村上春樹作品のオーディブル化が止まりません。長編小説、短編集、エッセイ、対談集などを含めると村上春樹の著作は100を超えます。その中でも主要な小説やエッセイ、旅行記などを中心に、2022年からオーディブル化が素晴らしい朗読者陣によって実現してきました。
すでに長編全15作品中10作品が、短編集全11作中8作品がすでにオーディブル化しており、そのどれもが聴き放題の対象となっています(2025年初頭時点)。これは村上春樹愛読者にとってはたまらないことですし、村上春樹をまだ読んでことがないオーディブルユーザーにとっても朗報です。
ではどの作品から聴けば村上春樹のオーディブルの真の魅力を味わえるでしょうか。ここでは長編作品7作、短編集3作、エッセイ&旅行記3作というセクションを設けて、合計13冊のおすすめ村上春樹オーディブル作品を紹介したいと思います。作品の評価だけでは決まらないのがオーディブルの魅力です。朗読というオーディブル最大の特徴は、作品の印象や評価を変えかねないほど大きな要素です。したがって、作品の特徴と朗読の印象を合わせた紹介を心がけました。
ぜひオーディブルをあまり使ったことがない村上春樹愛読者には、これらの朗読によって違った角度から既読作品を味わう魅力を感じてもらいたいと思います。また村上春樹初心者にも、その不思議な世界をプロの読み手たちという案内人とともに探検してもらえたらと思います。
オーディブルで聴ける村上春樹作品全リスト
【長編】全15作品中10作品がオーディブル化
-1973年のピンボール 全1巻(長編第2作)/朗読: 岡山天音
-羊をめぐる冒険 全2巻(長編第3作)/朗読: 染谷将太
-世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド 全2巻(長編第4作)/朗読: 大森南朋
-ノルウェイの森 全2巻(長編第5作)/朗読: 妻夫木聡
-ねじまき鳥クロニクル 全3巻(長編第8作)/朗読: 藤木直人
-スプートニクの恋人 全1巻(長編第9作)/朗読: 宮﨑あおい
-海辺のカフカ 全2巻(長編第10作)/朗読: 木村佳乃
-1Q84 全6巻(長編第12作)/朗読: 杏, 柄本時生
-色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 全1巻(長編第13作)/朗読: 向井理
-騎士団長殺し 全4巻(長編第14作)/朗読: 高橋一生
【短編集】全11作中8作品がオーディブル化
-カンガルー日和(短編集第2作)/朗読: 多部未華子
-螢・納屋を焼く・その他の短編(短編集第3作)/朗読: 松山ケンイチ
-パン屋再襲撃(短編集第5作)/朗読: 柳楽優弥
-レキシントンの幽霊(短編集第7作)/朗読: 滝藤 賢一, 門脇 麦
-神の子どもたちはみな踊る(短編集第8作)/朗読: 仲野太賀
-東京奇譚集(短編集第9作)/朗読: イッセー尾形
-女のいない男たち(短編集第10作)/朗読: 市原 隼人
-一人称単数(短編集第11作)/朗読: 池松壮亮
【エッセイ・旅行記など】
-職業としての小説家(創作などに関するエッセイ)/朗読: 小澤征悦
-辺境・近境(旅行記)/朗読: 永山瑛太
-猫を棄てる(父のことに関するエッセイ)/朗読: 中井貴一
-走ることについて語るときに僕の語ること(作家活動に関するエッセイ)/朗読: 大沢たかお
-遠い太鼓(旅行記)/朗読: 野間口徹
▽村上春樹のオーディブル作品全リストと各作品の詳細情報はこちら▽
ついに村上春樹作品が、「耳で聴く読書」オーディブル化し、すでに多くの作品がリリースされています。2024年9月現在で村上春樹作品のうち38冊もの長編小説、短編小説、エッセイ、旅行記などがオーディブル化し、全てが聴き放題の対象となっています。[…]
おすすめの村上春樹オーディブル作品【長編ベスト7】
村上春樹の真髄は長編小説にあり。朗読で聴く村上春樹も素晴らしく、本を読むことでは稼働しなかった想像力をかき立てられることがあります。朗読が良いと、「こういう解釈もあるのか」と納得させられることもあります。それでもやはり複数冊で構成される長編小説は、朗読時間にすると数十時間を超え、すこし手を出すのをためってしまうほどの分量です。しかし、これをあれだけのクオリティーで読み通している朗読者のことを考えると、聴き手としては負けるわけにはいきません。村上春樹が初めての方も、オーディブル初心者の方も、聴いて損はない長編7作を選んだので、ぜひ以下の中から選んでみてください。
長編第7位『ノルウェイの森』(妻夫木聡 朗読)/おすすめ度★★★☆☆
【『ノルウェイの森』について】
初めての村上春樹として読まれることも多い『ノルウェイの森』は、村上春樹の一番売れた第五作めの長編小説です。著者の代表作とみなされがちですが、実はファンタジー抜きという珍しい例外的リアリズム作品です。「死は生の対極としてではなく、その一部として存在している」という明言が生まれたのもこの作品です。また短編小説「螢」や「めくらやなぎと眠る女」がベースとなっていることでも知られています。もちろん本作の主人公と著者自身を結びつけることは乱暴ですが、早稲田大学が舞台となっていたり時代背景を考えると村上春樹のバックグラウンドに重なる部分もあり、当時の空気感が肌で感じられるような作品です。もちろん本作はあくまでフィクションですが。

評価: 3.0妻夫木聡さんの朗読では『ノルウェイの森』を覆う悲壮感がこれ以上なく再現されています。その低く静かな語りが耳を心地よく震わせてくれます。最低限の強弱で表現する会話文も、流れを変えることなく安定感抜群。個人的には、映画化で主演を務めた松山ケンイチさんのイメージが染みついてしまっていた『ノルウェイの森』ですが、妻夫木聡さんの見事な朗読により世界観が更新されました。試してみて間違いはないというオーディブル作品です。
長編第6位『海辺のカフカ』(木村佳乃 朗読)/おすすめ度★★★☆☆
【『海辺のカフカ』について】
『海辺のカフカ』は村上春樹の第十作目の長編小説で、ファンの間でも最高傑作に選ぶ人も多い作品です。村上春樹の長編の中では唯一の10代の主人公で、15歳の少年カフカが四国の図書館へ赴く成長譚です。同時に、ナカタさんという老人の軸でも物語が展開され、どのようにカフカ少年の物語と交じり合っていくのか、いかないのか、というのも見どころの一つです。随所に世界文学の要素が見られ、国内外で評価が特に高い作品としても知られています。

評価: 3.5朗読は『海辺のカフカ』が発売されてすぐに読んだという木村佳乃さんで、実は村上春樹の長編小説のオーディブル作品で最初に一作通して読み切った女性朗読者でもあります。低いトーンで芯のしっかりした声は、この大作に読み負けることがありません。木村佳乃さんはインタビューで、ナカタさんや星野青年には特に思い入れがあるということを語っていますが、私情を排除して中立的な語りを貫く姿勢は見事です。物語、朗読ともに非の打ち所がないオーディブル作品と言えるでしょう。
長編第5位『ねじまき鳥クロニクル』(藤木直人 朗読)/おすすめ度★★★★☆
【『ねじまき鳥クロニクル』について】
村上春樹の最高傑作は何か。これは人によって意見が分かれるほどに、名作が多いのが村上春樹の長編小説です。しかし、僕が一作挙げるなら第八作『ねじまき鳥クロニクル』が最有力になると思います。つかみどころのない悪との対峙、「井戸」、「壁抜け」など村上春樹作品中期に見られる重要なモチーフが多々顕著になる転換点的な作品。もともとは第一部、第二部の二巻が刊行され、完結されたと思われていたところに、翌年に第三部が発表されて多くのファンを驚かせたという印象的な背景もあります。

評価: 4.02022年に村上春樹作品のオーディブル化が始まり、第一弾としてリリースされたのがこの『ねじまき鳥クロニクル』でした。一人称による語り、電話での会話、戦時中の回想、手紙など多様な形式を含む40時間超えの全三巻を一人で読み切った藤木直人さんの朗読。少女から老人まで登場人物ごとに微妙に声色を変えていますが、演じすぎないバランスが絶妙です。個人的には、間宮中尉の語りが良すぎて、しっかり物語が深まっていることに感動しました。
長編第4位『1973年のピンボール』(岡山天音 朗読)/おすすめ度★★★★☆
【『1973年のピンボール』について】
『1973年のピンボール』は村上春樹の長編第二作目の小説で、長編としてはかなり短い分量の物語です。初期作品でありつつも、やはり村上春樹らしさが詰まった根源的な作品として今なお色褪せません。『1973年のピンボール』はデビュー長編の『風の歌を聴け』からの続編であるにも関わらず、おすすめの上位にランクインさせたのは、朗読があまりに作品の世界観にマッチしていたことも大きいです。すでに書籍で読んだ方なら問題なく、よりいっそう深く作品を味わえますし、未読者の方でも『1973年のピンボール』から読み始めてもじゅうぶんに楽しめる内容なので、安心して聴いてください。

評価: 4.3『1973年のピンボール』朗読の岡山天音さんの声は、明瞭さ、速さ、高低差、一貫性、どれをとってもたまらなく、とにかく耳に優しいのが特徴的です。かすれがかった声が程よいトーン(落ち着いた低さだがクリア)と相まって、『1973年のピンボール』全体を包み込む青春と哀愁を見事に表現しています。朗読時の年齢と、村上春樹初期作品の主人公の年齢とが合致していることも、自然に物語が頭に入ってくる助けになっているのではないでしょうか。前編である第一作の『風の歌を聴け』がオーディブル化されたあかつきには、その出来次第ではこの『1973年のピンボール』のオーディブル自体も評価が高まる気がします。
長編第3位『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』(大森南朋 朗読)/おすすめ度★★★★☆
【『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』について】
『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』は村上春樹の長編第四作とかなり初期段階の作品ながら、その完成度は高く、最高傑作としてみなすファンも少なくありません。村上作品でしばしばみられる二つの物語軸が並行して進むというスタイルも、この作品ですでに成功させています。素朴かつ幻想的な「世界の終り」と情報戦争に巻き込まれていく冒険活劇「ハードボイルド・ワンダーランド」が交互に語られていくことで、物語がより大きな推進力を持ちます。何度も書き直された結末部分にも注目です。

評価: 4.5大森南朋さんの渋い朗読はいくらでも聴ける心地の良さです。演技はほとんど入れないで、登場人物ごとにあまり特徴を出さずに最低限の抑揚で読まれますが、もともとの唯一無二の声色があまりに作品とマッチしているのでじゅうぶん特徴的です。かなり変わった話し方をする博士の口調はもう少し演技を加えても良さそうなものでしたが、それゆえに全体としての安定感が担保されており、小説自体のクオリティに負けないとても魅力的なオーディブル作品に仕上がっています。
長編第2位『スプートニクの恋人』(宮﨑あおい 朗読)/おすすめ度★★★★★
【『スプートニクの恋人』について】
『スプートニクの恋人』は村上春樹の第九作目の長編小説です。複数冊から構成される長編小説の前後で発表される短めの長編小説という位置付けですが、それ一冊で完結されている素敵な小説です。村上春樹はこの作品を執筆するにあたって、自分が武器にしてきたある種の文体を出し尽くしてしまおうという決意があったと語っています。いわばそれまでの総決算的な作品ですね。「『スプートニクの恋人』は楽しんで書いた小説の最右翼に位置するでないか」とも語っていることもあって、全体的に軽やかに読んでいける印象です(楽観的とはいえない場面もあるのですが、不思議です)。

評価: 4.8朗読ありきのオーディブルとなって、書籍としての作品から評価をぐんと伸ばしたのは『スプートニクの恋人』です。もちろん小説としての『スプートニクの恋人』自体も、ファンが多く魅力的な作品です。さらに宮﨑あおいさんの朗読により、その世界に彩りが加わったことで、村上春樹のオーディブル作品の中で最高傑作の一つになったという感想を持ちました。ベースとなっている冷静な語り口と、時折見せる情感込めた演技とが程よく融和しています。オーディブル版『スプートニクの恋人』の魅力は以下の記事でも語っていますが、ぜひ「ながら聴き」ではなく、朗読に集中できる環境で(本を開いて文字を追いながらでも)聴くことをおすすめします。
新しい読書の形に出会ってしまった。 耳で聴く読書「オーディブル」がとてもいい、という話ではもちろんない。 9月6日、かねてから予定されていた村上春樹の新しいオーディブル化作品がリリースされた。その作品は長編小説『スプートニクの恋[…]
長編第1位『騎士団長殺し』(高橋一生 朗読)/おすすめ度★★★★★
【『騎士団長殺し』について】
村上春樹の十四作目の長編小説『騎士団長殺し』は、もっともおすすめしたい村上春樹のオーディブル作品です。「顕れるイデア編」と「遷ろうメタファー編」の二部(文庫本だと4冊)で構成されるやや長めの作品ですが、長すぎると感じさせない小説なのが不思議です。日常に非日常が溶け込んでいくという村上春樹お馴染みのプロットで、物語をぐんぐん前に押し進める力は過去作に負けず劣らず。そんな中で、文化や歴史というテーマを深く意識させられる作品でもあります。

評価: 5.0妻と別離し、小田原の森に暮らすことになる三十六歳の画家。そんな主人公の声を含め、見事に作品の雰囲気を体現するのは朗読の高橋一生さんです。不穏にはじまり、終始闇と接しているような作品ですが、低く直接脳に語りかけてくるような声は、『騎士団長殺し』という作品にこれ以上なくマッチしていると感じました。物語をしっかり腹に落とし込んでいる完璧な語りで、このオーディブル版では『騎士団長殺し』の評価が数段階変わる人もいるのではないか、と思えるほどです。一人で約40時間ぶっ通しで物語り続ける圧巻の音声読書は、ぜひ読書好きの方にはおすすめしたいです。
(このオーディブル作品が好きだからこそ言いたい…↓)
ちなみに良い作品だからこそ、もったいない点を強いて挙げるなら、各章のタイトルの読みが、本文の読みからの使い回しっぽい点です。たとえば第2部上巻の「47 今日は金曜日だったかな?」を聞くと少しびっくりしてしまいます。本文では「騎士団長殺し」の声の演技が入っているとわかるのですが、この章始めの読みは地の文の読み方でいいんじゃないかと思ってしまいました。まあ些細な点で、良作だからこそ目に(耳に)ついた点でしかないことは強調しておきたいです。
おすすめの村上春樹オーディブル作品【短編ベスト3】
村上春樹入門としても、オーディブル入門としてもおすすめなのが短編作品です。とにかく一作につき一時間前後で完結する短編小説は、オーディブルとしては手軽に聴きやすいのです。ものによっては10分ちょっとで聴ける作品もあります。もちろん村上春樹の短編は、長編に負けじと完成度の高い作品が並びます。実際、世界で評価され始めたのは短編がきっかけですし、アンチ村上春樹のような姿勢を見せる人でも短編は見事と評する人もいます。小説としての評価と朗読の魅力を総合的に勘案して選んだ以下のオーディブル作品をぜひお試しください。
短編集第3位『カンガルー日和』(多部未華子 朗読)/おすすめ度★★★☆☆
【『カンガルー日和』について】
『カンガルー日和』は、村上春樹の短い物語を収めた作品集で、初期から見られる軽やかな作品も多く収録されています。全18編収録されており、朗読時間にすると10分前後から長くても20分くらいと各作品が短めなので聴きやすくオーディブル入門としても最適です(最後の「図書館奇譚」は全体では1時間強)。村上春樹自身がこの作品集でもっとも気に入っているという「4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて」は、後の大長編『1Q84』へと繋がった重要な作品でもあります。なお、本書収録の「4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて」と「鏡」は、2025年2月に独立して単行本するほどのクオリティを持つ短編作品です。村上春樹にとっての「ヒーロー」である「羊男」がメインの物語「図書館奇譚」など、村上春樹エッセンスが詰まった一冊と言えます。

評価: 3.0なんといっても『カンガルー日和』がおすすめなのは、多部未華子さんの静かで平坦な朗読が耳ざわりにとても良い点にあります。特に表題作「カンガルー日和」や「4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて」はその世界観と声の雰囲気もこれ以上ないほどマッチしていて至高です。18編もの中で、ユニークな登場人物たちが織りなす実に多様な物語を見事に捌き切った点も評価に値するでしょう。多部未華子は、「正直なにを言っているのか分からないなって思ったり」と思わず吐露していますが、村上ワールドに翻弄される読者に最も近い朗読という感じがするのも、本作の魅力の一つです。
短編集第2位『螢・納屋を焼く・その他の短編』(松山ケンイチ 朗読)/おすすめ度★★★★☆
【『螢・納屋を焼く・その他の短編』について】
『螢・納屋を焼く・その他の短編』は、もちろんオーディブル化されたからには聴いておくべき珠玉の村上春樹初期短編集です。時期そしては、長編第三作『羊をめぐる冒険』と第四作『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』の間の空白の期間に書かれました。収録された五編全てが村上春樹作品の中でも完成度が高く、「蛍」は後の『ノルウェイの森』のもととなった作品ですし、「めくらやなぎと眠る女」はそのタイトルが表題となってアメリカで短編集として刊行されました(村上春樹が海外で人気を得たきっかけの一つ)。

評価: 4.0松山ケンイチさんの朗読が村上春樹作品に合わないわけがない、と思って聴いた『螢・納屋を焼く・その他の短編』ですが、予想通りみなさんにおすすめしたいほどのオーディブル作品でした。朗読の松山ケンイチは映画『ノルウェイの森』で主演を務めましたが、そのままでは面白くないと思ったのかオーディブル版『ノルウェイの森』の朗読は妻夫木聡に譲る形となっています(そちらも良いです)。代わりに『ノルウェイの森』のもととなった短編「螢」が収録されており、なるほど松山ケンイチさんでもその世界観の一部を楽しめるようになっています。松山ケンイチさんの静かで無感情な声はやはり村上春樹作品にぴしゃりと当てはまります。「踊る小人」の「小人」をどう読むか気になっていたのですが、こちらは他の箇所と同様、演技はほとんど入れずに淡々と読んでいくスタイルを選んだようです。これも正解の一つかなと思うほど、聴き心地が良いのです。朗読者が言うようにベッドの上で聴きながら自分と物語を重ね合わせて寝落ちするのも良さそうです。
短編集第1位『女のいない男たち』(市原隼人 朗読)/おすすめ度★★★★★
【『女のいない男たち』について】
村上春樹の短編集でもっともおすすめしたいオーディブルは『女のいない男たち』です。『女のいない男たち』は村上春樹の短編集の中では比較的最近のもので、と言っても2014年に出版された十作目にあたる短編小説集です。アカデミー賞受賞の映画『ドライブ・マイ・カー』は同名の短編「ドライブ・マイ・カー」に加え、本書収録の「シェエラザード」と「木野」が土台となって制作されました。作者の「まえがき」によると、この作品集は音楽で言うところのコンセプト・アルバムを念頭に書かれたようで、女性に去られた、もしくは去られようとしている男性が一貫したテーマになっています。ぜひともそれを意識して、短期間でまとめて通しで聴いてみることをおすすめします。

評価: 5.0正直に言って、朗読の市原隼人さんは滑舌がいいわけではないですし朗読も上手いってわけではないかもしれません。しかし『女のいない男たち』と市原隼人さんの朗読は、すごく雰囲気が合っているのです。けっして幸せとは言いがたい男たちの声が、市原隼人さんの真剣すぎるくらいの実直さを伴った朗読によって再現されています。なにより話し方に好感が持てて、個人的にすごく好きなオーディブル作品です。市原隼人さんがインタビューでオーディブルについて語っているように、文字で読んでいるときとは違った想像力をかき立てられるのがオーディブルの魅力でもあります。そして『女のいない男たち』はそんな作品の一つなのです。
おすすめの村上春樹オーディブル作品【エッセイ&旅行記ベスト3】
実は、村上春樹はエッセイもものすごくたくさん出版しています。そのゆるさがとてもいいんです。しっかり物語を味わうべき小説とは違って、「まあ最悪聞き逃してもいいや」という気楽さが村上春樹のエッセイにはあります(いや聞き逃したくないほど面白いのですが)。読者が想像する小説家としての村上春樹とは違った一面を見られるのもエッセイの魅力です。国内外を転々とし生活拠点を変えながら執筆活動をしてきた村上春樹ならではの旅行記や、作家としての半生を振り返りつつ人生の本質に触れるようなエッセイなどもあり、バリエーション豊富で楽しめます。ぜひ肩の力を抜いてラジオ感覚でお楽しみください。
エッセイ第3位『職業としての小説家』(小澤征悦 朗読)/おすすめ度★★★☆☆
【『職業としての小説家』について】
『職業としての小説家』は、村上春樹の小説に魅了された人には必読の書と言っても差し支えないでしょう。どのように小説家になったか、これだけの成果を残すにはどのようなことを意識して生活をしてきたかが書かれている、根本的な創作活動について語った村上春樹の自伝的な本です。ですが作家以外の人が共感できたり、役に立てたりできる内容も多く含みます。本書の特徴を当初単行本が刊行されたときに帯に記されていた柴田元幸さんの言葉が端的に表しているので紹介します。「小説を書こうとしている人に具体的なヒントと励ましを与えてくれることは言うに及ばず、生き方を模索している人に(つまり、ほとんどすべての人に)総合的なヒントと励ましを与えてくれるだろう——何よりもまず、べつにこのとおりにやらなくていいんだよ、君は君のやりたいようにやるのが一番いいんだよ、と暗に示してくれることによって。」

評価: 3.0ではその村上春樹の自伝的なエッセイを誰が朗読したのか。それは個人的な交流もあると思われる小澤征悦さんです。音楽を愛する村上春樹の『小澤征爾さんと、音楽について話をする』の共著者であり世界的指揮者である小澤征爾さんの長男が征悦さんです。『職業としての小説家』における小澤征悦さんの朗読は、村上春樹っぽさは消えて、匿名性のある文章のように感じられ、それがとても聴きやすいです。小説でこの読みは絶対に有り得ませんが、仕事論寄りのエッセイならまさにぴったり。かつて「村上春樹 × 川上未映子 春のみみずく朗読会」というイベントで、小澤征悦さんが朗読する『風の歌を聴け』の一部を聴いたとき、新しい『風の歌を聴け』像を抱くほど爽やかな青春を感じました。そして今回の小説とは違った読みもまた、新しい村上春樹像を抱かせてくれるような朗読になっています。小澤さんは、村上春樹作品とは高校生のときに『国境の南、太陽の西』を読んで以来の付き合いだと話していますが、それが聴き手の安心感にも繋がっている気がします。
エッセイ第2位『走ることについて語るときに僕の語ること』(大沢たかお 朗読)/おすすめ度★★★★☆
【『走ることについて語るときに僕の語ること』について】
当時の作家といえば不摂生というイメージを覆し、早寝早起きを含む規則正しい生活をするいう新しい作家像を築き上げたのが村上春樹といっても過言ではないでしょう。『走ることについて語るときに僕の語ること』は、初期段階の作家活動を通して、趣味である走ることと書くことを並走させて、人生の真髄を伝えようとしている一冊です。創作と作家人生に特化したエッセイ『職業としての小説家』よりも読者がより身近に感じられる「生きるコツ」のようなものが多く綴られている印象です。作家という特別な職業を持つ人に限らず、より幅広い人たちが享受できるような金言に溢れています。

評価: 4.0『走ることについて語るときに僕の語ること』自体は有名なエッセイで評価も高い印象ですが、このオーディブル版では評価が分かれるかもしれません。その最大の特徴は、大沢たかおさんによる、とてもゆったりとした朗読です。舌がもつれてると思うくらいゆっくりの箇所もあり、速度を1.2倍にした方が聴きやすいと感じる方もいるかもしれません(速度を変えられるのもオーディブルの利点です)。しかし一言一句がかなりくっきり聞こえるこのゆっくりの朗読は、実は聴いてみると村上春樹向きだとわかります。じっくり村上春樹の仕事の真髄を味わうにはもってこいだと思うのです。大沢たかおさんは、自身の弱さも強さもここまで吐露するかというくらい書かれていたので、あえて意図を込めずに自然体で読んだ、というようなことを言っていました。かなり前からオーディブルを愛用しているという大沢さんが理想とする読みのスピードだったのでしょう。
エッセイ第1位『遠い太鼓』(野間口徹 朗読)/おすすめ度★★★★★
【『遠い太鼓』について】
村上春樹のエッセイ系の作品でおすすめしたいオーディブルの最たるものが『遠い太鼓』です。これは分厚い本でその長さにもかかわらず、愛読者が多い印象です。僕は、本書で語られている苦悩や苦労が読者や聴き手を勇気づけてくれるような作品だと思っています。当時からするととても笑えないような出来事も、村上春樹の手にかかれば、読者はついそれについて笑ってしまったり深く共感したりしてしまうのです。『遠い太鼓』が語られる時期としては、ギリシャで長編第五作『ノルウェイの森』を書きはじめ、ローマとロンドンで第六作『ダンス・ダンス・ダンス』を書き上げるまでの期間あたりが中心。小説を書き続ける生活について、海外に住む苦悩(それと同じかそれ以上日本に留まる苦悩についても想像させられます)について、そして『ノルウェイの森』が想定を上回る規模で売れて、結果的に村上春樹が負った大きな傷についても語られています。もちろん単純な海外の旅行記としても楽しめますが、それ以上に村上春樹にしか書けない作家としての人生論、海外生活における生々しい体験、肩の力を抜いた日常風景なども味わえる圧巻の15時間超。

評価: 5.0僕が聴き始める前にオーディブル版『遠い太鼓』に求めたものは、とにかく作品と当時の著者の気持ちに合った朗読でした。いや正確には、『遠い太鼓』を聴いた時にその朗読が良すぎて、これが自分が求めた理想だと勘違いしてしまったのかもしれません。当時40歳という転換点にいた著者の気持ちを表すのに、野間口徹さんの落ち着いた朗読は効果的に作用しているように思います。声の平坦さを維持ちつつ、その中で最小限の幅で高低をつけた朗読は、まさに聴きやすさに注力した野間口さんの努力の賜物でしょう。エッセイの一人語りに最適だというナレーションを一度ご賞味あれ。
おまけ: 朗読で聴きたい村上作品の個性的なキャラクター
村上春樹の小説には、現実世界ではちょっと想像もつかないようなユニークなキャラクターが登場します。小説を読んでいるときには、なんとなく自分の脳内で流れている声も、では実際声に出すとどんな感じになるのかと聞かれるとなかなか答えるのが難しいのです。しかし、このオーディブルでは、朗読者はそれらの変わったキャラクターの台詞を声に出して読まなくてはいけません。それが自分の想像してたものとどれだけ違うのか、意外と解釈一致なのか、そのように考えながら聴くオーディブルもとても楽しいです。ぜひ村上春樹ワールドではお馴染みの個性的な登場人物(?)の「声」をプロたちの演技とともに聴いてみましょう。
オーディブルで聴きたい村上春樹のキャラクター1. 羊男
登場作品: 『羊をめぐる冒険』「図書館奇譚」(『カンガルー日和』に収録)など
村上春樹作品における特徴的かつ象徴的なキャラクターの一人は、羊男で間違いないでしょう。羊男は『羊をめぐる冒険』の中で、「頭からすっぽりと羊の皮をかぶって」いる「百五十センチ」くらいの男だと説明されています。村上春樹によって描かれたイラストも掲載されているので、読んだことがある人は共通して同じイメージを持っているはずです。
現在オーディブルで聴ける羊男の登場作品は、『羊をめぐる冒険』と『カンガルー日和』内の「図書館奇譚」です。『羊をめぐる冒険』での染谷将太さんの朗読では、羊男はかなり演技を入れて読まれています。高めな声と早めの口調で、気が短そうな印象を受けました。もともと、怒っていたり、早口だったりと羊男の言動に関する描写も多いので、演技の手がかりも多かったのではないでしょうか。個人的には、本で読んでいた羊男のイメージと、このオーディブルでの台詞はかなり近いもので満足でした。
一方で、「図書館奇譚」における多部未華子さんの朗読は、演技はほとんど入れず、羊男の声は朗読者の爽やか目な声になっていますが、全体を通して平坦さを保っているため、自然に聴くことができます。どちらの羊男も、読み方は違いますが、その作品の中でとても魅力的に朗読されています。
オーディブルで聴きたい村上春樹のキャラクター2. 影
登場作品: 『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』など
影が話す、ということについて『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』を読んだ方なら驚きはしないでしょう。「世界の終り」パートで、僕は影を捨てる決断をします。その際に引き剥がされた影は、もう一人の僕として人格を保持します。『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』における大森南朋さんの朗読は、一貫して情感を込めずに淡々と読んでいくスタイルに徹しています。なので影だけでなく、門番なども同じように演技は入れずに読まれます。
「ハードボイルド・ワンダーランド」パートの博士は相当特徴的な話し方をするため、多少声のトーンは変わっているように思えますが、それでも全体として大森南朋さんの低く通る声で朗読されています。
オーディブルで聴きたい村上春樹のキャラクター3. 騎士団長/イデア(『騎士団長殺し』より)
登場作品: 『騎士団長殺し』
後期の村上春樹作品の中で登場したユニークなキャラクターの一人が 騎士団長(イデア)ではないでしょうか。突然登場したこの騎士団長は、ただ絵画の中の人物の姿を拝借しているだけで、そもそもはイデアにすぎないと言います。それでも騎士団長の姿をとったこのキャラクターの話し方はずいぶん奇妙な描写がされています。「普通の人間はまずこのようにはしゃべらない」と記述されており、朗読の高橋一生さんがどう読むのか楽しみでしかたありませんでした。
聴いてみると騎士団長の台詞はしっかり演技が入った読まれ方をしています。早口というのが最たる特徴です。高い声ではありませんが、地の文がかなり低いトーンで読まれているので、それと比較すると数段階トーンが上がっているように感じます。描写通り、騎士団長の饒舌さがうまく表現された朗読になっています。
オーディブルで聴きたい村上春樹のキャラクター4. 緑色の獣
登場作品: 「緑色の獣」(『レキシントンの幽霊』に収録)
村上春樹のオーディブル作品の中でも難易度が最も高い朗読の一つが、『レキシントンの幽霊』に収められた短編「緑色の獣」に登場する緑色の獣でしょう。地面から出てきた鼻の長い「気持ちの悪い緑色の獣」は、間違った話し方こそすれど人間の言葉を話します。さらに、会話がかぎかっこ(「」)が使用されずに地の文として続いていくのも特徴的です。
緑色の獣はたとえばこんな言葉を発します。「私があなたををを食べたりするわけないいじやありませんかね、嫌だなあ、あななた何を言うんですかね、私にはなんの敵意も悪意もありませんよ、そんなものあるわけないじやありりませんかね」内容も不気味ですが、この誤字のような言葉を並べます。
これを読む門脇麦さんも苦労したことと思いますが、正直ここは評価が二分するところではないかなと推測します。思い切った演技で、ゆったりこもった声で、しかしはっきりと一言一句読み上げる、という朗読です。個人的にもどういう感想を持つべきか悩むところなので、気になる方はぜひ『レキシントンの幽霊』の「緑色の獣」を聴いてみてください。
オーディブルで聴きたい村上春樹のキャラクター5. ふかえり(『1Q84』より)
登場作品: 『1Q84』
村上春樹の最長編小説『1Q84』にも特徴的な話し方をする人物が登場します。物語の鍵を握る少女ふかえりです。ふかえりのしゃべり方の特徴として、「修飾をそぎ落としたセンテンス」「アクセントの慢性的な不足」「限定された(中略)ボキャブラリー」などが挙げられます。これはふかえりがディスレクシア(読字障害)を抱えていることと関係があるのでしょう。
「天吾」パートを読む柄本時生さんの朗読は、あまり声色を変えてキャラクターを差別化させているわけではなさそうですが、「センセイ」「ショウセツ」などのカタカナ表記のところをあいまいに読んだり、疑問符がない質問を通常文のように読んだりして、ふかえりの独特の話し方を表現している、という印象です。
正直に言うと、ふかえりこそ、「青豆」パートを朗読する杏さんの朗読で聴きたかった感も否めませんが、それは贅沢というものでしょう。
オーディブルで聴きたい村上春樹のキャラクター6. 品川猿
登場作品: 「品川猿」(『東京奇譚集』に収録)「品川猿の告白」(『一人称単数』に収録)
村上春樹が描く話す動物といえば猿でしょう。『東京奇譚集』内の短編 「品川猿」と『一人称単数』内の「品川猿の告白」の連作に登場する品川猿も、オーディブルでぜひとも聴きたいキャラクターです。
「品川猿」を読むイッセー尾形さんの独特な声は、まさに品川猿を見事に体現するのにうってつけだったと思います。人の名前を盗んでしまうという奇怪な猿は、被害者である女性の前に捕えられ、事情を話します。品川猿の声は「張りのある低い声」で「そこにはある種の音楽性を聴き取ることさえできた」と描写されています。
その声を、イッセー尾形さんは、とてもゆったりしたスピードで読みます。もともとの声が低いのですが、さらに数段階トーンを落として読まれます。これがイメージと合致します。さらに台詞の中で、文面以上にたっぷりと間を空けて話します。これが想像以上に良く、作品の不思議な雰囲気を表現してくれているなという感想を持ちました。
続編である「品川猿の告白」は池松壮亮さんが読んでいます。「品川猿の告白」では、猿は小さな旅館でひっそりと働いています。あまり演技はありませんが、低い声で読まれる地の文よりもやや低いトーンで猿の台詞が読まれます。そしていくぶんひっそりとした話し方は、作中で猿が置かれている状況と重なり、上手く効果を発揮しているように思えます。ビールを飲んでも、少し笑ったりするものの、声のトーンは変わりません。
どちらの朗読も低くゆったりした読みという点では共通していますが、もちろん地声が違うのでそれぞれの魅力を楽しめます。本当にどちらもイメージからそう離れず、でも本で読んでいた時にはこんなにはっきりは想像できなかった見事な朗読だと思います。
オーディブルで聴きたい村上春樹のキャラクター7. 小人
登場作品: 「踊る小人」(『螢・納屋を焼く・その他の短編』に収録)
短編小説「踊る小人」には小人が登場します。これについては先ほども『螢・納屋を焼く・その他の短編』の紹介で話した通り、松山ケンイチさんによって朗読されています。全体を通してあまり演技を入れずに、聴きやすい一定の声で物語が進んでいくのが山ケンイチさんの朗読の特徴です。小人も例外ではなく、地の文や主人公の台詞と同じように読まれます。
オーディブルにおいては演技を入れるも入れないもそれぞれの魅力がありますが、良作の前提条件として聴きやすさが求められることは間違いありません。そしてこの小人の台詞を含む「踊る小人」の朗読も、聴き心地がたまらない作品に仕上がっています。
オーディブルで聴きたい村上春樹のキャラクター8. TVピープル(『TVピープル』より)
ほとんどの村上春樹の短編集がオーディブル化する中で、知名度も高い『TVピープル』はまだ実現されていません。その要因の一つは、表題作の「TVピープル」を誰が、どう読むかというところにあるのではないかと勝手に推測しています。
「TVピープル」には、そのタイトルと同名の奇妙な存在が描かれます。普通の人間よりも「二割か三割くらい」小さいのですが、「体の各部分がみんな均一に小さい」ので「子供やコビトの小ささとは全然違っている」のだといいます。そして言葉ではないのですが、本作を通してさまざまな不思議な音がたてられます。
「ックルーズシャャャタル・ックルーズシャャャャャタル・ッッッッックルーズムムムス」
「カールスパムク・ダブ・カールスパムク・ダブック・カールスパムク・クブ」
「タルップ・ク・シャウス・タルップ・ク・シャウス」
朗読者はこれをいったいどう読めばいいのでしょうか。そしてなんと最後には、言葉を話します。『TVピープル』のオーディブル化も時間の問題とは思いますが、ぜひ朗読者とその読み方に注目して待ちましょう。
オーディブルって実際どうなの?
僕は現時点でオーディブルを3~4年は聴いているので、ある程度メリットとデメリットが見えてきました。みなさんの気になるところは料金や仕組みと、実際に実用的で割に合うかということだと思うので、簡単に解説できたらと思います。
・オーディブルとは?
オーディブル(Audible)はAmazonが提供する耳で聴く読書サービスです。小説からビジネス書まで人気作がかなりの範囲で網羅されており、プロの朗読で聴くことができます。もちろん出版されている本全てがオーディブル化されているわけではありませんが、2025年初頭時点で、聴き放題の対象作品だけで20万点を超えています。Amazonのアカウントが必要になります(Amazonのアカウント自体は無料です)。オーディブルは、月額の聴き放題サービスでも、単品買い切りでも利用することができます。
・オーディブルはいくら?月額?単品?
オーディブルの月額料金は1,500円で、20万点聴き放題が基本です。オーディブルは単品で購入すると、普通の紙の書籍よりも割高な値段設定になっています。そのため聴き放題の月額サービスを利用する方が現実的だと思います。しかも初めての方は初月無料で(キャンペーン期間は2~3ヶ月無料、2~3ヶ月99円)、無料期間中に退会もできるので、安心してお試しできるのがオーディブルの懐の深さ。もちろん聴きたい作品が一冊だけの場合は単品購入でもいいと思いますが、月額入会すると単品購入でも30%OFFの割引価格で買えるので、初月無料ということを考えると、いずれにしてもいったん入会して単品購入するのがお得かなと思います。
・オーディブルは読書がはかどる?
オーディブルは何かしながら聴けるという、聞き流しが売りの一つですが、正直慣れないうちはかなり集中して聴かないと内容は頭に入ってきません。もちろんラジオ感覚で垂れ流しにしてよい本であれば問題ないでしょう。しかし、内容をしっかり聴いていないと話がわからなくなってしまう小説などは、ある程度慣れるまで集中して耳を傾けておく必要があるというのが僕の意見です。
一方でプロの朗読だからこそ、本での読書と同様に集中して聴くのがオーディブルの魅力でもあると感じています。自分で読んだときとは違う印象を持ったり別の角度から同じ作品を味わえるのがオーディブルのメリットです。この記事では朗読についても言及していますが、それぞれの読みで作品の雰囲気ががらりと変わります。これが面白い点だと思います。
オーディブルはタイマー機能があったり(主に寝落ち用に)、速度調整機能があったり(速くも遅くもできます)とほしい機能は揃っています。
まとめると、オーディブルで効率良く読書がはかどるというと、それは読み手の慣れや本の種類によってという答えになります。繰り返しになりますが、内容をしっかり聴き取るべき小説は、あまり効率を求めずに、オーディブルならではの朗読の魅力を楽しむのがおすすめです。
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