『1Q84』に出てくる小説や作家まとめ【登場本一覧】

1Q84 登場本一覧

村上春樹の12作目の長編小説『1Q84』に登場する本や作家の名前をまとめました。それぞれの作品・作家について、『1Q84』での登場シーンとともに紹介します。

『1Q84』ではじつに40を超える書籍名や作家名について言及され、まさに村上春樹によるブックガイドとしても読むことができます。『1Q84』自体が『空気さなぎ』という架空の小説を軸に展開する物語ですが、その周辺を取り巻く小説や文学作家の存在感も凄まじいものがあります。

『1Q84』をより深く味わうため、読書の世界をさらに広く探検するために、『1Q84』に登場する本と作家をひとつ残らず掘り下げていきます。

目次

『1Q84』と本の関係

まず『1Q84』は小説というものが一つの重要な要素となっています。「ふかえり」という少女が書いた『空気さなぎ』という小説を世に出し、文芸の新人賞を受賞し、そこから大きな物語が動いていきます。またその書き直し作業に深く関わった主人公の一人「天吾」は自らも小説を書いている人間ですが、応募原稿を読む仕事もしています。「天吾」は小さい時から数学の神童と見なされていましたが、同時に貪欲な読書家でもあったと語られています。

編集者の「小松」は東京大学文学部出身で、文芸誌の編集一筋という人間。読む本に迷えば、常にギリシャ哲学を読んでいるといいます。また「小松」は『空気さなぎ』に芥川賞を受賞させることももくろみます。「小松」の「文壇をコケにする」という意図は、どこか文壇と距離をとってきた村上春樹に通じるところがないわけではありません。「天吾」が利用する新宿の紀伊國屋書店も、村上作品には頻繁に登場します。

『1Q84』に出てくる本【一覧】

『1Q84』 登場本 その1

『1Q84』 登場本 その2

1. 古事記

古事記

『古事記』は、日本最古の歴史書であり、日本最初の文学といえます。天武天皇の命により、稗田阿礼が口述、太安万侶が筆記し、712年に編纂されました。神話、伝説、歴代天皇の系譜を記録し、神々の誕生からができるまでを描くなど特に日本神話の創世神話が詳しく記されています。最近では2023年に池澤夏樹による現代語訳で河出文庫から出版されているものが読みやすくおすすめです。

【『1Q84』での登場】

天吾はふかえりから『空気さなぎ』の成り立ちについて聞かされます。『空気さなぎ』はふかえりがただ物語を語り、別の女の子がそれを文章にしたということで、『古事記』や『平家物語』と成立過程が同じだと天吾は考えます

2. 平家物語

平家物語

『平家物語』は、鎌倉時代初期に成立した軍記物語で、平氏一族の興亡を描いた作品です。平清盛の栄華と、その後の源氏との戦いによる滅亡が主題です。語り部による琵琶法師の演奏と共に語られることが多く、戦乱の悲劇や無常観を強調しています。特に、有名な「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり」という冒頭部分は、日本文学の中でも広く知られています。『平家物語』は、歴史的事実と物語的要素が融合した作品で、日本の中世文化や価値観を反映しています。作家として村上春樹の影響を受けてきた古川日出男によって2016年に現代語訳が出版され、河出文庫全4巻で読むことができます。

【『1Q84』での登場】

『空気さなぎ』の成立過程が口述と執筆に分かれていることから、『古事記』同様、『平家物語』についても言及されました。またふかえりが臨む記者会見の質疑応答の練習として「好きな小説は?」という質問をしたところ、ふかえりは「ヘイケモノガタリ」と答えます

3. 世界の作曲家

世界の作曲家

1992年に柴田一史著『世界の作曲家 海外の作曲家2700人』という書籍が久遠出版から出されており、550ページを超えることから、本作で言及される「分厚い本」に該当するといえるでしょう。2021年にDK社から『図鑑 世界の作曲家』という本が出版されていますが、『1Q84』出版よりずっと後のことなので、本作で登場している本はこちらではないことになります。

【『1Q84』での登場】

世の中に自分が把握していない変化が目に止まりようになった青豆は図書館に入って過去の新聞を読み込みます。その後、青豆は『世界の作曲家』という分厚い本を選んで、ヤナーチェックのページを開きました

4. ニコマコス倫理学

ニコマコス倫理学

ニコマコス倫理学 (ニーコマコス倫理学)は、古代ギリシアの哲学者アリストテレスによって書かれた倫理学の重要な著作です。この作品は彼の息子ニコマコスに捧げられたとも言われており、倫理的な行動の基礎となる「徳」について論じています。アリストテレスは、人間の最高の善を「幸福」と定義し、その達成には理性に基づく徳が必要だと主張します。

【『1Q84』での登場】

『空気さなぎ』に手を加えてしまった天吾は、それでも大事になることを恐れ、改稿後の作品を世に出すことを躊躇います。そこで小松は天吾を説得すべくアリストテレスの『ニコマコス倫理学』から、「あらゆる芸術、あらゆる希求、そしてまたあらゆる行動と探索は、何らかの善を目指していると考えられる。それ故に、ものごとが目指しているものから、善なるものを正しく規定することができる」という引用を持ち出します

5. オリバー・ツイスト

オリバー・ツイスト

1838年に出版された『オリバー・ツイスト』は、19世紀イギリスの代表的作家チャールズ・ディケンズ (ディッケンズ)を世に知らしめた小説です。この作品では、孤児オリバー・ツイストがロンドンの貧困層で経験する過酷な運命を描いています。ディケンズは『ノルウェイの森』『ダンス・ダンス・ダンス』『海辺のカフカ』でも登場した作家です。

【『1Q84』での登場】

小さい時から数学が得意で、本もたくさん読んできた天吾は、無教養な父親を自分の生物学上の父親と認めたくない一面を持っています。そしてその父親を繋がっていない男と仮定して、そんな男に育てられた自分をディケンズの小説に出てくる不運な子供たちと同じだと考えます。天吾はディケンズの『オリバー・ツイスト』を読んで以来ディケンズに夢中になったと語っています

6. 今昔物語

今昔物語

『今昔物語』は平安時代後期に編纂された、日本の説話集です。詳しい成立年や作者はわかっていません。全31巻から成り、約1000話の説話が収録されています。内容は、インド、中国、日本の仏教説話や民間伝承、歴史的逸話など多岐にわたります。この作品は、仏教の教義普及を目的としつつ、庶民の生活や風俗も生き生きと描かれています。

【『1Q84』での登場】

ふかえりは記者会見の練習で、好きな作品として『平家物語』に並んで『今昔物語』を挙げています

7. 山椒大夫

山椒大夫

『山椒大夫』は、1915年に発表された森鴎外の短編小説です。物語は、兄の厨子王と妹の安寿が、悪辣な山椒大夫によって奴隷にされるも、最終的に自由を取り戻し、母親との再会を果たすという筋立てです。

【『1Q84』での登場】

ふかえりは『平家物語』や『今昔物語』という古い作品を好む一方で、「新しい文学」で好きな作品は聞かれ、森鴎外の『山椒大夫』と答えています。ふかえりの中で森鴎外が「新しい」という認識なのがわかります。

8. 1984年

1984年

ジョージ・オーウェルの『1984年』は、ディストピア文学の代表作で、全体主義と監視社会の恐怖を描いています。「ビッグ・ブラザー」という象徴的な指導者が存在し、常に監視されているという恐怖を国民に植え付けます。タイトルはこの『1Q84』のもとになったもので、『1Q84』に登場する「リトル・ピープル」は名前の上では「ビッグ・ブラザー」と対をなす存在であることがわかります。ジョージ・オーウェルの世界観と関連させて、村上春樹は『1Q84』の前作『アフターダーク』でもオーウェルの名前を登場させています。

【『1Q84』での登場】

ふかえりがリトル・ピープルについて話した際、戎野先生はジョージ・オーウェルの『1984年』について言及します。その世界ではビッグ・ブラザーが登場したように、この現実世界ではリトル・ピープルなるものが登場してきたと話します。また自分で本が読めないふかえりは天吾に、戎野先生が話した『1984年』を朗読してほしいと言いますが、残念ながら手元になかったので概要を説明してあげます。またオーウェルの名前はもっと前に、天吾が戎野先生からふかえりの家族についての話を聞かされたときに、登場していました。ふかえりの父・深田保はタカシマ塾というコミューンでユートピアを求め、そこでは自分の頭でものを考えさせないような方向を目指していたといいます。それを先生は「何も考えないロボットを作り出すこと」という表現を用い、オーウェルが小説に書いたような世界だと喩えました。

9. サハリン島

サハリン島

『サハリン島』はロシアの代表的な劇作家であり、多くの短編小説を残したアントン・チェーホフのノンフィクション作品です。本作でも語られている通り、『サハリン島』はチェーホフの作品群の中でも異例で、文学作品というよりは流刑地調査の記録といえます。チェーホフは約三ヶ月間、サハリン島を調査し、囚人や現地住民の生活状況、苦難、制度的問題などを詳細に描写しました。チェーホフ全集は村上春樹の愛読書で、どれを読んでもはずれがなく、旅行に持って行くのによいとかつて語っていました。

【『1Q84』での登場】

天吾の部屋になかった『1984年』の代わりに、ふかえりのために選んだ本がチェーホフの『サハリン島』でした。『サハリン島』は天吾が先週読み終えたばかりで、興味深い箇所には付箋が貼られていました。その後この『サハリン島』だけでなく、チェーホフについての紹介がかなりのボリュームで記述されていきます。

10. ヘンゼルとグレーテル

ヘンゼルとグレーテル

『ヘンゼルとグレーテル』は1812年に出版された『子供と家庭のメルヒェン集』に収録されたグリム童話の物語で、日本でも長く知られています。森の中に入り道標としてとして粉々にしたパンを落としていくエピソードは特に有名で、『海辺のカフカ』ではそのシーンについての言及も見られます。

【『1Q84』での登場】

天吾が週に一度会うガールフレンドが、よく見る夢の話をします。その夢に出てくるのは、ヘンゼルとグレーテルが迷い込んだ深い不吉な森ではなく、もっと明るっぽい森だと話します

11. マーティン・チャズルウィット

マーティン・チャズルウィット

『マーティン・チャズルウィット』は、欲望と自己中心的な人物が織りなす風刺的な小説です。物語は、財産をめぐる争いと、祖父と孫のチャズルウィット家の人々の葛藤を描いています。主人公マーティンは、アメリカでの冒険を通じて自己発見を遂げる一方、イギリスの腐敗した社会制度も批判されます。ディケンズの特徴的なユーモアと鋭い社会批評が光る作品です。

【『1Q84』での登場】

天吾はガールフレンドが学生時代に日本女子大で英文学の講義を受けている場面を想像します。そして彼女はそこで使用されているテキストはディケンズの『マーティン・チャズルウィット』だと付け加えます

12. 大菩薩峠

大菩薩峠

『大菩薩峠』は中里介山の大長編小説で、30年近くかけて連載されながらも未完に終わった作品です。幕末の動乱期を背景に、無敵の剣士・机竜之助の数奇な運命を描いています。歴史小説、冒険小説としての要素を持ちながら、哲学的な深みを持つ作品で、日本文学の名作の一つとされています。

【『1Q84』での登場】

天吾は父がいる療養所の部屋を訪問し、その部屋内で本棚に並ぶ『大菩薩峠』の全巻を目にします

13. 金枝篇

金枝篇

『金枝篇』は、イギリスの社会人類学者ジェームズ・ジョージ・フレイザーによる人類学の古典です。フレイザーは、世界中の神話、宗教、儀式を比較研究し、特に魔術と宗教の関係に焦点を当てました。彼は、古代の宗教や儀式が自然と人間社会のサイクルをコントロールしようとする魔術的な行為に起源を持つと主張しました。この著作は、宗教や神話の共通点を明らかにし、文化人類学、宗教研究、文学など多くの分野に大きな影響を与えました。

【『1Q84』での登場】

青豆がさきがけのリーダーを手にかけようとする場面で、リトル・ピープルに話が及びます。そしてリーダーは青豆にフレイザーの『金枝篇』を読んだことはあるかと尋ねます。彼は『金枝篇』を様々な事実を教えてくれる興味深い本だと評し、その内容をもとに、リトル・ピープルについての解釈を話します。

14. カラマーゾフの兄弟

カラマーゾフの兄弟

『カラマーゾフの兄弟』は、ロシアの文豪フョードル・ドストエフスキーの最後の長編小説です。物語は、父親フョードル・カラマーゾフと彼の三人の息子、ドミートリイ、イワン、アリョーシャの複雑な関係と葛藤を中心に展開されます。父親の殺害事件を軸に、信仰、理性、道徳、愛、家族の絆などのテーマが深く探求されます。『カラマーゾフの兄弟』は村上春樹がしばしば言及し、「世の中には二種類の人間がいる。『カラマーゾフの兄弟』を読破したことのある人と、読破したことのない人だ。」とまで言わしめる彼の中でも重要な小説のひとつです。この大作を読了した者だけが入会できる、「『カラマーゾフの兄弟』読了クラブ」なるものを村上春樹が提案して、一部のファンの間で話題となりました。主な日本語訳を古い順に並べると、岩波文庫(全4巻)が1957年、新潮文庫(全3巻)が1978年、光文社古典新訳文庫(全5巻)が2006年、となっています。村上春樹の小説では、『羊をめぐる冒険』『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』『ねじまき鳥クロニクル』などにも登場します。

【『1Q84』での登場】

青豆とリーダーの会話の中で『カラマーゾフの兄弟』が登場し、二人とも読んだことがあると言います。最初に青豆がリーダーの特殊能力を目にし、『カラマーゾフの兄弟』に出てくる「悪魔とキリストの話」について言及します。

15. グレート・ギャツビー

グレート・ギャツビー

本作で言及されるジェイ・ギャツビーは、F・スコット・フィッツジェラルドの『グレート・ギャツビー』の主人公です。『グレート・ギャツビー』はロストジェネレーションを代表するだけでなく、歴代のアメリカ文学を代表するほどの小説です。『グレート・ギャツビー』は村上春樹が最も大切に思う作品の一つで、2006年には村上春樹自身の手による翻訳が出版されました。『華麗なるギャツビー』『偉大なギャツビー』などの邦訳でも知られ、映画化もするなど話題が尽きない作品です。

【『1Q84』での登場】

青豆は用意された高円寺のマンションに逃げ込み、その部屋に備蓄された品々を確認します。そして青豆はクローゼットを確認し、必要なものは揃えられ、不要なものは省かれているほどよい用意周到さを目にし、「ジェイ・ギャツビーの図書館」のようだと考えます

16. 白雪姫

白雪姫

『白雪姫』は『グリム童話』に収録される物語で、19世紀初頭に本として出版されています。また映画としても有名です。『白雪姫』に登場する七人の小人たちは、物語の中で重要な役割を果たします。彼らは、白雪姫が継母の魔の手から逃れた後に暮らすことになる森の中の小さな家に住んでいます。白雪姫に関しては、『海辺のカフカ』でジョニー・ウォーカーが七人の小人たちが歌う「ハイホー!」を口笛で吹きます。また『アフターダーク』内でも比喩として登場します。

【『1Q84』での登場】

青豆は『空気さなぎ』を読みます。そこに出てくる少女はリトル・ピープルを見て、「白雪姫と七人のコビトたち」みたいだと思います

17. 失われた時を求めて

失われた時を求めて

『失われた時を求めて』は、フランスの小説家マルセル・プルーストの大長編小説で世界的に有名な作品です。1913年から1927年にわたって全7篇が刊行されました。本作で明記される「スワン家の方へ」というのは、『失われた時を求めて』の第1巻を指します。この作品は、フランスの社交界と人間関係を細やかに描き出し、記憶と時間のテーマを探求しています。物語は、主人公が幼少期を回想しながら、スワン家のシャルル・スワンとオデット・ド・クレシーの恋愛模様を描きます。プルーストの独特な文体と繊細な心理描写は、読者に時間の流れと記憶の儚さを深く感じさせるものです。『失われた時を求めて』は村上春樹の長編では『羊をめぐる冒険』でも登場する作品です。

【『1Q84』での登場】

よほど時間がないと読む機会はないとされるプルーストの『失われた時を求めて』を、タマルは潜伏中の青豆のために用意します青豆はソファに座って第1巻の「スワン家の方へ」を読みます

18. 東京日記

東京日記

『東京日記』は、内田百閒が東京での生活や観察をユーモアとともに描いた作品です。彼の鋭い洞察力と独特の文体で、日常の些細な出来事や出会い、風景を細やかに描写しています。

【『1Q84』での登場】

天吾は父親に向かって持参した本を朗読します。その一つの抜粋を見ると、内田百聞の『東京日記』であることがわかります。『1Q84』の物語に呼応するかのように、『東京日記』の朗読も稲妻のシーンから始まります。

19. アフリカの日々

アフリカの日々

アイザック・ディネーセンの『アフリカの日々』は、1937年に発表された自伝的エッセイ集です。ディネーセンは、デンマークの作家カレン・ブリクセンのペンネームで、この作品には彼女がケニアでコーヒー農園を経営していた時期の体験が描かれています。美しいアフリカの風景、人々との交流、狩猟や冒険の日々、そして農園経営の困難さを、彼女の詩的で細やかな筆致で綴っています。『アフリカの日々』は、自然と人間の関係を深く描写した作品として広く評価され、1985年に映画化された『愛と哀しみの果て』はアカデミー賞を受賞しました。

【『1Q84』での登場】

天吾はしばしばそのとき読んでいる本を父に向かって朗読しますが、そのうちの一つがアイザック・ディネーセンの『アフリカの日々』でした。そしてその朗読を大村看護婦も聞き、「生き生きした文章ね」と評しました。

20. マクベス

マクベス

『マクベス』は、1606年頃に書かれたとされるイギリスの劇作家ウィリアム・シェイクスピアの代表的な戯曲の一つです。スコットランドの王位をめぐる政治悲劇ですが、現代でも広く読まれるほど普遍的な内容を含む物語となっています。『マクベス』は『海辺のカフカ』でも登場しました。

【『1Q84』での登場】

天吾は父親が入っている療養所の看護婦三人と出会います。そんな三人の看護婦が同僚か誰かの性的遍歴についてのうわさ話に耽っている様子を見て、天吾はシェイクスピアの『マクベス』に出てくる三人の魔女を思い浮かべますまた柳屋敷の女主人も、青豆との会話の中で、四世紀前の世界におけるシェイクスピアの芝居について言及します

21. 罪と罰

罪と罰

『罪と罰』は、ロシアの作家フョードル・ドストエフスキーによる1866年の小説です。ドストエフスキーの代表作としては、『カラマーゾフの兄弟』も本作には登場しています。『罪と罰』は、貧困に苦しむ元学生ラスコーリニコフが金貸しの老婆を殺害することで始まります。彼は自身の行動を正当化しようとしますが、罪悪感に苛まれます。やがて、娼婦ソーニャとの出会いを通じて自らの罪を認識し、贖罪の道を歩み始めます。

【『1Q84』での登場】

牛河の過去を振り返る場面で、家庭は裕福だったが死にものぐるいで勉強する必要があったため、現世的な楽しみを棄てざるをえなかったと語られています。そんな劣等感と優越感の狭間にいた牛河は、自身を「ソーニャに出会えなかったラスコーリニコフのようなものだ」と表現します。牛河が感じている「劣等感と優越感の狭間」にいるという状態は、フョードル・ドストエフスキーの『罪と罰』に登場する主人公ラスコーリニコフの内面的な葛藤に似ています。ラスコーリニコフは、優越感(自分は特別な存在であるという意識)と劣等感(貧困や罪悪感に苛まれる意識)の狭間で苦しみます。次に、「ソーニャに出会えなかった」という部分ですが、ソーニャは『罪と罰』においてラスコーリニコフの精神的救済者であり、彼の人間性と罪の許しを象徴する存在です。ソーニャとの出会いがなければ、ラスコーリニコフは精神的な救いを得ることなく、さらに深い絶望と孤立に陥った可能性があります。したがって、この表現を使った人物は、自分がラスコーリニコフのように苦しんでいるが、彼を救ったソーニャのような存在に出会えず、救済や精神的な支えを得ることができなかったと感じていることを意味しています。

22. 鉄人28号

鉄人28号

『鉄人28号』は、横山光輝が1956年から1966年まで連載した漫画作品で、アニメ化されたものも有名です。戦後の日本を舞台に、巨大ロボット「鉄人28号」とその操縦者である少年探偵、金田正太郎の冒険を描いています。鉄人28号は、正太郎の父である金田博士が開発した戦闘ロボットであり、正太郎がリモコン操作で制御します。

【『1Q84』での登場】

青豆の潜むマンションの部屋にはエネーチケーの集金人がしつこいまでにやってきます。そして呼び鈴を鳴らすのではなく、繰り返しドアがノックされます。そしてドア越しに居留守の青豆に向かって、話を続けます。その集金人はノックには感情をこめることはできるものの、鉄人28号ではないので手は痛むと話します

23. 風と共に去りぬ

風と共に去りぬ

『風と共に去りぬ』はマーガレット・ミッチェルによる1936年の小説で、アメリカ南北戦争とその後の復興期を背景に、スカーレット・オハラという強烈な女性の生涯を描いています。ジョージア州の大農園「タラ」を舞台に、スカーレットの恋愛や家庭、戦争による変化と試練を通じた成長を描いています。

【『1Q84』での登場】

完全な勃起、射精をした天吾は、それが一度偉大な何かを達成したという文脈で、「『風と共に去りぬ』を書いた作家と同じだ」と主張しています

24. 変身

変身

本作ではカフカの『変身』というタイトルではなく、その主人公ザムザと、虫になるというプロットについて触れられます。『変身』は1915年に発表された短編小説で、カフカの代表作の一つです。物語は、セールスマンのグレゴール・ザムザがある朝、巨大な虫に変身してしまうことから始まります。家族との関係や社会からの疎外をテーマにし、変身後のグレゴールが直面する孤立と絶望を描いています。『変身』は『海辺のカフカ』でも言及されます。

【『1Q84』での登場】

天吾のアパートに潜み、監視を続ける牛河は、部屋の中で「虫になったザムザのように」床の上を動きます。カフカの『変身』は、主人公のグレゴール・ザムザが虫になってしまうところから物語が始まります。また『1Q84』冒頭に、ヤナーチェックについての記述の部分で、チェコについても触れられ、カフカの名前も登場します。

25. ヘンリー四世

ヘンリー四世

シェイクスピアの『ヘンリー四世』は、第1部と第2部からなる歴史劇で、15世紀のイングランドを舞台にしています。物語は、ヘンリー四世の治世と、その息子で後にヘンリー五世となるハル王子(プリンス・ハル)の成長を描いています。

【『1Q84』での登場】

タマルは牛河を殺めた後、静かな声で「今日死んでしまえば、明日は死なずに済む」というシェイクスピアの言葉を口にします。タマルはその台詞の出典が『ヘンリー四世』だったか『リチャード三世』だったか思い出せません。また同じような「今年死ねば来年はもう死なないのだ」という言葉とシェイクスピアの名は、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』でも登場しました。

26. リチャード三世

リチャード三世

『リチャード三世』は、シェイクスピアの初期の歴史劇の一つで、イングランド王リチャード三世の悪逆非道な権力掌握と短命の治世を描いています。

【『1Q84』での登場】

上記「ヘンリー四世」の項目を参照。

その他の本

27. 「呪術についての本」

具体的な書籍名が明記されてないものの「呪術についての本」が登場します。「日本社会の中で呪いがどのような機能を果たしてきたかを論じている」という内容に該当するうち、以下の書籍が候補に挙がりそうです。もちろんどちらも、『1Q84』最初に出版された2009年以前に出版されている本です。

・光文社から1988年に出版された小松和彦著『日本の呪い 闇の心性が生み出す文化とは』→1995年には文庫版も出版
・原書房から1998年に出版された豊島泰国著『図説 日本呪術全書』→2021年には普及版も出版

【『1Q84』での登場】

ふかえりに会うべく待ち合わせをした店で、天吾は直前に新宿の紀伊国屋書店で買ったうちの一冊である「呪術についての本」を読みます

28. 「一九三〇年代の満洲鉄道についての本」

「一九三〇年代の満洲鉄道についての本」で、ハードカバーで、『1Q84』の出版された2009年より前に出版されたものという条件で考えると、あまり候補はなさそうで、というかいい感じの候補を見つけることができませんでした。2009年以後のものや、ハードカバー以外だとけっこうあるのですが、条件にあてはまる本が見つかりませんでした。実在の本を指しているかは不明ですが、何か有力な候補があれば、ぜひ教えてください笑

【『1Q84』での登場】

青豆は重要な「仕事」を終えて、神経の高ぶりをおさえるためにホテルのバーに行きます。そこで取り出して読んだ本が「一九三〇年代の満洲鉄道についての本」で、それはハードカバーということでした。

29. 「チェーホフの短編小説」

本作で明言されるチェーホフの作品タイトルに『サハリン島』がありますが、この「チェーホフの短編小説」という箇所は特定の作品を指しているわけではないと思われます。「逆説的なおかしみ」を持つという文脈で「チェーホフの短編小説」という表現が登場しますが、チェーホフの作品には逆説的なおかしみやユーモアがしばしばみられます。たとえば、「カメレオン」という作品は、とある警官が相手が権力者か弱者かで態度を変える様を、カメレオンのように変わる人間の本性として描きます。その警官の態度が権力者の前では卑屈であり、逆に無力な者には威張り散らすという矛盾した行動が、皮肉とユーモアを生み出しています。

【『1Q84』での登場】

例のごとく、小松が良くないニュースをもって天吾に電話してきたとき、「さぞかし愉快な話なんでしょうね」という天吾の皮肉に対して、「逆説的なおかしみならいくらかあるかもしれない」と小松は返します。さらに天吾はそれに対して「チェーホフの短編小説のように」と言います

30. 猫の町

本作には、「旅をテーマにした短編小説アンソロジー」に収録された「猫の町」という話が登場します。この「猫の町」はドイツ人の作家によって書かれたという記述があるなど、あたかも実在している作品のようですが、実は村上春樹による創作であることが米雑誌『ザ・ニューヨーカー』内のインタビューで語られています。

“Town of Cats” is a story that I made up. I think I probably read something like it a long time ago, but I don’t have a very precise recollection of whatever it was that I read. In any case, this episode performs a symbolic function in the novel in many different senses—the way a person wanders into a world from which he can never escape, the question of who it is that fills up the empty spaces, the inevitability with which night follows day. Perhaps each of us has his or her own “town of cats” somewhere deep inside—or so I feel. (「猫の町」は私が作り上げた物語です。おそらく昔に似たような話を読んだことがあると思いますが、正確に覚えているわけではありません。いずれにせよ、このエピソードは多くの意味で小説の中で象徴的な役割を果たしています。人が決して逃れられない世界に迷い込む方法、空白を埋めるのが誰かという疑問、夜が昼に続く避けられない事実。おそらく私たち一人一人が、どこか深いところに「猫の町」を持っているのではないかと感じます。)
参照: https://www.newyorker.com/books/page-turner/this-week-in-fiction-haruki-murakami

【『1Q84』での登場】

天吾は父親がいる千倉の療養所を訪れる列車内で、持参した文庫本を読みます。それは「旅をテーマにした短編小説アンソロジー」に収録された「猫の町」というタイトルの話でした。その話は『1Q84』という物語においても重要な役割を果たします。

31. 「食べたいものを食べたいだけ食べて痩せる」

『食べたいものを食べたいだけ食べて痩せる』というタイトルの本は見つけられませんでしたが、巷には「食べたいものを好きなだけ食べつつもダイエットもできる」という趣旨の本はたくさんありますよね。

【『1Q84』での登場】

天吾は喫茶店で朝刊を読み、ベストセラーリストをチェックします。そのときすでに『空気さなぎ』はラインナップから姿を消し、『食べたいものを食べたいだけ食べて痩せる』というタイトルのダイエット本が一位にランクインしています。「中身がまったくの白紙でも売れるかもしれない」とそのタイトルをやや皮肉ります。

32. 「女性のための身体百科」

『女性のための身体百科』として登場するこの一冊は、実在する本を指していない可能性が高いです。似たようなタイトルの本や女性の身体を解説する本は存在しますが、『女性のための身体百科』というタイトルの本は見つけることができませんでした。よって、それらしいタイトルをつけた架空の一冊だと判断しました。

【『1Q84』での登場】

潜伏している青豆のもとに、タマルが用意してくれた妊娠検査キットとともに『女性のための身体百科』という分厚い本が届けられます

『1Q84』に出てくる作家【一覧】

1. オノレ・ド・バルザック

オノレ・ド・バルザックはフランス文学を代表する19世紀の作家です。『ゴリオ爺さん』や『谷間の百合』などで知られる「人間喜劇」はバルザックの作品群全体を指す名前です。バルザックは村上作品の中では頻出の作家で、『1973年のピンボール』『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』『ノルウェイの森』『スプートニクの恋人』など多くの作品に登場します。

【『1Q84』での登場】

天吾は小松から、ふかえりの書いた『空気さなぎ』のクオリティを高めるための書き直しを依頼されます。そんなゴーストライター的な役割にうしろめたさを感じている天吾に対して、小松は「バルザックやら紫式部」やらの作品に手を加えるわけではないと説得しようとします

2. 紫式部

平安時代中期に活躍した和歌の名手で、なにより『源氏物語』の作者として知られています。紫式部および『源氏物語』は『海辺のカフカ』において複数回にわたって言及され、物語上重要な役割も果たしました。

【『1Q84』での登場】

上記「バルザック」の項目を参照。

3. アーネスト・ヘミングウェイ

アーネスト・ヘミングウェイは20世紀に最も影響力を持ったアメリカの小説家の一人で、1954年にノーベル文学賞も受賞しています。『老人と海』や『日はまた昇る』などの小説で知られています。ヘミングウェイは村上作品では頻出の作家であり、デビュー作の『風の歌を聴け』から始まって、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』や『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』などにも登場します。

【『1Q84』での登場】

青豆が男を求めて利用する六本木のバーは、「ヘミングウェイがバハマあたりでたむろしていた酒場をイメージした内装がほどこされている」と描写されています。実際にヘミングウェイが通ったバハマのバーはいくつか存在し、たとえばFloriditaというバーにはヘミングウェイの等身大ブロンズ像が置かれています。

4. プラトン

プラトンは古代ギリシアの哲学者であり、ソクラテスの弟子、アリストテレスの師です。アリストテレスが現実主義者だとみなされているのに対し、プラトンは理想主義者であり、イデア論を提唱しました。これは、物理的世界の背後に不変の理想的形が存在するとする考えです。彼の対話篇、特に『国家』や『饗宴』などで哲学、倫理、政治、教育に関する議論が展開され、後世に大きな影響を与えました。なおプラトンの『饗宴』は『海辺のカフカ』でも登場しています。

【『1Q84』での登場】

小松がアリストテレスの引用をしたのに対し、天吾は「人間の霊魂は理性と意志と情欲によって成立している」というプラトンの引用をアリストテレスのものと勘違いして持ち出します。小松から言わせればアリストテレスとプラトンは、「メル・トーメとビング・クロスビーくらい違う」のだそうです。村上春樹らしい比喩ですが、当時のアメリカの音楽を知らない方にはいまいちピンとこないですよね。どちらも二十世紀前半のアメリカの音楽界と席巻した人物ですが、ジャズ界の巨人と呼ばれたメル・トーメと、他ジャンルのエンタメ業界でスターとして君臨したビング・クロスビーとの違いを、アリストテレスとプラトンにあてはめているわけですね。

5. レフ・トルストイ

レフ・トルストイは本作でも登場するドストエフスキーやツルゲーネフと同時代のロシア文学作家で、代表作『戦争と平和』や『アンナ・カレーニナ』などで知られています。とにかく村上作品にはたくさん出てくる作家で、ときにトルストイの作品が物語の重要な要素になります。

【『1Q84』での登場】

チェーホフの『サハリン島』が登場する場面で、チェーホフについて「トルストイやドストエフスキーのひとつ下の世代」と説明されていますまた物語の終盤で牛河によって、トルストイの有名な『アンナ・カレーニナ』の冒頭の有名な一節が、少し手を加えた形で引用されています。この部分の引用は『海辺のカフカ』でも大島さんが行っていました。

6. 松尾芭蕉

松尾芭蕉は江戸時代の俳諧師で、俳句の形式を確立した、日本の詩歌史において最も著名な人物の一人です。代表作には東北から北陸に至る旅の様子と詠まれた俳句が収められてた『奥の細道』があります。

【『1Q84』での登場】

天吾はふかえりの『空気さなぎ』に関わってしまったことを後悔している一方で、その作品は世間ではよく売れていきます。そして就寝前の小松からの電話のベルに不穏さを予期しつつ、天吾は現実逃避として、オゾン層や松尾芭蕉などの全く関係のないものごとについて考えをめぐらします。そして予想通り、悪いニュースがもたらされるのでした。

7. マーシャル・マクルーハン

マーシャル・マクルーハンは、カナダの哲学者であり、メディア理論家として知られています。彼はメディアとその影響に関する革新的なアイデアを数多く提唱し、20世紀のメディア研究に大きな影響を与えました。中でも、「メディアはメッセージである」という概念が有名で、これはメディアの内容よりもその形式や特性自体が社会や個人に大きな影響を与えるという考え方です。

【『1Q84』での登場】

あゆみが青豆に教団さきがけについて説明する際、それが実体を持たないにも関わらず人が集まってくるという趣旨で、マクルーハンの「メディアそのものがメッセージ」という言葉を引用します

8. ジークムント・フロイト

ジークムント・フロイトは、オーストリアの神経学者であり、精神分析学の創始者として知られています。彼の研究と理論は、特に夢の解釈において革新的なものであり、現代の心理学や精神医学に大きな影響を与えました。代表作の一つ『夢判断』は、夢の分析と解釈に関する最初の体系的な理論を提示したものです。この本は、夢が無意識の心の表現であり、抑圧された欲望や葛藤が象徴的に表現されると主張しています。

【『1Q84』での登場】

天吾はガールフレンドとの会話の中で、自分はほとんど夢を見ないと話します。それに対し、彼女は「フロイト博士が気を悪くするわよ」と返しますまたタマルが牛河を相手にユングの話をしたときに、牛河はユングについて持っている知識として、フロイトの弟子だったという点を挙げます

9. フランソワーズ・サガン

フランソワーズ・サガンは、フランスの小説家、劇作家です。1954年、わずか18歳で発表した処女作『悲しみよこんにちは』が大ヒットし、一躍有名になりました。この小説は、若者の感情と道徳的葛藤を描いた作品で、フランス文学に新風を吹き込みました。ちなみにサガンというペンネームは、本作でも登場するマルセル・プルーストの小説『失われた時を求めて』の登場人物 「Princesse de Sagan」から取られました。

【『1Q84』での登場】

天吾は『空気さなぎ』の書評を読み、「マジック・リアリズムの空気を吸ったフランソワーズ・サガン」と評した記事を見つけます

10. ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタイン

ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタインは、オーストリア生まれの哲学者であり、20世紀の哲学において最も影響力のある人物の一人です。彼の主な業績は、言語哲学と論理哲学にあり、初期の著作『論理哲学論考』では、言語が世界をどのように表現するかを探求しました。後期の著作『哲学探究』では、言語の使用や意味が社会的な文脈に依存することを論じ、言語ゲームという概念を導入しました。

【『1Q84』での登場】

青豆はお腹に宿した新しい命についてタマルと話します。そしてこの不思議な過程で授かった子をポジティブに受け入れようとしている青豆に対して、タマルは「いったん自我がこの世界に生まれれば、それは倫理の担い手として生きる以外にない」というヴィトゲンシュタインの思想を引用します

11. カール・ユング

カール・グスタフ・ユングは、スイスの心理学者としてユング心理学(分析心理学)を創始しました。フロイトと同じく精神分析学を研究しましたが、後にフロイトとは異なる独自の心理学理論を展開しました。人間の心には「個人的無意識」と「集合的無意識」があるという考えが特徴的ですね。村上春樹は、ユング心理学を探求する河合隼雄さんとは対談集も出しているほどですが、一方でユング的な著作は読まないようにしているとも述べています。ユングは『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』『ダンス・ダンス・ダンス』『海辺のカフカ』でも登場しました。

【『1Q84』での登場】

タマルは牛河の居場所をつきとめ、手にかけようとします。そしてタマルは、その直前にユングが自分でデザインした家の入り口に刻み込んだ「冷たくても、冷たくなくても、神はここにいる」という言葉を紹介し、牛河に復唱させます

『1Q84』登場本: まとめ

本作で重要な鍵を握る『空気さなぎ』はもちろん架空の小説ですが、内容の一部は断片的に明らかにされていきます。ついつい一冊の本として通して読んでみたいという誘惑に駆られます。本作で言及される「メフィスト」はゲーテの『ファウスト』に出てくる悪魔ですが、普遍的な概念なので必ずしも『ファウスト』を指しているわけではないかもしれません。しかし村上作品ではゲーテへの言及はしばしば見られます。

『1Q84』に登場する本の中でも、タイトルからも分かる通り、ジョージ・オーウェルの『1984年』は特に重要な意味を持つ作品であることがわかります。


以下、村上春樹関連の記事をまとめたので、興味がありましたら、ぜひご一読ください。

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