ここでは「最強のサラリーマン」とも称される田端信太郎さんが教える、新入社員が実践すべき仕事術を紹介していきます。
会社で出世を目指すにしても、転職してキャリアアップするにしても、起業するにしても、ビジネスの世界の「ルール」「マナー」「お作法」をおさえておく必要があります。
NTTデータ、リクルート、ライブドア、LINE、ZOZOといった日本的な大企業からベンチャー企業、外資系企業まであらゆる会社をリードしてきた田端信太郎さんの『これからの会社員の教科書』には、今の時代のビジネスパーソン(特に新入社員や20代などの若手)にとって大切な教えが詰め込まれています。
SNSでは過激な発言などで注目を集める田端さんは、実は基本を大事にした若手にとってもお手本となる仕事観の持ち主だと、本書を読むとよくわかります。ツイッターなどの発言はいわばパフォーマンスですね。
そんな田端信太郎というスーパーサラリーマンが大切にしている仕事術や姿勢はどのようなものなのでしょうか。7つのポイントに絞って紹介していくので、新入社員がすぐに職場で実践できるものがあれば積極的に取り入れていきましょう!
1. 自分の人生設計を明確にしておく
定時に切り上げてプライベートな時間を大事にする人、夜遅くまで残業をする仕事人間。どちらが若手会社員の理想の働き方でしょうか。
これは自分が決めたワークライフバランスの基準によって異なります。どれくらい給料がほしいのか。仕事を通じて上に行きたいのか。そのような自分なりの人生設計やキャリア志向もふまえて決めることが一番だと田端さんは言います。
一つのタスクを「もうちょっとよくできる」と思うと、永遠に仕事が続いてしまいます。どこかで切り上げる必要がありますが、その目処の一つが定時です。しかし、自分が今は仕事での成果を重視する期間だと思えば、効果的に残業すればよいでしょう。一方で、周りが残業しているから自分も残業しなければ、と思うのは論外です。
プライベートの時間を重視する場合も、最低限自分の仕事には「こだわり」を持つべきです。
やはり、プロとして自分のアウトプットが満たすべき品質について、自分なりの美学を持つことです。
自分なりの人生設計が明確になっていれば、それに従って仕事にかける時間や意識も自ずと決まってくるでしょう。
2. 20代は正しい努力をする
① 20代で勝負の場を見つける
新入社員時代から、正しい負荷で正しい努力をしていると、4、5年たったあたりの27~28歳くらいからすっと仕事が楽になり、おもしろくなってくるはずです。
この言葉は田端さんの身をもって、また周りの会社員を見てきた実感が裏付ける言葉でしょう。
27~28歳くらいまでに「自分はここで勝負する」という場所を見つけられればいいでしょう。遅くて30歳までです。
つまり新入社員時代から、しっかり自分のキャリア戦略を練る必要があります。もちろんその通りにいかないこともあり、軌道修正が必要なときもあるでしょう。
「自分の人生設計を明確にしておく」でも述べたように、自分が30代、40代で大きな成果とともに仕事を楽しんでいたいというビジョンがあるならば、20代はがんばりどきです。
② 体調管理は最重要項目
一方で、何十年と働く持久戦では、体調管理が最も重要です。常に全力で走り続けていてはフルマラソンは完走できません。「ここぞ」という場面を見極めて、そこでパフォーマンスを発揮できるような調整ができると長期戦が有利になるでしょう。
頭ばかりを使って体を動かす機会が少ない人は、週末にフィジカルに疲れることがおすすめだと田端さんは言います。運動自体は健康にもいいですが、頭脳労働のためのリフレッシュとしても有効な手段でしょう。
3. 相手に合わせたコミュニケーションをとる
① ビジネスの連絡手段を使いわける
今やビジネスにおけるコミュニケーションの手段は多様化しています。対面、電話、手紙、ファックスといった従来型のスタイルから、メール、メッセンジャー、LINE、ツイッターのDM、スラックなど最新のツールなどがあります。
これらのなかから、今の状況と目的から考えて、どの連絡手段を使えばいいか? そこに気を使える人はできる人です。
相手の好みと、その状況と両方を加味して最適なコミュニケーション手段を選びましょう。対面の方が効率的だと考える上司もいるでしょうし、ホリエモンのように電話を嫌う人もいます。ちょっとした情報共有ならスラックなどオンラインで済むでしょうし、取引先に誠意を伝えるために手紙を選択すべきシチュエーションもあるかもしれません。
相手の立場に立ち、気持ちを想像することがその人に合ったコミュニケーションをとる最大のポイントです。
② ちょっとした一言を添える
ビジネスにおけるメールのやりとりは、テンプレのような決まり切った文句になりがちです。「お世話になっております」で始まり、「何卒宜しくお願い致します」で終わるメールが多いのは想像に難くないでしょう。
田端さんは相手によっては気の利いた一言をメッセージに入れていると言います。SNSなどを見て相手の近況をなんとなく把握し、「あの仕事、すばらしいですね」「〜さん、スノボ行かれてたんですね」などとさらっと書くと、「こいつ、やるな」と思われるそうです。
人間は「自分のことを理解してもらえている」と感じると、安心感につながります。1行でいいのです。
このように誰にでも同じようなメッセージを送っていると思われず、むしろ「わかってますよ」という感じを相手に伝えるだけで自分に対する印象は大きく異なるでしょう。ややコミュニケーションの応用レベルですが、大事な局面こそ意識してみてはいかがでしょうか。
③ 上司にはクローズドクエスチョンで質問する
仕事しているとわからないことが山のように出てきます。特に新入社員など、働き始めは作業を進める中で、一つ一つがわからないことだらけです。そこで上司に質問するときの最適な方法が、クローズドクエスチョンを用いるということです。
クローズドクエスチョンというのは相手がイエスかノーかで答えられる質問です。相手への想像力を働かせれば行き着く結論ですが、これは多忙な上司に負担をかけないためです。
「これはどうやるんですか?」という質問ではなく、「こういうやり方でやろうと思っているんですが、問題ないでしょうか?」というように自分なりの仮説をしぼりこんでいくことが重要です。あれもこれも質問をぶつける若手が「少しは自分で調べてから質問をしろ」と言われるのは、この仮説が自分の中で構築されていないからです。
わからないときに最低限自分で調べ、自分なりの仮説を持つことは上司の負担を軽減するだけでなく、自分の問題解決の力の向上にもつながります。
4. 会議のコツ
新入社員でも会議に出席する機会というのは少なからずあるでしょう。会議にもさまざまなものがありますが、若手には若手なりの役割があります。
① 会議の目的に合わせた姿勢で臨む
田端さんも言うように、会議はあくまで手段であって、それ自体が仕事なわけではありません。まずは、この会議はなんのためかという目的を随時考えるようにしましょう。
会議に出たら「どうすればその場にいちばん貢献できそうか」を自分なりに考えること。そういう心構えでいると、どんどんチャンスは広がっていきます。
例えば、その会議の目的がアイデアなどを出し合うブレインストーミングなら、新人だからといって、隅で黙っている必要はありません。アイデアを出すことを求められているのですから、発言をしましょう。
② 議事録をとる
出世のいちばんの近道は「議事録」。あの派手な仕事ぶりをするイメージの田端さんは、実はこのような基本的なタスクに重要性を見出します。
議事録はたいてい新入社員に任される役割です。まずは上司はその議事録を見て、新入社員の会議の理解度を見ている可能性があります。また、議事録をとることで情報の整理力と編集力を養うことができます。数十分から1時間ほど話した情報をわかりやすく、情報を圧縮して整理する必要があるからです。
③ 遅刻しない
常に遅刻をしないほうがいいというのはビジネスの世界ではいえることです。当たり前を当たり前にこなすことが新入社員にとっては重要でしょう。
特に「ここ一番」というような会議などの場面では、絶対に遅刻などしないことです。
「ここが勝負どころだな?」と心の声がして、自分で気づけたとしたら、その時点できみには「勝負センス」があります。
最初のうちはこの勝負どころは理解できないものです。あらゆる場面で時間を守るということを意識すべきでしょう。
5. ビジネスの礼儀はわきまえる
① マナーやリスペクトを持つ
ビジネスにおける礼儀は最低限知って身につけるべきです。常識や礼儀などくだらないと思う人も、損をしないためには礼儀をわきまえる場面が多々あります。礼儀の重要性を田端さんはこのように述べます。
仕事ができる人ほど、謙虚で偉そうにしないものです。
人間同士相手に対して最低限のマナーやリスペクトは、つねに持っておくべきです。それは結局、巡り巡って自分を守ることにもなるからです。
② 敬語は使うだけ得
また礼儀の基本である敬語について、使いたくない人は無理に使う必要がないし、圧倒的な才能がある人は敬語は不要かもしれないと述べています。その上で田端さんは敬語の重要性をこう主張します。
ただ、実力が同じなら敬語を使える人間のほうが明らかに上に行けます。
損をしないためにも、使えるものは使っていこうよ、というわけです。
③ 「感じのいい人」になる
「感じのいい人」というのは、相手に媚びへつらうという意味ではありません。仮に部下だろうと一人の人間としてリスペクトをもって向き合うということです。
それは、その相手と自分の立場がいつ入れ替わるかわからないからです。
長期的に見て、自分の部下が自分の上司になったり、面接で偉そうに不採用にした相手が自分の転職先の面接官にだってなり得る時代です。
別に全員におべっかを使うことはないですが、不必要に嫌われるのは損だよという話です。
6. 効果的なインプット方法
ビジネスパーソンとして勉強や情報収集というのは最大の武器の一つです。インプットする情報の質や量があなたの仕事の成果につながるともいえます。あらゆる情報ソースに目を通し、SNSでもなどで旬なニュースを拡散している田端さんはどのような情報収集術を実践しているのでしょうか。
① 情報収集の目的意識を持つ
これが情報収集の大前提になります。勉強するにしてもなんのためにそれを勉強するのか。何が知りたくてニュースや新聞に目を通すのか。膨大な情報が溢れるこの現代では、漫然と情報を眺めていては時間はいくらあって足りません。まずは情報収集をするときには、何らかの仮説なり、目的意識を持つべきだと田端さんは主張します。
② 実感・体感を大事にする
新聞やニュースを介して得た情報は二次情報です。幅広く大量の情報をインプットするには効率的ですが、実際に自分で体感した一次情報にも大きな価値があります。
田端さんは「現地・現場・現物」の価値を強調します。R25というフリーペーパーを創刊するときに、頻繁に広告の変更や差し替えなどの要望があったそうです。そんなときに田端さんは実際に印刷所まで足を運び、印刷の工程などを見ていたからこそ、そのような要望に「まだ間に合います」「もうここまで仕上がってしまっています」などの判断がすぐに下せたそうです。
最低限自分の仕事と関わりがあることで、現地に足を運んで学べることがありそうなら、どんどん自分で体感するべきです。
③ 「消費者」として生活する
自分が商品やサービスを生み出す側、もしくは販促する側の人間でも、いち「消費者」としての視点は大いに役に立ちます。なぜならその「消費者」に評価されることを目的にビジネスをするからです。
例えば2016年から爆発的なヒットを記録しているポケモンGOですが、実際にアプリをダウンロードして街を歩きながら遊んでみた人はどれほどいるでしょう。マーケターである田端さんは「やっておかないとやばいな」と思い、実際にプレイして人がなぜポケモンGOに夢中になるのかを体感したそうです。
人気な商品やサービスがなぜそこまで売れているかを考えるときに、それを実際に体験してみることが何よりも多くのヒントをくれるのです。世の中のトレンドに敏感になって、自分でも実際に体感してみることが大切です。
④ 本を読む
食材がないとシェフができないように、頭脳労働者にとって、本を読むのは息を吸うくらいあたりまえのインプットです。
読書というのはそもそも最も費用対効果の高い自己投資と考える人も多くいます。この『これからの会社員の教科書』も現役バリバリの超多忙なビジネスパーソンの田端さんが、貴重な時間を割いて書き上げた「叡智」です。その人が何年、何十年とかけて体感した知識や経験を、数時間で読める内容に凝縮したのが本です。
読書も漫然と行うよりは、目的意識をもって取り組んだ方がはるかに効果的です。仕事のアウトプットをする場面を意識しながら読むことが大切だと田端さんも言っています。
7. ビジネスの基礎知識を身につける
まだ会社のことや自分の仕事について何の知識もない新入社員でも、早くからビジネスの基礎知識を学ぶことはできます。「経済・法律・歴史」はビジネス世界の共通言語だと田端さんは言います。
ビジネスをやるからには、ビジネスというゲームのルールをわかっておかなければいけません。
もちろんまったくわかっていないという人はそういるものではないですが、ものすごく浅い知識で戦っている人はたくさんいるそうです。大きな仕事の成果の裏には、基本的な土台がしっかりあります。まずは田端さんが言うように「経済・法律・歴史」から勉強していきましょう。
① 経済
経済学もビジネスパーソンだったら、ぜひ学んでおくべきでしょう。基本的な経済学の理論や概念、用語は語れないとヤバい。たとえば「機会費用」とか「需要と供給」とか「需要の価格弾力性」といった概念について語れるか。
このように経済学も学んでおくべき分野で、大学の一般教養レベルは絶対に知っておいた方がよいと田端さんは言い、マンキューという人が書いている経済入門書をおすすめしています。
② 法律
「頻出の法律用語はおさえておく」ことはどのようなビジネスパーソンにとっても大切です。契約書などは誰の目にも触れる身近なものです。法務担当にまかせておかばいい、という考えは捨て、せめて自分の仕事に関連しそうな法律用語は理解しておきましょう。
仕事で契約書が出てきたら、一度はきちっと目を通して「そもそも何のためにこの条項はあるんだろう?」というように、その必要性を理解しておきましょう。
契約書がよくわからないからといって、出てきた書類にハンコをぽんぽん押していたら、仕事でもプライベートでも損をするだけです。また何か新しいことに挑戦しようとすると法務も経理も「前例がないから」という理由で反対をすることもあるそうです。そうした場合に法律の知識があれば、対等に戦うことができるかもしれません。
まずは「期限」「利益」「喪失」といった単語一つひとつを理解するよう勉強しておきましょう。また、例えばメディア関連の仕事をする場合は、著作権について深く勉強しておくということも重要です。著作権入門書については福井健策さんという方の著作権入門書を推薦しています。
③ 歴史
新入社員をはじめ若手ビジネスパーソンは、歴史を学ぶことも大切です。
歴史はすでに起きたことですから、基本的に変わることがありません。「歴史は繰り返す」という言葉があるように、歴史の法則性を学んでおくとものすごく有利です。
歴史を学ぶには教科書以外にも博物館を利用するなど、立体的にいろんな角度から学ぶことを田端さんは推奨しています。一般的なイメージの博物館のほかにも、「日銀貨幣博物館」や電通の「アドミュージアム」、日清の「カップズードルミュージアム」など多様なテーマの博物館があります。これらをうまく活用して歴史を学び、他のビジネスパーソンに差をつけましょう!
以上が田端信太郎さんが教える、新入社員から実践できる若手仕事術7選でした。礼儀やコミュニケーションの取り方といった基本から、情報収集術やビジネス基礎知識の重要性まで新入社員ができる限り早く知っておくべき教えを厳選して紹介しました。
本書『これからの会社員の教科書』には、田端さんがこれまでビジネスの世界で身につけた仕事術が合計71もの項目にわたって紹介されています。今回紹介した内容がためになったと感じたら、一読してみることをおすすめします。まだまだ学びは見つかるはずです!
それでは楽しい読書ライフを!
▽他にもオススメしたいキャリア・仕事術に関する本がたくさんあります!ぜひ興味がある方は、参考までに覗いていってください!▽
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