い、英雄的な行為などを描いています。日本では、『エギルのサガ』や『ニャールのサガ』など六篇が収められた『アイスランド サガ』が1979年に新潮社から出版され、2024年には改訂新版として再び出版されました。
【『街とその不確かな壁』での登場】
「街」に興味を持ったイエローサブマリン少年は、私に「その街に行かなくてはならない」というメッセージを伝えます。その後数日、少年が相変わらず閲覧室で一心不乱に読書を続けます。そのときに彼が読み耽っていたのが、『アイスランド サガ』『ヴィトゲンシュタイン、言語を語る』『泉鏡花全集』『家庭の医学百科』でした。
14. 泉鏡花全集
泉鏡花は、日本の小説家で、幻想的で美しい文体と独特の世界観で知られています。彼の作品は、明治から昭和初期にかけての日本文学に大きな影響を与えました。代表作には『高野聖』『夜行巡査』『婦系図』などがあります。鏡花の作品は、神秘的な出来事や幽霊、妖怪などの登場する幻想文学が多く、詩的な描写と繊細な心理描写が特徴です。泉鏡花の全集というと、いくつか候補はありますが、「全集」という名のつくシリーズは、1940年から1942年にかけて全28巻で刊行された岩波書店の『鏡花全集』です。後に別巻がを加えて全29巻で刷られた全集です。
【『街とその不確かな壁』での登場】
上記「アイスランド サガ」の項目を参照。
15. 家庭の医学百科
『家庭の医学百科』として言及される本は、実際に出版された本の中では似たようなタイトル(『家庭の医学百科』や『家庭医学百科』など)も含めると複数存在します。それでもほぼ完全一致するタイトルで『最新家庭の医学百科』という本が主婦と生活社から断続的に刊行されています。しかし村上春樹作品に登場する本のタイトルが、実在の本のそれと一致していないケースも多く、完全な特定は難しいでしょう。
【『街とその不確かな壁』での登場】
上記「アイスランド サガ」の項目を参照。
16. コレラの時代の愛
『コレラの時代の愛』は、ガブリエル・ガルシア=マルケスによる小説で、19世紀後半から20世紀初頭のカリブ海沿岸を舞台に、フェルミーナ・ダーサとフロレンティーノ・アリーサの50年以上にわたる愛の物語を描いています。若き日の恋愛が一度は終わりを迎えるも、フロレンティーノはフィルミナへの愛を一生持ち続けます。フェルミーナが結婚して家庭を築く間、フロレンティーノは様々な女性と関係を持ちながらも、彼女への想いを抱き続けます。フェルミーナの夫が亡くなった後、フロレンティーノは再び愛を告白し、二人は年老いてからの恋愛を再燃させます。この物語は、時間や逆境を超えた愛の力をテーマにしています。現実と非現実が溶け合うマジック・リアリズムの代表作家であるガブリエル・ガルシア=マルケスですが、そのような特徴は村上春樹作品でも多く見られます。また『街とその不確かな壁』の巻末に付与されている「参考文献」にも『コレラの時代の愛』が記載されています。
【『街とその不確かな壁』での登場】
夕食の約束をした私は、コーヒーショップの女主人のもとを訪れます。閉店後の店内で彼女が読んでいた厚みのある単行本がガルシア=マルケスの『コレラの時代の愛』でした。彼女はガルシア=マルケスが好きで、たいていの作品は読んだことがあり、『コレラの時代の愛』を読むのも二度目なのだと言います。そしてマジック・リアリズム的な要素を際立たせて、彼女は『コレラの時代の愛』の好きな箇所を引用します。さらにその直後にもう一箇所引用がされています。また村上春樹の小説に参考文献が付記されることはけっして多くはありませんが、『街とその不確かな壁』では唯一ガルシア=マルケスの『コレラの時代の愛』の名前が記されています。
17. 風と共に去りぬ
『街とその不確かな壁』で言及される「スカーレット・オハラ」というのは、マーガレット・ミッチェルの代表作『風と共に去りぬ』の主人公の名前です。『風と共に去りぬ』は、アメリカ南北戦争とその後の復興期を背景に、スカーレット・オハラという女性の波乱万丈の人生を描いた小説です。スカーレットは、南部の裕福なプランテーションの娘として育ち、戦争や社会の変動を乗り越えながら強く生き抜いていきます。
【『街とその不確かな壁』での登場】
コーヒーショップの女主人の部屋で彼女と口づけをした私は、彼女が高質な下着で身体を締めつけていることに気づきます。私が、スタイルがいいので無理やり身体を締めつける必要はないのではという疑問を口にすると、彼女は「そうね、そんな必要はないかもしれない。スカーレット・オハラの時代でもないし」と『風と共に去りぬ』の主人公の名前とともに自嘲気味に答えます。
18. パパラギ
エーリッヒ・ショイルマンの『パパラギ』は、南太平洋のサモア諸島の首長ツイアビが、ヨーロッパ人(パパラギ)とその文化を批判的に語るという形式の書籍です。1920年に発表されたこの本は、ツイアビがヨーロッパ旅行を通じて得た経験を元に、物質主義的で自然から離れたヨーロッパの生活様式を風刺的に描写しています。
【『街とその不確かな壁』での登場】
イエローサブマリンの少年は私に『パパラギ』という本を読んだことがあるか尋ね、私は若いころに読んだと答えます。そして少年は椰子の木に関するエピソードを紹介し、この「街」における特殊な時間性について話します。
19. 「遺伝子の解説書」
「遺伝子の解説書」として言及される本についてですが、遺伝子を解説するような書籍は無数にあり、残念ながら今回登場した本をどれか一つに特定することは困難でした。何かわかり次第また追記します。
【『街とその不確かな壁』での登場】
上記「コーラン」の項目を参照。
20. 「原子力潜水艦の歴史」
『街とその不確かな壁』には、正確なタイトルは明記されていないと思われますが、「原子力潜水艦の歴史」という記述が見られます。過去を遡ると原子力潜水艦をテーマにした書籍は数多くありますが、「原子力潜水艦の歴史」という点に絞っても特定が難しいのが現状です。いましばらく、最適な書籍はないか調査してみたいと思います。
【『街とその不確かな壁』での登場】
上記「コーラン」の項目を参照。
21. 「ドミトリ・ショスタコビッチの書簡集」
『街とその不確かな壁』で言及される「ドミトリ・ショスタコビッチの書簡集」とは、20世紀のクラシック音楽において重要なロシアの作曲家ドミトリ・ショスタコビッチ(ドミートリイ・ショスタコーヴィチ)の書簡を編纂した書籍だと思われます。調べてみたところ、ロシアで出版された書簡集で未邦訳のものもあるらしいのですが、日本で出版されているものでそのタイトルと近しい内容のものだと、1980年に中央公論新社から刊行された『ショスタコーヴィチの証言』でしょう。『ショスタコーヴィチの証言』はソ連からアメリカに亡命した音楽学者ソロモン・ヴォルコフによるもので、正確には書簡集ではないものの、ショスタコーヴィチの「回想録」として出版された一冊です。
【『街とその不確かな壁』での登場】
私の頭の中にある「壁に囲まれた街」の話を聞いていたイエローサブマリンは、それを地図におこします。それを見せられた私は細部を修正して、その修正事項をまとめた地図を添田さんに少年へ渡すよう頼みます。それを手渡したときに少年が読んでいた本が「ドミトリ・ショスタコビッチの書簡集」でした。
22. 「ヴィトゲンシュタイン、言語を語る」
『ヴィトゲンシュタイン、言語を語る』と完全一致する書籍を見つけることはできませんでしたが、講談社選書メチエより2022年に出版された『ウィトゲンシュタインと言語の限界』がタイトルと内容的にも近いと推測できます。ただ2023年4月に出版された『街とその不確かな壁』が執筆されている最中(もしかすると執筆期の終盤)に、2022年の6月に出版された本書を登場させるかと言われれば微妙なところです。ウィトゲンシュタインの代表的な著作といえば初期作品である『論理哲学論考』や遺稿として出版された『哲学探究』が挙げられ、さらに1975年から1988年に大修館書店から全10巻(プラス補巻2冊)で刊行された『ウィトゲンシュタイン全集』も図書館に収蔵されていそうなので、本作で登場した本が一概に『ウィトゲンシュタインと言語の限界』とは言えないのかなと思います。
【『街とその不確かな壁』での登場】
上記「アイスランド サガ」の項目を参照。
23. 「ヘミングウェイの短編小説」
「今日の朝、見かけの良い二人の若い男性がお店にやって来た。コーヒーを飲みに」という文章に対して、「ヘミングウェイの短編小説」のようだとたとえられます。この「ヘミングウェイの短編小説」というのは、いずれか一つの作品を指しているのかどうかは不明ですが、似たような雰囲気の書き出しから始まるヘミングウェイの短編小説を挙げるとすれば『殺し屋』(The Killers)です。その書き出しは「The door of Henry’s lunchroom opened and two men came in. They sat down at the counter.(「『ヘンリーのランチルーム』のドアが開き、二人の男が入ってきた。彼らはカウンターに座った。)」というものです。
【『街とその不確かな壁』での登場】
行方がわからなくなったイエローサブマリンの少年のてがかりを得るべく、少年の兄二人が例のコーヒーショップを訪れます。そしてコーヒーショップの女店主から私に電話がかかってきます。そして「今日の朝、見かけの良い二人の若い男性がお店にやって来た。コーヒーを飲みに」という彼女の言葉に対し、私は「ヘミングウェイの短編小説の出だしみたいだ」と答えます。
『街とその不確かな壁』に出てくる作家【一覧】
1. フョードル・ドストエフスキー
フョードル・ドストエフスキーは、19世紀を代表するロシアの小説家で、心理小説の先駆者として知られています。代表作には五大長編小説と呼ばれる『罪と罰』『白痴』『悪霊』『未成年』『カラマーゾフの兄弟』などがあり、深い人間心理の描写と宗教、倫理、哲学の探求が特徴です。彼の作品は、人間の苦悩や道徳的ジレンマを描き出し、現代文学に多大な影響を与えました。村上春樹の長編小説においては、『羊をめぐる冒険』に始まり、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』『ねじまき鳥クロニクル』『1Q84』『騎士団長殺し 』にて登場するなど、ドストエフスキーは最も重要な作家の一人です。
【『街とその不確かな壁』での登場】
図書館で働くこととなった私は、過去の閲覧や貸出の履歴を確認します。その多くはベストセラー本や、実用書、エンターテインメント系だと語られていますが、一方でたまにドストエフスキーや、トマス・ピンチョン、トーマス・マン、坂口安吾、森鴎外、谷崎潤一郎、大江健三郎の小説が借り出されていました。
2. トマス・ピンチョン
トマス・ピンチョンは、現代アメリカの代表的な小説家の一人ですが、メディアへの露出を避け続けているため、謎めいた存在として知られています。ピンチョンの作品は複雑なプロット、膨大なキャラクター数、歴史的および科学的なテーマの統合が特徴です。代表作には『V.』『競売ナンバー49の叫び』『重力の虹』『ヴァインランド』などがあります。なおトマス・ピンチョンの名前が村上春樹の長編小説で登場したのは、この『街とその不確かな壁』が初めてです。
【『街とその不確かな壁』での登場】
上記「フョードル・ドストエフスキー」の項目を参照。
3. トーマス・マン
トーマス・マンは、ドイツの著名な小説家で、1929年にノーベル文学賞を受賞しました。彼の代表作には『ブッデンブローク家の人々』『魔の山』『トーニオ・クレーガー』があり、主にブルジョア社会の衰退と個人の内面的な葛藤を描いています。マンの作品は、深い哲学的洞察と心理的描写が特徴で、ヨーロッパ文化の危機と変革をテーマにしています。彼はナチスの台頭に反対し、1933年に亡命してアメリカで活動を続けました。『魔の山』は『ノルウェイの森』で登場し、物語の上でも有効に機能していました。
【『街とその不確かな壁』での登場】
上記「フョードル・ドストエフスキー」の項目を参照。
4. 坂口安吾
坂口安吾は、日本の著名な作家で、戦後文学を代表する人物です。安吾の作品は人間の本質や社会の偽善を鋭く描写し、『堕落論』や『白痴』などが特に有名です。虚無主義的な視点と独特の文体で、戦後の混乱と再生をテーマにした作品を多く発表しました。
【『街とその不確かな壁』での登場】
上記「フョードル・ドストエフスキー」の項目を参照。
5. 森鴎外
森鴎外は、日本の明治・大正時代の著名な作家なだけでなく、翻訳家、医師としても活動しました。代表作には『舞姫』『雁』『高瀬舟』などがあり、西洋文学や思想を日本に紹介しながら、近代日本文学の形成に貢献しました。鴎外の作品は、個人の内面と社会の関係、人間の倫理と感情の葛藤をテーマにしています。医師としても活躍し、軍医として日露戦争に従軍しました。文学と医学の両面で優れた業績を残し、日本文化と思想に深い影響を与えました。森鴎外の名前は、『1Q84』と『騎士団長殺し』でも登場しました。
【『街とその不確かな壁』での登場】
上記「フョードル・ドストエフスキー」の項目を参照。
6. 谷崎潤一郎
谷崎潤一郎は、日本の大正・昭和期の著名な作家で、官能的かつ美的な描写で知られています。代表作には『細雪』『春琴抄』『痴人の愛』などがあり、特に女性美や耽美主義をテーマにしています。谷崎の作品は、日本の伝統美と西洋文化の融合を試み、深い心理描写と優雅な文体が特徴です。情緒豊かな日本文化の細やかな描写と共に、人間の欲望や愛憎の複雑さを探求し、現代日本文学に多大な影響を与えました。谷崎潤一郎は『海辺のカフカ』でも登場した作家です。
【『街とその不確かな壁』での登場】
私が勤務することになった図書館で、たまに貸し出される作家の例として、谷崎潤一郎の名前も挙げられます。また、物語の終盤でイエローサブマリンの少年と一体化した私は、少年が外の世界で蓄積した膨大な量の書物を「心を使って」読むことができました。その中では、農業年鑑、ホメロス、谷崎、イアン・フレミングという名前が言及されました。
7. 大江健三郎
大江健三郎は、日本の著名な作家で、1994年にノーベル文学賞を受賞しました。大江の作品は、戦後日本の社会問題、人間の存在意義、倫理的な課題をテーマにしています。代表作には『個人的な体験』『万延元年のフットボール』『洪水はわが魂に及び』などがあります。大江の文学は、複雑なプロットと深い思想性が特徴で、時には自伝的要素も取り入れています。大江健三郎の名前が村上春樹の長編に登場するのは、『羊をめぐる冒険』と『ノルウェイの森』以来です。
【『街とその不確かな壁』での登場】
上記「フョードル・ドストエフスキー」の項目を参照。
8. イマヌエル・カント
イマヌエル・カントはドイツの哲学者で、近代哲学の発展に大きな影響を与えました。彼の主著『純粋理性批判』では、人間の認識能力とその限界を探求し、物自体(ヌーメノン)と現象(フェノメノン)の区別を提唱しました。カントは道徳哲学でも著名で、『実践理性批判』では「定言命法」と呼ばれる道徳法則を提唱し、人間の行為は普遍的な法則に基づくべきと論じました。カントの名前は『1973年のピンボール』『アフターダーク』『騎士団長殺し』でも登場し、村上春樹作品にとってはお馴染みの哲学者となっています。
【『街とその不確かな壁』での登場】
私は添田さんが一昨年の春から記録しているイエローサブマリンの少年の読書記録のリストを見せてもらいます。そのリストにある作家名として、イマヌエル・カント、本居宣長、フランツ・カフカなどが挙げられています。
9. 本居宣長
本居宣長は江戸時代の国学者で、古典研究と神道思想に大きな影響を与えました。彼の主著『古事記伝』は、日本最古の歴史書『古事記』を詳細に解説し、日本の古代文化や神話を再評価しました。また、『源氏物語』の注釈書『源氏物語玉の小櫛』も執筆し、文学研究にも寄与しました。
【『街とその不確かな壁』での登場】
上記「イマヌエル・カント」の項目を参照。
10. フランツ・カフカ
フランツ・カフカは、オーストリア=ハンガリー帝国のプラハで生まれたドイツ語作家であり、20世紀文学の重要な人物です。代表作には『変身』『審判』『城』などがあり、人間の孤独や疎外感、不条理な社会構造をテーマにしています。カフカの作品は、夢のような不安定な状況と、現実との奇妙な交錯を特徴としていますが、これは村上春樹作品にも見られる特徴です。カフカの作品は生前にはほとんど評価されず、死後に友人マックス・ブロートによって出版され、広く知られるようになりました。カフカは村上春樹作品とは切っても切れないほど深い関連性を持つ作家で、『海辺のカフカ』ではタイトルに使われているだけでなく、多数の作品にその名前や作品名が登場します。
【『街とその不確かな壁』での登場】
上記「イマヌエル・カント」の項目を参照。
11. 吉屋信子
吉屋信子は、日本の小説家であり、特に少女小説と恋愛小説で知られています。彼女は、少女たちの友情や純粋な愛を描いた作品を多く発表し、大正から昭和初期にかけて人気を博しました。代表作には『花物語』シリーズや『恋愛小説』があります。彼女の作品は、当時の日本社会の風俗や少女文化を鮮やかに描写し、多くの読者を魅了しました。吉屋はまた、同性愛をテーマにした作品も執筆し、当時としては非常に先進的な視点を持っていました。
【『街とその不確かな壁』での登場】
上記「イマヌエル・カント」の項目を参照。
12. アガサ・クリスティ
アガサ・クリスティは、イギリスの推理作家で、世界的に有名なミステリー小説家です。彼女の代表作には『そして誰もいなくなった』や、名探偵エルキュール・ポアロを主人公とした『オリエント急行の殺人』があります。クリスティは、生涯に66冊の推理小説と14冊の短編集を執筆し、その作品は100を超える言語に翻訳されました。アガサ・クリスティの名は『ダンス・ダンス・ダンス』でも登場しました。
【『街とその不確かな壁』での登場】
添田さんが観察するに、イエローサブマリンの幅広い読書における、本の選択には系統というものがありません。あらゆる本を規則性もなく読んでいく少年とは異なり、普通の人は「たとえばアガサ・クリスティーの小説が面白いと思えば、そのあとクリスティーの小説を何冊か続けて手に取って読むでしょう」と説明します。
13. ホメロス
ホメロスは、古代ギリシャの詩人で、『イリアス』と『オデュッセイア』という二つの叙事詩を作ったとされています。彼の生涯や実在については謎が多く、紀元前8世紀頃に活動したと考えられています。『イリアス』はトロイア戦争を題材に、英雄アキレウスの怒りを中心に描かれており、『オデュッセイア』はトロイア戦争後の英雄オデュッセウスの帰還の冒険を描いています。ホメロスの名前や作品を示唆する文言は、『スプートニクの恋人』や『海辺のカフカ』でも登場しました。
【『街とその不確かな壁』での登場】
物語の終盤でイエローサブマリンの少年と一体化した私は、少年が外の世界で蓄積した膨大な量の書物を「心を使って」読むことができました。その中で農業年鑑、谷崎やイアン・フレミングとともに名前が挙がったのが、ホメロスでした。
14. イアン・フレミング
イアン・フレミングは、イギリスの作家であり、ジェームズ・ボンドシリーズの創作者として知られています。1908年にロンドンで生まれ、第二次世界大戦中は英国海軍情報部で勤務しました。この経験が、彼のスパイ小説に大きな影響を与えました。1953年に最初のボンド小説『カジノ・ロワイヤル』を発表し、大成功を収めました。その後、12冊のボンド小説と2冊の短編集を執筆し、世界中でベストセラーとなりました。
【『街とその不確かな壁』での登場】
上記「ホメロス」の項目を参照。
15. ホルヘ・ルイス・ボルヘス
ホルヘ・ルイス・ボルヘスは、アルゼンチンの作家、詩人、エッセイストで、20世紀文学に大きな影響を与えました。1899年にブエノスアイレスで生まれ、哲学や図書館学に深い関心を持ちました。彼の作品は、幻想文学、メタフィクション、パラドックス、無限のテーマなどを特徴とし、代表作には『汚れなき夢』や『バベルの図書館』があります。本作でも「あとがき」のように特別感をもって登場するボルヘスですが、彼の作品で扱われる図書館というテーマが、村上春樹作品でもしばしば登場する「図書館」に多少なりとも影響を与えていると考えるのが妥当でしょう。
【『街とその不確かな壁』での登場】
参考文献同様に、これまた村上作品には珍しいことですが、『街とその不確かな壁』には「あとがき」も付記されています。その中で、ホルヘ・ルイス・ボルヘスの名前とともに、「一人の作家が一生のうちに真摯に語ることができる物語は、基本的に数が限られている」という言葉が記されています。
『街とその不確かな壁』の参考文献
上述の通り、『街とその不確かな壁』では巻末に参考文献が付与されています。村上春樹作品に付随する参考文献には、架空の書籍名が記述されることもありますが、本作ではラテンアメリカ文学の代表的作家であるガブリエル・ガルシア=マルケスの『コレラの時代の愛』の名前が参考文献として記されています。本文中にも引用されており、『街とその不確かな壁』においては重要な役割を果たしているといえます。
また異質な形での作家名の登場は、これも村上春樹作品には珍しいことですが「あとがき」にも見られます。それがホルヘ・ルイス・ボルヘスで、こちらもラテンアメリカ文学の筆頭格として挙げられる作家でしょう。
『街とその不確かな壁』登場本: まとめ
村上春樹が74歳にして送り出した『街とその不確かな壁』は、習作「街と、その不確かな壁」やそれを発展させた『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』をさらに踏襲し、集大成的な作品と感じる方もいるでしょう。そして本作も村上春樹らしく、たくさんの書物や作家を登場させ、直接的に図書館という場所を舞台にしています。
具体的に挙げられている書物は、キリスト教の聖書やコーランなどの世界を代表する宗教の原典から、ドフトエフスキーやカフカなど村上春樹が愛する世界文学の巨匠たちにまで至ります。日本国内の文豪たちの名前も多々見られます。まさに村上春樹の本気がうかがえる、集大成的な選書とみなすことができます。
【村上春樹の長編に登場する本や作家のまとめリスト一覧】
→第1作『風の歌を聴け』に出てくる小説や作家まとめ
→第2作『1973年のピンボール』に出てくる小説や作家まとめ
→第3作『羊をめぐる冒険』に出てくる小説や作家まとめ
→第4作『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』に出てくる小説や作家まとめ
→第5作『ノルウェイの森』に出てくる小説や作家まとめ
→第6作『ダンス・ダンス・ダンス』に出てきる小説や作家まとめ
→第7作『国境の南、太陽の西』に出てくる小説や作家まとめ
→第8作『ねじまき鳥クロニクル』に出てくる小説や作家まとめ
→第9作『スプートニクの恋人』に出てくる小説や作家まとめ
→第10作『海辺のカフカ』に出てくる小説や作家まとめ
→第11作『アフターダーク』に出てくる小説や作家まとめ
→第12作『1Q84』に出てくる小説や作家まとめ
→第13作『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』に出てくる小説や作家まとめ
→第14作『騎士団長殺し』に出てくる小説や作家まとめ
→第15作『街とその不確かな壁』に出てくる小説や作家まとめ
以下、村上春樹関連の記事をまとめたので、興味がありましたら、ぜひご一読ください。
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